安井行生さん注目・2019年のニュースロードバイクが激変、ディスクロード時代の本格到来と脱スペック戦争

by 安井行生 / Yukio YASUI
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2019年も残すところあとわずか。年末企画として、『Cyclist』執筆陣が選ぶ「今年の注目ニュース」をお届けします。 自転車ライターの安井行生さんが注目したのは 「ロードバイクの激変」についてです。 ディスクロード時代の本格的な到来に触れつつ、 自転車の楽しみ方が変わりつつある一年だったと述べています。

激変したロードバイク

 2000年くらいに自転車を始めてから…もうすぐ20年ですか。そりゃ歳もとるわけですが、その間ずっと、ロードバイクの変化を肌で感じ取ってきました。

写真はツール・ド・フランス 2000 第21ステージを疾走するリシャール・ビランク。20年の時を経て、使用するフレーム素材、フレーム形状、軽量化が進展するなど、ロードバイクは大きく変わりました Photo : Yuzuru SUNADA

 スチール→アルミへの変換こそリアルタイムでは知りませんが、アルミフレームのカーボンバック化も、インテグラルヘッド化も、アルミ→カーボンの変換も、カーボンフレームの形状自由化も、カーボンフレーム軽量化戦争も、度々なる多段化も変速の電動化も、解析技術の高度化による走行性能の洗練も、エンデュランスロード&エアロロードという新たなカテゴリーの誕生も。

 その時々はそれなりにこれは大きな変化だなぁと思ってたんですが、現在ロードバイクに起きている変化に比べると、どれもちっぽけなものだったと感じます。だから今年の自転車ニュース、僕は「ロードバイクの激変」を挙げたいと思います。

 その起点はやっぱりタイヤのワイド化とディスクブレーキ化。それによってフレームもホイールも作りがガラリと変わるため、黎明期のディスクロードの完成度は低いものでした。

ロードバイク激変の起点はタイヤのワイド化とディスクブレーキ化 Photo: Shusaku MATSUO

 当初ディスクロードに試乗したときは、走りの味わい的に「これは悪夢だ」と思ったものですが、コンポ・ホイール含めてあれよあれよという間に洗練が進み、ビッグメーカーのハイエンド車に関しては、どれも文句のないレベルにまで達しています。

タイヤのワイド化とディスクブレーキ化でフレームの作りも変わります。写真は38Cまで対応するトレックのドマーネ Photo: Shusaku MATSUO

 それは、この1年に登場した2020モデルでより強く感じたことでした。もちろん、ワイドタイヤと空力設計を取り入れてディスクブレーキ化するのに手いっぱいで、いわゆるライドクオリティを煮詰めるまで手が回っていないメーカーもまだあるにはありますが、ここまで急速に走行性能が洗練されるとは思ってもいませんでした。

 それが個人的に今年最も驚いたことです。ディスクロード時代到来、ディスクロード元年…ここ数年、毎年のように目にしたワードですが、2019年こそそれに当たるのではないかと個人的には思います。

注目され始めた新たな遊び方

 もう一つの面白い流れとしては、ロードバイクというカテゴリーにも「速さ・タイム・順位・走行距離・パワーなど数値の束縛から解き放たれたバイク&遊び方」が目立ってきたこと。グラベルロードのブームや、マスとしては小さいですがスチールフレーム人気、バイクパッキングという遊び方がそれに当たります。

グラベルロード、バイクパッキングといった新たな遊び方が目立つ1年となりました Photo: Kenta SAWANO

 今までロードバイクは、重量や剛性や重量剛性比や時速○kmで○ワット削減できるかなど、数値化できることで優劣が決められてきましたが、これは違います。誰がグラベルロードの空気抵抗係数を気にするでしょう。誰がモダンスチールの重量剛性比を知りたいと思うでしょう。

 それを前にした自転車乗りの頭の中に浮かぶのは、「どんな踏み味なんだろう」「これを買ったらどんな遊びができるだろう」「どんな楽しみ方ができるだろう」というワクワクです。

 素晴らしい。まったく素晴らしい流れだと思います。脱レーシング。脱スペック戦争。どれが速いか、ではなく、どれが楽しいか。どれだけ快感を得られるか。

 ロードバイクなんて生きていくためには全く必要のないお遊びなんだから(プロ選手以外)、選ぶ際にもっとそういう視点が加わるべきだと思います。

 もちろんピュアレーシングバイクがロードバイクのメインストリームであることに変わりはなく、それがスポーツバイク全体を牽引する原動力であることに変わりはありません。ただ、それだけではあまりに浅くあまりに短絡的。自転車の世界はもっと広く深いものです。

 数年前、ある技術者が「高剛性・高価格=善というフェーズから脱却できないと、自転車業界に成熟は訪れない」と言っておられました。それを聞いたときは、「あぁ確かに。でも今のマーケットにそれを求めるのはちょっと早いよなぁ」と思ったものですが、現在の流れを見ると、それは決して遠くないことかも…と思わされます。それがより明確になったのが2019年。そんな気がします。

 要するに、「ロードバイクの激変」には2つの意味があるんです。ワイドタイヤ化&ディスクブレーキ化というフィジカルな変化と、楽しみ方の多様化というメンタルな変化。その前と後をリアルタイムで知ることができる我々は、自転車乗りとして幸せな時代に生きていると思いますよ。

安井行生 インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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