サイクルロードレースお正月コラム<4>「春」と「王様」と「女王」と「最古参」 春のクラシックの見どころを紹介

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 サイクルロードレースのシーズン序盤の山場は、3月から4月にかけて行われるミラノ〜サンレモ、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ルーベ、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュなどモニュメントを含む一連のワンデーレース、通称「春のクラシック」だ。最も知名度があるレースはツール・ド・フランスかもしれないが、サイクルロードレースで最も熱狂的に支持されているレースは、これら「春のクラシック」であろう。今回は「春のクラシック」に分類される代表的なレースを紹介していく。

「クラシックの王様」であるロンド・ファン・フラーンデレンを制したアルベルト・ベッティオールが勝利を手繰り寄せたオウデ・クワレモントでのアタックの瞬間 Photo: Yuzuru SUNADA

3月から4月にかけてモニュメントが集中

 2020年4月までにヨーロッパで開催されるワールドツアーのワンデーレースの一覧は次のとおりだ。

2月29日:オンループ・ヘット・ニュースブラッド(ベルギー)※
3月7日:ストラーデ・ビアンケ(イタリア)
3月21日:ミラノ〜サンレモ(イタリア)
3月25日:AG・ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌ(ベルギー)※
3月27日:E3ビンクバンククラシック(ベルギー)※
3月29日:ヘント〜ウェヴェルヘム(ベルギー)※
4月1日:ドワルス・ドール・フラーンデレン(ベルギー)※
4月5日:ロンド・ファン・フラーンデレン(ベルギー)※
4月12日:パリ〜ルーベ(フランス)※
4月19日:アムステル・ゴールド・レース(オランダ)★
4月22日:フレーシュ・ワロンヌ(ベルギー)★
4月26日:リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー)★

 このなかで、※印のついたレースはベルギー北部のフランドル地方と、フランス北部で開催されることから「北のクラシック」と呼ばれる。★印のついたレースは主にベルギー南部に広がるアルデンヌ地方で開催されることから「アルデンヌクラシック」と呼ぶ。アムステル・ゴールド・レースはオランダのレースであるが、アルデンヌ地方に隣接するリンブルフ州で行われ、開催日も近いことから「アルデンヌクラシック」に分類されている。

まさに「白い道(ストラーデ・ビアンケ)」である未舗装路を走行するプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 そこに、開催回数は100回をゆうに超え「モニュメント」(5大ワンデーレース)の一つとして君臨するミラノ〜サンレモと、開催回数は13回と少ないが60km近い未舗装路区間を走破するコースの面白さから近年急速に人気を集めているストラーデ・ビアンケも含めて「春のクラシック」と呼ぶことが多い。

 ワールドツアー以外にも多くのワンデーレースが開催されており、「クラシック」と呼ぶにふさわしい歴史と伝統を誇るレースもいくつかあるのが、今回は割愛させていただく。

春のクラシックといっても向いてる脚質は様々

前段で列挙したレースについて、それぞれ前年度優勝者や特徴を記していきたいと思う。

オンループ・ヘット・ニュースブラッド
・昨年優勝者:ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)

 ロンドでも使われる激坂や石畳区間を多く含むレースで、過去10年は5人以下の逃げ切りで勝負が決まっている。北のクラシックの開幕戦として、石畳を得意とするスペシャリストたちが多く参戦するレースだ。

ストラーデ・ビアンケ
・昨年優勝者:ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

起伏の多い未舗装路を走行するプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 レース名はイタリア語で「白い道」を意味する。その理由は60kmにもわたる未舗装路区間だ。選手たちは白い砂埃を巻き上げながら通過する。さらにトスカーナ地方特有の丘陵地帯を通るため、無数の細かいアップダウンが常に続くタフなコースとなっている。石畳や未舗装路を得意とする選手だけでなく、上りが厳しいためクライマータイプの選手も好成績を残すことができる。

ミラノ〜サンレモ
・昨年優勝者:ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

 「ラ・プリマヴェーラ」(春)と呼ばれ、300km近い長距離を走るレース。ラスト10km地点から始まるポッジオの上りは、距離3.7km・平均勾配3.7%と難易度は低めだが、300km近く走ってきた選手たちにとっては絶妙な厳しさを誇る。その後のテクニカルなダウンヒルでも差がつきやすく、様々な脚質の選手に勝機があるレースだ。過去10年で20人以上の大集団スプリントが4回、10人程度の小集団スプリントが3回、3人以下の逃げ切りが2回、独走による逃げ切りが1回と、展開が読みにくいレースだ。

10人ほどの集団スプリントを制したジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA
ポッジオの上りで仕掛けるジュリアン・アラフィリップ Photo: Pool / BETTINI / SUNADA

AG・ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌ
・昨年優勝者:ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)

 かつてはステージレースだったが、2018年からワンデーレース化。コースも大半が平坦路となっており、直近2年は集団スプリントに持ち込まれ、ピュアスプリンタータイプの選手が勝利している。

E3ビンクバンククラシック
・昨年優勝者:ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)

 ロンドのコースを50kmほど短くしたようなコースとなっている。過去10年、8人の勝者のうちロンドでも勝利した選手は4人であり、ロンド前哨戦として極めて重要なレースだ。

小集団スプリントを制して、春のクラシック2勝目を飾ったゼネク・スティバル Photo: Yuzuru SUNADA
大集団スプリントを制して勝利したアレクサンドル・クリストフ Photo: Yuzuru SUNADA

ヘント〜ウェヴェルヘム
・昨年優勝者:アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チームエミレーツ)

 ロンドと同じく250km程度の距離を走るが、激坂・石畳区間は少なめ。特にコース後半の難易度は低めになっており、過去10年で5回ほど集団スプリントに持ち込まれている。

ドワルス・ドール・フラーンデレン
・昨年優勝者:マチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)

 ロンドと同じコースも使用するが、距離が180km程度と短く、ロンドの4日前に行われるということもあって、出場を見送る選手も多い。石畳を得意とする選手たちによる、5人以下の少人数での逃げ切りが多い傾向にある。

ロンド・ファン・フラーンデレン
・昨年優勝者:アルベルト・ベッティオール(イタリア、EFエデュケーションファースト)

 「クラシックの王様」との呼び声も高く、ワンデークラシックを主戦場とする選手たちにとって、ロンドで勝つことはツールのマイヨジョーヌよりも価値が高いともいわれている。2019年のコースは距離267km、激坂区間17、石畳区間13と非常に厳しい。過去10年のうち、6回は独走逃げ切り、残り4回は5人以下の小集団スプリントとなっており、多くの選手は生き残って勝負に絡むことすらできない、屈指の難コースであるといえよう。

独走でロンド・ファン・フラーンデレンのフィニッシュ地点であるオウデナールデにやってきたアルベルト・ベッティオール Photo: Yuzuru SUNADA

パリ〜ルーベ
・昨年優勝者:フィリップ・ジルベール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)

 ロンドに対して「クラシックの女王」と呼ばれる。2019年は29カ所の石畳区間が登場。レース距離257kmのなかで、2割を超える計54.5kmが石畳区間となっている。パンクや落車は日常茶飯事で、パワーやテクニックだけでなくトラブルに巻き込まれない運も必要とされ、その厳しさから「北の地獄」と称されることも。過去10年のうち独走逃げ切りが4回、残り6回は6人以下による小集団スプリントだった。

パリ〜ルーベのラストは、ヴェロドロームを1周半走ってフィニッシュする Photo: Yuzuru SUNADA
パリ〜ルーベの勝者には、石畳の石を使ったトロフィーが贈呈される Photo: Yuzuru SUNADA

アムステル・ゴールド・レース
・昨年優勝者:マチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)

 コースマップにナンバリングされた上りは35区間設定され、「1000のカーブ」が登場するといわれるほど複雑なコースで、アップダウンとコーナーが絶えない265kmに及ぶ長距離レースだ。獲得標高は3600mに達するため、石畳系のレースでは出番のなかった軽量級のクライマーたちにも活躍のチャンスのあるレースとなっている。

常識外の走りで勝利したマチュー・ファンデルプール Photo: BELGA / SUNADA

フレーシュ・ワロンヌ
・昨年優勝者:ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)

 フレーシュ・ワロンヌ=ユイの壁と認識して良いレースだ。登坂距離1.3km、平均勾配9.6%ながら最大勾配26%に達する、まさに「壁」だ。過去10年はすべて激坂スペシャリストたちによるユイの壁の登坂勝負に持ち込まれており、最後に逃げ切り勝利が見られたのは2003年のことだ。

フレーシュ・ワロンヌの終盤は周回コースとなっており、ユイの壁は複数回登坂する Photo: Yuzuru SUNADA
ユイの壁勝負でヤコブ・フルサンと競り合いながらも勝利したジュリアン・アラフィリップ Photo: STIEHL / SUNADA

リエージュ~バストーニュ~リエージュ
・昨年優勝者:ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナプロチーム)

 「ラ・ドワイエンヌ」(最古参)と呼ばれ、現存するレースの中で最も歴史が古いレースだ。獲得標高は4500mを超えると言われ、クライマーや上りに強いパンチャーでないと勝負に絡むのは厳しい。過去10年のうち3回は独走逃げ切りが決まり、ほか7回は少人数によるスプリント勝負に持ち込まれている。そのため、単に上りに強いだけでは勝てず、登坂力に加えてスプリント力も要求されるレースだ。

リエージュ~バストーニュ~リエージュで独走逃げ切り勝利を飾ったヤコブ・フルサン Photo: STIEHL / SUNADA

◇        ◇

 このように、勝利している選手の脚質は様々であり、勝ちパターンもレースごとに違ってくる。特にモニュメントと呼ばれる4レースは、各チームとも本気度が高く、見応えのあるレースとなりやすい。

 もし、サイクルロードレースはツール・ド・フランスしか見たことがないという方がいらしたら、特にロンド・ファン・フラーンデレンだけでもいいので、「春のクラシック」を見ることをとてもおすすめしたい。きっと、グランツールとは違った世界観に魅せられることだろう。

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