サイクルロードレースお正月コラム<2>東京五輪男子ロードの出場枠は2枠のみ 激戦必至な代表選考争いをプレビュー

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
  • 一覧

 日本での夏季五輪の開催は、1964年の東京大会以来56年ぶり。冬季五輪を含めると、1972年札幌、1998年長野以来。自転車ロードレースの大規模な世界大会となると、1990年に宇都宮で開催された世界選手権以来となる。おそらく1991年以降に自転車競技を始めて、2020年を前に引退した選手は相当数いるはずだ。母国開催のオリンピックに、現役選手として出場を狙えること自体が、とても奇跡的なことなのだ。今回は東京オリンピックの自転車男子ロードレース出場を目指す日本人選手の動向についてまとめてみた。

2020年シーズンはオリンピック日本代表選考を巡る争いが見どころとなる Photo: Yuzuru SUNADA

2つの出場枠を巡る激戦

 東京オリンピックの自転車男子ロードレースの日本の出場枠は2人に決定した。この2枠を巡って、2019年シーズンから熾烈な代表選考争いが繰り広げられている。

 代表選考には明確な基準が設けられている。JCFが策定した「オリンピック競技大会の選手選考基準」に従って、2020年5月31日までに獲得したUCIポイントに係数をかけた選考ポイントの合計点が多い2人が日本代表としてオリンピックに出場するのだ。

2019年ロード世界選手権に出場した新城幸也(左)と中根英登(右) Photo: Yuzuru SUNADA

 この選考システムは、簡単にいうとヨーロッパで格式の高い、山岳ステージを含むレースで活躍すると、選考ポイントを多く獲得しやすくなっている。例えばツール・ド・フランスで総合優勝すると獲得できるUCIポイント1000点に係数を10倍して、選考ポイントは10000点獲得できる計算だ。さすがにこれは極端な例であり、選考対象レースは2020年5月31日までなので実現不可能であるが、ツアー・ダウンアンダーやUAEツアーなら係数6倍なので総合優勝すると3000点、ヨーロッパのHCクラス(※2020年からプロシリーズ)もしくは1クラスのステージレースなら係数3〜4倍となっているので、総合優勝すると最大で800点獲得できる。

 一方、国内レースで最も係数が高いのはツアー・オブ・ジャパンで、2倍となっている。総合優勝すると250点獲得できる計算だ。ツール・ド・とちぎ、ツール・ド・熊野の場合は総合優勝で40点だ。UCIアジアツアーのなかで、ツアー・オブ・ジャパンだけ特別に2倍となっているが、その他のレースはすべて1倍。ツール・ド・ランカウイ総合優勝で200点、ツール・ド・台湾総合優勝で125点だ。

 つまり、ワールドツアー、ヨーロッパツアーに参加しやすいヨーロッパチームに所属している選手は一発逆転も可能であり、国内チームに所属している選手はUCIレースでコツコツとポイントを貯めなくてはならない。とはいえ、ワールドツアー、ヨーロッパツアーでUCIポイントを量産することは、とても難しく一筋縄ではない。

国内組の増田が選考ランキング首位

 そして、現時点での東京オリンピック代表選考ランキングは次のとおりだ。

1 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 256.8 P
2 新城幸也(バーレーン・マクラーレン) 191 P
3 石上優大(NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス) 161.5 P
4 中根英登(NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンス) 115 P
5 伊藤雅和(所属先未定) 108 P
※「東京への道」より

 ランキングトップの増田は、国内チーム所属ながら、ツール・ド・ランカウイ総合5位で85点、ツール・ド・台湾総合8位で30点、ツアー・オブ・ジャパン総合10位で40点、ツール・ド・おきなわ優勝で40点など、数少ないポイント獲得できる機会をほとんど逃すことなく、地道に積み重ねた。今季も同様の戦略でポイントを積み重ねるしか道はなく、昨年は5月31日までに175点を獲得していたので、同じようなスケジュールでレースをすることができれば、400点の大台に乗せることも可能なはずだ。

2019年はTOJで骨折を負いながらも、選考ランキング首位に立つほどポイントを稼いだ増田成幸。写真は2018年のジャパンカップサイクルロードレースにて Photo: Yuzuru SUNADA
経験・実績は随一な新城幸也。写真は2016年のリオオリンピック男子ロードレースにて Photo: Yuzuru SUNADA

 ランキング2位の新城は、3月から6月上旬まで怪我で長期離脱していたにもかかわらず、ツアー・ダウンアンダー総合39位で60点、プルデンシャルライドロンドン・サリークラシック26位で72点とワールドチーム所属の利点を生かしてポイントを大きく稼いだ。過去には世界選手権で一桁順位で完走、HCクラスのレースで総合優勝するなど、実績がピカイチ。展開に生き残るタフさも相まって、係数の高いレースでポイント獲得の期待が持てる。

ジャパンカップサイクルロードレースで日本人最高位の6位に入った中根英登 Photo: Yuu AKISANE

 石上はスペインの1クラスのワンデーレースで7位に入ったことで一気に140点を獲得。中根はツアー・オブ・ターキー総合35位で30点、ジャパンカップ6位で70点を獲得。2人ともNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスに移籍して、ワールドツアーに出られる可能性があるだけでなく、春先に多く開催されるフランスのワンデーレースの出場機会を得られることだろう。特にワンデーで好成績を残している2人にとって、ポイントを獲得しやすい環境であることに間違いない。

 また、NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスには、別府史之と岡篤志も加入。それぞれ、55点・70点程度のポイントを保有しており、ヨーロッパのワンデーレース等で大量ポイント獲得の可能性がある限り、十分に代表を狙えるポジションにいるといえる。

トレック・セガフレード在籍時はアシストに従事することが多かったが、NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスではエースを担う機会も増えるだろう Photo : STIEHL / SUNADA
プロチームへのステップアップを果たした岡篤志。写真は2018年ジャパンカップクリテリウムにて Photo: Yuzuru SUNADA

 同様にNTTプロサイクリング入りした入部正太朗、昨年に引き続きルーマニアのコンチネンタルチームに所属する小林海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)も逆転代表入りのチャンスを秘めている。

現在の選考ポイントは70点ほどの小林海 Photo: Yuzuru SUNADA

 一方で、増田を除く国内組で最もポイントを持っているのは、石橋学(チーム ブリヂストンサイクリング)で96点だ。現在2位の新城との差は95点。仮にツール・ド・とちぎ総合4位、ツアー・オブ・ジャパン総合6位という成績を残した場合、100点獲得となり、現在の新城のポイントを上回る計算だ。

コツコツ稼ぐも、一発逆転も、楽な道ではない

 前段でも述べたが、欧州組は一発逆転が可能といっても、ヨーロッパのプロシリーズや1クラスのレースは、特にワールドチームがあまり参戦しないレースの場合、スタートからフィニッシュまでフルスロットルなサバイバルな展開になりやすい。ワールドツアーならほとんど集団スプリントに持ち込まれるであろう平坦系のレースでも、プロシリーズ・1クラスだと最終的に3〜4人の小集団が逃げ切るような展開が多く見られる。

 なので、仮に1クラスのワンデーレースで一桁順位に入るような、ロードレースの成績からいえば諸手を挙げて称賛するような結果ではなかったとしても、その内実は激しいレース展開を読み切って、勝ち逃げの集団に生き残った結果かもしれない。そして、展開を読み切り、サバイバルできるタフネスさは、オリンピックのようなワンデーレースで役立つ能力でもある。

 一方でアジアツアーも決してレベルが低いわけではなく、ツール・ド・ランカウイの場合は、毎年4〜5チームほどヨーロッパのワールドチームやプロコンチネンタルチーム(※2020年からプロチーム)も参戦するハイレベルな大会だ。

 ツアー・オブ・ジャパンも過去23大会で総合表彰台に乗った日本人選手はたった2人で、簡単に成績を残せる大会ではない。

 いずれにせよ、今シーズン前半、日本人選手の動向を追いかける際は、代表選考のポイントのことも頭に入れて、観戦していくことをおすすめしたい。

この記事のコメント

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載