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「自転車“基礎”栄養学」<3>炭水化物は敵か味方か? サイクリストに知っておいてほしい「糖質制限」のリスク

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 近年、ダイエットを目的として「糖質制限を行っている」という方が多く見受けられます。その手っ取り早い方法としてご飯を抜く、もしくはご飯の量を少なくするといった食事をされている方が増えてきましたが、そもそも糖質制限とは、糖質からのエネルギーを減らし、血糖値の急激な上昇を和らげ、血管への負担を考慮することを目的としたもので、「主食(炭水化物)の摂取量を制限する」ということではありません。むしろ、一番の効率の良いエネルギー源となるご飯を制限することは様々な弊害が起きることが考えられ、体づくりにおいてはマイナスの要素が多いといわれています。今日はそんな「糖質制限」が体に及ぼす影響について解説します。

炭水化物は「体づくり」の敵?それとも味方? Photo: iStock.com/zepp1969

筋肉も使われる「糖新生」

 「糖質制限」は糖尿病の方の治療食としては効果があり、エビデンスも多く報告されていますが、健常者の方への「糖質制限」の効果はまだハッキリしないといわれています。個人的な意見ですが、短期間で減量をしたいのならば糖質制限は有効かもしれませんが、長期的な視点、またアスリートとして身体を酷使する観点からはお勧めはできません。

 私たちの身体は常にエネルギーを作って、そのエネルギーをもとに活動して消費するというサイクルを繰り返しています。そのエネルギーの材料が糖質です。糖質が体内で不足すると、糖質以外のものでエネルギーを作り出そうとします。これを「糖新生」といいます。

 この時、余分な脂肪(貯蓄されていたエネルギー)だけを使ってくれればうまく痩せていきそうな気もしますが、体は脂肪だけではなく筋肉などのタンパク質を分解してエネルギーを作ろうとします。これでは、せっかく作り上げてきた身体が台無し。トレーニングをしている人にとって自分の身体のたんぱく質を壊されるのは、トレーニング効果が表れないどころか疲労回復の効率が落ちたり、さらには体調不良の原因にもつながる可能性があります。これが「痩せる」という一言に隠れた糖質制限の弱点です。

糖質が体内で不足すると、糖質以外の物質からグルコースを生産する「糖新生」が筋肉や肝臓で行われる

 「ならば、たんぱく質をたくさん摂れば問題ない」と考えるかもしれませんが、摂取したたんぱく質を消化し、吸収して身体の一部に作り上げるこの一連の過程にもエネルギーは必要になってきます。お肉をたくさん食べた後、体温が上昇したり、汗をかき始めるということを経験したことがありませんか? それは、身体が一生懸命エネルギーを使って消化活動をしているためです。つまり、身体を作る燃料としても糖質は必須ということになります。

糖質をエネルギーに変えるビタミン

 さらに、このエネルギーを作り出すためには糖質だけでは不十分で、ビタミンなどの栄養素(とくにビタミンB1、ビタミンB2)が火付け役として大事になってきます。ご飯だけ食べていては、エネルギーを作りにくいということです。ですので、私はご飯には雑穀を入れて食べてくださいとお勧めしました。それは、雑穀にはビタミンが豊富に含まれているからです。加えて、味噌汁に野菜を入れて具だくさんにすることで、このエネルギー産生効率はより上がってきます。

糖質をエネルギーに変えるビタミンBが豊富に含まれている雑穀 Photo: iStock.com/Canon

 私は以前、栄養学の知識がない時にコンビニのおにぎり2個をお昼ご飯として食べていましたが、こんな少ない量しか食べていないのにどうして痩せないのだろう…(いや、むしろ太っていく)と感じていました。もちろん、自分で炊いたご飯ではないので添加物等が悪さをしている可能性も考えられましたが、それよりもビタミンが足りていないことが原因だったのです。

 昨今の糖質制限ブームでは、ご飯が真っ先に減らされる対象になりがちですが、ご飯が太る原因なではなく、ご飯を単品で食べると太りやすいということが考えられます。ご飯と一緒に食べている食材をよく考えていただき、自分の身体を動かすエネルギーである糖質を最低限とれるように工夫していただきたいと思います。そのおすすめとして、手軽にできる雑穀ご飯と具だくさんの味噌汁、という前回ご紹介した食事の組み合わせに行きつくのです。

小川静香
小川静香(おがわ・しずか)

公認スポーツ栄養士、管理栄養士、博士(医学)。食アスリートジュニアインストラクター。日本女子大学卒業後、東北大学大学院医学系研究科運動学分野を修了。3歳から水泳を始め、国体も経験。大学院在学中にトライアスロンにハマり、2009年に念願の日本選手権に出場。同年佐渡国際トライアスロンAタイプで優勝を果たす。スポーツトレーナーを目指す学生の指導にあたる他、スポーツ栄養の知識を自ら実践し、栄養教育活動や栄養セミナーで伝える。現在はアイアンマンレースに向けた練習と共に筋トレにも精力的に取り組み、ボディメイクに奮闘中。

この記事のタグ

ニュートリション 自転車“基礎”栄養学

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