全日本選手権で「サイクルサッカー女子」初開催自転車好きなら知っておきたい「サイクルサッカー」と「サイクルフィギュア」の奥深い世界

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 2019年12月14、15日、大阪府和泉市の桃山学院大学総合体育館で「第50回室内自転車競技全日本選手権」が開催された。今大会は前身組織の日本サイクルサッカー連盟時代から数えて第50回の記念大会となった。この大会に合わせ、UCI ほか各国連盟に先駆けとなる「サイクルサッカー女子」が正式種目となり、サイクルサッカー男子・女子とサイクルフィギュア男子・女子の4種目で日本一の座が争われた。意外と知ることのない2種目の競技説明を含め、Tonic CX Team Japanでシクロクロス参戦の傍ら「たちかわサイクルサッカークラブ」の練習生でもある前田歩さんにリポートしてもらいました。

初めて正式種目として開催されたサイクルサッカー女子で、試合終盤に得たフリーキックを直接ゴールに決める木澤佐椰茄(ウッドモック) Photo: Nao MAEDA

◇         ◇

どちらも「室内自転車競技」種目

 「室内自転車競技」という種目をご存知だろうか。国際自転車競技連合(UCI)のカテゴリーでは「インドアサイクリング」として扱われるこの競技は「サイクルサッカー」と「サイクルフィギュア」の2種目があり、どちらも14×11mの室内競技フィールドを使用する。サイクルサッカーは、高さ、幅とも2mある敵陣のゴールへ自転車の前後輪を使ってボールを蹴り込む、競技時間は前後半14分で行われる2人制サッカーである。基本的なルールはサッカーと共通しているがロスタイムの概念がなかったり、足をつくなど床に触れたらプレーを続行できず自陣のゴールラインまで一旦戻らねばならない。

 通常のサッカーでは選手が決められている「ゴールキーパー」はどちらの選手がなってもよく、自陣ゴール前の半円(ペナルティエリア)内に入った選手1人のみ、手を使ってプレー可能となる。競技で使用する自転車は立ち漕ぎを前提としていて、縦に伸びたハンドル、ブレーキなしの固定ギヤ、トップチューブの延長線上にあるサドルが目を引く独特の仕様だ。

 競技規則で定められたフレーム形状は、海外メーカー製であれば1サイズ展開と言っても過言ではない。近年の主流はアルミフレームだが、ケルビム製の鉄フレームを使う選手も国内では数多く存在する。車輪は26インチのチューブラーリムで組み、タイヤはトレッドパターンがヤスリ目の凹凸を逆にしたようなインドア競技専用品を使用する。

サイクルサッカー用の自転車 Photo: Nao MAEDA

 サイクルフィギュアは、体操競技を自転車上で行うようなアクロバティックな種目だ。制限時間5分のなかで事前申告したプログラムを音楽に合わせて演技する。日本では男女ともシングル種目のみだが、ペアや4名チームの種目も存在する。競技面は競技規則で厳格に定められていて、各選手は規定の技(課題)を組み合わせた演目リストを事前に申告する必要がある。競技の採点はこの申告に基づいて行われ、予定課題の難度点から演技ミスの減点を差し引いた点数の積み上げで争われる。

 採点は例えば、サドルに立ったままフィールド中央に描かれた直径4mの円の外側を1周する課題「サドルスタンドC.」は難度点が6.1点だが、途中で落車したら2.0点減点といった具合で、時間内の演技課題がすべて対象となる。使用する自転車はサイクルサッカーと比較すると一般的な自転車の形をしている。ドロップハンドルを逆向きにしたようなハンドル、極端に立ち上がったヘッド角、後端が迫り上がったサドルが特長的だ。車輪はサイクルサッカーと共通で26インチ固定ギヤ、タイヤも同様にインドア競技用チューブラーを使用する。

サイクルフィギュア用の自転車。ドロップハンドルを逆向きにしたようなハンドル、立ち上がったヘッド角が特徴的だ Photo: Nao MAEDA

 国内の事情について簡単に触れておくと、サイクルサッカーの競技人口はおよそ200人ほど。競技を始められる場がほぼ大学の運動部のみ、という点で間口がかなり狭く、東京では2校、京都・大阪で4校ほどとなっている。小・中学生や社会人を対象としたクラブチームは「たちかわサイクルサッカークラブ」(東京)と「スポーツ BRANDEX 福岡」(福岡)があり、卒業後もプレーを続ける選手は社会人クラブへの参加のほか、出身大学の練習に混ざって活動を継続することも多い。また、サイクルフィギュアについては滋賀に拠点を置く「滋賀C.F.Cブルーレイクエンジェル」が唯一のクラブで若手選手の育成を行なっている。主要な国内大会は、世界選手権の派遣選考会となる「チャンピオンズカップ」が例年7月に、全日本選手権が12月に開催されている。

 世界的にはドイツを中心に周辺のオーストリアやチェコ、スイスといった地域で盛んな競技で、アジアでは日本と香港が継続的に世界大会へ参加している。ドイツ留学経験のある選手から聞いた話によると、ドイツでは小学生のころから地元の室内競技クラブに通って練習を始めるようで、サイクルサッカーに関してはカリカリの競技者だけでなく趣味スポーツとして続ける愛好者も一定数存在するとのこと。

史上初のサイクルサッカー女子チャンピオン

 2017年、2018年はエキシビションとして全日本選手権と併催していた「サイクルサッカー女子」種目が、今年から正式種目となった。これは2023年にグラスゴーで開催の世界選手権が複数種目の同時開催を発表しているが、この改革に併せて女子種目を新設するという活動の一貫とのこと。他の自転車の種目では男女格差が話題になったことは記憶に新しいが、サイクルサッカーに関しては女子種目が競技として存在しなかったため、これは大きな一歩であると言える。

日本で初開催されたサイクルサッカー女子の公式戦 Photo: Nao MAEDA

 試合は初日に大学生チーム4チームの予選リーグが行われ、2日目の決勝へ駒を進めたのは、頭ひとつ抜けだしたウッドモックとKRV。決勝はお互い譲らず膠着状態が続いたものの、試合終盤に得たフリーキックから奪った1点が決勝点となり、ウッドモックが初代日本一の座に輝いた。

 試合終了後、木澤選手(ウッドモック)に普段の練習について聞いた。

 「大学の部活では特に男子だから女子だからという練習方法ではなく、基本的に男子に混じってやっています。試合がカタチになるまでに結構時間がかかり、1年生のときはボールを蹴るのもままならなかったりで、2年生になってやっと思うようにできるようになりました。(以前は)“男子に勝つ”ということを目標に掲げていたんですけど、今日の試合で課題が見えたので、それをまず潰してくのがしばらくの目標です」

 来年から大学院へ進学し競技はあと2年は続けるつもりとのことで、世界選手権について聞いてみると、「女子枠ができたら出たいですね。2023年にグラスゴーで世界選手権があるので、それのときに種目ができたらいいって言われてます」と語ってくれた。

サイクルフィギュアは男女とも前年王者が連覇

 サイクルフィギュア決勝は選手権2日目に開催された。男子では、前週にスイス・バーゼルで開催された世界選手権で自身初の100点超を達成したばかりの中川凱公(滋賀サイクルフィギュアクラブ BlueLakeAngels)が、世界選に続き高得点をマークし全日本2連覇を飾った。女子は、中川と同様に連戦となった近藤菜月(京都産業大学)が大会5連覇を達成した。

サイクルフィギュア男子優勝 中川凱公(滋賀サイクルフィギュアクラブ BlueLakeAngels)の演技 Photo: Nao MAEDA

男子優勝の中川「連覇し世界で自己記録更新を」

 時差ボケの影響でコンディションが少し厳しかったと語る中川凱公(滋賀サイクルフィギュアクラブ BlueLakeAngels)は「世界選は自分が目標としていた100点超えを達成できましたが、世界の採点は厳しいな、と感じました。(今日はスコアを)更新しようと思って練習頑張っていたのですが、緊張してガチガチになってしまった。(次の目標は)まずは連覇し、世界選へ出て、良いコンディションで自己ベスト更新したいです」

女子5連覇の近藤「思ったより満足の演技」

サイクルフィギュア女子優勝 近藤菜月(京都産業大学)の演技 Photo: Nao MAEDA

 大学進学後も専属コーチのもと、世界レベルで通用する演技を目標に掲げる近藤菜月(京都産業大学)は大会をこう振り返る。「先週金曜日に世界選手権があり、帰国してその週の土日にこの大会だったので、どうなるかなと思っていました。落車はしてしまったんですけど、思ったよりも満足行く演技はできたので、今後に生かしていきたいなと思います」

 学生、社会人合わせて18チームがエントリーしたサイクルサッカー男子は、初日に予選リーグでベスト8を確定、2日目は決勝トーナメントが行われた。優勝候補の一角で、今年の世界選手権を出場したたちかわCSCの松田・赤津ペアは、赤津選手がドイツ留学中のためエントリーを見送り、優勝争いは混戦が予想された。

サイクルサッカー男子はたちかわCSC 1が最年長優勝記録を更新

 決勝の組み合わせは、昨年の日本一で世界戦出場のRSV OSAKA1をPK戦で破った、たちかわCSC1と、同じく全日本優勝経験のある蔵前をPK選で破ったBIKOTという初優勝を懸けた争いとなった。若さとスタミナを振りかざすBIKOTに対し、経験の豊富さを武器に堅守とセットプレーでの得点を重ねたたちかわCSC1が3-1でBIKOTを振り切り、初の栄冠に輝いた。

相手の裏を突くたちかわCSC1のコーナーキック Photo: Nao MAEDA

 優勝の喜びというより、緊迫した試合が終わって安堵の表情を見せる田中識史(たちかわCSC 1)は次のように振り返った。

 「(過去の大会と比べ)いつもより失点が少なかった。いつもたくさん取られて負けてしまうのですが、今回は失点が少なくて。セットプレーでたくさん点がとれた。失点に関しては、いつもディフェンスが緩いと言われるので、とにかく相手にぴったりくっつくというのをなるべく今回は実践しました。次の目標は、世界選手権の日本代表。一度もなったことがないので、そこに向けて練習します」

今年のチャンピオン。(左から)サイクルサッカー男子の平野賢、田中識史、サイクルサッカー女子の藤戸木、木澤佐椰茄、サイクルフィギュア男子の中川凱公、サイクルフィギュア女子の近藤菜月 Photo: Nao MAEDA

【大会結果】
サイクルサッカー男子
1位 たちかわCSC 1(田中識史・平野賢)
2位 BIKOT(徳広昇・石原敬正)
3位 RSV OSAKA 1(村上裕亮・高橋祐馬)

サイクルサッカー女子
1位 ウッドモック(木澤佐椰茄・藤戸木)
2位 KRV(山下奈々・村林果奈)
3位 チームお茶大(高島優季・藤元彩花)

サイクルサッカー男子
1位 中川凱公(滋賀サイクルフィギュアクラブ BlueLakeAngels)

サイクルフィギュア女子
1位 近藤菜月(京都産業大学)
2位 國久結希乃(Japan Aviation High School Ishikawa)
3位 笹島菜花(滋賀サイクルフィギュアクラブ BlueLakeAngels)

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