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旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<44>海外ツーリングで必要な工具と補修パーツ 自分の旅スタイルから導く選択肢

by 昼間岳 / Gaku HIRUMA
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 長期海外ツーリングを始めるにあたり、どのリペアパーツや工具を持って行くかは頭を悩ませた。パンク修理セットやチューブ、そして六角レンチ、ブレーキ・シフトワイヤーは持ってくとしても、ワイヤーカッターはどうするか、などだ。

アメリカでボルトを踏んで車輪に巻き込みフロントフォークが曲がるトラブルにあった。この時はフォークを抜き踏んで曲げ直し、ブレーキ位置を調整してなんとか自走できるところまで仕上げた Photo: Gaku HIRUMA

重量物を運ぶほどメンテや修理は頻繁に

 僕は心配症だったので、基本的なトラブルやメンテナンスは全て自分で対応できるくらいの工具を持って行った。チェーンカッターにハブスパナ、BB関係の工具。スプロケ外しは柄を切って短くし、少しでも軽量化して持って行った。

 と言うのも、60kgほどの荷物を積んで走らなければならないため、足回りの負担は思った以上に早く、定期的なメンテナンスや修理交換が必要だったからだ。

ホロ―テック2規格のクランクが破損し、交換する様子。重い荷物を積んでいると、足回りの負担は思っている以上に早く、交換や定期的なメンテナンスが必要だ Photo: Gaku HIRUMA

 常に持っていたリペアパーツは、パンク修理セットに予備チューブ2本、ブレーキシュー、ブレーキ・シフトワイヤーとチェーンのコネクティングピン。そしてスポークとニップル位だったが、工具はかなり重たかった。そして交換が近くなってくるとチェーン本体やタイヤなどもも持ち運んでいた。

意外なシーンで役に立つ

 今思えば、そこまで持つ必要があったか疑わしいが、予想外のトラブルにも対応できるという点では役に立った。

 例えば旅の前半に持っていたワイヤーカッターは 、文字通りワイヤーを切るのにとても役立つが、出来栄えを気にしなければ、もっと小型のニッパーでもいい。極端な話、自転車屋にワイヤーを切ってもらうまでは何とかなるので、これは本当に重たいだけの長物だった。

飛行機輪行の際やメンテナンスにも工具は重宝するが、割り切ってショップに任せるという手もある Photo: Gaku HIRUMA

 ところがワイヤーを切る以外でとても役に立つことが一度あった。秋のヨーロッパ・アルプスを走行中、テントを張った夜に大雪に見舞われた時のことだ。

 なんとかテントを撤収して、雪に埋もれている自転車と荷物を掘り起こし、悪戦苦闘しながら出発準備を整えて、峠に取り掛かろうとしていた矢先、悪夢のパンク。かじかむ手で車輪ごと外し、タイヤレバーを引っ掛けて、いつもの様にグイッとタイヤを外そうとしたら、「バッキ!」とタイヤレバーが折れてしまった。

 寒さのせいで何も考えずに再び予備のタイヤレバーを引っ掛け、タイヤを外そうとしたら、 無情にも2本目も折れてしまい、ここでようやく事態の悪さに気が付いた。偶然折れたのではなく、僕の持っている樹脂製のタイヤレバーは寒さと乾燥で折れてしまったのだと。ラスト3本目のタイヤレバーは慎重に扱ったが、簡単に折れてしまい雪の中を呆然と立ち尽くした。

乾燥と低温で樹脂タイヤレバーが簡単に折れてしまい、たかがパンクで窮地に陥った Photo: Gaku HIRUMA

 ヒッチハイクして町に行くにも、雪が降る朝の山道はあまりにも車が少ない。自力で戻るには寒さと雪が大きく立ちはだかった。それに自転車屋があると思われる規模の町は、歩いて戻るには遠すぎる。

荷物を少量にする選択肢も

 自転車のトラブルで真っ先に思い浮かべるのがやはりパンクだ。自転車店勤務時代からものすごい数のパンク修理をしてきて、旅中でも数えるのを諦めるくらいパンクを直した。

 だからパンク修理キットの残量は常に気にしていたし、そろそろ交換しようと持ち運んでいた新しいタイヤもあった。予備のチューブもあるのに、まさかタイヤレバーが折れ、修理の基本中の基本であるパンク修理ができないなんて夢にも思わなかった。色々な物を使ってタイヤを外せないか試したけど駄目だった。

最近ではタイヤの耐久性も上がったので、毎回タイヤを持ち運ばなくても良くなった。それでもタジキスタンのパミールの様な無人地帯では、お守りの様に持ち運んだ Photo: Gaku HIRUMA

 最悪の事態で呆然としていると、今まで一度も使われたことのないワイヤーカッターが目についてひらめいた。

 「外せないなら、切ってしまおう」。

 新しいタイヤとチューブがあるので、その場で古いタイヤをワイヤーカッターでザクザクと切った。流石の切れ味で難なくタイヤを切り離すことができ、新しいタイヤに履き替えてなんとか事なきを得た。

 まさか、こんな形で使い窮地を脱出するとは思わなかったが、後半の旅ではワイヤーカッターを持ち運ばず、代わりにアルミ製のタイヤレバーを持ち運んだ。このようにどんな工具でも、「〇〇は絶対に必要ない」と言えないのが悩ましいところだ。

 荷物の少ない欧米人サイクリストは、工具やリペアパーツをほとんど持っていなかったが、荷物が少ないがゆえに、トラブルが起きるとすぐにヒッチハイクして町まで行き、自転車屋に修理してもらっていた。このように割り切って荷物を減らすという選択肢もある。

昼間岳(ひるま・がく

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!

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