ロードレースは「騎士道」東京五輪・自転車競技スポーツマネジャー片山右京氏に聞く 富士山麓巡るレースの魅力

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片山右京氏 =2018年11月撮影 Photo: Kyoko GOTO

 今年7、8月に開催される東京五輪。静岡はロードレースのゴール地点の富士スピードウェイ(小山町)や日本サイクルスポーツセンター(伊豆市)などが自転車競技の舞台となる。ただツール・ド・フランスなど世界三大レースが実施される欧州と違って、日本では自転車文化が醸成しきれていないのが現状だ。そこで五輪の自転車競技運営責任者「スポーツマネジャー」を務める元F1ドライバーの片山右京氏(56)に競技の魅力、見どころ、五輪への思いなどを熱く語ってもらった。(産経新聞・松本恵司)

 --自転車競技、五輪との関わりは

 「もともと山登りのトレーニングとして自転車に乗っていたんですよ。父親の影響で登山をやっていたので、車(F1など)を引退した後、その世界に戻った感じの流れでした。いつも言うんですが、自転車というのは子供たちが乗る最初の“車”ですよね。モビリティーとしての視点からもポテンシャルをすごく感じて自転車の虜(とりこ)になり、その中で出会った競技の選手たちと話しているときに応援してあげたくなった」

 「(平成30年就任の)全日本実業団自転車競技連盟の理事長をしている関係から、国内競技連盟の理事になりました。そこから(スポーツマネジャーの)話を頂いた。とにかく一生に1回の世界的なイベントである五輪が、しかも日本にやってきて東京だという、こんな夢のあることはない。自分も多くの人の応援を得て世界に挑戦する機会をいただけたので、今回、年齢的に応援する立場になったのでやらせていただくことになりました」

 --競技の魅力とは

 「ロードレースはチームスポーツで、抜け駆けをしない、正々堂々とした騎士道のスポーツなんですよ。すごくオーバーな言い方ですけど、僕は社会の縮図だと言っている。争って、ののしって、憎しみからは何も生まれないじゃないですか。ただ、コンペティション(競争)というのは大事で、最近は手をつないでゴールとかあるでしょ。それは間違っていると言っていて、負けて悔しいことを知って、そこから頑張ろうとなる。努力しようというのは向上心だから、競争は必要ですよって。ただ、そこを正しく教えて、切磋琢磨(せっさたくま)するために周囲と声を掛け合って励まし合うことこそ社会生活です。それを(ロードレースは)スポーツでやっているんですから、すごくないですか。素晴らしいスポーツなんだというところにほれ込んで、何とか結果を出したいというのが、僕が自転車に懸ける熱すぎる思いのゆえんですね」

 《自転車競技は開会式翌日の7月25日に男子ロードレースを皮切りに実施される。男子ロードは武蔵野の森公園(東京都調布市)をスタートし、東京、神奈川、山梨を通り、静岡の富士スピードウェイまでの約244kmで競われる。五輪史上初のロードレースとなり、上る高さの合計は4865mと厳しい山岳コース》

 --富士山麓を巡る山岳コースの見どころは

五輪の自転車競技運営責任者「スポーツマネジャー」を務める。昨年は実際のコースの一部を使ったレースを、テストイベントとして開催した =2019年7月撮影 Photo: Masahiro OSAWA

 「こんなコースないですよ。五輪ルールに1周10キロ以上の周回コースとあり、今までサーキットレースだったんですよ。(昨年7月の)テスト大会などで試走した選手が『ひどいな、これは』とか言いつつ、みんなニコニコしている。最終的に『チャレンジングだ』と言い、ツール・ド・フランスで何回も勝った選手や世界王者らが『本当に楽しみだ』と口をそろえる」

 「静岡、山梨、神奈川の県境の起伏の激しい峠道に入ると、尋常じゃないテクニックが要求される。完走するだけでも大変。厳しい上りと距離、暑さの中で真のチャンピオンは誰かというのを魅せるコースなんで、すごく楽しみです」

 --日本選手の完走率が心配ですね

 「残念だけど、日本人が世界との差を知る機会になる。平坦(へいたん)なコースで、実力がないのをごまかして最後のゴール前だけ駆けて、仮にうまくトップ10に入っても意味がない。人を育ててこなかったからだというのを世間が、自転車界が知るのも必要だと思っている。そこで(世間に与える影響力が大きい行動をする)インフルエンサーがメッセージを送り、次の世代を育てようという啓蒙(けいもう)になるし、これが出来上がったときに日本選手が先頭で入ってきて日の丸を揚げて、君が代を流してくれますよ」

 --富士スピードウェイといえば思い出の地ですね

 「高校生のとき、土砂降りの雨の中、母を連れて金網の外で『俺、レースやりたいんだ』って言ってサーキットをただ外から眺めていた日。初めてメーカーに自分の車をテストしてみろと言われた日。日本チャンピオンになった日。思い出はあり、富士スピードウェイに行くと、自転車のために来ているのに、あまりにも環境が変化しているから『あれ、何でここに来てるんだっけ』と理解不能に陥ることがあった。一生に一度の東京五輪にお世話になった人と関われて本当に幸せだなと感謝しています」

【プロフィール】片山右京
かたやま・うきょう 昭和38年5月29日生まれ、相模原市出身。東京・日大三高卒。昭和58年にレースデビュー。着実にカテゴリーを上げ、平成4年、日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦するなど、モータースポーツ界で活躍。現役引退後は登山でマナスル登頂などしたほか、自転車ではロードレース選手として参加。自身のチームを立ち上げ、平成30年から東京五輪自転車競技運営責任者「スポーツマネジャー」を務める。富士スピードウェイを「たぶん1億周した」と話す。

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