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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<321>ツール2020はどうなる? 山岳偏重の“クライマーズ・ツール”に有力選手が続々参戦表明

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 サイクルロードレースファンのみなさま、あけましておめでとうございます。「週刊サイクルワールド」は2020年で連載8年目。これからも引き続き、ロードレース界の最新情報をお届けしてまいります。どうぞごひいきに、よろしくお願いします。

 さて、2020年は東京五輪イヤー。五輪をレーススケジュールに組み込む関係で、例年以上に多くの選手がツールの出欠意向を示している。そこで、新年一発目の当コーナーでは少々気が早いが、「どうなる!? ツール2020」と称して、期待されるレース展開や、出場意思を表明している選手などを紹介。間もなくやってくるシーズンインから「ロード・トゥ・ツール」の趣きで観戦していけるよう、ご案内していこう。

毎年ドラマチックな展開が待ち受けるツール・ド・フランス。2020年大会に向け、選手・チームが早々と動き出しを見せている =ツール・ド・フランス2019第21ステージ、2019年7月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

5つの山岳地帯がツール史上最高のクライマー決戦を演出

 世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランスの2020年大会は、6月27日に南部のニースで開幕。2度の休息日を経て、7月19日にパリ・シャンゼリゼ通りでフィナーレを迎える。慣例としては7月上旬にスタートし、同下旬に閉幕を迎えるが、今年は東京五輪が開催される関係でおおよそ1週間ほど前倒しとなる。

ツール・ド・フランス2020 ルートマップ ©︎A S.O.

 そんなフランスでの3週間だが、いくつかの特筆すべきポイントが挙げられる。1つ目は、ルートが同国中部から南部に集中している点。一昨年は大会前半に北部を横断するように進み、昨年はベルギーで開幕したのち北部を通過して徐々に南下していったが、今年は北部をまったくと言ってよいほど走らない。唯一、大会最終日に恒例のパリ・シャンゼリゼフィニッシュが地理的に見て“北部”とカテゴライズできる程度。

 大会を主催する「アモリ・スポル・オルガニザシオン(A.S.O.)」は、アルプス・中央山塊・ピレネー・ジュラ・ヴォージュの5つの山岳地帯を凝縮するようにコースをセッティング。総計29カ所のカテゴリー山岳に加えて、5つの山頂フィニッシュを設け、これまでになく山岳偏重のルートを仕上げてみせた。

 ステージの詳細は昨年10月のコース発表時のレポート「ツール・ド・フランス2020のコースが発表 第1週から難関山岳ステージが相次ぐ」をご覧いただくとして、この中でも傑出した山頂フィニッシュステージとしては、期間中2回目の中央山塊入りとなる第13ステージのピュイ・マリーと、これまた2回目のアルプス期間中に上る第17ステージのメリベル・コル・デ・ラ・ロゼが挙げられる。

ツール・ド・フランス2020 第13ステージコースプロフィール ©︎A.S.O.

 第13ステージは、コースプロフィールを見る限り中央山塊特有の丘陵コースのようなイメージだが、ピュイ・マリー頂上へ向かう最後の上りが5.4kmで平均勾配8.1%。特に最後の約3kmは10%超えの急勾配が続き、個々で真の登坂力とパンチ力、さらには山岳での安定感が試されることになるだろう。第2週の最重要ステージとの見方は強い。また、ピュイ・マリー直前に立ちはだかるコル・ドゥ・ヌロンヌ(登坂距離3.8km、平均勾配9.1%)も、選手たちの消耗を誘う。

ツール・ド・フランス2020第17ステージ コル・ドゥ・ラ・ロゼプロフィール ©︎A.S.O.

 大会終盤のヤマ場となる第17ステージは、おなじみのマドレーヌ峠(登坂距離17.1km、平均勾配8.4%)を上った後、メリベルへと向かうロゼ峠に突入。この峠は21.5kmで平均勾配7.8%。上り始めからしばらくは7~8%の勾配が続くが、残り約5kmから10%超えの急勾配がフィニッシュまで続くことになる。このステージの全体ルート決定はもう少し先になりそうだが、どんな設定になってもマイヨジョーヌ候補たち、さらには有力チーム同士のにらみ合いや駆け引きが見ものとなる。標高2000m超えの1日は、2020年大会のクイーンステージに位置付けられる。

 レース展開次第では第17ステージで勝負を決めに動くクライマーが現れそうだが、忘れてはならないのが最終日前日、第20ステージに控える36.2km個人タイムトライアルである。

2年連続の登場となるラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ。2019年大会は第6ステージでグラベル区間を含んだ山頂フィニッシュだったが、2020年は個人タイムトライアルのフィニッシュ地となる =2019年7月11日 Photo: Pool / L'EQUIPE / SUNADA

 フィニッシュ地点のラ・プランシュ・デ・ベルフィーユは、昨年の大会でも第6ステージに登場し、激坂グラベルで好勝負が繰り広げられた。今年はタイムトライアルのフィニッシュ地となり、レース終盤の約5kmを上ることになる。登坂そのものはクライマー向きといえるが、そこに至るまでの約30kmをいかに進められるかがカギとなる。あまり遅れてしまうようだと、上りといえども取り戻すのは困難になる。やはり、山岳・TTともにそつなくこなせるオールラウンダー向きといえるか。そうなると、彼らに勝ちたいピュアクライマーとしては、その前のステージまでに攻撃を成功させておくことが求められる。

 ツール史上最高のクライマー決戦とも目される2020年大会。期間中は山、山、山…の毎日に熱狂することになるはずだ。

早くもツール目標を明かす有力選手たち 背景に東京五輪

 今年のツールに向けては、例年以上のビッグネームたちが出場または欠場の意向を示す流れができあがっている。その一因が、閉幕直後にやってくる東京五輪だ。多くの選手が五輪をベースとしたレーススケジュールを組むことで、同時にツールを走るか否かを判断している印象だ。

2019年大会でワンツーを占めたチーム イネオス勢、エガン・ベルナル(左)とゲラント・トーマスが再びタッグを組む可能性が高い =ツール・ド・フランス2019第20ステージ、2019年7月27日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中、前回覇者のエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)が今年のグランツールはツールに集中することを表明。昨年10月に、2020年の目標としてジロ・デ・イタリアとツールを一度は掲げたものの、同12月下旬にツール一本に絞っていくことを明かした。もちろん、ターゲットは個人総合2連覇となるだろう。

 イネオス勢は、2018年覇者のゲラント・トーマス(イギリス)もツールを目指す方向性がまとまったよう。昨年に続いて、ベルナルとトーマスがの共闘が見られそうだ。さらには、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ期間中の落車で大けがに見舞われたクリストファー・フルーム(イギリス)も、ツールでの完調を目指してリハビリ中。戦線に戻るとなれば、スーパーエース3人がそろい踏みとなる。

プロトントップクラスの戦力を誇るユンボ・ヴィスマ。プリモシュ・ログリッチ(左から2人目)、ステフェン・クライスヴァイク(右から2人目)、トム・デュムラン(右端)のトリプルエース体制で挑む Photo: Team Jumbo - Visma

 複数エースのそろい踏みといえば、ユンボ・ヴィスマも負けていない。こちらも12月にプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)、ステフェン・クライスヴァイク(オランダ)、さらに移籍加入のトム・デュムラン(オランダ)を含めたトリプルエース体制でツールを戦うことを発表。総合狙いをいずれかの選手に一本化するのではなく、レース展開に合わせて判断していく姿勢。状況によっては、イネオスを上回るチーム力となっても不思議ではない。

 それ以外にもクライマー中心の布陣を敷くとみられるのが、ヤコブ・フルサング(デンマーク)とミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)のアスタナ プロチーム、バウケ・モレマ(オランダ)とリッチー・ポート(オーストラリア)のトレック・セガフレード、ミケル・ランダ(スペイン)とワウト・プールス(オランダ)もバーレーン・マクラーレンなど。総合エースのマイヨジョーヌをかけたチーム戦も見どころとなる。

2019年シーズン、彗星の如くトップシーンへと躍り出たタデイ・ポガチャルはいよいよツール・ド・フランスにチャレンジする =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第20ステージ、2019年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 昨年個人総合4位と大躍進のエマヌエル・ブッフマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、ブエルタ・ア・エスパーニャ個人総合3位と驚異の21歳タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAE・チーム エミレーツ)もマイヨジョーヌ争いに名乗りを挙げる。

 地元フランス勢も大きな期待とともに戦いを進める。昨年のヒーロー、ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)はクライマーとは言えず、今回のコースは厳しいかもしれないが、観る者を驚かせる活躍に期待。大会終盤の負傷で涙のリタイアとなったティボー・ピノ(グルパマ・エフデジ)は王座に再挑戦。アージェードゥーゼール ラモンディアールは、絶対エースのロマン・バルデがジロに回ることとなり、ピエール・ラトゥールが代役を務める見込みだ。

 今年は9つの平坦ステージが設けられているが、その中にも大小あらゆる上りが組み込まれており、ピュアスプリンターには厳しいとの見方が強い。実際に、ツール回避を決めたスプリンターも多い。それでも、ポイント賞のマイヨヴェールの防衛がかかるペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)や、カレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)、マイケル・マシューズ(オーストラリア、チーム サンウェブ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス ソリュシオンクレディ)といった、登坂力も兼ね備えるスピードマンが意欲を示している。山岳重視のツールとて、スプリントのレベルが落ちる心配は無用だ。

ツール・ド・フランス2020出場の意向・意思を示している主な選手

アージェードゥーゼール ラモンディアール ピエール・ラトゥール、トニー・ガロパン(ともにフランス)
アスタナ プロチーム ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)、ヤコブ・フルサング(デンマーク)
ボーラ・ハンスグローエ ペテル・サガン(スロバキア)、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ)
CCCチーム グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー)
コフィディス ソリュシオンクレディ エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)、ギヨーム・マルタン(フランス)
ドゥクーニンク・クイックステップ ジュリアン・アラフィリップ(フランス)
EFエデュケーションファースト リゴベルト・ウラン(コロンビア)、マイケル・ウッズ(カナダ)
グルパマ・エフデジ ティボー・ピノ、ダヴィ・ゴデュ(ともにフランス)
イスラエル・スタートアップネイション ダニエル・マーティン(アイルランド)
ロット・スーダル カレブ・ユアン(オーストラリア)、ティム・ウェレンス(ベルギー)
モビスター チーム マルク・ソレル、アレハンドロ・バルベルデ(ともにスペイン)
バーレーン・マクラーレン ミケル・ランダ(スペイン)、ワウト・プールス(オランダ)
チーム イネオス エガン・ベルナル(コロンビア)、クリストファー・フルーム、ゲラント・トーマス(ともにイギリス)
ユンボ・ヴィスマ トム・デュムラン、ステフェン・クライスヴァイク(ともにオランダ)、プリモシュ・ログリッチ(スロベニア)
チーム サンウェブ マイケル・マシューズ(オーストラリア)
トレック・セガフレード バウケ・モレマ(オランダ)、リッチー・ポート(オーストラリア)
UAE・チーム エミレーツ フェルナンド・ガビリア(コロンビア)、タデイ・ポガチャル(スロベニア)

ミッチェルトン・スコット、NTTプロサイクリングは不明

日本人選手の出場は? 近日中に参加全チーム決定へ

 現状でツールへの意欲を見せている選手たちのすべてが、開幕地・ニースのスタートラインに立っているかというと、決してそうではない。レースプログラムの変更も大いにあり得るし、考えたくはないがけがや体調不良による欠場といった事由も発生する。

 とはいえ、前記した選手たちの多くが3週間の戦いを熱くさせてくれるはずだ。1月21日にはUCIワールドツアー初戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーが始まるが、そこから「ロード・トゥ・ツール」が続いていく。

3年ぶりのツール出場を目指す新城幸也。シーズンインから全開でアピールするはずだ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第13ステージ、2019年9月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、当コーナーをお読みいただいている方の多くが日本人選手のツール出場に期待していることだろう。今年はUCIワールドチームに所属して走るのが、新城幸也(バーレーン・マクラーレン)と入部正太朗(NTTプロサイクリング)の2選手。過去7回のツール出場を誇る新城にとっては、2017年以来となる返り咲きをかけたシーズンに。今年からトップチームで走る入部にとっては初出場がかかると同時に、高いレベルの中で自らの存在感を示していくための戦いが控えているいえよう。

 なお、大会に出場できるのは、例年通り22チーム。このうち、19のUCIワールドチームは自動的に決定。また、昨年のUCIワールドランキングにおいて、同プロコンチネンタルチーム最上位の16位となったトタル・ディレクトエネルジーにも出場権が与えられる。残る出場枠は2つで、常連のアルケア・サムシックと昨年まで2大会連続で出場しているサーカス・ワンティゴベール(旧ワンティ・グループゴベール)の選出が有力。B&Bホテルズ・ヴィタルコンセプトが対抗馬となっている。近いうちに、出場全チームが出そろう見込みだ。

今週の爆走ライダー−フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、ボーラ・ハンスグローエ)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシストや逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 2019年は大きな自信を得たシーズンになった。特に4月から5月にかけては快進撃。ツアー・オブ・ターキーでキャリアで初めてUCIワールドツアーのタイトルを手にすると、ツール・ド・ポローニュ4位、ツアー・オブ・カリフォルニア8位と、個人総合での上位進出を繰り返した。

山岳に強いオーストリア人ライダーのフェリックス・グロスチャートナー。2019年のツアー・オブ・ターキーを制し、一気にトップライダーの仲間入りを果たした =2019年4月20日 Photo: STIEHL / SUNADA

 さらに、ブエルタで評価を高めた。山岳アシストとしてラファウ・マイカ(ポーランド)を個人総合6位と導く働き。チーム方針でプレッシャーのかからない立ち位置で走ってきたが、それがしっかりと形になった1年だった。

 年が変わり、その役割は一段階も二段階も上の役割が求められることになる。山岳比重の高いツールに向けて、総合エースのブッフマンを山岳で支える役割に任命されたのだ。予定通りシーズンを送ることができれば、6月下旬には自身初めてとなるツールのスタートラインに立つ。

 ドイツ籍のチームにあって、一大勢力なりつつあるオーストリア人ライダーたち。5人が所属するが、東京五輪の3つの出場枠をチーム内で争う状況になりそうだという。現状ではパトリック・コンラッドが最有力で、残る2つの椅子を4選手で競うことに。それでも、クライマー向けといわれる東京のコースを攻略できると意気込む。

 昨年のツールでは、同国出身の友人でもあるグレゴール・ミュールベルガーが大会後半にかけて驚異的なアシストでブッフマンの上位進出に貢献したが、そこに加わる新たなピースになるつもりだ。クライマーとしても着実にステップアップしているだけに、今年は大仕事をいくつも果たしそう。アルプスの山々で鍛えた登坂力に無限の可能性が秘められている。

2019年シーズンに評価を高めたフェリックス・グロスチャートナー。今年はツール出場も内定。その後の東京五輪とともにターゲットが定まった =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第20ステージ、2019年9月14日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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UCIワールドツアー ツール・ド・フランス2020 ロードレース 週刊サイクルワールド

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