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ロードバイク 2020モデルのトレンド<5>ハイテク化するエンデュランスロードとこの先注目しておきたい技術

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 前回は百花繚乱とも言うべきエンデュランスロードのなかで、フォークやチェーンステーやシートステーなどを異形にして積極的にしならせるタイプ(①)について言及しました。今回はエンデュランスロードが抱える永遠のテーマに技術の力技で挑む、トレックのドマーネ(アイソスピード)、スペシャライズドのルーベ(フューチャーショックやコブルゴブラー)などのハイテク勢(②)を取りあげます。595~795まで長年に渡って使われていたルックのEポストもこれの一種かもしれません。

近年のエンデュランスロードには緩衝機構を盛り込んだモデルを導入。写真は緩衝機構「Isoスピード」を取り入れたトレックの2020モデル「ドマーネSLR9」 Photo: Shusaku MATSUO

ビッグメーカーが実現する

 彼らは快適性が必要な場所(ハンドル周りとサドル周り)だけに緩衝機構を盛り込みました。こうすることで、人間との接点であるハンドル部とサドル部だけが動きやすくなり、フレームは硬く作って動力伝達に専念させることができます。快適性と動力性能を切り離せるんです。これは、「快適性と速さの両立」を理詰めで考えていれば自ずと到達する「理論的正解」の一つでしょう。豊富な開発力を有するビッグメーカーのみがパワープレイでモノにできる「高性能」とも言えます。

トレックのアイソスピード。シートチューブを前後にしならせ、効果的な振動吸収を実現。ヘッドチューブの振動吸収機構「フロントアイソスピード」もある Photo: Shusaku MATSUO

 ただしこれは、バネ下が重くなる(振動吸収する場所がハンドル&サドルなので、凹凸によってホイールだけでなくフレーム全体が上下動してしまう)、ダンシングでの快適性を高めにくい(サドル部で振動を吸収しているため、サドルから体が離れるとその効果はなくなってしまう)、ナチュラルな走行フィールが死んでしまいやすい(ハンドル&サドルで路面からの情報がカットアウトされてしまう)という欠点を隠し持ちます。

 トータル重量が増えてしまうことや、売価が高くなりやすいこと、専用部品が多くなり汎用性が低下することも悩みどころです。もちろん彼らはそんなことを百も承知。欠点を補って余りある旨味があるからそのような設計をしているのでしょう。

 ②の技術達成度の高さは素晴らしいものがあります。ただし筆者の経験上、ロードインフォメーションの濃さや自然なライドフィールという点では、①のようなオーソドックスなエンデュランスロードに分があると感じるのも事実です。

ハイテクなドグマFS

 さて。2020モデルとして、上で説明した②よりさらにハイテクなエンデュランスロードが登場しました。ピナレロのドグマFSです。ピナレロは、①でも②でもない独自の方法を使いました。まず、ヘッドチューブ下とシートステー上にサスペンションを仕込む。いわゆるフルサスロードです。これなら動くのはホイールと前後フォークのみなので、バネ下が軽くなり、路面追従性が上がる。ダンシングでも快適性は高いままです。

パリルーべを走行した「ドグマFS」 Photo : Yuzuru SUNADA

 しかし、ただのフルサスではペダリングに対してサスが伸縮してしまって走りが犠牲になります。フルサスロードはいくつも前例がありますが、そのどれもが大した爪痕を残すことなく消えていきました。その理由は、ペダリング動作に対してもサスがヘコヘコと動いてしまい、パワーが吸われ、動力性能と快適性の両立が困難だったからでしょう。

 そこでピナレロはサスに電子制御システムを組み込みました。ジャイロスコープや加速度センサーからデータを収集して路面状況を識別し、それに合わせてサスペンションの状態を瞬時に変化させる。要するに滑らかな路面ではサスが自動的にロックされ、パワーロスを減らす。荒れた路面に入ると、自動的にロックが解除され、快適性を確保する。そういう理屈だそうです。

 快適性と動力伝達性を切り離せる、バネ下重量を軽くできる、という意味では、①と②のいいとこどりと言えるかもしれません。ドマーネやルーベ以上の技術重畳型ハイテクロード。犠牲になるのは重量とコストですね(なんせフレームの希望小売価格は税抜き110万円ですから)。

 しかし、ロックできるとはいえ可動機構が存在するということは、トータルのフレーム剛性を上げにくいという悩みもあるでしょう。通常のシートステーなら、リア三角の左右ねじり方向への剛性はある程度確保できます(直接シートチューブに接合されているため)。しかし円柱のサス機構は回転に対する抵抗力を持たないため、リア三角の剛性を高めにくいはず。いくら必要のないところでロックするからといって、可動機構を内包したヘッド~フォークは、一般的なそれより重量面・剛性面で不利になるはず。それを上回るメリットがあると判断されたため、ドグマFSはこうしてカタチになり、パリ~ルーベを走ったのでしょう。

 ドグマFSのような存在は、現状では価格が高すぎ、しかも限られたサイズしか作られないようなので、選択肢としては現実的ではありませんが、エンデュランスロードの行く先を推測する上では興味深い存在です。

グラベルロードの技術にも注目

 また、近年各メーカーが力を入れているグラベルロードも面白い。スペシャライズド(ディヴァージュ)やトレック(チェックポイント)は、自社のエンデュランスロードの機構を流用してグラベルバイクを仕立てていますが、キャノンデールは独自の振動吸収機構(キングピン)を開発してトップストーンカーボンを作りました。

快適性向上のためにシートチューブとシートステーの交点に設けられた「キングピンサスペンション」 Photo: Shusaku MATSUO

 GTのグレードやピナレロのグレヴィルなども、エンデュランスロードにも転用できそうな興味深い設計です。今後、エンデュランスロードとグラベルロードの技術のやり取りにも注目です。

グレヴィル Photo: Shusaku MATSUO

 次回、「自転車の快適性」についての考察をし、この連載の締めとします。

安井行生
インプレッションライダー・安井行生(やすい・ゆきお)

大学在学中にメッセンジャーになり、都内で4年間の配送生活を送る。ひょんなことから自転車ライターへと転身し、現在は様々な媒体でニューモデルの試乗記事、自転車関連の技術解説、自転車に関するエッセイなどを執筆する。今まで稼いだ原稿料の大半をロードバイクにつぎ込んできた自転車大好き人間。

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