最低限の荷物で旅を最大限に楽しむ「頑張らない自転車旅」の荷造り術 使えるものは“クロネコ”でも使う

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 「自転車旅」というと、どんなスタイルを思い浮かべますか? 頑丈なクロモリフレームのサイドにパニアバックを搭載した定番スタイルでしょうか? それとも、グラベルバイクに高容量のフロントバッグやサドルバッグを搭載した最近話題のバイクパッキングスタイルでしょうか。いえいえ、もっと頑張らずに自転車旅を楽しむ方法があるんです。Cyclist編集部の自転車放浪者、後藤恭子が年末年始にかけて東京から伊勢神宮まで走った3泊4日の自転車旅を例に、“頑張らない自転車旅”の荷造り術をご紹介します。

この装備でも3泊4日の自転車旅ができる‟裏技”とは? Photo: Kyoko GOTO

重い荷物は持ちたくないけど自走旅がしたい

 自転車旅といってもさまざまなスタイルがあります。前述した荷物満載型のスタイルは、テントや寝袋などを積載したキャンプツーリングを目的としたもの。この旅の魅力は、寝食を含めた全行程を自力で行う完全な自由度にあると思います。私もいつかはやってみたいと指をくわえてグラベルバイクを眺めていますが、先立つものがなければそんなタフさもありません。しかし、愛車で全国を旅したいという気持ちだけは、ただただ強くもっています。

 そんな私が思いついたのが、「宿」を使いながら自走で目的地まで走る「頑張らない自転車旅」でした。手持ちの収納バッグで可能な荷物を積載し、自分の脚力で行ける範囲で距離を重ねながら目的地を目指すという方法です。

 持ってる収納バッグといっても、あるのは普段から使ってる容量高めのサドルバッグとドラム型のフロントバッグのみ。このスペースに収めるには…。そんな試行錯誤を繰り返して突き詰めていった結果、非常に身軽な身支度で仕上げられるようになりました。その荷造り術が意外にも周囲から「おもしろい」と好評を得ることになったのです。

「余剰衣類」を荷物にしない

 今回企画した旅は、東京の自宅からスタートし、2020年元旦を伊勢神宮で迎えるという名付けて「ツール・ド・お伊勢参り」。通算421kmの行程を1日あたりの走行可能距離で割り、12月29日から出発し3泊4日で伊勢入りする計画を立てました。3日目の夜には伊勢から至近の鳥羽市に到着していたので、ツールとしては実質2泊3日の行程。初詣後に賢島まで脚を伸ばした行程を含めると3泊4日になります。

 自転車移動を快適にするには、とにかく荷物を軽量化すること。そのモットーに基づいて荷造りした結果、運搬する荷物はいつも使っている少し大きめのサドルバッグとトレラン用の10リットルのザック、そしてツール缶のみとなりました。

通勤に使っているトレラン用のザックといつも普段使っているサドルバッグに入るものだけをもつ。トレラン用のザックはショルダーストラップがベスト状になっていて大きめのポケットがついていたり、容量以上に収納力を感じます Photo: Kyoko GOTO

 こう説明すると大抵「少なっ!」と驚かれますが、行った先での「QOL」(生活の質)を考えると、これだけだと確かに少ない気もします。ずっとサドルの上であればレーパンスタイルを貫くのもありかもしれませんが、旅先によってはサイクルウェアでは気が引ける場所もありますよね。しかし、サイクルウェア以外の衣類は自転車に乗っている間はそれは単なるお荷物でしかない。

 そんな“余剰衣類”の運搬をどうするか…。辿り着いた答えは「宅配便」サービスの活用でした。実に単純な方法で、「なーんだ」と拍子抜けされたかも知れません(すでに取り入れている方もいらっしゃるかもしれませんね)。ただ、どうでしょう、こんな宅配便の活用法は意外と盲点だったのではないでしょうか? 自分がこの方法に気付いた(気付かされた)ときは、文字通り目から鱗が落ちたような気持ちでした。

海外で気付かされた日本の宅配サービスの有用性

 その方法に気付いたのは数年前にスイスを自転車で旅したときのことでした。観光立国であるスイスは自転車を含むアクティビティを使った旅のサポートが手厚く、観光客に荷物のない旅を楽しんでもらうために国内の鉄道を使った、「チッキ」という有料の荷物託送サービスを実施しています(手荷物最大25kgまでCHF12 ※荷物を送る目的地までの乗車券をもっていることが条件です)。

 主要駅を拠点に荷物を運んでくれるサービスで、午後7時までに持ち込んだ荷物は、受付日から数えて翌々日の午前9時以降に希望した駅でピックアップできるというシステムです。私が利用したのは通算10日間で3回ほど。その間、荷物が行方不明になることもありませんでした。

スイスの託送サービスで送った荷物。最大25kgまでなので、複数人分の荷物を90Lのザックにひとまとめにして送っていた ©jitenshazanmai

 「なんて素晴らしいサービス!日本にもこういう託送サービスがあるといいのに」というと、スイス人のスタッフから「日本にはもっと素晴らしい宅配便サービスがあるじゃないか」と返されました。はっ、としました。スキー等を決まっている旅先へ送るために使用したことはありましたが、転々と移動する「旅の荷物」を運搬するサービスとして考えたことはありませんでした。

 たしかに、荷物の紛失を経験したことはないし、追跡サービスも機能している。しかも指定した時間帯に宿泊先へピンポイントで届けてもらえる点では、スイスの託送サービスよりも早くて便利かも…。なるほど、海外で日本のサービスを誇りに思った瞬間でした。

効率的な宅配計画は旅の作戦

 それからというもの、数日に及ぶ自転車旅では宅配便を利用するようになりました。新しい衣類と汚れた衣類の交換をどの宿で行うかは、降水確率とにらめっこしたり、ある意味頭を使う「作戦」ですが、「不要なものは極力持たなくていい」という発想は、出かける気持ちもかなり気軽になります。

 「衣類は夜のうちに洗って毎日使えば良い」という考えもありますが、レーパンはパッド部分を中心に一晩では乾きづらいので、1着しかない持たない旅では絶対に洗濯はしない主義です(インナーのみを交換します)。乾燥に失敗してそのまま履いて走り始めると、濡れた生地に当たる皮膚が次第に柔らかくなり、ひどい場合擦れを起こすことがあるためです(いわゆる靴ずれと同じ原理です)。

 この宅配便を取り入れると、自転車移動は格段に快適に、そしてたどり着いた旅先での行動範囲が格段に広がります。とはいえ、宿泊する宿毎にいちいち荷物を送るのは手間ですし、回数やサイズが増すとその分費用も嵩みます。何を携行し、宅配便で何を送るか。また送るタイミングにも一工夫必要です。後編では、最低限の荷物とコストで最大限に旅を楽しむために、私がどんな装備で何を携行し、どんな託送計画を立てたのか等を具体的にご紹介したいと思います。

<後編に続く>

後藤恭子
後藤恭子(ごとう・きょうこ)

Cyclist編集部員。まとまった時間がとれるとすぐに自転車旅へと出かける“放浪”サイクリスト。国内だけでなくスイス横断旅を始め、欧州各国を自転車で旅した他、2018年にはノルウェーで開催されたアマチュア最高峰のステージレース「Haute Route」に日本人女性として初参加・完走を果たした。最近はトライアスロンにも挑戦中。

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