2016年のロード全日本チャンピオン初山翔が現役引退を表明 今年のジロ・デ・イタリアで大活躍もチーム解散から決断

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 NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネに所属する初山翔(31)が12月1日、2019シーズン限りでの現役引退を発表した。2016年の全日本選手権ロードレースで優勝し、今季は5月に開催されたジロ・デ・イタリアに初出場して完走を果たすなど、日本人トップクラスの選手の一人だが、新たな道を歩むことになった。

ジロ・デ・イタリア2019の第3ステージ、単騎で144kmもの逃げを敢行 Photo: Yuzuru SUNADA

 初山はU23時代をイタリアのアマチュアチームで過ごし、その後国内コンチネンタルチームの宇都宮ブリッツェンでプロ入り。ブリヂストンアンカーを経て2018年より、プロコンチネンタルチームのNIPPOで再びヨーロッパに活動の軸を移した。

 今年のジロでは第3ステージで144kmに渡る単騎逃げを敢行。世界最高峰の舞台でイタリアを始め全世界から大きな注目を集めた。その後もチームの区間優勝にも貢献しながら、自らも再び逃げに乗るなどアピール。3週間に渡る過酷なレースを個人総合成績最下位で完走を果たし、その力走に敬意を表した大会側から、現在では非公式だがかつて存在した総合最下位の選手に贈られる黒色のジャージ「マリアネーラ」を大会終了後に贈呈された。

伊豆大島で開催された2016年の全日本選手権ロードレースで優勝、全日本チャンピオンに輝いた Photo: Shusaku MATSUO
今年のジロ・デ・イタリア最終日のゴール後、黒の総合最下位ジャージ「マリアネーラ」を贈呈された初山翔。大会で“最も長い時間走った選手”を称えるものだ Photo: NIPPO - Vini Fantini - Faizane

 しかしながら所属するNIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネが、UCI(国際自転車競技連合)が進めるロードレース新制度の影響から、今季限りでチーム解散を決定。初山自身は移籍先を探したというが、最終的には選手引退の決断に至った。

初山翔のコメント

 まずこのような時期まで皆様へのご報告が遅れたこと、大変申し訳なく思っております。来季の活動について皆様にお尋ねいただいたとき、うやむやな回答しかできずにとても心苦しかったです。ご容赦ください。しかし急遽決めたことではなく、時間をかけながら考え、決断したことです。ですので、とても前向きな気持ちでこのタイミングを迎え入れることができました。

 特にこの2年間は選手を目指したときからの目標であった欧州プロチームの一員として活動することができました。幸せな選手生活であったと心から思っております。皆様のおかげです。到底ひとりではたどり着けない大舞台をいくつも経験させていただきました。今までご支援、ご声援いただいたすべての皆様に心から御礼申し上げます。また今後もサイクルスポーツは趣味として続けていければと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

【略歴】
1988年8月17日生まれ(31歳)、神奈川県出身
U23時代をイタリアのアマチュアチームで過ごし、2011年に宇都宮ブリッツェンでプロデビュー。逃げや山岳を得意とするオールラウンダーで積極的な走りが持ち味。UCI通算3勝(UCIレース)

2011年 宇都宮ブリッツェン(日本、コンチネンタルチーム)加入
2013年 ブリヂストンアンカー(日本、コンチネンタルチーム)加入
ツール・ド・おきなわ(UCIアジアツアー1.2)優勝
2016年 全日本選手権ロードレース エリートカテゴリー優勝
2017年 ツアー・オブ・ジャパン(UCIアジアツアー2.1)山岳賞獲得
2018年 NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ヨーロッパオヴィーニ(イタリア、プロコンチネンタルチーム)加入

大門宏マネージャーのコメント

 初山には「これからが人生の本場!これからも勇気を忘れず、覚悟して挑戦し続けろ」と言いたい。近年では、宮澤崇史、福島晋一、橋川健(NIPPOの出身選手ではなかったが)、ならびに日本人選手の成長に多大な貢献をしてくれたイタリア人ら外国籍選手の引退を割と近くで見届けた。初山も決して彼らに引けを取らないチャンピオンの一人。今後どのような道に進むにせよ、これからも自分の好きなことに没頭し続けて、人間としてさらに成長してほしい願っている。人生においては、選手としての“引退”よりもっともっと価値のある“節目”があるからだ。

 昔から世界のトップレベルで挑戦させたくてもさせられなかった選手が多くいるなかで、10代後半から日本代表として、またイタリアのクラブチームで過ごしていた初山を、最後の2年間、この“奇跡的なチーム環境”で走らせることができて、本当にラッキーだったと思っている。ラッキーというのは単に運が良いという意味ではない。その真意は初山自身が誰よりも一番感じてるはずだ。

 だからこそ、このレベルで走り続ける可能性をギリギリまで追い求めていたと思う。彼はプロのレースにおいてコミュニケーション能力も全く問題ないある意味“人気者”だったので、ステップアップの意味も込めてワールドチームを含む他のプロチームを本人と探したが、芳しい回答は得られなかった。プロチーム以上で走る続けることはヨーロッパ人にとっても物凄く厳しい世界だ。

 余談だが、今回ワールドチームの現役監督、代理人にも初山の件を相談した。口々に言われたことは、「フランスでもベルギーでも自国の選手を最優先に選手を集める。日本人なら日本人選手に関心を持つNIPPOのような日本のスポンサーが現れない限り、たとえ実力があったとしてもヨーロッパのチームが契約する理由がない」だった。フランスのワールドチーム、プロチームの選手も約半数はまずフランス人だからという理由で契約できており、選手自身だって解ってる。それはフランスのスポンサーにとっても当然のこと。

 そういう“当たり前の事情”は、もう20年以上現地で聞き飽きているが、改めて日本のスポンサーの存在意義を痛感させられた。ヨーロッパのロードレース界を支えているスポンサーのように、企業の威信をかけて本気で(10代後半からの育成を含めて)ワールドクラスで活躍する日本人選手に関心を抱くパトロンが日本にも求められている。チーム、選手側から“探す”というレベルではなく、かつて浅田監督(エキップアサダ)に惚れ込んで、スポンサーを自ら名乗り出た梅丹本舗の松本氏のように積極的に手を挙げる日本のスポンサーが現れない限り、今後このカテゴリーで日本人選手の発掘、強化に携わっていくのは無理だと断言したい。それは、決して我々(NIPPO)のサブスポンサー、または取って代わるスポンサーを求めてる、という意味ではなく、ヨーロッパの知人からの助言にもあるように“自国”のスポンサーが、世界中のレースを舞台に色々なチームに分散し、若手からベテランまで、それぞれのカラーで切磋琢磨できる環境が構築されていくことが理想だ。

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