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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<325>充実の新戦力で“ビッグチーム食い”なるか コフィディス 2020年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 1997年のチーム発足以来、プロトンの一角として数々の名レースを走ってきたコフィディス。しばしセカンドカテゴリーのUCIプロコンチネンタルチーム(現UCIプロチーム)として活動を続けたが、2020年シーズン、悲願のトップカテゴリー復帰を果たした。その要因はまぎれもなく、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)ら実力者の加入にある。そして、トップ復活にふさわしいシーズンのスタートダッシュにも成功。これまでの“弱み”を克服し、大きな成功に向かって動き出したフランスの古豪にスポットをあててみよう。

トップカテゴリーに復帰を果たしたコフィディス。戦力を一気にアップさせ、ビッグチーム食いを狙う =サントス・ツアー・ダウンアンダー2020チームプレゼンテーション、2020年1月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

新スプリントトレインとともにチーム躍進のカギとなるヴィヴィアーニ

 今シーズンに向けたストーブリーグ(移籍市場)において、最大級のトピックの1つが、スーパースプリンターであるヴィヴィアーニのコフィディス加入だった。

コフィディスに加入したエリア・ヴィヴィアーニ。押しも押されもせぬエーススプリンターとしてチームの上昇を託される =シュワルベクラシック2020、2020年1月19日 Photo: Yuzuru SUNADA

 トラック競技で培ったスピードとスプリント力で、今のプロトンではナンバーワンとの評価もなされるフィニッシュ前での強さ。昨年は10勝を挙げ、それまで所属していたドゥクーニンク・クイックステップの勝利量産の一端を担っていた。

 しかし、次々と勝利を重ねるチームとて、それだけで潤沢なチーム運営ができるかというと、そうはいかないのが現在のロードレース界。いまをときめくタレントがそろう分、各選手の年俸が高騰し、チームの経済状況が決して楽ではなかったことは、日頃からレースを追っているファンの方ならよく知っているだろう。

 そんな台所事情のあおりを受けたのがヴィヴィアーニだった。確かにプロトンの先頭をゆくスプリンターであることは事実であるが、一方で30歳を迎え、「いまの勢いがいつまで続くのか」という疑問がチーム首脳陣の頭にあったことも実情のよう。本人は当初前チーム残留を希望するコメントを各所で残していたが、状況が厳しくなってきたところで手を差し伸べたコフィディスとやがて相思相愛となっていったのだった。

ヨーロッパチャンピオンジャージをまとうエリア・ヴィヴィアーニ。ツアー・ダウンアンダーでは未勝利に終わったが、これから状態を上げていくことだろう =ツアー・ダウンアンダー2020チームプレゼンテーション、2020年1月18日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ステージ1勝を挙げたツール・ド・フランスの段階で、すでに既定路線化していたコフィディス移籍。“予定通り”伝統のフランスチーム入りを決めたわけだが、その背景にはチームのトップカテゴリー復帰の切り札としての扱いや、彼自身が任命したアシスト陣をスカウティングすること、そして東京五輪に向けて本職でもあるトラック競技との並行、これらのリクエストにチーム側が最大限の理解を示したことが挙げられている。

 いまのところ、彼の望みはきっちりとかなえられている。チームはUCIワールドチームとなり、この夏の東京ではオムニアムで五輪2連覇を目指して走ることを念頭にレースプログラムを組む。

東京五輪ではトラック競技・オムニアムへの出場が見込まれるエリア・ヴィヴィアーニ。前回リオ五輪では同種目金メダル。2連覇をかけて東京へ乗り込むか =2016年8月15日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして何より、アシスト陣の充実はプロトン最高のホットラインとなる可能性が高い。ドゥクーニンク・クイックステップ時代のリードアウトマンたちとは“解散”となったが、盟友でもあるファビオ・サバティーニ(イタリア)を筆頭に、トラック競技・マディソンでもパートナーのシモーネ・コンソンニ(イタリア)を発射台に据える。また、トレイン牽引役にはジュリアン・ヴェルモート(ベルギー)をチョイス。各ポジションのスペシャリストがそろった点は、絶好の位置から圧倒的なスプリントをこれまで見せてきたヴィヴィアーニにとっては、これ以上ないシフトとなるはずだ。

 意気揚々とシーズンインを果たしたサントス・ツアー・ダウンアンダーでは、第2ステージでの落車が響いて精彩を欠いたが、先々に向けては心配はいらないだろう。左肩周辺の外傷が大きかったが、それさえ治れば戦える状態に戻るはず。2月2日のカデルエヴァンス・グレートオーシャン・ロードレースまでオーストラリアで走り、同月下旬からのトラック世界選手権をはさんで、3月からはクラシックレースに注力していく予定。5月にはジロ・デ・イタリア、6月にはツールを走り、その後の東京五輪と、見通しはこれまでになく明るい。

グランツールレーサーとしての飛躍を目指すマルタン

 即戦力の新加入ライダーは、ヴィヴィアーニら平地系ライダーにとどまらない。グランツールに向けては、ギヨーム・マルタン(フランス)の合流により戦えるメドが立った。

今シーズン移籍加入のギヨーム・マルタン。ツール・ド・フランスでは総合エースを務める予定だ =ツアー・オブ・グワンシー2019、2019年10月18日 Photo: Aaron LEE / SUNADA

 マルタンは2016年のプロ入り以降、一貫してワンティ・グループゴベール(現サーカス・ワンティ・ゴベール)で走ってきたが、現チームのチーム力アップの一翼として移籍加入となった。

 ツールには過去3度出場し、最高成績は昨年の個人総合12位。大会序盤は大きく出遅れたが、中盤以降で山岳逃げをきっかけに順位を上げ、最終的に一定の成果を収めた。確かに、順位的には目を見張るものとは言えないが、プロ入り前からフランスの自転車界では大きな期待を寄せられてきた選手。今年のツールの主催者推薦(ワイルドカード)でサーカス・ワンティ・ゴベールが選外となった大きな要因として、マルタンのチーム離脱を大会ディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が言明したあたりは、その大きな証拠ともいえるだろう。

ギヨーム・マルタンは昨年のツール・ド・フランスで個人総合12位。今年はトップ10入りが現実的な目標となる =ツール・ド・フランス2019第18ステージ、2019年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 脚質的にはクライマー寄りのオールラウンダー。数日間のステージレースでは幾度となく上位進出を収めているが、チームカテゴリーが上がった今年はUCIワールドツアーで確固たる成績を残すことが求められる。なかでもツールは総合トップ10入りが至上命題。自他ともに、「それは当たり前にクリアしなければいけない目標」と認める。

 タイムトライアルを得意としておらず、それをどうカバーしていくかが課題。ただ、今年のツールは山岳比重が高いこともあり、急峻な山々をしっかり攻略できれば上位進出が現実味を帯びる。グランツールではこれまでにも多くの“ラッキーボーイ”を輩出してきたが、マルタンがそうなれば驚くべき結果を残すことだってあり得る。そのくらいの実力は十分にあり、今シーズンを観ていくうえで押さえておくべき選手の1人であることははっきりとさせておきたい。

 本記が出稿される時点では、アルゼンチンでのブエルタ・サン・フアン(UCIアメリカツアー2.Pro)に出場中。シーズン初戦から総合上位を狙ってアグレッシブに走っており、その結果が期待される。

スプリンター陣に勢い 新加入組と残留組との融合図る

 久々のトップカテゴリー復帰とあり、タフな戦いへの適応が不安視されたチームだったが、シーズンが始まってみると本記出稿時点ですでに勝利を挙げるなど、上々の出足となっている。

 なかでも、スプリンター陣の元気がよい。1月20~26日に行われたラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ(UCIアフリカツアー2.1)では、エリア・ヴィヴィアーニの弟であるアッティリオが第1ステージ優勝。プロ入り1年目ながら、兄顔負けのスプリントで勝ってみせると、第2ステージ以降はプロ2年目のエマヌエル・モラン(フランス)が健闘。最終的に個人総合3位となった。

 サンフアンでは、これまた新加入のピート・アレハールト(ベルギー)がスプリント戦線に顔を出す。第2ステージでは4位。第1ステージ途中での落車で手首の骨折に見舞われたクリストフ・ラポルト(フランス)の代役として残るステージも戦うことになる。

ツアー・ダウンアンダーで個人総合14位となったネイサン・ハース。経験・実績とも申し分なしのベテランがチームに加わった =2020年1月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 26日に終わったダウンアンダーの個人総合では、ネイサン・ハース(オーストラリア)が14位。過去にはトップ5入りを何度も経験しているだけあって、今回の順位は彼自身満足できていない様子だが、新たな環境でのチャレンジに気持ちが高まってきたようだ。持ち前のパンチ力とスピードを武器に、ステージレースからワンデーレースまで、幅広く戦うことだろう。

 そして、ここ数年チームの屋台骨として走ってきた選手たちを忘れるわけにはいかない。昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで劇的なステージ勝利を挙げたヘスス・エラダ(スペイン)は、力のある選手たちが次々と加わる中でもキーライダーとしての立ち位置は変わらない。マルタンとの棲み分けも決まり、今年はジロとブエルタを担当することになった。

 前述の負傷が気がかりなラポルトは、昨シーズン9勝を挙げたチームの勝ち頭。ヴィヴィアーニら勢いあるスプリンターが足並みをそろえるが、今年もエーススプリンターの1人として走る方針だ。けがが治れば、逆襲開始といったところか。

 今シーズン所属は28選手。8カ国から選手が集まり、自国選手を多くそろえる傾向にあるフランスチームの中では、比較的グローバル路線をゆくことになる。

コフィディス 2020-2021 選手動向

【残留】
ナトナエル・ベルハネ(エリトリア)
ディミトリ・クレイス(ベルギー)
ニコラ・エデ(フランス)
ジェスパー・ハンセン(デンマーク)
ヘスス・エラダ(スペイン)
ホセ・エラダ(スペイン)
ヴィクトル・ラフェ(フランス)
クリストフ・ラポルト(フランス)
マティアス・ルテュルニエ(フランス)
シリル・ルモワンヌ(フランス)
ルイス・マテマルドネス(スペイン)
マルコ・マティス(ドイツ)
エマヌエル・モラン(フランス)
アントニー・ペレス(フランス)
ピエールリュック・ペリション(フランス)
ステファヌ・ロセット(フランス)
ダミアン・トゥゼ(フランス)
ケニース・ファンビルセン(ベルギー)

【加入】
ピート・アレハールト(ベルギー) ←スポートフラーンデレン・バロワーズ
フェルナンド・バルセロ(スペイン) ←エウスカディバスクカントリー・ムリアス
シモーネ・コンソンニ(イタリア) ←UAE・チームエミレーツ
エディ・フィネ(フランス) ←VCヴィルフランシュ・ボジョレー(アマチュア)
ネイサン・ハース(オーストラリア) ←カチューシャ・アルペシン
ギヨーム・マルタン(フランス) ←ワンティ・グループゴベール
ファビオ・サバティーニ(イタリア) ←ドゥクーニンク・クイックステップ
ジュリアン・ヴェルモート(ベルギー) ←ディメンションデータ
アッティリオ・ヴィヴィアーニ(イタリア) ←アルヴェディサイクリングASD(アマチュア)
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア) ←ドゥクーニンク・クイックステップ

【退団】
ホンダルウィン・アタプマ(コロンビア) →コロンビアティエラデアトレタス・GWビシクレタス
ナセル・ブアニ(フランス) →アルケア・サムシック
ライアヌ・ブアニ(フランス) →未定
ロイック・シェトゥ(フランス) →引退
フィリッポ・フォルティン(イタリア) →フェルベルマイヤー・シンプロン・ウェルス
ユーゴ・オフステテール(フランス) →イスラエル・スタートアップネイション
ジュリアン・シモン(フランス) →トタル・ディレクトエネルジー
ジョフレ・スープ(フランス) →トタル・ディレクトエネルジー
ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー) →ドゥクーニンク・クイックステップ
ジーコ・ワイテンス(ベルギー) →引退

今週の爆走ライダー−シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 3月に37歳を迎えるチーム最年長ライダー。プロキャリアは16年目に突入した。

2014年のツール・ド・フランスではマイヨアポワを6日間着用したシリル・ルモワンヌ。その前年にはチームの解散で一度は引退を覚悟していたという =ツール・ド・フランス2014第7ステージ、2014年7月11日 Photo: Yuzuru SUNADA

 長いキャリアでは、一貫して平地系アシストとしてチームに尽くしてきた。かつては逃げでチャンスをつかみかけた時期もあったが、「勝てるかも」と思うたびにあと一歩のところでスルリと勝機を逸してしまうことばかり。いまだプロでの勝利は挙げられずにいる。

 ここまでの自転車人生は苦労が多かった。ひどい腰痛で自転車に跨ることすらできなかった時期や、2013年には当時所属していたソジャサンの解散でなかなか移籍先を見つけられず引退を覚悟したこともあった。昨年はクラシックシーズンを目前に気管支炎になり、レースメンバーから外れる悔しさも味わった。

 そんな経験があるからこそ、仲間を大切にする。2015年と2016年にロード世界選手権のフランス代表入りを果たした際には、ロードキャプテンに任命され、チームをまとめる役割を担った。回復途上のコンディションを押して出場した昨年のパリ~ルーベでは、トップ20を目標にしていたユーゴ・オフステテール(フランス、現イスラエル・スタートアップネイション)のために、決死のアシスト。当初は自身もトップ20を狙っていたが、「こんな事態は“北の地獄”ではよくあること」と、自らの成績を捨ててエースに好成績を託したのだった。

 実は昨年まで、ナセル・ブアニ(フランス、現アルケア・サムシック)のお目付け役だった彼だが、ブアニの移籍にともなってその役割は変わることになる。チームの精神的支柱として、これからは何が求められるだろうか。1つはっきりしているのは、昨年不本意な形で走らざるを得なかった北のクラシックでしっかりと働くこと。走りで後輩たちのお手本となるのが、職人である彼らしさが一番現れるのではないだろうか。

チーム最年長のシリル・ルモワンヌ。精神的支柱として伸び盛りの選手たちの背中を押す =2019年4月10日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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