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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<316>クラシック、グランツールとも本気のチーム編成に CCCチーム 2020年シーズン展望

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 クラシックスペシャリストであるグレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー)を「チームの顔」として、現体制1年目の今季を戦ったCCCチーム。大きな成果こそ残すことはできなかったが、まずはビッグチームへと成長する足がかりのシーズンだったと見てもよさそうだ。このほど、2020年を戦う28選手が確定。そこからはクラシックレースとグランツール、ともに上位進出を狙って動き出そうという強い意志が見える。今回は、これまで以上に国際色が豊かになる、ポーランド籍のオレンジ軍団について紹介しよう。

CCCチームを引っ張るグレッグ・ファンアーフェルマート。2020年はクラシックと東京五輪を視野に入れる =ツール・ド・フランス2019第18ステージ、2019年7月25日 Photo: Yuzuru SUNADA

地盤を整えてより強固な態勢へ

 2018年までUCIワールドツアーを戦ったBMCレーシングチームが同年のシーズンをもって事実上の解散となり、新たなメインスポンサーに就いたのがポーランドのファッション用品メーカー・CCC社。それまではUCIプロコンチネンタルチームだったCCC・スプランディ・ポルコヴィチェを支えてきたが、BMCレーシングチーム同様に活動をリセットし、両チームの再編にかかった。

新たなチーム体制で1年を戦い抜いた =ツール・ド・フランス2019チームプレゼンテーション、2019年7月4日  Photo: Yuzuru SUNADA

 チームを運営するのはBMCレーシングチームからの継続でコンティニュアム・スポーツ社だが、2019年シーズンに向けて集まったのは新生チームのためにスカウティングされた選手ばかり。スーパーエースのファンアーフェルマートはBMC時代からの継続だったが、将来性豊かなポーランド人ライダーや、トップシーンでの走りに慣れた実力者をそろえていった結果、国際色豊かなチームになった。

 満を持して船出したチームは、UCIワールドツアー開幕戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーでパトリック・ベヴィン(ニュージーランド)がいきなりの快進撃。第2ステージでリーダージャージを獲得すると、途中で激しいクラッシュに見舞われながらも最終日までその座を保ち続けた。最終的にトップこそ明け渡したが、あわや個人総合優勝かというセンセーショナルな活躍で先々への期待を膨らませた。

チーム緒戦であったサントス・ツアー・ダウンアンダーでパトリック・ベヴィンが快進撃 =2019年1月16日 Photo: Yuzuru SUNADA

 ただ、その後はあと一歩勝ちきれず。シーズン勝利数は、チームタイムトライアル分も含むと6勝にとどまった。

 一方で、強いインパクトこそ残せなかったとはいえ、ビッグネームを抱えていながらシーズンが始まるとちぐはぐな面が浮き彫りになる、というような新興チームにありがちな連携面での不安はさして見られなかった。そのあたりはプラスの部分として来季へとつなげていけることだろう。

 何より、この夏以降のストーブリーグ(移籍市場)で大成功。地盤固めの1年を終えて、より強固な態勢で2020年を戦う見通しが立っているのである。

ファンアーフェルマートはクラシックと五輪へアプローチ

 チームの方向性は、やはり絶対的なリーダーであるファンアーフェルマート次第となってくる。

パリ〜ルーベを走り終えて悔しそうな表情を見せるグレッグ・ファンアーフェルマート =2019年4月14日 Photo: Yuzuru SUNADA

 パヴェ系のレースを主戦場とし、春に行われる北のクラシックにシーズン最初のピークを持っていくが、今年は不発。毎年優勝争いの本命にも挙げられるツール・デ・フランドルで10位、パリ~ルーベは12位とまさかの結果に終わった。救いだったのは、体調面で問題があったわけではなく、レース展開が味方しなかったというところ。シーズンを通して、ビッグタイトルは9月のグランプリ・シクリスト・ド・モンレアルだけだったが、常に上位戦線には顔を出し続け、ツール・ド・フランスや世界選手権などでも見せ場は作った。

 とはいえ、ファンアーフェルマートの実力をからして、「安定して上位を押さえていれば及第点」とはいかない。大きなレースでどれだけ勝ち星を挙げられるか、これがポイントになってくる。

 ファンアーフェルマート本人、そしてチームとも、2016年から2017年までの2シーズンの再現を目指すと公言。2016年といえば、ツールで3日間マイヨジョーヌを着用し、その後のリオ五輪ロードレースでは金メダルを獲得。この年を上回ったのが翌2017年で、パリ~ルーベを含む北のクラシック3勝。「最高の春」と称されたほどに、他を寄せ付けない圧巻の走りが印象的だった。

リオ五輪で金メダル。グレッグ・ファンアーフェルマートにとって東京五輪は2連覇がかかる戦いとなる =2016年8月6日 Photo: Yuzuru SUNADA

 3年ぶりのパヴェでのタイトル獲得を図るうえで、シーズンインを控えた冬場のトレーニングから“再現”していくことになるという。「最高の春」では、冬にマウンテンバイクでの転倒で足首を骨折したが、その後の回復からクラシックシーズンの快進撃につなげた。当時は調整遅れが心配されていたが、結果的に冬場にしっかり休養したことで、トレーニング再開からのコンディショニングが成功に至った。

 さすがにけがまでを“再現”するわけにはいかないが、9月下旬の世界選手権を走り終えてからはバイクを置いて、リカバリーに専念。11月下旬にようやくライドを開始した。これにともなって、2020年のシーズンインも2月下旬のボルタ・アオ・アルガルベ(ポルトガル、UCIヨーロッパツアー2.1)となる見込み。これまでは2月上旬からレースを走り始めていたが、来季はゆっくりとした動き出しから徐々にエンジンを温めていこうとの考えだ。

 北のクラシックの結果が楽しみだが、その後も彼にとっての“本番”は続く。例年通りツールを走ったのち、やってくるのは東京五輪。グランツールレーサーやクライマーが有利と言われる五輪コースだが、ファンアーフェルマート自身は適性があると見ているよう。リオに続くオリンピック2連覇も視野に入れ、レースプログラムを組んでいく。実際に最終局面まで残ることができれば、得意の少人数スプリントで勝機を見出すことだって可能だ。

 5月には35歳となるが、まだまだ老け込む様子は見られない。来季に向けた新たなアプローチが成功すれば、圧倒的な勝負強さで観る者を魅了していくことだろう。

ザカリン、マスナダらの加入でグランツールも視界良好に

 話を移籍市場での大成功に戻そう。

2019年シーズン大活躍のマッテーオ・トレンティンのCCCチーム加入はビッグトピック。北のクラシックや東京五輪での走りに注目だ =ツール・ド・フランス2019第17ステージ、2019年7月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 チームは8月1日の移籍市場解禁から次々とビッグネームの獲得を発表した。真っ先に明らかになったのが、マッテーオ・トレンティン(イタリア)の加入だ。ミッチェルトン・スコットで主力として走り続け、2018年にはヨーロッパ王者に、今年はツールのステージ1勝や世界選手権2位と、狙ったレースをしっかりとモノにするあたりで強さを証明し続けている。

 スプリンターとしても通用するだけのスピードを持ちながら、逃げでのレース構築や登坂力の高さも魅力。なかなか上位進出のチャンスには恵まれていないが、パヴェ適性もプロトン随一と言われる。

 新チームではまず、北のクラシックを目標としていくことを明かしている。ファンアーフェルマートとの共闘については、「彼がチームリーダーであり、私はそれを支える立場」と語るなど、チーム内での序列を尊重する構えだが、勝ちを狙いにいけるだけの力があることは、これまでの実績からして明白。実質は双頭体制を組んで春を迎えることだろう。

 クラシックシーズン後の動向については明言していないが、グランツールでのステージ狙いや東京五輪は視界に入ってきているはず。シーズンが始まれば、すぐにチームの中心的存在となるに違いない。

 また、ストーブリーグの成功によって、グランツールでの上位進出も見据えていけるようになった。

移籍加入のイルヌール・ザカリンはグランツールで総合エースを務めることが濃厚だ =ジロ・デ・イタリア2019第13ステージ、2019年5月24日 Photo: Yuzuru SUNADA

 実績で群を抜くのは、カチューシャ・アルペシンから移籍のイルヌール・ザカリン(ロシア)。2年前にはブエルタ・ア・エスパーニャで個人総合3位になったオールラウンダーは、山岳とタイムトライアルともに高い水準で戦うことができる。昨年はツール、今年はジロ・デ・イタリアで総合トップ10入りを果たしており、新チームでも総合エースを務める公算が高い。来季については、タイムトライアルの比重が高めとなるジロを選ぶのか、はたまた山岳勝負となるツールをチョイスするのか、その判断も見もの。

 ザカリンとならんでグランツールのリーダー格となるのが、今年のジロ第6ステージで勝ったファウスト・マスナダ(イタリア)と、ツール・ド・スイス個人総合5位のヤン・ヒルト(チェコ)の2人。マスナダはジロで見せたように山岳逃げを得意としつつも、1週間程度のステージレースでは確実に上位を押さえる力を持っており、新天地加入を機に3週間トータルでの可能性を広げていきたいところ。ヒルトはCCC・スプランディ・ポルコヴィチェ時代の2017年にジロで個人総合12位。登坂力を買われてアスタナ プロチームで今年までの2年間を過ごし、総合エースを任されたレースではしっかりと結果を残してきた。両者が一本立ちできるようだと、確実に戦いの幅は広がっていく。

 今季からの継続メンバーでは、タイムトライアルスペシャリストとしての地位を確立したベヴィンや、山岳逃げでおなじみのアレッサンドロ・デマルキ(イタリア)、総合力の高いセルジュ・パウェルス(ベルギー)といった選手たちが主力となる。逃げからアシスト、ときには勝ちを狙いにいけるユーティリティライダーのサイモン・ゲシュケ(ドイツ)やミヒャエル・シェアー(スイス)、フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)といったベテランも健在。11カ国・28選手で2020年シーズンを戦う。

CCCチーム 2019-2020 選手動向

【残留】
ウィリアム・バルタ(アメリカ)
パトリック・ベヴィン(ニュージーランド)
ヨーゼフ・チェルニー(チェコ)
ビクトル・デラパルテ(スペイン)
アレッサンドロ・デマルキ(イタリア)
サイモン・ゲシュケ(ドイツ)
カミル・グラデク(ポーランド)
ヨナス・コッホ(ドイツ)
ヤコブ・マレツコ(イタリア)
セルジュ・パウェルス(ベルギー)
ジョセフ・ロスコフ(アメリカ)
シュモン・サイノク(ポーランド)
ミヒャエル・シェアー(スイス)
グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー)
ハイス・ファンフック(ベルギー)
ネイサン・ファンフーイドンク(ベルギー)
ギヨーム・ファンケイスブルク(ベルギー)
フランシスコホセ・ベントソ(スペイン)
ルカシュ・ヴィシニオウスキー(ポーランド)

【加入】
ヤン・ヒルト(チェコ) ←アスタナ プロチーム
パヴェル・コチェトコフ(ロシア) ←カチューシャ・アルペシン
カミル・マレッキ(ポーランド) ←CCCデヴェロップメントチーム
ファウスト・マスナダ(イタリア) ←アンドローニジョカットリ・シデルメク
ミカル・パルタ(ポーランド) ←CCCデヴェロップメントチーム
マッテーオ・トレンティン(イタリア) ←ミッチェルトン・スコット
アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー) ←CCCデヴェロップメントチーム
イルヌール・ザカリン(ロシア) ←カチューシャ・アルペシン
ゲオルク・ツィンマーマン(ドイツ) ←チロル・カテエムサイクリングチーム

【退団】
アマーロ・アントゥネス(ポルトガル) →W52・FCポルト
パウェル・ベルナス(ポーランド) →未定
ルーカス・オウシアン(ポーランド) →アルケア・サムシック
ローレンス・テンダム(オランダ) →引退
リッカルド・ツォイドル(オーストリア) →フェルバーマイヤー・シンプロンウェルス

※2019年11月26日時点

今週の爆走ライダー−ヤコブ・マレツコ(イタリア、CCCチーム)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 現チームの結成時にエーススプリンター候補として加わった25歳。それまではイタリアのプロコンチネンタルチームで走り、ビッグレースから小さなレースまで通算40勝を挙げてきたスピードスターである。

機体のスプリンター、ヤコブ・マレツコ。オフに鼻の手術に臨み来季に備えている =サントス・ツアー・ダウンアンダー2019チームプレゼンテーション、2019年1月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

 だから、トップカテゴリーで何勝できるか注目されることは必然だった。ふたを開けてみると、まさかの未勝利。こんなはずじゃなかったことは、自らが一番感じている。

 不振の原因となった鼻の問題を解消するため、先日手術に臨んだ。回復具合は良好とのこと。今年はレース中に呼吸に苦労する場面が多かったといい、スプリントに挑む前に消耗してしまっていたそう。不必要な心身のストレスをなくして、来年はリスタートのシーズンとする。

 CCCチームとの縁は、ポーランドにルーツがあることに起因する。5歳でイタリアに移り住んだが、今でも「ポーランド人としての自分自身」を考えることがあるという。現在のチーム環境は「故郷のようなもの」。だからこそ、結果を残してチームに貢献したい。

 ジュニア時代はトラック競技のスプリント種目で名を馳せたが、ロードレースへの意欲が高かったことが今につながっているという。上りはからっきしで、山岳ではタイムアウトになってしまうこともしばしばあるが、それでもスプリントに強くこだわりをもって走り続ける。来シーズンこそ、エースの座を固めるつもりだ。

25歳にしてプロキャリア通算40勝挙げるスピードスター。現チームでの初勝利を目指し2020年シーズンを戦う =サントス・ツアー・ダウンアンダー2019第3ステージ、2019年1月17日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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