鈴木雷太のMTBレポート本気で攻めて、ゾウに乗って…タイの大自然を楽しみつくした「チェンライ国際MTBチャレンジ2013」

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 雄大な自然が広がるタイ最北部の山岳地帯を舞台に、2月9、10日の2日間に渡って「第14回チェンライ国際MTBチャレンジ2013」が開催された。大会では本格的な山岳ライドを思いっきり楽しめるほか、愛車ごとゾウに乗ったり、ボートで移動したりと冒険気分も満喫できる。MTBを愛する日本人サイクリストのリピーターも多く、海外人気イベントの一つとなっている。(レポート 鈴木雷太)

像に乗って川を渡るエレファントタスク。このイベントの代名詞と言っていいだろう像に乗って川を渡るエレファントタスク。このイベントの代名詞と言っていいだろう

 

真剣勝負もツーリングもOK 誰もが楽しめる3クラス

現地に住む67歳のアンダーソンさん(A6クラス総合優勝)は、ノルウェー代表の元五輪選手現地に住む67歳のアンダーソンさん(A6クラス総合優勝)は、ノルウェー代表の元五輪選手
このレース前に現地で合宿を積んだ国際アウトドア専門学校の松尾純(A2クラス総合優勝)と西田尚平(A1クラス総合優勝)このレース前に現地で合宿を積んだ国際アウトドア専門学校の松尾純(A2クラス総合優勝)と西田尚平(A1クラス総合優勝)

 2000年にスタートしたこの大会は、実力もバイクの機種も問わず、2日間のステージレースを誰でも楽しめるのが特徴。今大会では、賞金も出る「インターナショナルクラス」、厳しい山岳地帯を除いたツーリング志向の「スポーツクラス」、気軽に体験できる「ファンクラス」の3クラスで開催された。

 筆者が参戦したのはインターナショナルクラス。競技区間のSS(スペシャルステージ)が4ステージと、SS間の移動となるフリーライドを合わせ、全行程110kmを2日間で走破する。SSはいずれも走り応え十分のハードなコース。男子は年齢別に10歳代のA1から60歳代のA6まで分けられ、各年代の上位3人には3000バーツ~1000バーツの賞金も出る。

 このため先頭集団では賞金を懸けた真剣なレースが繰り広げられる。が、参加者は競技志向のアスリートばかりでなく、山岳サイクリングとして走る人も多い。コースの途中では、山岳民族と写真を撮ったり、毎年応援してくれる地元の方の家を訪ね、軒先で休憩しながら交流を深めるライダーもいたりして、レースというよりもロングツーリングとイメージしてもらった方が分かりやすいだろう。

リゾート気分に浸りながら…真剣勝負のスタート!

 9日朝、朝モヤに包まれマイナスイオンたっぷりのホテル「リムコックリゾート」から、パトカーに先導されてSS1のスタート地点まで移動する。ここから過酷なバトルが繰り広げられるとはとても思えないほど、一帯はタイらしいゆったりとした雰囲気に包まれていた。その穏やかな空気感こそ、この大会を象徴していると言ってもいいだろう。

移動区間のフリーライドは楽しいツーリング感覚。これから始まるレースに期待と笑顔があふれる参加者達移動区間のフリーライドは楽しいツーリング感覚。これから始まるレースに期待と笑顔があふれる参加者達
インターナショナルクラスで一番激しいバトルを見せた迫田隆幸(A3クラス総合優勝、写真後ろ)と、SS3で痛恨のルートミスから総合優勝を逃した吉元健太郎(A3クラス総合2位、写真手前)インターナショナルクラスで一番激しいバトルを見せた迫田隆幸(A3クラス総合優勝、写真後ろ)と、SS3で痛恨のルートミスから総合優勝を逃した吉元健太郎(A3クラス総合2位、写真手前)

 観光気分に浸る僕らを促すように、「バンッ」と号砲一発。さあ、気合いを入れて30kmのSS1へスタートだ。エントリーリストの顔ぶれから、レースではタイ人の2選手と、昨年の覇者・迫田隆幸君がライバルになりそうだと考えていたが、そんな予想を裏切るように先頭でバリバリ走ったのは吉元健太郎君だった。

 吉本君はのどかな田園風景のダブルトラックを、時速35kmくらいで快調に突き進み、次から次へと訪れるカーブをスムースなラインでクリアしていった。立ち上がりの加速も滑らかで、減速前のペースにぴたりと戻す安定した走りっぷりは、リーダーの有力候補として実力十分だ。

 彼にとって気持ちのいいペースは、カーブの度に、そして丘を越えるたびに集団を小さくしていき、僕も何度目かの丘では「マイペースに切り替えよう」と潔く心に決めた(笑)。それほど速かったのだ。

ありえない斜度の「紅白激坂」 今年はどこまで登れるか?

「紅白激坂」の白い壁。現地の子供たちの応援が選手を元気づける「紅白激坂」の白い壁。現地の子供たちの応援が選手を元気づける

 SS1は中盤から“激登り”が何度もやってきた。脚力があり、バランス感覚に優れたライダーでなければクリアできない強烈な斜度。

 そしてSS1名物「紅白激坂」(!!)もやってきた。これは、この地帯特有の赤土の激坂と、付近に住む山岳民族『アカ族』の村に入っていく白いコンクリートの激坂のことだ。

 どちらも余りに強い傾斜に、初めて走るライダーたちは口を揃えて「ありえない」と驚き、リピーターの間では「今年はどこまで登れるか?」と話題になるほどの名所だ。イメージ的には、日本で川の堤防にあるコンクリートの傾斜と同じくらいか。

 ボクも、そんな激坂を目にるするたびに、すぐさま息を整え、ギヤを準備し、ラインを見極めてクリアする事に努めた。以前は「押すよりも乗った方が楽だ」と思っていたが、そんな概念は40歳を迎えた昨年の夏に捨て去った。ギリギリ登れる坂を乗っていくのは、3回連続まで。それ以上は疲れるだけだし、速度も大して変わらないという現実を、秋に知ってしまったのだった。

乗れない坂はゆっくりと押して行こう。尾根伝いに来た道が見える乗れない坂はゆっくりと押して行こう。尾根伝いに来た道が見える

 とはいえ、いま走っている大会はレースであり、激坂はライバルに差をつけるポイントである事は“前世”(MTBプロライダー)からの身体に染み付いている。辛い思いは置いておき、足が攣らないように激坂を慎重にクリア。そうやって山を越えていき、お楽しみのシングルトラックを下る。

タイフードにボートクルージング レースなのに至高のひと時

例年に増して水量の多いリバーライド。慣れた様子で走る広瀬由紀(Bクラス総合優勝)例年に増して水量の多いリバーライド。慣れた様子で走る広瀬由紀(Bクラス総合優勝)

 突然やってくる深い轍(わだち)や木の根、犬に牛(?!)、そして対向するモーターサイクルに注意しながら進む。そう、このトレイルは、ここで暮らす山岳民族が生活道路として使っているのだ。SS1は気持ち良く走り切ってゴール。ランチタイムには、ブッフェスタイルのタイフードを頬張って、続く9.7kmのSS2へ向かった。

 ここでもう一度吉元君に挑戦しようと、SS2ではスタートアタックを決めたが、折り返しを前に実力差を痛感させられる結果となった…。

1日目の締めはボートクルージング。このイベントで一番気持安らぐひと時だ1日目の締めはボートクルージング。このイベントで一番気持安らぐひと時だ

 初日の締めは、エレファントタスク。愛車と一緒にゾウに乗って川を渡り、そこからホテルまでボートクルージングとなる。一日の疲れを、水面の風とシンハービールが癒してくれる至高のひと時だ。

 夜にはタイマッサージやナイトバザールへ。それぞれのリフレッシュ方法で疲れを癒す事が出来るのも、この大会の楽しみの一つだ。

本当にヤバかった! スリリングなコースを激走

 2日目のスタート地点では、多くの参加者が「腰が痛い」「脚が攣りそうだ」などと疲労を口にしたが、笑顔は忘れない。スタートから続く平坦基調のルートは、実力に見合った集団で協力しながら進み、最後の山を迎えた。

2日目スタート前のお寺にて。疲労がある中みんなの笑顔がこのイベントの楽しさを物語っている2日目スタート前のお寺にて。疲労がある中みんなの笑顔がこのイベントの楽しさを物語っている
集団走行でゴールを目指すA1、A2クラス集団走行でゴールを目指すA1、A2クラス

 40.4kmのSS3は、初日の脚の疲労をかばうように、まったりとしたペダリングでとにかく山頂を目指す。そしてピークを越えれば、後はダブルトラックの下りのみだ。しかしこの下りは本当にヤバかった。1週間前に激しく雨が降った影響で、大きく掘れた雨水の跡が右へ左へと大蛇のごとく伸びていたのだ。乾季のタイにしては珍しい大雨が、コースをいっそう厳しいものへと変えてしまった。

 掘れた溝は深い所で2mを超える位あり、残されたルートも溝に狭まれたような状態。そこを慎重に、かつスピーディーに走り抜ける、スリリングなライドを満喫した。

かつてのチームメイトであり最大のライバルでもある宇田川聡仁(ANCHOR)とランデブーかつてのチームメイトであり最大のライバルでもある宇田川聡仁(ANCHOR)とランデブー

 そして最後に迎えた9kmのSS4。下り基調で、一番体に負担の少ないコースだ。SS3を先頭で走りながら、ミスコースによってタイムロスをしてしまった吉元君は、最後の逆転を狙ってスタートからアタックし、先頭でゴールを切った。だが後続にタイム差をつけられず、総合優勝を逃す悔しい結果となった。筆者はA3クラス総合5位でフィニッシュした。

リピーターに愛される、ワクワクする海外ライドイベント

 チェンライ国際MTBチャレンジは、日本では味わえないダイナミックなスケールのコースに、プラスしてナイトバザールや美味しいタイフードなどを楽しめる。日本人だけでなくローカルの方との交流も多い。すべてひっくるめて捉えると、レースというシリアスな部分は半分以下で、その他の楽しみがギューっと詰まった、ワクワクするようなイベントだ。それが、日本人のリピーターが多い理由だと思う。

ゴール後は地元ボランティアより特性エレファントメダルを頂けるゴール後は地元ボランティアより特性エレファントメダルを頂ける
ゴールを迎えみんな大満足の笑顔ゴールを迎えみんな大満足の笑顔
毎年チェンライにて乗りこんで合宿を行っている、日本のトップレーサーたちもゲストとしてパーティーに参加。右から宮沢崇史(チーム サクソティンコフ)、福島晋一(チームNIPPO・デローザ)、1人おいて新城幸也(チーム ヨーロッパカー)、山本幸平(スペシャライズド)毎年チェンライで合宿を行っている日本のトップレーサーたちもパーティーにゲスト参加

 来年の今ごろには、激寒の日本を飛び出して、常夏のチェンライで仲間とMTBトリップを楽むことを、MTBファンの皆さんに強くオススメしたい。ボクが伝えたかった楽しみを、きっと分かってもらえるはずだ。
 

鈴木雷太鈴木 雷太(すずき・らいた)
シドニー五輪日本代表をはじめ数々のタイトルを収めてきた元MTBプロライダー。現在はプロ時代の経験や、スポーツバイシクルの楽しさや可能性を一般に広めるために、長野県松本市にサイクルプロショップ「BIKE RANCH」を構え活動中。ANCHOR CYCLING TEAMのアドバイザーも務め、MTBの若手選手を育成中。ロンドン五輪MTBコーチも務めた。

「チェンライ国際MTBチャレンジ2013」ホームページ
 

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