西薗良太さん注目・2019年のニュース東京五輪前に見えた自転車競技の明暗 目覚ましい活躍を遂げるトラックと厳しいロード

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2019年も残すところあとわずか。年末企画として、『Cyclist』執筆陣が選ぶ「今年の注目ニュース」をお届けします。全日本タイムトライアル(TT)王者にも輝いた元プロ選手・西薗良太さんが注目したCyclistの記事は「東京五輪ロードレースの各国出場枠が確定 日本は男女とも2枠に」と「日本がチームスプリントで16年ぶり金メダル トラックW杯第4戦・ニュージーランド大会」の2本。トラック競技では目覚ましい活躍を遂げ、明るいニュースが飛び込む一方、ロード競技では厳しい現状が続いている状況を分析してもらいます。

12月6日、トラックワールドカップ第4戦・男子チームスプリントで16年ぶり金メダルを獲得した日本チーム。(左から)新田祐大、雨谷一樹、深谷知広 © JCF

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世界レベルの結果がでてきたトラックサイクリング

 2016年にブノワ・べトゥが短距離ヘッドコーチ、2017年にはイアン・メルビンが中距離ヘッドコーチ(2019年に解任され、現在はクレイグ・グリフィンが就任)に着任しました。オリンピック前最後のシーズンとなる2019-2020シーズンは短距離で4シーズン目、中距離は3シーズン目にあたりますが、世界トップレベルの結果が出つつあります。

トラック競技の立役者、ブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチ=2017年12月13日 Photo: Naoi HIRASAWA

 2017-2018年と2018-2019年シーズンでは、お家芸であるケイリンで世界選手権銀メダル(河端朋之、新田祐大)を獲得。2019-2020シーズンでは世界選手権の次に格があり、東京五輪出場枠にも影響が大きいワールドカップにて、チームスプリントで2連勝を飾りました。 中距離も梶原悠未がオムニアムで2018-2019シーズンワールドカップで2勝、橋本英也が3着に入るなど着実に成果を挙げています。

 リオオリンピックでの最高順位が、窪木一茂によるオムニアムで12位だったのを鑑みると大きな進化です。筆者が横で見ていると、海外のベテランコーチが伊豆を拠点に日常的にきめ細かな指導を行っているのが非常に良い影響を与えており、選手たちのマインドセットも日に日に日本の、あるいはアジアの中でどう順位を上げるかではなく、世界でどう着に入るかという意識に切り替わっていることを感じます。

 唯一不足していると感じるのはコーチ陣に日本人がいないことです。彼らからコーチングのノウハウを吸収する良いチャンスが失われています。それでも、現状指導を受けている選手が将来的に良い指導者になることなどを考えると、大きなソフトレガシーが築かれつつあるのは確かです。

 ハード面でもJKA250と呼ばれる板張りの250mバンクが日本競輪選手養成所内にできるなど、これからの競輪選手が国際試合でも活躍できる基盤が着々と整えられています。

厳しいロード競技

 トラック競技では以上の明るい話に事欠かないのですが、ロード競技はなかなか厳しいというのが現状です。ロード競技ではロードレースで男子で最大5枠、女子4枠を獲得できますが、開催国枠のそれぞれ2枠から1枠も増やすことはできませんでした。TTに至っては女子でなんとかアジア大陸枠の1枠を確保するも、男子では1枠も獲得できていません。

東京五輪男子ロードレースの国別参加枠。日本は男女ともに開催国枠(2人)から参加人数を増やすことができなかった
ProcyclingStatsのポイントランキング。30位前後を行き来しているのが現状だ

 リオオリンピックからの4年間の歩みを振り返りながら有名サイトProcyclingStatsの国別ランキングをみても、男子は2016年から36、32、31、33位と30位台をいったりきたりしているのが現状です。女子は簡単に参照できる資料がありませんが、ワールドツアーレベルで走る選手が與那嶺恵理単独となって悪化しているでしょう。

 2015年時点で浅田顕監督は「ワールドツアー選手やプロコンチネンタルの選手を増やすことが鍵である」と述べていますが(「日本代表のプロチームを作りたい」 浅田顕ロード強化ヘッドコーチに聞く東京五輪への道)、ヨーロッパ1クラス以上のレースを日本人選手が走る上で鍵となっていたNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ も今年で解散、多くの選手が放出されました。

今年のジロで話題をさらった初山翔は、NIPPOの解散に伴い引退を表明した Photo : Yuzuru SUNADA

 暗い話が続いてしまいましたが、新城幸也・増田成幸らベテランと石上優大ら新鋭の代表争い、富士山麓周辺のとてつもなくダイナミックなワンデーレースにおいて、今年もワールドツアーで走り、登りの強い與那嶺恵理がどれだけ通用するかなど、面白いポイントは多くあります。メダルというには難しい状況ですが、一人の観戦者として応援していきたいと思います。

西薗良太(にしぞの りょうた)
元プロロードレース選手。日本自転車競技連盟データアナリスト。
全日本選手権タイムトライアル3回優勝。「世界最高のサイクリストたちのロードバイク・トレーニング」監訳、Podcast “Side by Side Radio”主宰

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