2020新春スペシャルインタビュー<1>新城幸也が語る2020年の展望<前編> 目標はツール・ド・フランスと東京五輪出場

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 2019年はシーズン途中の合宿中の怪我から復活し、全日本選手権を2位、そしてブエルタ・ア・エスパーニャ完走を果たした新城幸也。2020年1月現在、五輪選考ポイントで2番手につけている新城に、今季の目標や意気込みを語ってもらった。前編、後編の2回に分けたスペシャルインタビューの初回をお届けする。

新春スペシャルインタビューで2019年の振り返りと、2020年シーズンの目標を語った新城幸也 Photo: Shusaku MATSUO

 インタビューを行ったのは2019年12月。 シーズンイン直前、チーム合宿が始まる前の僅かな時間にリラックスした表情で取材に臨んだ。

予想よりも走れた全日本選手権

――Q.まず、今季を振り返ってどのようなシーズンだったでしょうか?

 開催を翌年に控える五輪を意識したシーズンでした。既に決まっている出場枠2枠に対し、UCIポイントを重ねることを目標としました。1月のダウンアンダーから始まり、ツアー・オブ・オマーンへ出場。その後はタイを拠点としてカタルーニャへ出るために準備していましたがタイで落車。骨盤とヒジを骨折してしまいました。

 2カ月はバイクに乗れない生活でした。ヒジは手術しましたが、骨盤は自然治癒としました。筋肉を切るよりは良いと判断したからです。初めて2カ所同時に骨折しました。1カ所だけならその部位を気にすればいいですが、2つをケアしないといけないので動きが限られましたね。

タイ合宿中の落車で、骨盤とヒジの2か所を骨折した新城幸也(本人提供写真)

 データ上ではシーズン最も調子が上がってきた良い時の落車でした。追い込んでたし。(骨折が治ってからは)1カ月間トレーニングし、クロアチアで復帰。そして全日本へ出場し、イタリア(アドリアティカ・イオニカ)、ロンドン、そしてブエルタ出場へと繋がりました。数値上でも再びブエルタで良かったレベルまで上がってきた。1時間のアベレージパワーも1年ぶりに更新したんです。2017年のツール・ド・フランスに出場した時よりもよりいいパフォーマンスであった。終わってみれば調子を戻して、安心できたシーズンでしたね。

――Q.全日本選手権の走りはご自身でどう評価しますか

 とことんトレーニングはして臨みましたが、あそこまで走れるとは思わなかった。チームから予想よりも早くレース(ツアー・オブ・スロベニア)をもらえたことが要因でしょう。ステージレース1つしか完走していなかったので、全日本ロードのスタート直後はきつかったですね。全日本は「獲れればいいなあ」という感じでした。

怪我明けで万全のコンディションではないものの、全日本選手権で2位入賞を果たした新城幸也 Photo: Shusaku MATSUO

 一応、ツールのリザーブに入ってはいましたが、この時の状態でツール走るのは死にに行くのと同じです。なので、全日本は通過点と言えたでしょう。今年のピークはブエルタでした。

――Q.個人TTも出場していましたね。新城選手としては珍しかったと思います。

 コンディションを上げたかったので出場しました。1時間はレース強度で走れるいい機会ですからね。欧州のレースから中3日での出場でしたが、全日本ロードレースのためにも(連続して走ることは)良いと思いました。

全日本個人タイムトライアル選手権に出場した新城幸也 Photo: Shusaku MATSUO

 実はシーズン初めてのTTでした。練習無しでいきなりの本番です(笑)。新しいメリダのTTバイク「タイムワープ」に乗りたかったというのも理由の一つです。

苦手な上りにフォーカスした練習を

――Q.2020年に向けてチームとしての取り組みを教えてください

 12月半ばからチーム合宿が始まります。午前中は3~5時間程のライドがあり、その後はずっとミーティングです。ウェアや各アイテムを合わせたり、今年はどんな薬がドーピングチェックでNGかドクターからの確認があったり。SNSでやってはいけないことの講習を受けるメディアミーティングもあります。

――Q.2020年のスケジュールもそこで決まるのでしょうか

 そうですね。監督やコーチとは面談を行いスケジュールを決めますが、出場したい希望のレースはキャンプ前から事前に伝えています。どういうレースを走りたいか11月中に聞かれるので。

 目標はツール・ド・フランスと東京五輪だと伝えました。「どのような条件で出場できるのか?」など彼らから質問がありましたが、推薦枠などはなく、純粋に5月末までのポイントで決まると伝えています。その目標に向けてプランを決定しました。まずはダウンアンダーからスタートし、オマーン、アブダビツアーと続きますね。チームの他のメンバーもレースプログラムを作っている最中でしょう。

――Q.具体的な目標が決まっていますが、何をフォーカスして日々トレーニングを重ねますか

 ツールのメンバーに入り、五輪に出場するためにはとにかく上らなければなりません。 2019年のブエルタが過去最高の獲得標高で、それを経験しているので特に強く思いました。2019年のブエルタは異常でしたよ(笑)。スタートしてすぐ1級山岳が始まりましたからね。

 グランツールも上りが多くなってきました、上れないと逃げにも入れません。一山越えてから逃げができるんです。少し前は平坦で逃げができていた。レース展開にも変化が表れています。いつも同じ人が逃げていて「なぜ?」と思った人が多かったでしょう。上れる人しか逃げられないからメンバーが固定されたんです。

過去最大の獲得標高だったブエルタ・ア・エスパーニャを完走した新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 好きな物ってよく食べるでしょう。嫌いなものはあまり食べませんよね。自転車も同じです。僕は上りはどちらかというと嫌いです。逆に好きな物って何回でもできるからどんどん強くなる(平坦でのアタックなど)。克服するにはあえて嫌いなことを反復するしかありません。努力して登坂力をつけるしかない。総合85位で終えた2016年のツールくらい上れるといいな。それくらいまで上れればいいかなと思っています。

――Q.五輪選考を勝ち抜く戦略は?

 出場するレースでポイントを獲得するしかありません。他の日本人選手はナショナルチーム遠征などでポイント獲得のチャンスがありますよね。台湾とかランカウイとか。一見、僕の場合は主戦場とするワールドツアーは総合で60位までポイントが付き、さらに五輪選考ポイントは係数としてランクAのレースが10倍、ランクBは6倍がかけられるため有利です。

五輪選考について「ただ結果を出してポイントを取るだけ」と率直に述べた新城幸也 Photo: Shusaku MATSUO

 しかし、UCIワールドツアーはポイントが高いですが、僕の場合はチームの仕事をこなしつつ取るしかありません。アシストの仕事を完遂し、遅れながらも頑張って総合60位に入るように。まぁでも1つ大きいレースを1回勝てばいいんですけどね。そしたら誰も追いつけないですし。

――Q.他のライバルは意識しますか?

 こればかりは競争ですからね。ポイント採った人が五輪に出られる。1年前に決まったレギュレーションですし、採点に関してはみんな同じ状況です。相手がどうしたから、どうすることでもない。結果をただ出すだけです。

――Q.話は前後しますが、今年も怪我から見事に復帰しました。調子も精神的にも落ち込む落車ですが、どのように復活させるのでしょうか? 一般サイクリストに向けたアドバイスがあれば教えてください

 僕らの場合は復活しないと来年の契約がありません。職を失ってしまいます(笑)。この点は一般の人と違いますが、大好きな自転車ができなくなることは同じです。戻らなければならないというプレッシャーはありますね。まだ自転車をやりたいという。

 僕の場合は助けてくれる人がとても多いんです。それが支えにもなっていますね。怪我をしてもスポーツマッサージ治療院・エンネの中野さんや穴田さんがエンディバ(低周波治療器)を「いつでも使っていいよ」と言ってくれる。低周波治療器って言っても気を付けないといけないんですよ! 普通の低周波治療器では患部にプレートやボルトなどの金属が入ってるから、それが反応して内部から熱くなってしまいます。間違って使ったら大変です。金属に反応しない低周波治療器で気を付けてやらなければならない。だからインディバを使っています。

 食べ物は腹八分目でカルシウム、タンパク質、ビタミンなどを多めに取ります。普段と変わらないですね。あとは極力動かないことです。落車して1週間は動かない。おとなしくします。インディバを使うと血が巡り、痛みが増しますが治療は早まります。一方で冷やすと傷みは感じませんが治りが遅くなる。治しながらリハビリを同時進行する僕の場合、国立スポーツ科学センター(JISS)などを使ってそのギリギリを狙うわけです。動かないものを動かすっていうのは自分の力だけでは駄目。トレーナーさんに手伝ってもらったりします。助けていただくからには恩返ししないといけない。そこもモチベーションの一つですね。

――Q.バイクに乗れてからはどのようにビルドアップしていくのでしょうか

 プロ選手でも怪我明けは普通の人と同じ実力レベルになってしまいます。バーンってペース上げて280Wで走ったら10分持ちません。200Wで走るしかないんです(笑)。ただ流すだけ(笑)。

 でもそれが楽しい。プロになると日々のレベルアップの実感が少ないんです。1%の力を上げることに毎日尽くしています。1時間で200Wしか走れなくても、次の週は250Wと成長していきます。成長幅が普段より大きいから楽しいんですね。自転車を始めたときの感覚に近いです。

<後半へ続く>

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