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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<323>ツール2020出場全22チームが決定 ワイルドカード3枠はすべてフランス勢が占める

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ツール・ド・フランスを主催するフランスのスポーツ・メディアグループ「アモリ・スポル・オルガニザシオン」(A.S.O.)が1月7日、今年6月から7月にかけて開催される同大会の推薦出場チーム(ワイルドカード)を発表した。3つ設けられていた推薦枠には、トタル・ディレクトエネルジー、アルケア・サムシック、そして初出場となるB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトが選出。これにより、出場する全22チームが出そろった。そこで本コーナーでは、3チームの選出の背景と活躍が期待される選手を紹介。一方で落選となったチームにも焦点を当てて、それぞれのツールへの思いを覗いていく。

チームとして7年連続のツール・ド・フランス出場を決めたアルケア・サクシック。フランスチャンピオンのワレン・バルギル(中央)、スプリンターのナセル・ブアニ(左)、グランツールレーサーのナイロ・キンタナ(右)と、充実した戦力を整える Photo: Thomas Maheux

“三度目の正直”成就させたB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト

 UCIワールドツアーのレースでは、自動選出となる同ワールドチームに加え、セカンドカテゴリーにあたるUCIプロチーム(UCIプロコンチネンタルチームから2020年に改称)から数チームがワイルドカード選出される。このシステムは基本、主催者による推薦で決まるもので、レース開催国に属するチームや、有力選手が所属している、活躍が期待される、など選ばれる要素はさまざまだ。

ツール・ド・フランスなどのグランツールは規定により出場チームが22となっている =ツール・ド・フランス2019第1ステージ、2019年7月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ツールにおいては、出場チームが自動選出とワイルドカードとを合わせて22と定められており、推薦出場を目指すチームにとっては狭き門に入るために陣容を整えて3週間を戦えるだけの態勢を作る努力をする。

 そして2020年。そうした取り組みの結果からツール出場を射止めたのは、トタル・ディレクトエネルジー、アルケア・サムシック、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトの3チームとなった。

 まず前提として、今シーズンからUCIワールドチームが19チーム(昨年までは18チーム)となったことにともない、ワイルドカードは3枠となった。また、トタル・ディレクトエネルジーは昨シーズン、UCIプロコンチネンタルチーム勢では最上位のワールドランキング16位をおさめ、UCI規定により今季のワールドツアーレースすべての出場権を確保(レースごとに出場権返上は可能)。つまりは、ワイルドカードは実質2枠だった。

アルケア・サムシックに加入したナイロ・キンタナ。チーム力アップに期待が膨らむ =ツール・ド・フランス2019第18ステージ、2019年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中で、7年連続出場といまや常連チームの仲間入りを果たしているアルケア・サムシックは、“強豪”への舵を切ろうとしている段階だ。昨年のツールではワレン・バルギル(フランス)が個人総合10位と上々の成績を残したが、今季からグランツールレーサーのナイロ・キンタナ(コロンビア)、スプリンターのナセル・ブアニ(フランス)らビッグネームが加入。キンタナのアシストとしてウィネル・アナコナ(コロンビア)やディエゴ・ローザ(イタリア)らエース級の力を持った選手も合流し、劇的な戦力アップに成功。十分にツールを戦うにふさわしいチームであるといえるだろう。

エーススプリンターのブライアン・コカール擁するB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトが初のツール出場を決めた =ドワーズ・ドール・フラーンデレン2019、2019年4月3日 Photo: Yuzuru SUNADA

 対照的に、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトはチーム創設3年目、“三度目の正直”でのツール選出をかなえた。全盛期は「逃げ屋」として鳴らし、2015年に現役を退いたジェローム・ピノー氏がゼネラルマネージャーを務め、彼を慕う選手たちが次々と合流しチームを構築。エーススプリンターにブライアン・コカール、山岳リーダーにはピエール・ロラン(ともにフランス)、そのほかにもトップチームを経験した実力派ライダーがそろう。チームとしては活動初年度からツール出場を目指して動いてきただけに、初出場の喜びとともに、「ようやく」との思いを抱いている関係者も少なからずいても不思議ではない。

 そして、昨年の段階でツール出場内定を勝ち取っていたトタル・ディレクトエネルジーは、ステージ優勝経験のあるリリアン・カルメジャーヌ(フランス)や、エーススプリンターのニッコロ・ボニファツィオ(イタリア)、石畳スペシャリストでもあるニキ・テルプストラ(オランダ)といった力のある選手が今年も所属。チームとしては、ツール同様に出場権を得ていたジロ・デ・イタリアの参戦を取りやめ、ひとまずグランツールはお膝元であるフランスでの3週間に集中することを選択。本番ではステージ勝利が現実的な目標となりそうだ。

昨年のUCIワールドランキングで、第2カテゴリーチームとしては最上位の16位としたトタル・ディレクトエネルジー。ツールへの自動出場権を確保。チームにはニキ・テルプストラら実力者が揃っている =ツール・ド・フランス2019第1ステージ、2019年7月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

プリュドム氏「決定は自然なもの」

 これにより、ワイルドカードで選出されたチームはいずれもフランス勢で固まった。このプロセスについて、レースディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏は「あくまでも自然な選択であった」と述べている。

ツール2020年大会のワイルドカード選出について語った大会のレースディレクター、クリスティアン・プリュドム氏。「決定は自然なもの」と述べた =ツール・ド・フランス2019第20ステージ、2019年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 先ごろ、フランス紙ウェスト・フランスのインタビューに答えたプリュドム氏は、実質2つだった枠を3チームが争っていたことを明かした。そうした中で、アルケア・サムシックは「疑いようはなかった」としてバルギルやキンタナの存在が大きかったことを認めた。さらにB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトについては、「(チーム発足から)3シーズン目こそチャンスを与えたかった」とチームとしての成熟度を挙げるとともに、山岳比重の高いルート構成にロランやアルテュール・ヴィショ、シリル・ゴティエ(いずれもフランス)といった、過去にツール出場経験のある選手たちが対応できるであろうことについても触れた。これらの要素によって、ワイルドカードの選出は「最終的に決定は自然な成り行きだった」とした。

昨年まで3大会連続でツール出場していたサーカス・ワンティ・ゴベール(昨年までワンティ・グループゴベール)。チームとして落選を受け入れる声明を出した =ツール・ド・フランス2019第21ステージ、2019年7月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、落選となったのがサーカス・ワンティ・ゴベール。昨年まではワンティ・グループゴベールとして活動し、3大会連続でツール出場を果たしていた。今年選ばれなかった理由としてプリュドム氏は、「ギヨーム・マルタン(フランス)がチームを離れたことと、ツール開幕地がベルギーではないこと。この2つの事実が最重要だった」と説明。昨年個人総合12位だったマルタンは今年コフィディス ソルシオンクレディへ移籍。さらには、ベルギー開幕だった昨年とは違い、今回は全日程フランス国内をめぐるルートであることが大きな要因となったことを明かしている。

 この決定を受けてサーカス・ワンティ・ゴベールは声明を発表。チームマネージャーのジャン=フランソワ・ブーラール氏は「プリュドム氏にとって難しい決断であったであろうし、それを聞く私たちはさらに難しいことであったが、それを受け入れようと思う」とコメント。同時に“敗因”についても分析し、昨年のワールドランキングにおけるトタル・ディレクトエネルジーとの64ポイント差がどれほどの意味を成しているかを痛感しているという。2021年のツール復帰を目指すと明言し、今シーズンはワールドランキングでの上位進出を果たすべく「戦術的に」レースをし、高いレベルで戦えるチームづくりをしていくと誓っている。

ツール・ド・フランス2020出場チーム

 いよいよ、ツール2020に出場する全22チームが出そろった。今年は東京五輪が開催される関係から、大会は例年より1週間早く開幕。6月27日にフランス南部のニースで開幕し、7月19日にパリ・シャンゼリゼ通りでフィナーレを迎えることとなっている。

ツール・ド・フランス2020出場チーム

●UCIワールドチーム
アージェードゥーゼールラモンディアール
アスタナ プロチーム
ボーラ・ハンスグローエ
CCCチーム
コフィディス ソルシオンクレディ
ドゥクーニンク・クイックステップ
EFエデュケーションファースト
グルパマ・エフデジ
イスラエル・スタートアップネイション
ロット・スーダル
ミッチェルトン・スコット
モビスター チーム
NTTプロサイクリング
バーレーン・マクラーレン
チーム イネオス
ユンボ・ヴィスマ
チーム サンウェブ
トレック・セガフレード
UAE・チームエミレーツ

●UCIプロチーム
B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト
アルケア・サムシック
トタル・ディレクトエネルジー

今週の爆走ライダー−アルテュール・ヴィショ(フランス、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 ついにツール出場を決めたB&Bホテルズ・ヴィタルコンセプト。経験豊富な選手たちを集めてチーム強化を進め、満を持してのビッグイベント参戦へ。その戦力は、UCIワールドチーム勢にも引けを取らない。

2016年にはフランスチャンピオンに輝いたほか、ツール・ド・フランス第11ステージでは敢闘賞を獲得。アルテュール・ヴィショは現在、B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトで新たなチャンスをうかがっている =2016年7月13日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チーム躍進の切り札として昨シーズン加入したアルテュール・ヴィショは、2013年と2016年にフランスチャンピオンになるなど、同国を代表するライダーの1人。そんな選手が加入したのだから、自然と彼個人にも、そしてチームにも期待は膨らんだ。

 しかし、ふたを開けてみるとプロキャリア11年目は最悪のシーズンに終わった。春に患ったウイルス感染の影響で鳴かず飛ばず。チームに招き入れたピノー氏も「彼は4月の時点でシーズンが終わっていた」と頭を抱えた。

 ただ、そんなことがあっても彼への信頼が揺るがないのは、やはり過去の実績があるからだ。今シーズンについて問われたピノー氏は、「彼についてはまったく心配していない」といい、チームのツール選出前には「彼はツールに出場するべき選手」とも語った。

 だからこそ、今年はその期待と信頼に報いる働きをしなければならない。体調不良の間は「1日1日生活するだけで精いっぱいだった」というが、気持ちだけはすでに前を向いている。体については「走ってみないと何とも言えない」というが、「バイクについても不満はないし、あとは自分を信じて走るだけ」と語る。とにかく、ツールが控える今年、チームの浮沈は彼次第の部分もあるといえるだろう。

 今シーズン前半はフランス国内のレースを中心に転戦する予定とのこと。まずは体調の回復をアピールして、本来の実力的にはメンバー入りできるであろうツールに向けて準備を進めていきたい。

2019年シーズンはウイルス感染の影響もあり結果を残すことができなかった。それでもチーム内での信頼は揺るがない。2020年シーズンは復活をアピールしたい Photo: B&B Hotels - Vital Concept
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2020 ロードレース 週刊サイクルワールド

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