裁かれるチポッリーニ 伊・ガゼッタ紙が報じるドーピング疑惑は真実か

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 イタリア自転車業界を揺るがす記事が、2月9日、イタリア大手スポーツ紙「ガゼッタ・デッロ・スポルト」に掲載された。「チポッリーニのドーピング行為を証明する書類発見!」――衝撃的な見出しのトップページには、チポッリーニの顔写真とともに「真実が痛い」の文字が踊っていた。

2002年ミラノ・サンレモで優勝したマリオ・チポッリーニ。伊・ガゼッタ紙によれば当時もドーピング使用の疑いがあるという2002年ミラノ・サンレモで優勝したマリオ・チポッリーニ。伊・ガゼッタ紙によれば当時もドーピング使用の疑いがあるという

 マリオ・チポッリーニ(45)は現役時代、イタリア屈指のスプリンターとして圧倒的な強さを誇った。加えてユニークなキャラクターでカリスマ性が強く、奇抜な行動とレース中に観衆をあっと言わせるファッションでいつも注目される選手だった。「スーパーマリオ」「ライオンキング」のニックネームで親しまれ、2005年に引退してからも、イタリアのみならず世界中にファンが多く存在している。

 スクープ記事の内容は、2006年にドーピング摘発で拘束されたスペイン人スポーツドクター、エウフェミアノ・フエンテス氏が所持していた資料や血液サンプル中に、チポッリーニのものと思われる資料が見つかったというもの。

 ガゼッタ紙では、「イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデール)、ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)、アルベルト・コンタドール(スペイン、チーム サクソ・ティンコフ)、ミケーレ・スカルポーニ(イタリア、ランプレ-メリダ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、マルコス・セラーノ(スペイン)、タイラー・ハミルトン(アメリカ)と同様に、チポッリーニもドーピング行為を行っていたことが証明された」などと報じられた。

 記事に書かれている資料は、スペインの検査機関が2006年に押収したもの。7千ページに上る書類の中には、「マリア」「CP」というチポッリーニを連想させるコードネームがつけられたページが存在していた。データを分析すると、2002年における血液ドーピングやホルモン摂取量、EPO(エリスロポエチン)使用のカレンダーがきめ細かく記載されており、それはチポッリーニが参戦したレースと一致しているという。

 チポッリーニに関する資料だとする理由としては、裏面に走り書きされた電話番号が、当時チポッリーニが住んでいたルッカ市内のアパートのものであるためとガゼッタ紙は伝えている。

 これに対してチポッリーニは、弁護士を通して事実無根だと主張し、サンプルのDNA検査に協力すると述べた。その上、2004年まではイタリア・ルッカではなく、モナコ公国に滞在していたと主張している。

引退後のマリオ・チポッリーニ(2008年)引退後のマリオ・チポッリーニ(2008年)

 ただイタリアでは、先日のランス・アームストロングの電撃的な告白に比べ、今回のチポッリーニの疑惑に対しては、報道関係者のみならずファンもかなり冷静な態度を取っているようだ。イタリアが誇る“ヒーロー”であるだけに、ガゼッタ紙の電子版で公開されている読者のコメントを見ても慎重論が浸透している。

 このため、一方ではガゼッタ紙も批判にさらされている。裁判中の資料が外に漏れたことを、多くの人が不審に思っているようだ。

 さらに、ガゼッタ紙が過去に犯した大きな過ちを多くのファンは忘れてはいない。9年前に自殺したイタリアのロードレーサー、マルコ・パンターニがドーピング行為で訴えられた時、バッシングを拡大させたマスメディアの1つがガゼッタ紙だった。その上、パンターニの死後、無実が証明されたとの記事を報じているのだ。

 スペイン国家警察の態度にも批判が集まっている。スペイン国家警察は2006年、ドーピングの一斉摘発「オペラシオン・プエルト」作戦に踏み切っているが、今回の裁判はそれから7年以上が経過している。ピークを短期間で終える選手生命を考えると、公正に裁くためには遅すぎる対応だとの声も上がっている。

 スペインの検査機関による隠ぺい操作の疑いも見逃せない。前出のフエンテス医師を中心とするドーピング行為を行なった医師グループの自宅や医療センターからは、200ほどの血液サンプルが押収されているが、その中には自転車競技者以外にサッカー選手などのサンプルも多く存在していた。しかし、スペインの検査機関はサンプルをわざと冷蔵庫の外で保管したと指摘されており、他のスポーツをかばったのではないかとの疑念が生じている。

◇           ◇

 イタリアのファンのみならず、誰もが、過去の過ちを繰り返すことがないように平等で公平な裁判を望んでいる。そして自転車業界だけでなく他のスポーツにも、スポーツ選手の生物学的マーカーを記録し、これを照合することでドーピングを検知する新しい検査手法「生体パスポート」の義務化を望んでいるのではないだろうか。

 チポッリーニの発言とこれからの展開を、見守っていきたい。

マリオ・チポッリーニ
 1967年3月22日生まれ。1989年にプロ入りし、デル・トンゴ、MGビアンキ、メルカトーネ・ウーノ、サエコ、アクア・エ・サポーネ、ドミナ・ヴァカンツェ、リクイガスを経て、2005年に引退。
 
 ジュニア時代を含め、17年に渡る選手生活で189回優勝。主なものにミラノ・サンレモ優勝(2002)、世界選手権優勝(2002)、ジロ・ディタリア計42ステージ優勝、ツール・ド・フランス計12ステージ優勝、ブエルタ・ア・エスパーニャ計3ステージ優勝、ツール・ド・ロマンディー計11ステージ優勝など。

(文 マルコ・ファヴァロ)

■マルコさんの自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」

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