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つれづれイタリア〜ノ<135>ジャーナリストの熱い戦い UCIプロレースと同時期に行われる別の世界選手権

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 9月末、仕事の関係でイタリアを訪れたついでに、ある大会に出てみたくなりました。それは自転車の世界を専門的に扱うジャーナリストの自転車競技世界選手権です。ちょうど私の地元から近くの場所で行われ、初めて参加してみました。今回のコラムではその不思議で面白い世界を紹介します。

サイクルジャーナリスト世界選手権のラインレースの様子 Photo: Marco Favaro

欧州ではメジャーな職業別大会

 国の威信をかけて、プロのレーサーたちが毎年9月末にUCI自転車競技世界選手権に参戦します。2019年はイギリス・ヨークシャーで行われ、例を見ない悪天候の影響で歴史に残る熱戦になりました(23歳ペデルセンがデンマーク初の男子エリート制覇 UCI世界選手権ロードレース)。

サイクルジャーナリスト世界選手権の過去20年間の成績一覧(国別)

 一方、それとは別に、20年前から自転車競技を専門に扱うスポーツジャーナリストの自転車競技世界選手権が、同じ時期に行われています。懇親会ではなく本物の大会です。ヨーロッパではこういったイベントは珍しいものではありません。

 古くからギルド制度がある影響で、職業に対する強い所属意識があります。そのため、年に一回同じ職業の人が集まり、様々なスポーツに挑みます。歌手対弁護士、郵便局員対政治家など、ジャーナリストも例外ではありません。一番人気は自転車とサッカー。続いてテニス、水泳などと言った大会もあります。参加者にはポイントが与えられ、年間チャンピオンが決まります。イタリアではプロ歌手、郵便局員サッカーナショナルチームも存在する徹底ぶりです(https://www.nazionalecantanti.it/)。

3つの種目で競う本格的なレース

 イタリアのサイクルジャーナリストによる国内選手権は1956年に始まりました。1950年代と言いますと戦後復興が進み、自転車の全盛期。国内だけでは面白くないと判断したイタリアサイクルジャーナリスト協会は、ほかのヨーロッパの国々に広げようと、1968年に初めて自転車競技ヨーロッパ選手権を開催しました。

 1982年に一旦中断しましたが、ジャーナリストの交流を広めようと考えたAIJC(Association Internationale des Journalistes du Cyclisme、国際サイクルジャーナリスト協会)が、世界選手権という形で復活させたのです。初回はフランスのレエルビエで開催され、毎年違う国で行われます。今年の舞台は自転車を愛してやまない地域、イタリア北部のトレヴィーゾ県でした。

開催国一覧

2000年/フランス
2001年/ルクセンブルク
2002年/ベルギー
2003年/スイス
2004年/イタリア
2005年/サンマリノ
2006年/オーストリア
2007年/オーストリア
2008年/フランス
2009年/スロベニア
2010年/ベルギー
2011年/イタリア
2012年/ギリシャ
2013年/オーストリア
2014年/オーストリア
2015年/イタリア
2016年/ギリシャ
2017年/ドイツ
2018年/ベルギー
2019年/イタリア

 さて、サイクルジャーナリスト選手権はどんなものでしょうか。サイクルジャーナリストであることを証明できれば、誰でも参加できます。具体的な参加資格は新聞、雑誌、テレビ、インターネットで活躍し、AIJC(国際サイクルジャーナリスト協会)発行の会員証を持っている者、またはプレスとして証明できる資格を持っている者。メディカルチェックも必須です。

 行われる種目は3つ。個人TT、スプリントとラインレースです。カテゴリーは男子M1(21-44歳)、男子M2(45-59歳)、男子 M3(60歳以上)と女子W(1つのカテゴリーのみ)。

 種目別の各カテゴリーの優勝者にはチャンピオンにチャンピオンジャージが与えられる仕組みです。世界選手権さながらの本格的なレースです。今年は14カ国から110人が集まりました。開催国のイタリアから一番多く、続いてドイツ、ベルギー、ポーランド、ロシア、スロベニア、オランダ、ウクライナ、アルジェリア、チェコ、フランス、ノルウエー、スペインとアメリカ合衆国。私は日本のジャーナリストでしたが、イタリア登録となりました。

ポーランド、イタリア、オランダのジャーナリスト。国籍を問わず交流が深まる Photo: Marco Favaro

2019年の大会プログラム

大会プログラム
① 9月26日(木):開会式
② 9月27日(金):個人タイムトライアル (8.5km)
③ 9月28日(土):個人スプリント(300m)
④ 9月29日(日):ロードレース(94.6km/獲得標高1550m)

ヨーロッパの洗礼、石畳の道路

 私がイタリアに到着したのは9月27日でしたので、開会式と個人タイムトライアルに参加できず、28日の個人スプリントからの参戦となりました。まず驚いたのが、会場の設備と参加者の本気度。まるでプロのレースに参加しているようです。個人スプリントの舞台は、トレヴィーゾの中心地の一角でした。警察はレース会場周辺を通行禁止にし、交通整理もされていました。東京で例えると、平日に丸ノ内の一角を通行止めにすることです。コースの石畳区間が長く、久しぶりにヨーロッパの道路の洗礼を受けました。

個人スプリントのスタート前 Photo: Marco Favaro
コースの半分は石畳 Photo: Marco Favaro

 翌日のラインレースは、世界遺産になったばかりのコネリアーノとヴァルドッビアデネのプロセッコの丘陵地で行われました。壁のような坂が多く、ジロ・ディタリアはよく世話になる場所です。

ラインレーススタート前 Photo: Marco Favaro

 今回は一般市民が参加する「グランフォンド・プロセッコ」と同時開催となりました。距離96km、獲得標高1550mに加え、グラベルロードや石畳区間ありバラエティに富んだコースです。

グランフォンド・プロセッコサイクリングのコース。一般市民が4カ所の合計タイムで争う

 一般市民は決められた上り区間の合計タイムで優勝を争いますが、ジャーナリストは全区間がレース区間です! 一般参加者の合間を縫いながら、レースを進めなければなりません。困ったのが、エイドステーションの誘惑! スイーツ、フルーツ、スポーツドリンクの側に地元のプロセッコ(スパークリングワイン)が振る舞われていました。悪魔の囁きに負けないようにゴールまで我慢しました。

ラインレースの様子グラベル道を進みます Photo: Marco Favaro
世界遺産となったプロセッコの丘陵地に位置する私設のエイドステーション。全てがお洒落です。 Photo: Marco Favaro

 ここで補足ですが、イタリアでも飲酒運転は厳しく罰則されます。でも自転車競技大会の場合は別です。飲み過ぎでも自分自身や他人に明らかな害を与えていない場合、「大会」という特殊な環境の中ではある程度の飲酒は黙認されます。日本で例えると、お尻を出して街を歩くと公然猥褻行為として逮捕されますが、お祭りという特殊な枠組み内なら黙認されるはずです。さらにイタリアでは泥酔するまで飲むこと自体がみっともないとされていますので、誰も暴飲しません。

 レースが終わると、市民レースとは別の会場が用意され、授賞式にヴァルドッビアデネ市長をはじめ、各自転車競技の代表、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネを引退したモレーノ・モゼール選手も挨拶に訪れ、各カテゴリーに優勝した人にチャンピオンジャージが贈られました。素晴らしい環境の中で素晴らしい大会が閉幕しました。

ゴール後の様子。高級ホテルのようなフィンガーフード。地元のホテル専門高等学校が用意した Photo: Marco Favaro
表彰式に元選手モレーノ・モゼールも登場(写真右下) Photo: Marco Favaro

 こういったイベントの重要な役割は、普段異なる国、異なるメディアで働いているジャーナリスト同士の交流を深めるとともに、開催地域を知ってもらうことです。今回は地元イタリアでの開催でしたが、来年はギリシャでの開催が予定され、ぜひまた参戦してみたいものです。そしていつか日本での開催も実現したいです。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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