title banner

栗村修の“輪”生相談<168>50代男性「クランクを170mmから160mmに変えたら上りが遅くなってしまいました」

  • 一覧

 
 最近の悩みですが、身体の硬い人はクランクを短くした方が良いという記事を読んで170mmから160mmに変更しました。

 2カ月弱乗ってますが上りでの速度が安定しません、以前の上りと比べても速度の山がギザギザしています。タイムも遅くなってます、ケイデンスは上がっているのですがどのような要因があるのでしょうか?

 クランク長さ戻すべきでしょうか? 良いアドバイスお願いします。

(50代男性)

 僕が初めてのロードバイクを買ったころから、どういうわけか「クランク長の基準=170mm」という前提がありました。根拠はわかりません。ポジションに関する常識が変わってきた現在でも、クランクに関してはなぜか170mmが基準のままのようですね。

 しかし落ち着いて考えてみますと、クランク長のバリエーションの幅はあまりにも狭いことが分かります。ロードバイクに乗る人には、身長150cmの人もいれば2mの人もいるわけで、つまりサイズが30%以上も違うのですが、クランク長にそこまでの幅はありません。165mmのクランクと175mmのクランクを比べるとえらい違いのようですが、差は1割もないのですから(比較対象として重要なのは身長よりも股下になります)。

 上記の事実は、身長が低い人ほど、脚の長さに対するクランク長が長いということを意味しています。というわけで、身長が低い人ならクランクを短くしてもよさそうですが、別の問題が生じます。走り方とクランク長の相性です。

 クランクが長いほど、てこの原理によりトルクがかけやすくなります。しかしその一方で脚の可動範囲は大きくなり、つまりカラダへの負担も増えるはずです。したがって、比較的短時間(数分〜数十分)だけパワーを出したいなら、パワーはトルク×回転数ですから、クランクを長くしてトルクをかけやすくする解決策が考えられます。

 これは経験的にも正しいんです。たとえば、宇都宮ブリッツェンの増田成幸選手はタイムトライアルのときだけ少し長いクランクを使っていますし、そういう選手は他にもいますし、80年代から見かけました。

身長186cmのクリストファー・フルーム(中央)のクランクは175mmと一般よりやや長めだが、寸法的にはほんのわずかの差だ Photo: Yuzuru SUNADA

 先に結論を述べますと、質問者さんはクランクを伸ばしたほうがいいと思います。比較的短時間、高パワーを出すヒルクライムはTT並みにトルクを必要とするはずです。ケイデンスが低めになることを考えるとなおさらです。実際、タイムも落ちてしまっていますよね。

 体が硬い人は短いクランクを、という理論は知りませんでしたが、おそらく脚の可動域が小さくなることと、上死点が低くなることを狙ったものなのでしょう。それはその通りなんですが、パワーを求める走り方には向きません。ツーリングやポタリングの強度ならよいと思うのですが…。

 最後に一つ付け加えると、クランク長を変えるのはかなりの冒険です。僕も現役時代に一度、2.5mm長いクランクを試したことがありました。最初の数週間は凄く速くなった錯覚に襲われたのですが、その後、一気にスランプに陥ってしまいました。

 毎分90回転以上で毎日数時間走る選手レベルですと、10年も走ればペダルの総回転数はそれこそ5千万回転に達したりもします。そうなると僅か2.5mmの差でもカラダに刻み込まれたペダルの軌道に狂いが生じ、短期間であれば大きな影響はないものの、これが数週間、数カ月続くと人によってはスランプに陥る原因となってしまったりもします。

 体が硬く、しかしパワーを出したいなら、クランク長ではなく体の可動域を広げるトレーニングを取り入れたほうがいいと思います。同時にクランク長を変えることにより、カラダが長時間かけて記憶した「慣れ」の部分を狂せてしまうリスクがあることも知っておいてください。

 そういった意味では、クランク長を伸ばす際は、カラダがリセットされているオフ明けから使いはじめ、また、股関節などの可動域を広げるストレッチなども併用すると良いと思います。

 一方、クランク長を短くする際は、トルク面において確実に不利になってくるので、それをなに(回転数など)で補っていくのかをご自身で明確にした方が良いと思われます。

 いずれにしても、基本のクランクの長さというのは、これ!と決めたあとはあまりコロコロと変えない方が良いように感じます。

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまで、タイトルを「輪生相談質問」としてお寄せください。

この記事のタグ

栗村修の“輪”生相談

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

Cyclist CLIP

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載