サイクルロードレースお正月コラム<1>屈指の難関コースを誰が制す? 東京五輪男子ロードの有力選手の動向をチェック

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 お正月特別企画として、サイクルロードレースの2020年シーズン展望について全5回にわたってお届けする。初回のテーマは「東京オリンピック」だ。男子では、ワンデーレース形式のロードレースと個人タイムトライアルがそれぞれ7月25日、29日に開催される。今回はロードレースの有力選手の動向についてまとめてみた。

獲得標高4825mの難コース、高温多湿のサバイバルレースを勝ち抜くのは誰か Photo: Yuzuru SUNADA

難コース、気温と湿度、時差への対応が鍵

 東京オリンピックのロードレース金メダル獲得するためのポイントは3つある。

勝負どころと予想されている三国峠を視察する、イタリア代表監督のダヴィデ・カッサーニ Photo: Yuzuru SUNADA

 まず、獲得標高が4865mに達する難関コースであることだ。イル・ロンバルディアでは3600〜4000m、2018年にオーストリア・インスブルックで行われた世界選手権男子エリートロードレースは4670mとなっており、東京オリンピックはそれ以上の標高差である。

 次に、高温多湿な日本の気候への対応があげられる。気温に関しては2019年のツール・ド・フランス第16ステージ中に、最高気温43℃を記録したように、40℃近い気温の中でレースを強いられることも珍しくはない。しかし、7月下旬の東京・山梨・静岡付近の湿度は平均80%前後が見込まれるが、ヨーロッパの真夏の湿度はおおよそ10〜20%前後であり、蒸し暑さへの耐性は勝敗の分かれ目となりそうだ。

猛暑に襲われたフランスで、水を頭からかけながらレースをするヴィンチェンツォ・ニバリ。写真はツール・ド・フランス2019 第19ステージにて Photo: Yuzuru SUNADA

 そして、2020年のツール・ド・フランスは7月19日に最終第21ステージが開催される。つまり、東京オリンピックのロードレース開催まで6日しかないのだ。時差も考慮すると実質の準備時間は5日程度だ。わずか5日で時差に身体を慣らして、蒸し暑さに順応する必要があり、普段とは違う体力が要求されることだろう。そのため、ツールを回避して東京オリンピックに集中する意向を持つ選手も多い。

 以上を踏まえ、東京オリンピックを狙う有力選手を紹介していく。なお、東京オリンピックロードレースに似た性質を持つ、イル・ロンバルディアの自己最高リザルトと2018年世界選手権ロードレースのリザルトを掲載する。

有力選手の多くはコースを下見済み

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)
ロンバルディア:2019年2位、2018世界選:優勝

 2020年4月に40歳を迎え、2021年限りで現役引退を表明しており、オリンピックがキャリアを締めくくる最大の目標となる。オリンピックのために直前のツールは調整レースとして活用すると宣言。モビスターGMのエウゼビオ・ウンスエ氏いわく「時差への対応と、高温多湿な気候も得意」とのことだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019 第7ステージで勝利したアレハンドロ・バルベルデ Photo: Yuzuru SUNADA

ロマン・バルデ(フランス、アージェードゥゼール ラモンディアール)
ロンバルディア:2016年4位、2018世界選:2位

 フルサンらと共にコースは下見済み。コースについて「(三国峠は)平均勾配10%といわれているが、12%くらいあるように感じた。その後のテクニカルでタフなダウンヒルは自分向き」とのこと。本番でも雨が降る可能性は決して低くなく、濡れた路面のダウンヒルを経験していることは大きなアドバンテージとなるかもしれない。

マイケル・ウッズ(カナダ、EFエデュケーションファースト)
ロンバルディア:2019年5位、2018世界選:3位

 ジャパンカップサイクルロードレースで2位となった翌日に三国峠を含むコースを試走。Stravaにアップロードしているデータを見る限りでは、籠坂峠は走っていないようだ。「オリンピックはキャリア最大の目標」と並々ならぬ意欲を示しており、すでにツール最終日の夜11時25分にパリ・シャルルドゴール空港を出発する、東京・羽田行きの直行便チケットを予約済みという気合いの入りよう。そうして、できるだけ日本にいる時間を長くすることで、ツールとオリンピックの両立は可能だと考えているようだ。

ジャパンカップでは惜しくも2位だったマイケル・ウッズ Photo: Yuzuru SUNADA
2019年のレースシーンの主役だったジュリアン・アラフィリップ Photo: Yuzuru SUNADA

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ロンバルディア:2017年2位、2018世界選:8位

 2019年ツールでマイヨジョーヌ争いを繰り広げたものの、2020年に関しては「他の目標があるため、総合を狙うつもりはない。ステージ優勝を狙う」とコメント。「他の目標」として東京オリンピックのことを明言はしていないものの、ステージ狙いでツールに出てからならば、十分に東京オリンピックも狙えるはずである。

ヤコブ・フルサン(デンマーク、アスタナプロチーム)
ロンバルディア:2019年4位、2018世界選:20位

さいたまクリテリウムに出場したヤコブ・フルサンは、上りもワンデーレースも得意とする Photo: Yuzuru SUNADA

 リオオリンピックの銀メダリスト。2019年10月にさいたまクリテリウム出場のために来日した際、クリストファー・フルーム、ロマン・バルデ、ミハウ・クフィアトコフスキらと共にコースを下見。大雨の中、三国峠・籠坂峠など終盤の勝負所を走ったが、コースが自分向きであることに確信を深めたようだ。ツールにはチームメートのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア)のアシストに徹し、オリンピックへの準備をすすめる意向を示している。

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)
ロンバルディア:2015・2017年優勝、2018世界選49位

 ジロとオリンピックと世界選が目標とのこと。1シーズンの間に3回もトップコンディションを作ることも難しいと語っており、ジロとオリンピックを優先するようだ。また、イタリア代表チームとして東京オリンピックへの意欲が非常に高く、コース発表後に代表監督が直々に下見に訪れ、テストイベントでは強力なメンバーを揃えてワン・ツーフィニッシュを飾った。

ツール・五輪のダブル制覇は可能か、不可能か?

 2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝のプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)はさいたまクリテリウムの翌日にコースを下見。ただし、2020年はツール総合優勝が最優先目標となるため、激戦の後6日間でコンディションが整うかが一番の課題となりそうだ。

今季からチームメートとなったプリモシュ・ログリッチ(左)とトム・デュムラン(右) Photo: Yuzuru SUNADA

 同様にトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)もオリンピックを狙う意向を示しているが、ツール総合争いからの回復・調整次第となりそうだ。

 2018年ブエルタ王者であるサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)はオリンピックへの意欲も高く、ツールを回避して東京に挑む。しかし、ワンデーレースでの実績に乏しい点が懸念点となる。

 2019年ジロ王者のリチャル・カラパス(エクアドル、チーム イネオス)は、2020年はジロへの出場を希望していて、ツールを回避してオリンピックの準備をすることが可能である。自身の活躍もあり、エクアドル代表として3人の出場枠を確保している点もプラス要素である。

ツール・ド・フランス2019では区間2勝をあげたサイモン・イェーツだが、ワールドツアーのワンデーレースでは不思議と未勝利 Photo: Yuzuru SUNADA
ジロ・デ・イタリア2019総合優勝を飾ったリチャル・カラパス Photo: Yuzuru SUNADA

 2020年に20歳を迎えるレムコ・エヴェネプール(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)は、オリンピック金メダルと世界選手権のレインボージャージを狙うと公言。クライマーが少ないベルギーチームではエースを担うことも可能だ。

 ちなみに、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も、自分には明らかに不向きなコースであることを承知の上で、オリンピック出場を希望。リオではMTBクロスカントリーに出場したが、東京ではロードのみ出場する見込みだ。

2020年はジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスに出場予定のペテル・サガンは、オリンピックへの出場を希望 Photo: Yuzuru SUNADA
ツール・ド・フランス5勝クラブ入りが最大の目標だが、オリンピックにも意欲を示しているクリストファー・フルーム Photo: Yuzuru SUNADA

 クリストファー・フルーム(イギリス、チーム イネオス)は、オリンピック出場に意欲を燃やしているものの、直前のツールで総合優勝を狙っていることと、イギリス代表が4枠を確保するに留まったことで、実際に出場できるかどうかはわからない。

 ◇         ◇

 4年に一度の大舞台であり、クライマー向きのコースということもあって、グランツールで総合表彰台を狙えるスター選手たちの多くが東京オリンピックでのメダル獲得に意欲を燃やしている。なかにはツールよりも優先順位をあげて、挑む選手もいるくらいだ。

 これほどのトップ選手が日本に集まる機会は、とても貴重である。来たる7月の本戦に向けて、五輪メダリスト候補たちの動向に注目していきたい。

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