阿蘇のあか牛などグルメも満喫道の駅阿蘇から出発! e-MTBで牧野を縦横無尽に走る「草原ライド」

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 雄大な外輪山と阿蘇五岳、その草原の間を通る『ミルクロード』など、熊本・阿蘇は多くのサイクリストに人気の土地だ。その阿蘇で牧草を育てる草原をe-MTBで走る、新しいサイクリングアクティビティーが人気だと聞き、Cyclist編集部が体験した。11月下旬「道の駅・阿蘇」発のe-MTBライドに参加した様子をお届けする。

阿蘇の根子岳をバックに牧野をe-MTBで走って満喫する Photo: Kenta SAWANO

阿蘇五岳から地球の息吹を感じる

 目の前には噴煙を出す阿蘇五岳が快晴の青空の下、パノラマ写真のように広がる。そしてぐるりと後ろを振り向いても360度草原が広がる絶景。地球が生きていることを実感できる雄大な風景を前に息を飲む。それだけでも十分なのだが、今回はそこをe-MTBで自由自在に走るために阿蘇までやってきた。それが今、世界でも阿蘇でしかできない最高の自転車の楽しみ方「草原ライド」だ。しかも草原は「牧野」(ぼくや)と呼ばれる中々入れない貴重な場所なのだ。

ガイドとだけ入れる牧野

阿蘇の外輪山に広がる牧野 Photo: Kenta SAWANO

 「牧野」とは、普段は一般の人が入ることができない牧草が生える草原のことで、牛や馬の放牧したり、餌の牧草を育てている。熊本県の草地畜産研究所によると、阿蘇地域には、約2万2000haに及ぶ牧野が分布し、約170の牧野組合が管理、利用しているという。その中を専門の資格を持ったガイドにアテンドしてもらい、マウンテンバイクで走るのが「草原ライド」だ。今回の「草原ライド」は、阿蘇でサイクルツーリズムを推進している阿蘇サイクルツーリズム学校「コギダス」という取組みの中で道の駅阿蘇を中心に行われている。

 ガイドは草刈りなどで草原を手入れすることで、人員不足から荒れていく草原をしっかり維持しながら、サイクリストや観光客を誘致する循環が生まれている。自転車好きにとっては、広大なフィールドを借り切って、交通ルールにも縛られることなく、好きなルートを思いっきり走ることができる、最高のライドだ。今回メインで入った「町古閑(まちこが)牧野」は12~翌4月まで、もうひとつの「下荻の草牧野」は通年走ることができる。

木製のバイクラックも完備の「道の駅阿蘇」 Photo: Kenta SAWANO
「道の駅阿蘇」の休憩所からは雄大な外輪山を望める Photo: Kenta SAWANO

 午前9時集合、スタートは道の駅・阿蘇。中には地元の採れたて野菜や特産の肉類やお菓子などお土産がずらりと並んでいる。JR阿蘇駅に隣接し、車でも鉄道でもアクセスの良い場所だ。バイクラックや24時間使える水道が充実しているのはもちろん、メイン駐車場とは別にサイクリスト専用駐車場も完備するなど、至れり尽くせりだ。

草原ライドに参加のサイクリストとスタッフ。左から松澤一さん、道の駅阿蘇のマネージャー下城卓也さん、ガイドの橋本幸太さん、中尾公一さん、大関賢土さん Photo: Kenta SAWANO

 今回のライドに集まったのは5人。道の駅阿蘇のサイクルアドバイザーの“コルナゴ部長”こと中尾公一さん、全国の坂を上って200以上の峠を紹介するブログ『え、登らないんですか?』を運営するブロガー大関賢土さん、東京を基盤に日本全国を始め世界を走る松澤一さん。そこにライドを引率してくれる地元のサイクリング会社「トリムカンパニー」の橋本幸太さん、サブ案内人として「道の駅阿蘇」のマネージャーでサイクリストの下城卓也さんが加わった。

途中、箱石峠から根子岳を望む Photo: Kenta SAWANO

最初にタイヤと靴を消毒

消石灰の上を通ってタイヤを消毒 Photo: Kenta SAWANO

 全員で1台のバンに乗りこみ雄大な阿蘇の景色を見ながら移動。阿蘇・根子岳を間近に見える箱石峠を経由して移動時間30分。目的の牧野に降り立つとガイドの橋本さんと手際よく大型テントを張っていく。今回のライドで重要となるベースキャンプを完成させ、いよいよ出発!とその前に、実は牧野に入るためにしないといけない儀式がある。それはMTBのタイヤと靴の消毒だ。消石灰を一列に撒いてその上を2回通って消毒する。草原に生きる大切な牛や馬を疫病から守るための大事な作業だ。

ベースキャンプのテントができたら出発 Photo: Kenta SAWANO
レンタルe-BIKE、パナソニックサイクルテックの「XM1」を利用 

 まずは割合なだらかな斜面でe-MTBの特性やブレーキのかけ方を学ぶ。そこからライドリーダーの橋本さんについていきながらも好きなルートを思い思いに走った。急斜面を下りながら、そこから一気に上る。e-MTBだから負荷は少ない。ヒバリが鳴く声と、e-MTBのモーター音だけが草原に響いた。

広大な牧野はどこを走っても良い。上空から見ると人間の小ささを実感する Photo: Kento OZEKI 

草の上を走る難しさ

 広大な牧野はどこを走っても構わない。それなのに最初はガイドの橋本さんの後ろについて一列に走っていた。「普段の公道とは違うのに真面目だよね。みんな」と最年長の松澤さんが大笑いして、さらに和んだ。牧場は草地で走るのが簡単だと思っていたが、そうではない。草がやや伸びたところは横に滑るし、刈られた部分が根っこだけ残り、「サクサク」と音が鳴りタイヤが刺さるようにハンドルが取られそうにもなった。意外とバランスが必要で、乗りこなす楽しさがあった。

e-BIKEの牧場ダウンヒルは思ったよりスピードが出た Photo: Kenta SAWANO

 最初の牧野で慣らし練習を終えると、橋本さんが「オネガエしましょう」を呼びかけた。「オネガエって何ですか?」聞きなれない言葉の意味を橋本さんに問うと「オネガエ⇒尾根替え」とのこと。ひとつの牧場から、別の牧野に移って違う尾根を走りに行こう、とのこと。フィールドも雄大なだけに、なんとも言葉のスケールもダイナミックだ。

通常なら上れないほどの斜度をe-BIKEだから上りきる  Photo: Kenta SAWANO
e-BIKEのダウンヒルは重量があるため、バイクコントロールを慎重に行う必要があった Photo: Kenta SAWANO

ジェットコースターのようなアップダウン

 狭い舗装路、グラベルを繋いで、別の牧野に向かった。次のフィールドは尾根を繋いで、アップダウンを続ける、ジェットコースターのようなコースだった。e-MTBだからか、やはり車体重量が重く、思ったよりスピードが出て、高速時にコントロールに神経を使った。ただそこが面白いところでもあり、下りから続く上りのノーストレスには変えがたい。

別の牧野に移って尾根を下っては上る繰り返す Photo: Kenta SAWANO
作業車が通ったままで耕した畑のようなオフロードを進む Photo: Kenta SAWANO 

 朝に凍っていただろう、霜柱が溶けた泥区間の上りは、普通のMTBではクリアできないであろう難しさだったが、e-MTBだと狙ったラインで気持ちよく進むことができた。尾根の頂上に上ると、阿蘇の外輪山や、風力発電所、遠くにはくじゅうの山々が眺められる。進むごとに山々の違った表情が見えるのも興味が尽きない。

ベースキャンプでランチ

 少し走るのに疲れたら、ベースキャンプに戻って一休みできるのも、このツアーの楽しいところ。風も少し冷たくなってもテントの中に入れば、日光の恩恵を受けて暖かい空気の中、橋本さんが入れてくれた熱いコーヒーと、人気のパン屋「パン工房豆の木」の木の実の阿蘇パネトーネを食べ、体を暖めた。楽しいライドの余韻を振り返るメンバーからは自然と笑顔が溢れた。

 ガイドの橋本さんは「女性だけのグループだと、グランピングが大人気で、少しe-BIKEで走って、ずっと居心地の良いテントでコーヒーを飲みながら話していることもありますね。それぞれの力量、目的に合わせたアレンジが可能です」と話す。

ベースキャンプに戻って楽しいランチタイム Photo: Kenta SAWANO 
ランチには、道の駅阿蘇で購入できる「2種のあか牛丼」 Photo: Kenta SAWANO
テントで飲むコーヒーに笑顔がほころぶ Photo: Kenta SAWANO

 お腹を満たして、もう少しライドを続けた。最後は橋本さん、下城さんが未開のルート探索にお付き合い。牛や馬の侵入を止める柵を開けながら進むと廃道になった舗装路に出た。すでに舗装を突き破って草が生えていてもどんどん進んだが、次第に草むらになり、そのまま進むことを断念した。大人の冒険のようなところもこのライドの楽しいところだ。普段は日本全国の坂をロードバイクで上っている大関さんでさえ「楽しむならe-MTBですね。通常のバイクだと躊躇してしまう坂もe-MTBなら遠慮なく行けますから」と興味津々だった。

最後の急斜面ヒルクライムもe-BIKEなら疲れ知らず Photo: Kenta SAWANO

 最後に付近で一番高い、家畜のための給水塔に登ってみた。そこまでの急斜面ももちろんe-MTBでのヒルクライムだ。高さ1m 大きさ3メートル四方ほどのコンクリートでできた給水塔からは南に阿蘇五岳、東を見れば、阿蘇市街の街並みが見下ろせた。外輪山の下に広がり、田畑に点在する家々が見える様子はこの街ならではのものだ。「これが阿蘇の風景。阿蘇の財産なんです。こういう風景を日本全国の方に見に来て走って欲しいですね」と話す下城さんの話に皆が頷いた。

給水塔のある高台に上って阿蘇市外を見下ろす Photo: Kenta SAWANO

地元の隠れ家で阿蘇の肉を堪能

 草原ライドを存分に楽しんだ後は、道の駅・下城さん、中尾さんおすすめのサイクリストに優しい肉屋さんでパーティーを楽しんだ。地元で有名な精肉店「カルキフーズ」のオーナーの軽木欣弥さんは、お店で阿蘇の新鮮なお肉を提供するだけでなく、アメリカの納屋をイメージした趣味部屋『カルキバー』で自らが包丁を握り、今回特別に肉をさばいて提供してくれた。

阿蘇産のお肉をいただきながら阿蘇のサイクリング話に花が咲く Photo: Kenta SAWANO
夜も阿蘇のあか牛を堪能 Photo: Kenta SAWANO
阿蘇のカフェ「Tien Tien」の馬肉やフルーツを美しく盛った前菜 Photo: Kenta SAWANO 

 阿蘇在住のサイクリスト・井上夫妻も合流いただき、地元のサイクリングスポットや季節ごとのサイクリング話に花を咲かせた。地元の銘店カフェ「Tien Tien」(ティアン・ティアン)のオードブルは新鮮なフルーツや馬肉が美しく盛ってあり、舌も目も楽しませてくれた。阿蘇といえば赤牛が近年人気だが、阿蘇産の豚肉でシャブシャブをシンプルに楽しんでから、メインの「あか牛のすき焼き」まで堪能した。

食事が落ち着いたら、軽木さんのギタープレーに聞き入る。部屋の番号?は「1129(いい肉)」 Photo: Kenta SAWANO

 お肉でお腹を満たしたらこのイベントのメインディッシュとも言える軽木さんのステージが始まる。その昔、渡米し腕を磨いたというプロ級のギターの腕前を、納屋に見立てたステージで披露。グラスを傾けながら、皆が阿蘇の夜に真空管アンプから流れるセミアコースティックギターから流れるジャズ、ブルースに酔いしれ、大満足の阿蘇のライドを締めくくった。

雪が降ったら「スノーライド」

雪の季節は、銀世界での「スノーライド」を楽しめる(道の駅阿蘇提供写真)

 草原が緑に包まれる春夏、紅葉、枯れ草が広がる秋…四季折々の風景が楽しみな阿蘇だが、実はこれからの季節、雪が降るような日こそがとっておきのライドができるという。地元で育った下城さんは「これからの季節は雪が降ると『スノーライド』になり、これもとても楽しいです。是非冬の阿蘇を走りに来てほしいです」とうれしそうに話した。暖かい阿蘇の人々と触れ合いながら、四季折々の草原をライドに、是非訪れてみてはいかがだろうか。

道の駅阿蘇発「草原ライド」

●ビギナーズMTB牧野ライド(5時間程度)

初めてのグループ向きMTBツーリング。
料金:7,000円(1人)/レンタサイクル1台1,500円
期間:12月~4月(町古閑牧野)、通年(下荻の草牧野)
※最小遂行人数:2名/最大遂行人数8名

●ガッツリクロスカントリーツーリング(5時間程度)

冒険心溢れるMTBライダーにオススメ。
料金:8,000円(1人)/レンタサイクル1台1,500円
期間:12月~4月(町古閑牧野)、通年(下荻の草牧野)
※最小遂行人数:2名/最大遂行人数8名

●ビックアップ牧野ダウンヒル遊び(5時間程度)

MTBの下り坂が大好き!でも上り坂は嫌いというライダーのためのプラン。
料金:9,000円(1人)/レンタサイクル1台1,500円
期間:12月~4月(町古閑牧野)、通年(下荻の草牧野)
※最小遂行人数:2名/最大遂行人数8名

熊本大震災からの復興状況は?

 筆者が以前から何度も訪問している熊本では、2016年(平成28年)4月に震度7の熊本地震が発生。そこから3年半が経ち、震災からの復興状況も視察した。

以前の場所から下流に600mほどに新しい阿蘇大橋の新設が進んでいた Photo: Kenta SAWANO 

 阿蘇大橋が崩壊した山は法面の整備が進んでいた。橋自体は下流600メートルに再建中で国道57号線とともに2020年度の復活が予定されている。JR豊肥本線も肥後大津駅と阿蘇駅の間が普通。阿蘇駅へは大分・別府側からのアクセスのみ可能だったが、こちらも来年度に開通予定。サイクリストも道の駅と阿蘇駅を起点に再び来やすくなるという。是非、阿蘇の素晴らしい四季折々のサイクリングに訪れて欲しい。

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e-BIKE サイクルツーリズム 熊本県

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