雑誌やWEBメディアにはない表現も約50の自転車系サークルが教えてくれた、コミケにサークル出展するそれぞれの理由

by 石川海璃 / Kairi ISHIKAWA
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 2019年12月28~31日に、東京・江東区有明にある日本最大の展示場・東京ビッグサイトで開催された「コミックマーケット97」(C97、開催回数を含めたコミケの略称。通称コミケ)を、Cyclist編集部員・石川海璃が取材した。開催期間中の4日間では、約4万2000サークルが出展するが、自転車系サークルの参加者がコミケに出展する理由とは一体何なのか。それぞれの出展者にその思いを聞いた。

世界各地を旅した染谷翔さん(写真左)。「自転世界録」は旅の様子や知見が綴られている Photo: Kairi ISHIKAWA

様々な表現を受け入れる場

 毎年お盆と年末に開催されるコミケは、世界最大規模の同人誌即売会として知られる。アマチュアだけではなく、プロの漫画家・イラストレーター、声優など様々な人が本を出すほか、企業による出展も盛んで様々なグッズも販売される。その中には自転車関連の出品も含まれていて、今やファッションアイテムの一つとなったサコッシュが、企業やサークルブースに並ぶことも珍しくない。

 出展する約4万2000サークルの大半はアニメやゲームなどのジャンルだが、その中で自転車系は意外にも約50サークルになる。

コミケ2日目の入場の様子。大勢の人が目当ての同人誌を買いに列をなす Photo: コミックマーケット準備会

 一般的に「コミケ」と聞くと何を思い浮かべるだろうか。アニメやゲームなどをイメージする人が多いかもしれないが、それは様々な表現を受け入れるコミケの側面にすぎない。

次回、C98のジャンルコードの一部。何日目に配置されるかに加え、ジャンルの大項目と小項目が記されている (コミケ公式サイトより引用)

 簡単にサークルの出展を例に見ていこう。コミケに出展するには様々な申込手続きを行うが、その中に販売する本やグッズに応じて選ぶ項目「ジャンルコード」がある。それを見ると、おおまかにどんな本やグッズがコミケ開催期間中の何日目に販売されるのかが分かる。その「ジャンルコード」を眺めるだけで、コミケがアニメやゲームのみを扱うイベントではないと理解できるはずだ。

 その中で自転車系の同人誌やグッズを出す場合は、「鉄道・旅行・メカミリ」に当てはまる。

旅の様子が面白くて

 出店する約4万2000サークルのうち、自転車系は約50と圧倒的少数派だ。自転車系サークルの人たちはなぜ同人誌を発行し、サークル参加をするのだろうか。

同人誌は各地域にフォーカス。走らないと分からない情報が満載だ Photo: Kairi ISHIKAWA

 染谷翔さんはこれまで旅してきた様子を同人誌「自転世界録」にした。世界各地を自転車で旅をした経験の持ち主で、現在も会社の休暇を利用して1~2週間ほどの旅に出かけるという。

 詳細な旅の様子は染谷さんのブログ(染谷翔自転車世界一周ワロスw)に記されているが、同人誌では走行記録やルート上の補給ポイントなど、よりピンポイントな旅のノウハウが綴られている。同人誌を出す理由はいたってシンプルで「旅の様子が面白くて形にしようと思ったから」だという。

ファンとの交流が目的

ヒトミンさんは2005年頃から創作活動を始めたフリーのイラストレーター。オリジナルの美少女キャラクターと自転車をテーマにしたイラスト本を発行している。「しばらくはテーマとなるものが見つからなかったのですが、ロードバイクに乗り出してから、それに関連する同人誌を作ろうと思ったのがきっかけです」と同人活動を始めた理由を明かしてくれた。

 現在は個人依頼を中心に仕事を受けながら同人誌製作にも注力。「ここ1、2年で海外レースにもハマりました」と話してくれたが、その影響は同人誌にも表れていて、海外プロチームのサイクルウェアを着用した美少女のイラストが、ロードバイクとともに描かれている。

ヒトミンさんの同人誌「Velo De Route Fille」。描き下ろしや依頼の受けた美少女×ロードバイクのイラストが収録されている Photo: Kairi ISHIKAWA
同人誌には様々なシチュエーションを描いたイラストが満載だ Photo: Kairi ISHIKAWA

 参加する理由は「ファンとの交流です。自分の走力がないので一緒に走れないからこそ」。取材中も、ヒトミンさんのファンが訪れては度々談笑する姿が印象的だった。

自分が感じたことを形に

 様々なサイクリストの自転車旅行のまとめ本を発行したJARO助さんは、「仕事で使うソフトの勉強を兼ねて同人活動を始めました」と話す。自分の周りの友人が同人誌製作をしていたことや、自身が冊子製作の仕事に携わっているのも関係し、本を作っては様々な同人イベントに参加するようになったそうだ。

 コミケへの参加は合わせて10回ほど。数年前に自転車漫画『弱虫ペダル』(渡辺航著・秋田書店発行)にハマったのを機に、これまでメインで活動していたジャンルに加えて自転車系の同人誌も手掛けるようになった。そしてスポーツサイクルも購入してしまうほど“自転車沼”にどっぷりと浸かり、生活も一変した。

JARO助さんは様々なサイクリストの寄稿文の自身のライド体験をまとめた。同人誌のほか、サコッシュなどのアイテムも手掛けている Photo: Kairi ISHIKAWA

 「『弱虫ペダル』と自転車にハマる以前は、他の同人誌即売会を始めとしたイベントで国内を飛び回ってはいましたが、観光地などをゆっくり回ることはありませんでした」と振り返る。しかし自転車に乗り始めてからは「自転車仲間とグループで旅行をするようになりました。 そのうち飽きて、自転車に乗らなくなるかもしれないと思っていましたが、今でもゆるく楽しんでいます 」と明かした。

 同人誌作りとサークル参加を続ける理由は「自分が感じたこと見たことを形にしたいという気持ち」だという。加えてその魅力を「創作活動は趣味としても続けられますし、その経験は仕事に生きます。あとは仕事だと表現しにくいことも、同人誌では自由に表現できるのがいいですね」とも話してくれた。

足を運ぶ価値あり

 出展する理由は三者三様だが、その答えは「全ての表現者を受け入れ、継続することを目的とした表現の可能性を広げるための『場』」というコミケの理念が見事に体現されているように感じた。

サークル参加者が思い思いに表現できる「場」だからこそ、書店に並ぶ雑誌やWEBメディアでは決して見る機会のない素晴らしい表現と有益な情報が沢山ある。日本では知られていない海外ブルベ参戦記やワールドチームに所属する選手全てをプレビューした選手名鑑、需要はあるけどメーカーが出さないパーツ・アイテムなど、数少ない自転車系サークルを回っただけでも中々の収穫だった。

 お盆と年末、中々スケジュール調整がむずかしい時期に開催されるコミケだが、未だ知らない新たな表現に出会うために、一度会場に足を運んでみてはいかがだろうか。

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