2020新春スペシャルインタビュー<4>東京五輪ロード男子選考ランク首位の増田成幸 「競技人生の全てをぶつける年にしたい」

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 2020年1月現在、東京五輪ロードレース代表の選手選考ランキングで首位を走る増田成幸(宇都宮ブリッツェン)。昨シーズンは落車で怪我をしつつも、全日本タイムトライアル選手権優勝や、数々のUCIレースで活躍しポイントを重ねた。国内のロードレースシーンを牽引する増田に、五輪にかける意気込みや、レース業界の今後を聞いた。

2020年1月現在に東京五輪選考ポイントランキング首位の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)へ、来たる東京五輪への意気込みを聞いた Photo: Shusaku MATSUO

 インタビューを行ったのは2019年12月初旬。増田はトレーニングウェアに身を包み、レンタルサイクル施設「宮サイクルステーション」を訪れていた。冬の乗り込みも重要視しているといい、約4時間ほどの乗り込みを終えていた。すでに来季を見据えている増田だが、この日は柔らかな表情が印象的であった。

◇         ◇

――Q.2019年は骨折を経験しつつ、全日本TTのタイトル獲得や、ツール・ド・おきなわ優勝など活躍されました。ご自身で昨シーズンをどう評価しますか?

 2019年の1月から東京五輪ロードレース代表選考の対象となる期間が始まったので、選考ポイント(UCIポイント)の獲得を念頭にした活動を行ってきました。ツアー・オブ・ジャパンでは落車し、怪我をしたため不本意な結果となりましたが、ある程度の成果は出せたのではないかと思います。

増田成幸の主なレース戦績(2019)

・全日本個人タイムトライアル選手権 優勝
・ツール・ド・おきなわ 優勝(1.2)
・ツール・ド・ランカウイ 総合5位(2.HC)
・ツール・ド・台湾 総合8位(2.1)
・ツアー・オブ・ジャパン 総合10位(2.1)

国内最長のツール・ド・おきなわを独走で優勝する増田成幸(宇都宮ブリッツェン) Photo: Kairi ISHIKAWA

 Jプロツアーもチームと相談し、全てのレースには出場しませんでした。選考ポイントが獲得できるUCIレースを中心に組み立てたかったためです。

――Q.五輪への準備は何をフォーカスしていますか?また、プレ五輪で走ったコースはいかがでしたか?

 本番の距離は約240km、獲得標高5000mオーバーの史上最高と言ってもいい高いレベルのコースです。プレ五輪では富士山側の区間がカットされていましたが、厳しいコースという印象。当たり前ですけど「5000mは嘘じゃないな」って思いましたね。6km近く上る明神峠は一番きつかった。

 けれども、自分にとって向いているコースかなと思います。距離の長さに対する耐性は自分にはあるし、得意としています。オフの時期が大切なので、距離や時間、耐久力を大切にしたトレーニングを行っています。

オフの時期でも乗り込みは欠かせない。この日は4時間ほどのトレーニングが行われていた Photo: Shusaku MATSUO

――Q.選考では2位に新城幸也選手が付け、他のライバルも控えています。意識していることはありますか?

 新城選手はライバルと言えばライバルだけど、プロとして競技をしているので“憎しみを持っているライバル”というわけではないですよ(笑)。彼なりのベストな活動をしていて、彼の目指すものがあります。僕は僕でスタートラインに立つことを目標にしています。自分に厳しく、一つ一つレースやトレーニングをしています。

全日本個人TTで初のタイトルを手にした増田成幸(宇都宮ブリッツェン) Photo: Shusaku MATSUO
強豪ひしめく個人TTでトップタイムをたたき出した Photo: Shusaku MATSUO

好敵手が成長させてくれる

――Q.五輪の話から国内の話題に移ります。2019年のJプロツアーを振り返ってどのようなシーズンでしたか?

 僕がUCIレース中心のスケジュールだったため、チームは岡篤志選手を軸に戦いましたが、僅差でマトリックスパワータグのオールイス・アウラール(ベネズエラ、※2020年はカハルラル・セグロスRGA)に敗れてしまいました。岡選手の1年の戦いをみると以前の僕と重なるものを感じます。

五輪出場を最優先のスケジュールでポイント獲得を重視する Photo: Shusaku MATSUO

 僕自身、総合優勝争いを繰り広げていた時に、ホセビセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックスパワータグ)が活躍しており、とても強かった。しかし、彼らが日本のレースで戦ってくれるからこそ、こちらも奮い立たされるものがあります。岡選手も彼を意識してトレーニングし、生活をしていたでしょう。結果として総合2位となりましたが、厳しい戦いの中で成長できた年になったと思う。プロなので優勝という結果を出さなければなりませんが、2019年の内容を良かったと思います。「リベンジするぞ」という新たな目標につなげたい。

――Q.岡選手、アウラール選手、また、入部正太朗選手がJプロツアーからステップアップを果たしました。Jプロツアーのレベルは上がっているのでしょうか?世界への扉として機能していますか?

 世界への扉は開きつつあるという印象がありますが、もっとレベルの高いリーグに育てたいと思っています。マトリックスパワータグの安原監督が強烈な外国人選手を連れてきてくれているので、リーグのレベルが1段階上がっています。ライバルチームが補強されると辛いものがあります。しかし、成長にはプラスになっています。ライバルを打ち負かしてチャンピオンになれば本当の強さが手に入りますから。

――Q.2020年はどのような展開をJプロツアーに望みますか

 より一層高いレベルでレースしたいと思っています。チームに今は日本人選手しかいませんが、ゆくゆくは宇都宮にも(外国人選手が)入ってくるかもしれません。現状、リーグ全体でプロとしてやっていける選手が少なく、厚みが足りていないのも事実です。競技人口が増える取り組みを行い、活性化につなげたいですね。

 僕個人としては、特に前半戦は五輪を控えているため、引き続きレースを選んでいく形になると思います。出るレースは順位に縛られることなく、厳しい展開のレースを作っていきたいですね。

Jプロツアーの活性化と競技人口増を望む Photo: Shusaku MATSUO

――Q.ブリッツェンは下部チームを持ち、さらに学校での交通安全の啓蒙活動も多く行っています。競技者増の施策のお話もありましたが、取り組みは実りをみせていますか?

 子供たちには競技に関する教育が不可欠です。何にも増して一番重要なことではないでしょうか。今、ジュニア育成を目的としたブリッツェンステラでは、小学4~6年生のクラスがあります。僕は直接見ていませんが、OBの鈴木真理さんやスタッフがステラの活動を行っています。今現在、どう形になっているかは目に見えませんが、確実に自転車業界の未来になると思っています。継続していきたい。

 また、学校での交通安全講習は、活動を開始してから11年目で延べ約5万6000人となりました。交通ルールや指導は引き続き行う必要がありますね。そういえば、ブラウブリッツェンに入ってきた子から「小っちゃいころにブリッツェンに○○さんに教わったの覚えていますよ!」と言われました。ちょっとしたきっかけで、ロードレースやチームのことを知るきっかけにもなればいいなと思っています。

悔いを残さないよう1日1日を積み重ねたい

――Q.チームではYouTubeチャンネルも始まりました。いろいろな世代や層に活動を伝えられますね

 はい、名物プロデューサーが指揮をとっています。面白い企画もあるでしょう。プライベートにどこまで踏み込まれるのか怖いけど(笑)。チームには個性豊かなメンバーがいます。例えばDIYやカヌレ作りが得意で、オートバイ好きな小野寺玲や、instagramに頻繁に愛犬を載せている鈴木龍など。僕も投稿を楽しみにしているんですよ!

 普段見られない僕たちのオフの素顔を見られる企画もありますが、レースの裏側を少しずつオープンにしたり、走っている姿をお伝えする動画も配信します。レース前日のミーティングや、監督とのやり取りなど。これまで知る機会が無かったので発信していきたいと考えています。

――Q.今後チーム中で、増田選手はどのような役割を担うのでしょうか

 2020年シーズンは岡選手が抜け、新たに3選手が加入し10人体制となります。今まで通り、若手がしっかり上に対して気軽に思っていることを伝えられる雰囲気を大切にしたいですね。お互い言い合えるような環境が望ましい。意見をまとめる必要があればまとめる存在になれればと思います。

――Q.これからのキャリアについて考えていることがあれば教えてください

 自分は中学、高校生時代にバリバリ自転車に打ち込んできたタイプではありませんが、今こうして活動を続けられているのは支えてくれる人がいるからです。事故や怪我が多い競技人生ですが、何とかこうして選手として走れています。

 節目となる引退は近々やってくるのは確実です。しかし、いつかは明言できません。残りの日数は限られていますが、悔いが残らないよう1日1日を積み重ねていきたいです。

 2020年は一大イベントが控えています。まずは東京五輪という目標に向かって活躍します。メダルを取るのは難しいかもしれないですが、しかし可能性はゼロではありません。 競技人生の全てをぶつける年にしたいと思います。

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