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つれづれイタリア〜ノ<134>「UCIは2020年の改革でレースを私物化している疑い」チームから一斉に非難の声!

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 先月末、一つの声明文がロードレース界を揺るがした。UCI(国際自転車競技連合)に対してプロサイクリングチームを代表する組織AIGCP(Association International des Groupes Cyclistes Professionels、国際プロロードチーム協会)が、2020年に実施される予定の改革を強く非難する声明文を出した。多くのプロチームのサイト、一般民間サイトにも転載され、その反響を物語っている。だが、日本のメデイアは全く取り上げる様子がない。このコラムでできる限り、簡単に説明する。ヨーロッパのロードレースファンだけでなく日本のファンも知るべきだと考えているからだ。

AIGCP(左)に続き、サンウェブ、イネオスといったトップチームがUCIに公開書簡という形で意見をぶつけた(各ページをキャプチャ)

現在の問題をメディアに公開

 AIGCPとは2008年に発足され、17のUCIワールドチームと、24のUCIプロコンチネンタルチームをグループ化した協会だ。会長はチーム サンウェブのチームマネージャー、イワン・スペケンブリンク(彼は元スキル・シマノのチームマネージャーも務めていた)。

 彼らはまずUCIに書簡を送付、10月28日にその全文を声明文としてメディアにも公開し、UCIとチーム、レース主催者が抱えてる問題を明らかにしたのだ。

 それによればUCI自身がチームの運営を軽視し、レースや利益を私物化しているだけでなく、各チームへの負担増(運営予算)の不透明なルール変更、組織委員会による意思決定の恣意的な妨害が行われ、チーム、選手やスポンサーを無視した新たなルールの成立など、今まで自転車競技が作り上げた功績を無視し、チームを経営破綻へ追い込む危険さえあると書かれている。

 2016年以前に実施された改革が有効的ではなかったため、新たな改革が必要であるとロードレースの関係業界では度々聞かれた。改革の柱は、プロサイクリングを最も重要なスポーツの1つにし、世界中で成長させること。シンプルでわかりやすいシステムを持ち、世界中から新しい投資を奨励し、より大きくのテレビ視聴者を確保するために組織を合理化し発展させ、魅力的なプロスポーツとして認知されて行く事が求められた。

 特に次のポイントは重要だった。

(1)チーム運営の安定性を保証

 プロのチームにとって運営の安定性を保証し、新規の投資を奨励し、スポンサーシップの新しい形態を開拓し、テレビ視聴者を増やすためにグローバル化し、プロのチームにとってレースの合理的なカレンダーを構築する必要がある。

(2)選手の安定性を保証

 選手(関わるスタッフ)にとって、改革は生活に伴う給与の安定性、支払いルールを徹底させ、チーム内の労働条件を保証しなければならない。レースにおける最大限の安全性を保証し、さまざまな国のそれぞれの税負担を考慮し保険料の分配を最適化することが求められる。

(3)大会主催者に対する収益化を保証

 主催者にとって、改革は運営の安定性を提供し、テレビ放映権の収益を増やし、レースのテレビ視聴者を拡げグローバル化し、コスト増加を制御し、多くの大きなプロチームの招待を確保し、環境に配慮した行動を奨励しなければならない。
(意図にはベロンが主催するハンマーシリーズのように、立ち上げ時に彼等のコンセプトにも在った参加チームへの運営費の援助、還元の推奨も含まれる)

“改革”によりチームの負担が年々増大

現UCI会長はフランス人のダヴィ・ラパルティアン氏。フランス連盟会長、ヨーロッパ連盟会長を経て、2017年9月に就任 Photo: Yuzuru SUNADA

 UCIは過去に様々な改革に乗り出したが、どれも上手く機能せず不評を買った。例えば、2019年度にワールドツアーチームの数は現状の18から15チームに縮小されるはずだった。UCIのプロチーム昇格制度(入れ替え戦システム)も提案されていた。しかし、チームへの打診や公式なリリースも無いまま案は廃案、変更され、来年(2020年)はワールドチームの数が19へ。レースカレンダーも短縮されるはずだったが、逆に増加した結果、重要なレースが重なり、チームは選手やスタッフを増やさなくてはならない事態となった。

 サッカー、野球やF1のようにチームへ放映権の還元が無い上、ベロンが独自の資金源で主催するハンマーシリーズをUCIカレンダーから追い出せば、チームへの放映権に対する利権はさらに難しくなる。

 これらはオーガナイザー、プロチームに対してUCIの妨害行為、即ち「職権乱用」の疑いがあるといえる。

 こういった二転三転する不透明な意思決定とチームに対する負担増の影響で、多くのチーム、スポンサーや大会の主催者は自転車競技から撤退し、ロードレースの未来が危ういという現状さえ見えてきた。耐えてきた「チームの経営者」が、これだけ強い口調でUCIに対し書簡で非難し、更に公にしたのは前代未聞だ。

 簡単だが、UCIへの書簡(声明文)の全文(英語)をまとめた。自転車ファンにとってもレースの未来のため、選手やチームから上がっている悲痛な叫びに耳を傾けてみたらいかがだろうか。

※直訳や要約のため文章表現によっては正しく捉えられない可能性がある事を御了承ください。

UCI会長、およびUCI管理委員会のメンバー各位

 この声明文の目的は、国際プロロードチーム協会(AIGCP)がUCIによるプロロードサイクリング(男子)の現在のレベルとガバナンスについて、深刻な懸念があることを正式に通知する事である。AIGCPは緊急の対応策を期待し、UCIがチームと選手の同意を得て、プロのロードサイクリングの成長に役立つガバナンス構造を作成するための対話に招待したい考えがある。

1. 安全なレースの実施はUCIに課せられた最優先事項の任務

 公正で一貫したUCI審判のレベルとライダーの安全の管理は、本来あるべきレベルが下回っている。

 プロのチームとプロのライダー、そして多くのオーガナイザーは、高いレベルで活動している。このような高いレベルは、レースの安全性と公正で一貫性のあるレースの審判に関してもUCIから期待されており、UCIにとってスポーツの統治において最も高い優先順位を持っているはずだ。

 プロのロードレースにおけるUCIの活動はこれに焦点を当てる必要があり、優先事項から注意をそらすべきではない。

 プロのロードレースには、シーズンを通して高レベルの審判と一貫した方法を確保し、事前の徹底した評価なしにレースオーガナイザーに複数年のライセンスを付与しないために、時間と労力を専門的に運用する運営機関が必要です。そしてライセンス期間中のコンプライアンスのチェックもしなくてはいけない。

2. チームの権利が存在しない

 チームはUCIに最大の財務収入を保証するが、ガバナンスについては発言権がない。

 UCIワールドツアーを管理する評議会(プロフェッショナルサイクリングカウンシル、以後PCCとする)では、チームは12席のうち2席のみであり、UCI自体が席の半分(6席)を保持している。

 しかし、真の権限はUCI管理委員会によって保持されている。UCI管理委員会は、利害関係者と協議することなく、完全に孤立した状態でルールを導入および変更できる。管理委員会のすべての議席はUCI自体によって占有されているからだ。

 利害関係者を効果的に代表するものはなく、UCIはチームと所属選手に対して責任を負わない。 実際にUCIはプロサイクリングを好きなように定めている。

3. UCIは民主主義機関ではない

 UCIは、議題とするものとそうでないものとを決定する。以前に合意された議題をUCIは除外することができる。またチームによって提起された議題の場合、PCCのメンバーでないUCI会長は、議論することなくその提起を拒否できる。

 PCCはチーム、選手、オーガナイザーとUCIとの間で議論する場であるはずだが、現在の仕組みはその反対。誰かが拒否権を行使すると、議題を議論できないからだ。

4. UCIは商業分野を干渉している

 プロのレースにおけるUCIの役割は審判員を育成し大会に派遣することだけで無く選手の安全対策を管理し、チームと主催者に対し適正な審査を実施しライセンスを発行することである。

 ただし、UCIはその規制力をさまざまな方法と形態で使用して、商業分野で直接および間接的に干渉し、UCIの利害関係者である選手とチームを犠牲にしている。これはますます頻繁に発生しており、チームとその選手の明確な意思に反している。例えばレースの日数だ。

 当初、UCIはチームとオーガナイザーに対してワールドツアーのレースを年間154日、開催する義務を与え、そして4年間のライセンスを保証した。

 新しい案では、レースが年間180日に達し、チームライセンスの基準(ポイント制)は、チームとオーガナイザーの平等を大きく不均衡にし、明らかに影響を与えている。そこには参加するレースをチーム側、主催者側が自由に選べられないという、興業としてのプロスポーツの基本的権利が損なわれている。

 さらに、UCIはこの分野において明白な利益相反を抱えている。UCIライセンス料収入は、拡大するワールドツアーカレンダーとともに増加し、UCIは政治的および商業的利益のためにワールドツアーライセンスを提供する場所を独自の基準で選んでいる。

5. プロシリーズレースの基準が不透明

 議論の別のポイントは、特に安全性に関して高い基準を満たし、チームを支える新しいカテゴリー「ProSeries」(プロシリーズ、2020年からジャパンカップ等のHCクラスはプロシリーズと名称が変更される)。プロシリーズの新制度の発表により、現実とは正反対であることは明らかになった。

 権威ある選択的で魅惑的なカテゴリーだったHCクラスは「プロシリーズ」として生まれ変わった。2020年に数で28.5%増加する予定。主催者に対する登録基準も未だに明らかになっていない。

 たとえば、UCI会長の出身地であるGP Plumelec(グランプリプルメレ)に関して、魅力に欠け、過去3年間でフランス以外の外国のワールドチームが1つも参加しなかったという事実にもかかわらず、何の裏付けも無く突然このレベルに昇格した。

 各レースは客観的な基準に基づいてプロシリーズレースとして昇格されたのではなく、政治的理由や個人的な意図でUCIレースカレンダーに登録された。

 非常に大規模なプロシリーズのレースへのエントリーの一部の強制化は、明らかにプロのチームにとって非常に不利であり、チームやサイクリストにシーズン中により多くの日を走らせるようプレッシャーがかかるという、望ましくない状況を作り出している。

 これらの理由により、現在のスポーツ基準で拡張されたこれらのワールドツアー及びプロシリーズのレースカレンダーの組み合わせは、チームにとって承認できない。

 これらの重要な優先事項の1つとしてプロシリーズは、カテゴリーピラミッドの位置付けにおいて、ワンランク下のチームを強化する重要な要素であるべき。ワンランク下のチームであるUCIプロチーム(2020年からプロコンチネンタルチームはUCIプロチームに名称が変更される)は、カテゴリーピラミッドの強固な基盤の基礎となるべきである。

 その結果、UCIプロチームに「彼らの」主要レースであるプロシリーズへの参加の保証を優先する必要があると、チームはUCIに対しこのメカニズムのシミュレーションを依頼したが、約束が守られなかったため、UCI主導の2020の改革はUCIプロチーム組織に追加の財政的義務を課し、多くの重要な組織の消滅を引き起こしている(編注:NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネの解散もこれにあたる)。

6. 対話の欠如

 UCIは、「チームリレー」と呼ばれる(男女混合の)ナショナルチームによる対戦をワールドカレンダーのイベントを新たに追加することを決定した。そのため、チームはスポンサーからの可視性をさらに失うことに繋がった。更にUCIは大陸選手権のスケジュールをカレンダーに追加した。これもチーム側との協議を無視し(開催時期の)決定がなされた。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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