流行病、スペイン風邪を退けたピラティススキルアップにケガの予防、自転車トレーニングに効くエクササイズとは

by 角田峻啓/ Toshihiro KAKUTA
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 自転車は簡単に乗れる乗り物ですが、様々な筋肉を駆使してペダルを漕いでいます。しかし筋肉の使い方がよくなければ、パワーロスや故障といった問題に繋がります。今回はピラティススタジオB&Bトレーナーの角田峻啓さんが、パフォーマンスアップとケガの予防に効果的な自転車トレーニングとして、ピラティスを紹介。自宅で簡単にできて役立つエクササイズも合わせて解説します。

自宅で簡単にできる自転車トレーニングとしてピラティスを紹介します Photo: Toshihiro KAKUTA

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皆さん初めまして。 ピラティススタジオB&B仙台泉スタジオ・トレーナーの角田峻啓です。普段はピラティスを中心に、運動の個別・集団指導を担当しています。

ピラティススタジオB&B」で様々な層に向け、個別・集団指導を担当する角田峻啓さん  Photo: Toshihiro KAKUTA

 皆さんは自転車に乗る以外でトレーニングをしていますか? 「自転車で速くなるためには自転車に乗るだけで十分」「そもそも自転車以外にトレーニングって何があるの?」など、色々な意見や疑問が生まれてくると思います。そこで私がお勧めしたいのがピラティスです。今回はピラティスとは何か、そして私がなぜ、自転車のトレーニングとして勧めるのか簡単に紹介します。

そもそもピラティスとは

ピラティスは20世紀初頭、ドイツ人のジョセフ・H・ピラティス氏がコントロロジー(コントロール学)という名前で考案した運動メソッドです。

 第一次世界大戦中、敵国人としてマン島に拘留された同氏は、同じ生活を送る人々に運動をレクチャー。その後、ベッドなどを用いた器具運動としても発展を遂げました。拘留生活中の1918年には、世界中で約2500万人以上もの死者を出したスペイン風邪(インフルエンザ)が大流行。しかし同氏の指導を受けていた人は誰も死ななかったという逸話が残っています。

 そうした逸話や画期的なプログラムが評価され、アメリカのダンサーを中心に受け入れられるようになり、現在では子供から高齢者まで年齢を問わず、さらにはケガ人やプロのアスリートなど、様々な人がピラティスを取り入れています。

 ピラティスを行うと理想的な姿勢や動きが学べ、それを体に記憶する(クセ付けする)と慢性的な痛みの改善やケガの予防、スポーツ競技ではパフォーマンスアップが期待できます。

運動方法はマットのエクササイズと専用のマシンで行うものがありますが、日本ではマットピラティスが主流。最近では徐々にマシンピラティスも広まりを見せています。

ピラティスは動きの多いエクササイズなので、通常のストレッチマットよりも厚みがあります Photo: Toshihiro KAKUTA
ピラティス器具の「リフォーマー」。 エクササイズによっては「タワー」という機材にも変更できます Photo: Toshihiro KAKUTA

 マットピラティスは自宅で実践できて、日常的に取り入れることができます。一方でマシンピラティスは、専用の施設でしかできません。しかし使用する器具が体をサポートしてくれるので、動く感覚と効果が分かりやすいです。ピラティスをトレーニングに取り入れてみようと考えている方にはまず、マシンピラティスを体験することをお勧めします。

自転車トレーニングとしてのメリット

 自転車のトレーニングにピラティスを取り入れるメリットは、 コンディショニング(調整)ツールとして使えること。日常的にまた自転車に乗る前にピラティスを行って、体の調子を整えて理想的な動きを覚えさせるのが前提条件ですが、その動きを自転車の上で再現できれば効率よく筋肉を使えます。そうなれば自然とパフォーマンスの向上に繋がります。

 また、ケガの予防にも効果的です。自転車(ロードレース)はペダリング動作を繰り返すスポーツ。何回も同じ動きを繰り返す分、身体の負担は大きく、正しい動作をしなければやがてケガに繋がります。ですので、ペダリング動作の精度の向上は必須項目といえるでしょう。ピラティスはペダリング動作の異常を見つけ、それを改善するツールとなります。

ピラティスはパフォーマンス向上とケガの予防に効果的 Photo: Shusaku MATSUO

 今回はサイクリストに取り入れてほしいエクササイズ(トレーニング)を簡単に3つ紹介します。雨の日で自転車に乗れない時や、自転車に乗る前にぜひ取り組んでください。

パワーを無駄なく伝達

スイミングは体幹部(腹横筋、腹斜筋群)を鍛えることで体がブレなくなり、パワーを無駄なくペダルに伝えられるようになります。

細かいポジションはありますが、スイミングは四つん這いが基本姿勢 Photo: Toshihiro KAKUTA

 また、前鋸筋など肩甲骨周りの筋肉を鍛えることで肩甲帯が安定し、ハンドル荷重になり過ぎず、落車のリスクを減らすことも期待できます。

スイミング

① 肩の真下に手、股関節の真下に膝を置き、つま先を立て、横から見た時に頭からお尻まで一直線になるように四つ這いをとります。反張肘(肘が反り過ぎない)にならないように気を付けます。

② 体幹部を安定させたまま、対角線上の手と脚を伸ばしていきます。肩甲骨を寄せたり、頭が落ちないように意識します。

③ その姿勢を保ったまま、2~3回呼吸を繰り返します。

④ 四つ這い姿勢に戻し、反対も行います。

バランスに気を付けながら対角線上の手と脚を伸ばす Photo: Toshihiro KAKUTA
2、3回呼吸して反対側も同様に Photo: Toshihiro KAKUTA

 ポイントは肩甲骨を寄せないようにすること。背中は一直線に保ちましょう。

腰に負荷のないペダリングの実現

 レッグサークルズは、ハムストリングスのストレッチ、腸腰筋などの股関節屈曲筋群を鍛えることで体幹の屈曲(背骨を丸める動作)を抑えられます。腰に負担をかけることなくペダリングができるほか、体幹を安定させたまま行うとスイミング(修正)と同じ効果も期待できます。

開始の姿勢は仰向けで足を折り曲げた状態 Photo: Toshihiro KAKUTA

レッグサークルズ

① 足・膝の幅を拳一つ分で体育座りの形をとったら、仰向けに寝ます。

② 右脚の股関節・膝を90°に曲げます。体幹部を安定させたまま右脚を伸ばし、太ももの付け根から外に捻ります(股関節外旋)。

③ 腰を反らし過ぎないよう注意しながら、伸ばした脚で円を描くように3~5回動かします。この時、股関節外旋はキープします。

④ 反対回しも同じ回数行い、最後にその脚を胸へと抱え込み元の位置に戻します。

⑤ 反対の脚も同じように行います。

足を曲げた状態で、太ももの付け根から外旋 Photo: Toshihiro KAKUTA
腰を反らし過ぎないように注意。反対側も同様に行います Photo: Toshihiro KAKUTA

 ポイントは上半身がブレないように小さい円から描き始め、少しずつ大きくしていきましょう 。

腰の障害予防とパワー向上に効果的

 アーティキュレーティングショルダーブリッジは、脊柱の動きを意識することで脊柱起立筋群などのストレッチが行えます。

レッグサークルズと同じ姿勢 Photo: Toshihiro KAKUTA

 これは自転車に乗っている際、脊柱への過度な負担が軽減し、腰の障害の予防が期待できます。また、臀筋群を強化することでパワーの向上が期待できます。

アーティキュレーティングショルダーブリッジ

① 足・膝の幅を拳一つ分で体育座りの形をとったら、仰向けに寝ます。

② ズボンのチャックを自分に見せるように骨盤を傾け、お尻の方から背骨を一つずつ剥がしていき、お尻から肩甲骨まで一直線になるようにします。この時に膝の幅が拳一つ分を維持します。

③ 軽く頷いた状態をキープしながら、頭の方から背骨を一つずつ下ろしていきます。

頭から背骨をゆっくりと下ろします Photo: Toshihiro KAKUTA

ポイントはお尻を上げていく時に膝が開かないように気をつけること。下ろす時はあごが上がらないようにしましょう。

成長のヒントが見えてくる

 スイミングとレッグサークルズは、本来のエクササイズの難易度を下げたものになります。より難しいものにチャレンジしたいという方は、動画サイトなどでやり方を調べてチャレンジしてみて下さいね。

今回のまとめ

・ピラティスは理想的な姿勢や動きが学べ、痛みの改善・ケガの予防・競技ではパフォーマンスアップが期待できる。

・ピラティスにはマットとマシンのエクササイズがあり、初心者にはマシンピラティスがおすすめ。

・自転車のトレーニングとしてコンディショニング(調整)ツールとして利用できる。

 さて簡単にですが、ピラティスの概要とエクササイズを紹介させていただきました。読者の方々が自転車に乗る際、体に負担を掛けずに効率の良い筋肉の使い方ができているかなど、考える機会になれば幸いです。もしかすると必要なのに使えていない筋肉があるかもしれません。

 また競技成績が伸びず、自身の成長が頭打ちと感じている人にとっては、ピラティスを実践することで見えていない成長のヒントが見えてくるはずです。

角田峻啓(かくた・としひろ)

PHIピラティスインストラクター、健康運動指導士。日本体育大学卒で体育学(主に運動生理学)を専攻。在学中にロードバイクで大きな事故にあい、体の後遺症に悩まされる。後遺症のリハビリ中にピラティスに出会い、後遺症が改善したことから、ピラティスインストラクターに転身。現在、「ピラティススタジオB&B」で様々な層に向け、個別・集団指導を行う。自転車競技では競輪選手のパーソナルトレーニングも担当。性別・年齢・運動歴を問わない個々に合わせた指導に定評がある。

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