サイクルロードレースお正月コラム<5>ファンデルプールに勝てる選手はいるのか? 春のクラシック有力選手をチェック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 お正月コラムの最終回のテーマは、前回紹介した「春のクラシック」の有力選手紹介だ。大きく「北のクラシック」と「アルデンヌクラシック」に分けて、それぞれの有力選手の動向をまとめてみた。

サイクルロードレースファンが最も熱くなる季節、それは「春」だ Photo: Yuzuru SUNADA

北のクラシックは世代交代の年となるか

 昨年、センセーショナルな勝利を飾ったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)は、2020年シーズンの最大の目標を東京オリンピックMTBクロスカントリー金メダル獲得と公言しているが、2〜4月はロードレースに出場予定。所属チームはプロチーム(昨年までのプロコンチネンタルチーム)ながら、主要なレースに招待されている。出場予定のロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベでは、既に優勝候補の筆頭と目されており、ライバルたちの徹底マークにあうことが予想される。

シクロクロスの直近2シーズンでは53戦50勝と無類の強さを誇るマチュー・ファンデルプール Photo: Yuzuru SUNADA

 アルペシン・フェニックスは今オフに大補強をしたものの、ワールドチームに比べるとまだまだ戦力不足。ファンデルプールは、アシストによるサポートが得られにくく、普通に考えたら優勝は難しい。しかし昨年、アムステル・ゴールド・レースで見せたように、ファンデルプールならどんな状況でも独力で打開できる力の持ち主。圧倒的な個の力への、ワールドチームの対策にも注目だ。

 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)は、昨シーズンの北のクラシックで表彰台に上ることができなかった。今オフに「今のスタイルで40歳まで続けることはできない」「チームとの契約は2021年までだが、いつ引退するか決めてはいない」などと、数年以内に引退をほのめかすような発言をしているなか、2020年はクラシックよりも初出場となるジロ・デ・イタリアでポイント賞を獲得することが重要な目標であるようだ。

 まだまだ有力選手であることに間違いないが、ファンデルプールら他にマークすべき選手が増えてきたことで、相対的にサガンへのマークは薄れるだろう。そうなれば、サガン本来の自由で攻撃的な走りが生きる展開が見られるかもしれない。

モチベーション低下も囁かれているペテル・サガンだが、2019年の不振はアシスト陣に怪我人が続出した影響も大きい Photo: Yuzuru SUNADA
圧倒的なパワーではなく、いぶし銀な走りで展開を制すのを得意とするグレッグ・ファンアーヴェルマート Photo: Yuzuru SUNADA

 2017年に北のクラシックで4勝をあげたグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、CCCチーム)も有力候補の一人。ここ2年は勝負どころで孤立する場面が多く見られたが、新加入のマッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム)との連携がハマれば、とても戦いやすくなるはずだ。

 E3ビンクバンククラシックで2位に入った25歳のワウト・ファンアーアルト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)、パリ〜ルーベで2位に入った25歳のニルス・ポリッツ(ドイツ、イスラエル・スタートアップネーション)、ロンド・ファン・フラーンデレンに優勝した26歳のアルベルト・ベッティオール(イタリア、EFエデュケーションファースト)といった若手の台頭が著しい。

ツール期間中に落車して負った大怪我から復帰して、現在はシクロクロスに参戦中のワウト・ファンアーアルト Photo: Yuzuru SUNADA
プロ初勝利がロンド優勝だったアルベルト・ベッティオールは、真価の問われるシーズンとなるだろう Photo: Yuzuru SUNADA

 北のクラシックといえばドゥクーニンク・クイックステップ勢だが、フィリップ・ジルベール(ベルギー)がロット・スーダルに移籍した穴は決して小さくない。それでも、北のクラシック2勝のゼネク・スティバル(チェコ)を筆頭に、ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)、イヴ・ランパールト(ベルギー)ら中堅選手に加えて、26歳フロリアン・セネシャル(フランス)、24歳カスパー・アスグリーン(デンマーク)ら若手の実力者も揃っており、十分勝利を狙える布陣といえそうだ。

 24歳のファンデルプールを筆頭に、有力選手の多くが25歳前後であり、世代交代の波が着実に迫っているように見える。

アルデンヌクラシックは3強中心の戦いか

 昨年はストラーデ・ビアンケ、ミラノ〜サンレモ、フレーシュ・ワロンヌに勝利したジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)だが、2020年は「新たな挑戦」としてロンドに初出場する。とはいえ、より重要な目標はアルデンヌクラシックで勝利することだ。フレーシュ・ワロンヌ3連覇はもちろん、寸前で勝ちを逃したアムステル・ゴールド・レースと、まだ無名だった頃の2015年に2位になって世界を驚かせたリエージュ~バストーニュ~リエージュでの勝利は是が非でも欲しいところ。

 激坂でのパンチ力は世界トップレベルにあり、ツールで総合争いをしたほどの登坂力と、個人タイムトライアルで勝利できる独走力も持ち合わせており、アルデンヌクラシックに最も向いた脚質の持ち主だといえよう。

いまやサイクルロードレース界の顔ともいえる存在感のジュリアン・アラフィリップ Photo: BELGA / SUNADA
2019年はキャリア最高のシーズンとなったヤコブ・フルサン Photo: STIEHL / SUNADA

 そのアラフィリップと、たびたび優勝争いを繰り広げたのがヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナプロチーム)だった。ストラーデ・ビアンケ2位、フレーシュ・ワロンヌ2位と僅差で敗北していたが、リエージュ~バストーニュ~リエージュでは独走勝利。2019年のアルデンヌクラシック3戦すべてで表彰台に乗った唯一の選手として、今年もアラフィリップとの激闘を繰り広げることだろう。

 そして、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)もまだまだ優勝候補の筆頭といえる存在だ。リエージュ~バストーニュ~リエージュの前日に40歳の誕生日を迎えるが、昨年の走りを見ているとまだまだ第一線で戦える実力を維持しているだろう。リエージュ~バストーニュ~リエージュは歴代2位となる4勝、フレーシュ・ワロンヌは歴代最多の5勝をあげているが、アムステル・ゴールド・レースは2位が2回あるが勝利はまだない。

39歳にして挑戦をやめないアレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA
新たなアルデンヌスペシャリストとして若手有望株筆頭のマクシミリアン・シャフマン Photo: STIEHL / SUNADA

 マクシミリアン・シャフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)は、3戦とも5位以内でフィニッシュしており、新たなアルデンヌクラシックスペシャリストとして名を上げた。上りスプリントを非常に得意としており、リエージュ~バストーニュ~リエージュでは優勝候補の一人だといえそうだ。

 アムステル・ゴールド・レースで優勝した経験を持つミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、チーム イネオス)は、2019年のアルデンヌクラシックではいずれもトップ10入りを逃した。前年からの疲労が蓄積していたことによるコンディション不良を原因と捉えており、2020年はフレッシュな状態で春のクラシックと目標である東京オリンピックに照準を合わせる。

不振の2019年シーズンを送ったミハウ・クフィアトコフスキ Photo: Yuzuru SUNADA
ビッグレースでの2位や3位が多いマイケル・ウッズ Photo: Yuzuru SUNADA

 2018年にリエージュ~バストーニュ~リエージュ2位となったマイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)は、アルデンヌクラシック、ツールでの区間勝利、東京オリンピックを目標としており、そろそろ大きな勝利が欲しいところ。昨年のリエージュ~バストーニュ~リエージュで2位だったダヴィデ・フォルモロ(イタリア、UAE・チームエミレーツ)はイタリア王者として、アルデンヌクラシックに初のフル出場予定だ。

 そして、ファンデルプールはアムステル・ゴールド・レースとフレーシュ・ワロンヌに出場予定だ。アムステルは連覇を狙えるが、最大勾配26%のユイの壁に対応できるかどうかは未知数。それに東京オリンピックが最重要目標である以上、疲労を考慮してアルデンヌクラシックを欠場する可能性も考えられる。出場可否は4月になってみないとわからなそうだ。

 未知数なファンデルプールを除くと、アラフィリップ、フルサン、バルベルデの3強が突出しているように思う。とはいえ、強い選手が必ずしも勝つとは限らないのがサイクルロードレースの醍醐味。有力選手のマークをかいくぐって勝利をあげるニューヒーローの誕生も楽しみにしたい。

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