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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<47>心奪われたエメラルドグリーンの湖と偶然通った御伽の国 世界遺産で決める自転車旅のルート

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 自転車旅でルートを決めたり、観光の目安になるのが世界遺産だ。ペルーのマチュピチュ遺跡やアメリカのグランドキャニオン国立公園など、絶対に行きたい世界遺産を目指してルートを決める。多くの場合はルート上あったり、近くにあれば寄って行くという感覚だった。

偶然通りかかったラストケ村。御伽の国の様な雰囲気に釘付けになった Photo: Gaku HIRUMA

サイクリストにおすすめの世界遺産

 僕の主観だが、世界遺産と言っても色々なタイプがある。一目見て感動するようなものがあれば、僕のように歴史的価値が分からない素人には、若干理解するのが難しいものもあった。

 特にアメリカ大陸での走行を終えてヨーロッパに渡ると世界遺産は劇的に増える。街並みや教会が世界遺産になっていることが本当に多いのだ。もちろん中世の街並みをそのまま残すヨーロッパは、まさに世界遺産にふさわしい地域だと思うが、正直数を見すぎるとお腹いっぱいになってしまう。

 人によって興味はそれぞれなので、好きな世界遺産の中から絞ってルートを決めるのがいいと思う。サイクリストにおすすめなのは断然国立公園などの世界自然遺産だ。

 アメリカのイエローストーン国立公園やカナディアンロッキー山脈自然公園群の様に、自転車で走れるところもあれば、入口に自転車を置いてトレッキングすることもある。またイタリアのドロミテ街道のように、道そのものが世界遺産になっているケースもあった。

心を奪われたプリトビィッツェ湖群国立公園

 僕が旅してきた中でも、クロアチアにあるプリトビィッツェ湖群国立公園は行ってよかった場所の一つだ。ここを知ったのはクロアチアに入る直前だった。

 秋のクロアチアの内陸部はどんよりとした天気で、既に冬の気配が近づいていていた。当時は必死に冬から逃げるように走っていたので、正直観光している時間は無かった。

 それでもいつものように、走行ルートの近くに世界遺産や観光地は無いかと調べていたら、流れ落ちる沢山の滝とエメラルドグリーンの美しい湖の写真に心を奪われた。その写真が世界遺産のプリトビィッツェ湖群国立公園で、しかもルート上にあることを知って「これは何が何でも行きたい」と思ったのだ。

湖は段々畑のようになっていて、上から下へ優雅に水が流れ落ちる Photo: Gaku HIRUMA

 クロアチアは検査なしで国境を越えられるシェンゲン協定の加盟国ではないので、久しぶりにパスポートを出して入国した。ヨーロッパではこの協定のおかげで国境越えは楽だったけど、パスポートを出すと「国が変わった」という実感が湧いて好きだった。

黄色い絨毯が敷かれた滝の美術館

 不思議なもので国境を越えると人も雰囲気もガラリと変わる。人々が気さくになって車からの応援が増えたと同時に、犬に吠えられて追いかけられることも多くなった。

 プリトビィッツェでは公園内すべての滝を見るトレッキングコースが4~6時間かかる。国境から公園まで1日で行ける走行距離だが、2日目の午前中にプリトビィッツェに到着できるように調整した。

 公園内には落差何十メートル、水量が毎秒何トンという大迫力の滝は一本もないかわりに、緩やかな落差がついた滝がいくつもある。広い段々畑のような台地になっていて、上から下へと水が流れて湖になっている。流れる水の音が心地よく、紅葉した木々が湖面に映り、遊歩道には黄色い絨毯が敷かれていた。

プリトビィッツェ湖群国立公園は湖と滝の美術館の様だった Photo: Gaku HIRUMA

 多種多様な水の流れは、まさに滝の美術館と言った趣がある。東欧の晩秋、寒々しい曇り空の中で滝を鑑賞するように歩くのは本当に気持ちが良かった。プリトビィッツェは本当に素晴らしい世界遺産だけど、実はサイクリストにおすすめしたい場所がもう一つある。

自転車旅ならではの出会い

 それはクロアチアの国境からプリトビィッツェ湖群国立公園を結ぶ国道1号線の途中にある、Rastoke(ラストケ)という小さな村だ。ここは僕の持っていたガイドブックに載っていなかったし、観光地とも紹介されていなかったので、全く知らずに偶然通りがかった村だった。

 自転車で走っていた国道は、ラストケ村対岸の一段高いところに作られていた。少し上から見下ろすような形でラストケ村が見えた瞬間、その現実とは思えない可愛らしさに目が釘付けになった。

水の上を縫うように家や遊歩道が延びている Photo: Gaku HIRUMA

 ヨーロッパには物語の1ページに出てくるような町や村が沢山あるけど、ラストケ村は今までみたヨーロッパの街並みとは全く違っていた。山間の小川と湖、滝の間を縫うように家々が並んでおり、とても幻想的で可愛らしい雰囲気を作り出していた。また家や遊歩道が湖と滝の上にも作られていて、家の下から流れる落ちる滝があるなど、信じられないくらい御伽の国のようだった。

家の下にも滝が流れている Photo: Gaku HIRUMA

 有名な世界遺産も見応えがあるが、突然の出会いは自転車旅ならでは出来事だと思う。

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