小森信道さん注目・2019年のニュースNIPPOが紡いだ世界への道 ロードレースは国内でメインストリームになり得るか

by 小森信道 / Nobumichi KOMORI
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 Cyclist執筆陣が選ぶ「今年注目したニュース」第7回は、スポーツライターやフォトグラファーとして活躍する小森信道さんが注目した「チームNIPPO解散」のニュースについて。国内ロードレースシーンの最前線で競技を見ている小森さんだからこその視点で綴られています。

盛り上がりを見せる国内ロードレースだが、まだメジャー化は遠い。メインストリームとなる道はあるか Photo: Shusaku MATSUO

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本場への架け橋的な存在のNIPPO

 このニュースを最初に読んだ時に感じたのが、所属日本人選手たちの来季はどうなるのか? ということでした。その後の報道等で皆さんもご存知のこととは思いますが、NIPPOはフランスのデルコ・マルセイユ プロヴァンスと2020年に向けた話し合いを続け、結果的にNIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスとして活動をすることが決定。日本人選手も4選手が加入することが発表されました。

 今回の一連の動きを受けてあらためて思ったのが、NIPPOが日本ロードレース界と「世界」との大切な架け橋になっているということです。NIPPOという存在を通して、また、その存在があったからこそ、本場欧州のレースと「世界」に触れられた選手が数多くいた。この事実はとても大きなことですし、これまで長きに渡りそうした環境を提供し続けてきたこと、そして、これからもその環境を提供し続けようとしていることを、我々は当たり前にあるようなものとして受け入れ過ぎていたのかもしれません。もっと敬意を表さなければいけない、とあらためて感じた次第です。

日本人選手を欧州で走らせ続けたチームは解散。NIPPOは別チームのスポンサーとなり再び活動を始める。日本のロードレースシーンは今後盛り上がりをみせるのか Photo: Yuzuru SUNADA

 さて、今回このニュースに注目した理由ですが、日本サイクルロードレース界にとって欧州に代表される「世界」というサイクルロードレースのメインストリームがまだまだ遠いところにあるということを、あらためて実感させられたからです。日本企業が運営に関わっていたりスポンサードしていたりするチームがなければ、日本人がメインストリームに乗ることは容易ではないという事実を、あらためて突きつけられたと言い換えてもいいかもしれません。それだけ、メインストリームの中での日本人の価値は低いということでしょう。

新城幸也もNIPPO梅丹本舗のメンバーとして本場欧州の門を叩いた(2007年) Photo: Yuzuru SUNADA

“ジャパンマネー”が生きる環境づくりを

 もっとも、それはサイクルロードレースに限った話ではありません。他のスポーツでも、日本人選手そのものの実力に価値がつけられることは、実はそれほど多くないのが実情です。

 例えば、サッカーの欧州五大リーグと言われる中のスペインのラ・リーガ、イタリアのセリエA、フランスのリーグ・アンといったリーグでは、細かい条件面は異なるものの、EU加盟国やEFTA(欧州自由貿易連合)、コトヌー協定に該当するアフリカ諸国に当てはまらない国の選手の登録、出場(いわゆる外国人枠)は3人までと定められています。その中で、必要とされる外国人枠の選手は、チームを勝たせるために何か特別な能力を持っていることが求められます。実力がほぼ互角の選手であれば、外国人枠にならない選手を獲得すれば良いからです。

 サッカーが国技として浸透し、有能な選手の宝庫であるブラジルなどの南米の選手が重宝されるのには、それ相応の理由があるということです。そんな状況下で日本人選手を敢えて獲得するのはなぜかというと、選手自身の実力と同じくらい、日本というマーケットへの販路拡大や新規スポンサーの獲得といった「ジャパンマネー」をアテにしている部分があるからだと思います。日本国内で景気の良さを実感できている人は決して多くはないかもしれませんが、それでも海外のプロサッカーチームから見れば、まだ日本は金の成る木なのです。

NIPPO・デルコ・ワンプロヴァンスの一員として2020年シーズンを走る岡篤志 Photo: Shusaku MATSUO

 国内ではメジャースポーツのひとつと言われているサッカーでもこのような状況なのですが、忘れてはいけないのが、国内でメジャースポーツだからこそ“ジャパンマネー”がアテになるということです。国内ではマイナースポーツと言われるサイクルロードレースが、サッカーと同じだけのジャパンマネーを動かすことができるかと問われて、素直に頷ける人は多くはないと思います。

 もちろん、ジャパンマネーなどに頼らずに実力だけでメインストリームに乗れるのであればそれが理想ですし、そうあるべきだと個人的にも思います。ただ、目指すべきメインストリームは、巨額のお金が動くビジネスの側面も持った世界です。だからこそ、メインストリームにたどり着くまでの間に、ジャパンマネーを利用しなければいけない時期もあるのではないかとも思っています。そして、今の国内サイクルロードレース界は、まだジャパンマネーを利用するだけの環境を整えられていないというのが実情なのではないでしょうか。

野球やサッカーに次ぐメジャースポーツとなりつつあるBリーグ(根本和哉撮影)

 サイクルロードレースファンのほとんどの方が、グランツールやクラシックで日本人選手が活躍する姿を見たいと思っていることでしょう。そのためにはまず、ジャパンマネーが呼び込めるだけの、国内サイクルロードレース界の環境を作るということが大切なのではないかと感じています。サッカーはJリーグができて、飛躍的にジャパンマネーが流入しました。最近では、バスケットボールのBリーグがジャパンマネーの恩恵に預かれるだけの環境を整えつつあるように映ります。

 サイクルロードレースに関わる多くの人が理想とするメインストリームに多くの選手が乗るためにも、まずは国内で他スポーツと自分たちを見比べ、変わる必要があるのではないか。そんなことを考える機会が多くなっています。

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