腰山雅大さん注目・2019年のニュース栗村修さんの「オールアウト」問題をさらに分析すると…

by 腰山雅大 / Masahiro KOSHIYAMA
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 『Cyclist』執筆陣が選ぶ「今年の注目ニュース」をお届けします。BMXやシクロクロスで活躍する社会人ライダーの腰山雅大さんが注目したのは『栗村修の“輪”生相談<164> 16歳男性「夜の営みは競技に影響を与えますか?」』の記事がバズッた点です。競技者として、「オールアウト」を真面目に分析してもらいました。

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栗村さんのユーモアに感服

 『Cyclist』編集部の記者が選ぶ「今年の注目ニュース」というお題を頂戴し、ふと頭によぎったのがこちらの記事。『栗村修の“輪”生相談<164> 16歳男性「夜の営みは競技に影響を与えますか?」』というものだ。

Facebookの「いいね!」数が4000を超えた栗村修さんの連載・“輪”生相談『「夜の営みは競技に影響を与えますか?」』回

 本編はコラムでありニュース記事ではないものの、Facebookでは大量のLikeを稼ぎ出し、Twitterで散々バズっていた。そんな観点で言えば、記事掲載そのものが私にとっては大きなニュースであった。本文では質問者の若者に対して、栗村修さんがユーモアを交えて教養ある答弁されている。ぜひご一読いただきたい。

 さてこの記事に反響が大きかったのは文脈のユニークさは当然ながら、やはり同じ煩悩を抱える方が多かったのが理由ではなかろうか。正直に告白すれば私もその1人である。レース前日にソロ活動でオールアウトすべきか否か、大真面目に悩んでいた。

 少し論じてみたい。例えば生理学の観点から見ると、1回の(わかりにくいので以降正しい表現を使うが)射精で失うエネルギーや栄養素というのは微量であり即補給が可能であろう。心肺機能においても試合直前でもなければ影響がなさそうだ。もしくは射精に至る理由がセックスであっても消費カロリーは然程大きいとは考えられず、レース時のウォーミングアップの方が余程エネルギーを消費している。またアスリートのフィジカル向上にテストステロンが大きく関わっているのは知られたところだが、セックスによってテストステロンが多く分泌されるという話もある。

 栗村さんも指摘されていた “フォーム” に関しても、バイオメカニクス的な発想で着目すればフォームによっては身体の柔軟性が保たれる可能性も高く、アジリティ(身体を素早く動かす能力)向上にも役に立つことから、むしろポジティブに捉えることも出来ると言えないだろうか。それがどのようなフォームでどの程度のアジリティなのかはみなさんの想像にお任せしたいと思う。

大事なのはメンタルコンディショニング

 ちなみに参考文献として以下のような総説も見つけたが、結局は様々な論文は存在するものの試合前の性行為や自慰行為による明確な影響というのはデータとして不十分だと結論づけられていた。(参照 「Sexual Activity before Sports Competition: A Systematic Review」

 ただ、試合前に忘れてはならないのがメンタルコンディショニングである。闘争心、試合への集中など、精神がほどよい緊張状態・興奮状態を維持出来ていることが重要だ。この点において射精が試合結果と大いに関係しているのではと私は感じている。ただ具体的にスポーツとこの点を交えて論じている研究結果などは見つけることが出来ず、ネットで拾った情報や自分自身の身体に起きている生理現象から結論を出している。

 そのポイントとして登場するのが、俗に言う“賢者タイム”と呼ばれるもの。行為を終えたと同時に性欲が急速に減退し、“やる気”が損なわれるような気分に陥る現象だ。これは射精後に脳から出るホルモンが関係しており、プロラクチンの作用がそうさせているという。このプロラクチンにはドーパミンの分泌を抑制させる働きがあり、それによって執着心などが薄れていく。またプロラクチンによってコルチゾール(ストレスを感じた時に分泌され筋肉を分解する作用を持つホルモン)の活動も高めてしまう懸念もあるという。また実際に自身がトレーニングや試合前などのタイミングで行為に至り、それがパフォーマンスにどう影響したかを思い返せば、射精そのものが何かしらの悪影響を発しているのは明らかだと考えている。

昨年、筆者の3度目となる全日本シクロクロス選手権。3回とも前夜は行為をせずに過ごしている Photo: Kei Tsuji

禁欲生活を語ったreplicantfm参照

 以上のことからレース前日や、トレーニング前などの“ソロ活動”、または“ユニット活動”はあえて控えている。またどの程度でリロードされるのか、つまり何日ほど禁欲生活を送る方が良いかについては、興味深いメソッドがポッドキャスト上で語られていたのでご紹介しておこう。Replicant.fm(レプリカントエフエム)という、毎回様々なゲストと彼ら彼女らが持つストーリーをシェアしている番組がある。第62回、ランナーとして著名なアンディ氏が語った内容として試合前の『オナ禁メソッド』が取り上げられており、実践を元にしたエピソードが語られている。

 実際に自分も「ここぞ」と言う一番でやってみたが、それなりの結果が得られたと個人的には評価している。気になる方は一度番組を聴いてみることをオススメしたい。ということで、有効なエビデンスは今のところ存在しない以上、予測憶測妄想の粋を超えないが、とても興味深いトピックであることは間違いない。自転車競技ではいま若い選手がたくさん活躍していることから、スポーツにまつわる研究が多くなされていることが見て取れるゆえ、こういった特殊な研究結果も随時増えていくのではと期待する。

 またこの「輪生相談」に質問をされた高校生も、この記事に共感を持っていただいた方も、良いお年を迎えられ、来年も楽しい輪生を過ごされることをお祈りしたい。

腰山雅大
腰山雅大(Kossy)

自転車歴20年の社会人アスリート。BMXパーク競技を経て、数年前からシクロクロスへ参戦、ボーダーレスな自転車競技活動が注目される。All-City Cyclesのライダーとしてシングルスピードで国内トップカテゴリーを走っている。コーヒーやクルマの造詣も深い。

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