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栗村修の“輪”生相談<172>10代男性「普段からロードバイクに乗っていると、周りにイキリ勢と馬鹿にされてしまいます」

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栗村さんこんにちは。今僕は中学2年生なのですが、脚力を使う競技のために、毎日ビアンキのカーボンロードバイクでトレーニングをしています。学校の行事で自転車を使う時や、友達と遊ぶ時にも「ママチャリ」は持っていないので、基本はロードバイクで行きます。

 しかし、周りは誰一人ロードバイクやクロスバイクには乗っていないので、案の定「イキリ勢」や「かっこつけ」と言って馬鹿にされます。こういう時になんと言ったらいいのでしょうか? 素朴な疑問ですみません。

(10代男性)

 中学生のような精神状態を揶揄する「中二病」という言葉があることからもわかるように、中学生はとても多感で複雑なお年頃です。質問者さんもお友達も、もちろんかつて(現在も?)の僕もそうでした。だから、たくさん悩んで大きくなってください。

 しかし、馬鹿にされるとなると穏やかではありませんね。なぜお友達がそんなことを言うのか、少し考えてみましょう。

 中学生に限らず、人間には「妬み」という感情があります。これは周りよりも富や能力を多く持っている人間に対して周囲が抱く負の感情なのですが、実は大人になっても妬みからは脱却できず、むしろ妬みの表現方法を複雑化・巧妙化させる方が多いですから、生きている限り、僕も含めて誰もがこの感情と付き合っていかなくてはなりません。

 お友達が質問者さんに抱いている感情は、まさにこの妬みではないでしょうか。

 だって、考えてもみてください。イタリアンブランドのビアンキの、しかもフルカーボンロードバイクですよ。自転車に興味がなくても、平常心を保つのは難しいでしょう。つまり、質問者さんは周囲の妬みの感情を刺激してしまっている可能性が高いのです。

独特のチェレステカラーで知られるビアンキのバイクは、ワールドチームでは現在ユンボ・ヴィスマが使用している Photo: Yuzuru SUNADA

 さて、もうお分かりかもしれませんが、妬みの根底にある感情は、「羨ましい」なんですね。要するに、お友達もみんな、内心ではビアンキのカーボンロードバイクに乗りたい。しかし素直に「いいなあ」と言うことは、可愛いプライドが許さない。したがって馬鹿にすることで自分自身の妬みの感情をなだめているのです。

 なので、妬みを乗り越える一つの方法は、妬みの底にある嫉妬感情を理解することです。質問者さんを馬鹿にすることでプライドを保っているお友達も、もし「好きなだけ貸してあげるよ」と一言声をかけられたら、「ま、まあ乗ってやってもいいけど…」などと一気に態度が変わるはずです。みんな質問者さんのビアンキが気になってしょうがないんですから。

 とはいえ、全員に貸すわけにもいかないのでこの方法には無理もあります。他の手段を考えましょう。

 妬みの感情の特徴として、自分の力で引きずり下ろせそうな位置にいる、同レベルの人間に対してしか発動されないことがあります。たとえば昨年ツール・ド・フランスを総合優勝したエガン・ベルナルは、100万円超えのロードバイクを、たぶん年間10台以上乗りまわしていると思いますが、質問者さんのお友達がベルナルを知っていたとして「イキりやがって」「かっこつけ」とは感じないと思うんですね。

 なぜか? それは、ベルナルは明らかに同レベルじゃないから、妬みようがないからです。

22歳の若さでツール・ド・フランス総合優勝の頂点に立ったエガン・ベルナル Photo: Yuzuru SUNADA

 したがって質問者さんが妬みを乗り越えるもう一つの方法は、周囲のお友達とは「別枠」になることです。

 ここで僕がいう別枠には大きく分けて二つあります。周囲のお友達から「横」方向に遠い存在になるか、上へ上へと高みを目指すかです。

 横方向に遠い存在になるとは、つまり「こいつは俺たちとは違うわ」と思わせることですね。馬鹿にしてきたお友達に「おいおい、何を言ってるんだい? これは乗り物なんかじゃなくて、身体を鍛えるための苦行の道具なんだ。僕は、こいつで毎日インターバルをして、血の味を楽しんでるんだぜ。君も今度、一緒にオールアウトしないか…?」と逆に熱心に誘えば、「あ、こいつはヤバい」と思われて、少なくとも馬鹿にされることはなくなるでしょう。要するに、周囲とは別の種類の人間になるわけです。

 後者の高みを目指すやり方はもっとシンプルで、多くのお友達が安住している居心地のいい平均値エリアから、上、もしくは斜め上に飛び出していくということです。

 たくさんのお友達が落ち着いている平均値付近のエリアは、たしかに安心感がありますし、心地いいでしょう。たくさんの「普通の人々」が安住しているエリアですね。

 でも、そこでぬくぬくと過ごしていては、いつまでも妬む側です。思い切って崖をよじ登って高みを目指せば、別の世界が拓けるかもしれません。

 友達は少し減ってしまうかもしれませんが、これからの時代は、「あいつはなんか違う」と思わせたほうが伸びていく可能性は高いでしょう。

 出る杭は妬みの対象になって打たれますが、出すぎた杭は打たれません。今回の経験は、中学生の質問者さんが早くも高みに昇るチャンスを手に入れたということを意味しているのかもしれません。ポジティブな解決方法を探ってみてはいかがでしょうか?

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

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栗村修の“輪”生相談

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