サイクルロードレースお正月コラム<3>上りと下りしかないテクニカルな44.2kmに向いてるのは誰? 東京五輪個人TTの有力選手をチェック

  • 一覧

 7月25日に行われる東京オリンピック自転車男子ロードレースに続いて、7月29日には男子個人タイムトライアルが開催される。静岡県の富士スピードウェイを発着する周回コースを2周する、全長44.2kmのコースで争われる。今回は、個人タイムトライアルの有力選手の動向についてまとめてみた。なお、本種目に日本人選手は出場しない。

44.2kmで標高差862mに達するテクニカルなコースを制するのは誰か Photo: Yuzuru SUNADA

テクニカルでアップダウンの厳しいコース

 個人タイムトライアルは、富士スピードウェイのサーキットだけでなく、付近の公道もコースに組み込まれている。常に上っているか下っているかのみというほどアップダウンが激しく、44.2kmで獲得標高は約846mだ。パワーだけでなくテクニックと登坂力も必要となるだろう。

 また、2019年6月に全日本選手権個人タイムトライアルが富士スピードウェイで開催されたが、雨で濡れたサーキットがとても滑りやすく落車が多発した。全日本選手権で最も落車が多かったダウンヒル区間は、オリンピックでは周回方向が逆となるため、上り区間となるものの、サーキット内の下りやコーナーの滑りやすさには注意が必要だ。

 以上を踏まえて有力選手を紹介していく。参考記録として、アップダウンの多い個人タイムトライアルだったオーストリア・インスブルックとイギリス・ヨークシャーで行われた世界選手権の成績を掲載する。

デニスが金メダル最有力候補か

ローハン・デニス(オーストラリア、チーム イネオス)
 2018世界選:優勝、2019世界選:優勝

 実績はダントツナンバーワン。そして、アップダウンのある長い個人タイムトライアルを最も得意としている。過去2年はBMCバイクに乗って世界選を2連覇したが、イネオスに移籍したことでピナレロに乗ることになり、フィーリングにどう影響するかは気になるところ。昨オフに、数日間にわたって来日している様子がSNSに公開されていたので、もしかしたらコースを下見済みなのかもしれない。2020年はジロ・デ・イタリアに出場し、3つの個人タイムトライアルステージでの勝利を狙いつつ、オリンピックに備える予定。

世界選2連覇を果たしたローハン・デニス(右)と、エリート1年目にして2位となったレムコ・エヴェネプール(左) Photo: Yuzuru SUNADA

ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、NTTプロサイクリング)
 2018世界選:3位、2019世界選:11位

ヨーロッパ選手権2連覇、アワーレコード樹立などの実績を誇るヴィクトール・カンペナールツ Photo: Yuzuru SUNADA

 2019年4月にメキシコでアワーレコードに挑戦。55.089kmの新記録を樹立した。2017、2018年にヨーロッパタイムトライアル選手権を2連覇した実績を持つ。NTTに移籍し、デニスが世界選2連覇を果たしたBMCバイクに乗ることに。そして、NTTの記者会見に出席するために来日した際に、オリンピックコースも下見済みで、「最後の上りは本当に厳しい」と感想を述べた。2020年はジロとツールに出場してから、来日する予定だ。

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
 2018世界選:ジュニア優勝、2019世界選:2位

 ジュニア時代から独走力に定評があったものの、プロ1年目、19歳ながらヨーロッパのタイムトライアル王者に輝き、世界選手権個人タイムトライアルで2位という実績を打ち出した。上りにも強く、アップダウンの激しいコースにも十分対応できそうだ。2020年はオリンピックと世界選手権が主な目標であると公言しており、ツールには出ずにオリンピックに集中する。

トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)
 2018世界選:2位、2019世界選:未出場

2017年世界選で勝利したトム・デュムラン。写真は2018年ジロ・デ・イタリアにて Photo: Yuzuru SUNADA

 2017年の世界選手権個人タイムトライアルでアルカンシエルを獲得。2019年シーズンはジロでの負傷のため、シーズンの大半を棒に振ることになった。2020年はツールとオリンピックが目標と語る。ロードと同様に、ツール閉幕からの期間の短さと、ツール総合を狙う上でどれほど消耗するのかは未知数。万全なコンディションであれば、デニスに匹敵する優勝候補の筆頭になりうる選手だ。

プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
 2018世界選:未出場、2019世界選:12位

 2019年シーズンは個人タイムトライアルで4勝をあげた。2017年の世界選手権個人タイムトライアルでは、3.4kmのヒルクライム区間で最速タイムをマークして準優勝。長めの上りを含む東京オリンピックのコースはログリッチ向きではあるが、デュムランと同様にツールでのダメージがどの程度残るかどうかが一番の問題である。

タイムトライアル力を武器に、グランツール制覇を成し遂げたプリモシュ・ログリッチ Photo: Yuzuru SUNADA
23歳ながら世界選3位となったフィリッポ・ガンナ Photo: Yuzuru SUNADA

フィリッポ・ガンナ(イタリア、チーム イネオス)
 2018世界選:未出場、2019世界選:3位

 トラック競技の個人追抜(パシュート)を得意としており、同種目で3回世界王者に輝いてるほか、2019年11月には4分2秒647の世界新記録を樹立。同年はロードの個人タイムトライアルで3勝をあげ、世界選でも表彰台に上るなど、マルチな活躍を見せている。東京オリンピックには、個人パシュートの種目がないため、チームパシュート(団体追抜)と、ロード個人タイムトライアルの両方でのメダル獲得を狙っている。

最大2人の出場枠を巡る争いにも注目

 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)も個人タイムトライアル出場に意欲を見せている。2019年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの個人タイムトライアルステージでは、勾配の厳しい上り区間を含んでいたが、最速タイムでステージ優勝。さらに、ベルギー選手権でカンペナールツとエヴェネプールを撃破して王者に輝いた。ベルギー代表は個人タイムトライアル出場枠を2人確保しているため、3人で代表を争うこととなる。

ワールドツアー初勝利は個人タイムトライアルでの勝利だったワウト・ファンアールト Photo: STIEHL / SUNADA

 同じように代表を巡る争いが生まれているのはポーランドだ。ミハウ・クフィアトコフスキ(ポーランド、チーム イネオス)とマチェイ・ボドナル(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)が共にオリンピック出場に意欲を見せている。クフィアトコフスキは2018年の世界選で4位となり、ボドナルは2019年のポーランド選手権で優勝。さらにボドナルは2019年11月に来日して、富士スピードウェイを含むコースを下見済みだ。

アップダウンのある個人タイムトライアルを得意とするミハウ・クフィアトコフスキ。写真は2018年選手権にて Photo : Yuzuru SUNADA
ポーランド選手権を2連覇中のマチェイ・ボドナル。写真は2018年のビンクバンクツアーにて Photo: Yuzuru SUNADA

 ほかには、アルカンシエルを4回獲得した実績を誇るトニー・マルティン(ドイツ、ユンボ・ヴィスマ)、2019年世界選4位でニュージランドTT王者のパトリック・ベヴィン(ニュージーランド、CCCチーム)、同じく世界選5位で2015年にアワーレコードを樹立したアレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・スタートアップネーション)なども有力選手としてあげられる。

2011、12、13、16年に世界選TTを制したトニー・マルティン Photo: Yuzuru SUNADA
ニュージーランドTT王者でもあるパトリック・ベヴィン Photo: Yuzuru SUNADA

 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ゲラント・トーマス(イギリス、チーム イネオス)、ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、EFエデュケーションファースト)といったステージレーサータイプの選手にも向いているコースといえそうだが、これらの選手が出場するかどうかは不明だ。

◇         ◇

 ロードレースと同様に、アップダウンの多いコースレイアウトであるため、タイムトライアルスペシャリストだけでなく、グランツールで総合優勝を狙うようなオールランダータイプの選手にもメダル獲得のチャンスがありそうだ。

 なお、スタート・フィニッシュ地点となっている富士スピードウェイ内での観戦にはチケットが必要となるが、付近の公道区間での観戦はおそらく可能と思われる。トップ選手の本気の走りを生で見られる貴重な機会なので、平日開催ではあるものの、チケットを持っていない方は沿道での現地観戦もおすすめしたい。

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載