マルコさん注目・2019年のニュース放映権料の分配は無し! “チームNIPPO”運営会社解散から見えるプロツアーの構造問題

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 Cyclistの執筆陣が選ぶ「今年注目したニュース」の第6回目は、「つれづれイタリア~ノ」を連載中のマルコ・ファヴァロさんが選んだニュースについてです。“NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ”の運営会社が解散したことから見たプロツアーの構造問題について切り込みました。

放映権料を握る主催団体とチームの確執を解く術はあるのか(写真はASOのジャンエティエンヌ・アモリ代表) Photo: Yuzuru SUNADA

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 2019年に自転車競技にまつわる面白いニュースがたくさんありました。

 「初」が多かった年でした。エクアドール人によるジロ・ディタリアとコロンビア人によるツール・ド・フランス初総合優勝、スロベニア人によるヴエルタ・ア・エスパーニア初総合優勝、そしてデンマーク人が世界選手権ロードレースで初優勝しました。

 自転車ファンにとっては悲しいニュースもありました。自転車界きっての“イケメン”ドイツ人、マルセル・キッテルや、今年ジロ・ディタリアを完走し、現地でも人気を博した初山翔の引退表明などがありましたね。

エクアドル人で初めてジロ総合優勝を果たしたリチャル・カラパス(モビスター チーム) Photo: Yuzuru SUNADA
ドイツ人“イケメン”選手だったマルセル・キッテルも引退を発表 Photo: Yuzuru SUNADA

 しかし7月中旬に全く予想のつかないニュースがイタリアから飛び込んできて、これに注目したいと思います。

NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ解散の経緯

 NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネの運営会社のフランチェスコ・ペロージ代表が、イタリアのメディアからのインタビューで、今季限りでチームを解散する事を所属選手、スタッフに通達した旨を告白。これをきっかけに、世界中のサイクルメディアも7月中旬に一斉に報じ、後に日本サイト上で同チームの大門宏監督のインタビューが掲載され、解散の背景と経緯と来季以降のチームの見通しが紹介されました。

ダミアーノ・チーマが念願のジロ初勝利をチームに与えるも、運営会社は残念ながら解散となった Photo: Yuzuru SUNADA
イタリアでも人気を果たした初山翔は今季限りで選手を退く Photo: Yuzuru SUNADA

 大門監督の説明によると、プロコンチネンタルチームの登録におけるレギュレーションの改革に関するUCI(国際自転車競技連合)からの打診により、登録選手の最低人数は16人から20人に増加し、最低年俸も上昇、そしてプロシリーズの導入で、これまで以上にチームランキング(ワールドランキングを含む)が重要視されるため、必然的にシーズンを通して3チームが稼働できる体制を整えなければならず、それに伴ってチーム車両や交通費、機材、スタッフに関わる運営費も増大しUCIが示唆している登録規定では最低でも約5億5000万円が必要と見込まれた。

 従ってNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネの運営会社は、例えジロへの参戦が果たせたと仮定しても、プラス1億円クラス以上の活動資金の獲得が必要でありながら、新規のスポンサーを見込めず、運営の継続を断念したそうです。

深刻な収益化問題

 UCIの自転車競技のルールをより分かりやすくしたいという気持ちが理解できない訳ではありません。バラバラだったルールを一本化にし、少しずつわかりやすいシステムを作ろうと模索しています。

 例えば、1988年まではプロチームとアマチュアチームの明確な分け方はありませんでした。1989年にUCIロードワールドカップが誕生し、初めて自転車チームは3つのカテゴリーに分けられました。しかし、グランツールのオーガナイザーは依然として参加できるチームを独断と偏見で決めていました。

収益化を安定させる枠組みは未だ定まっていない(写真はUCIのダビド・ラパルティアン会長) Photo: Yuzuru SUNADA

 2001年と2002年にイタリアのビッグスター、マルコ・パンターニとマリオ・チポッリーニのチームはツールに招待されず、大きな問題になりました。この反省から2004年にUCIプロツアー(現UCIワールドツアー)が誕生し、レースやチームがグループ化され、初めてレースへ参加基準が明確に設けられました。

 しかし、いまだに解決されていない大きな問題があります。放映権の運営方法です。自転車のチームは一切放映権料をもらっていません。プロサッカーや野球リーグでは考えられないことです。

 日本プロサッカーリーグの例を見てみましょう。テレビ・ラジオ、WEBの中継は、Jリーグが一括して管理と中継を行う放送局を決めます。Jリーグでは全国放送、ローカル放送ともにチームごとの契約ではなく、Jリーグが一括して放送局と交渉して中継カードを決定し、実況放送局が支払う放送権料を各チームの収入に均等に割り当てるようにしています。これによってチームの運営は安定し、より多くの選手を育てることができます。

 一方、自転車競技では放映権料はUCIとレースのオーガナイザーが握りしめ、参加チームに一切割り当てません。運営費はほぼスポンサーに頼るという方式です。

 2014年にスイスのInfront Sports & Mediaというサッカー界で大きな影響力を持つスポーツ専門のマーケティング会社がプロロードレース界に参入。「Velon」という合弁企業を誕生させます。 ワールドツアーに所属する11のチームとの提携を開始し運営チーム側の収入の安定化を目指しました。 Velonは自転車に設置されたカメラの映像を売り、ハンマー・シリーズという新たなレースを作るなど、収益化につながる新たな取り組みをいくつか始めています。面白いことにフランスのチームは一つも加盟していません。自転車界に強大な権力をもち、ツールなどを運営するASO(アモリ・スポル・オルガニザシオン)と喧嘩したくないのです。

2019年現在VELON所属チーム

ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)
CCCチーム(ポーランド)
ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)
EFエデュケーションファースト(アメリカ)
ロット・スーダル(ベルギー)
ミッチェルトン・スコット(オーストラリア)
チーム イネオス(イギリス)
ユンボ・ヴィスマ(オランダ)
チーム サンウェブ(ドイツ)
トレック・セガフレード(アメリカ)
UAEチームエミレーツ(UAE)

 結局、7月16日に発表されたNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネの解散の裏には、自転車競技が直面している大きな問題が見え隠れしています。チームたちがUCIに対し声を荒げ、提訴にまで発展しています。

 その動きは進行中で、またお伝えいたします。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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