2019-2020の移籍市場と契約未定選手の動向デュムラン、ニバリらビッグネームの移籍が相次ぐ デニスはどこへ行く?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 2020年シーズンはワールドチームが1チーム増えて、全19チームとなる。移籍市場も活発に動き、大物選手の移籍も一旦落ち着いてきた。すでに各チームは陣容を固め、チームビルディングキャンプや新しいジャージのお披露目会などのイベントが催されていなか、未だに来季の所属先未定の選手も多く存在する。今回は、ワールドチームを中心にここまでの2019-2020シーズンの移籍市場、そして契約未定選手の動向についてまとめた。

※本記事の移籍動向はすべて、記事執筆した11月20日時点の情報に基づく。

グランツール総合優勝経験を持つヴィンチェンツォ・ニバリ(左)とトム・デュムラン(<br />右)、世界選手権個人タイムトライアル2連覇を飾ったローハン・デニス(中央) Photo: Yuzuru SUNADA

ビッグネームの移籍が相次ぐ

 今年の移籍市場ではグランツールレーサーの移籍が目立った。グランツールの総合表彰台経験者の移籍は7件に上る。

グランツール総合表彰台に乗った回数と移籍先

11回、ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア):バーレーン・メリダ→トレック・セガフレード
6回、ナイロ・キンタナ(コロンビア):モビスター チーム→アルケア・サムシック
3回、トム・デュムラン(オランダ):チーム サンウェブ→ユンボ・ヴィスマ
1回、ミケル・ランダ(スペイン):モビスター チーム→バーレーン・メリダ
1回、エンリク・マス(スペイン):ドゥクーニンク・クイックステップ→モビスター チーム
1回、イルヌール・ザカリン(ロシア):カチューシャ・アルペシン→CCCチーム
1回、リチャル・カラパス(エクアドル):モビスター チーム→チーム イネオス

 このうち、総合優勝経験者はデュムラン、キンタナ、ニバリ、カラパスの4人。モビスターからは3人もの表彰台経験者が離脱となっている。あわせて、強力なクライマーや山岳アシストとして実績のある選手の移籍も目立っている。

ジロ・デ・イタリア総合優勝を飾ったリチャル・カラパス Photo: Yuzuru SUNADA
ツール第18ステージで勝利したナイロ・キンタナ Photo: Yuzuru SUNADA

 モビスターを離脱するランダが移籍するバーレーン・メリダは、2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合6位のワウト・プールス(オランダ、チーム イネオス)、2019年ジロ・デ・イタリア区間2勝のペリョ・ビルバオ(スペイン、アスタナプロチーム)らを獲得。ザカリンが移籍するCCCチームもヤン・ヒルト(チェコ、アスタナプロチーム)、2019年ジロ区間1勝のファウスト・マスナダ(イタリア、アンドローニ・ジョカトーリ・シデルメク)らを獲得した。

 一方で表彰台経験者ではないが、2018年ジロ総合5位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、バーレーン・メリダ)、2015年ジロ総合4位のアンドレイ・アマドール(コスタリア、モビスター チーム)、2015年ジロ総合6位のレオポルド・ケニッグ(チェコ、ボーラ・ハンスグローエ)、2013年ジロ総合5位のカルロス・ベタンクール(コロンビア、モビスター チーム)といった実績豊かな選手たちも来季の契約先が未定のままだ。

エースとしてもアシストそとしても有能なドメニコ・ポッツォヴィーヴォ。2019年ツアー・ダウンアンダーにて Photo : Yuzuru SUNADA
強力な山岳アシストとして大活躍だったアンドレイ・アマドール Photo : Yuzuru SUNADA

 アマドールはチーム イネオスへの移籍が有力視されており、ベタンクールは公表されていないもののモビスターとの契約が2020年まであるといわれている。

 ポッツォヴィーヴォは8月上旬にトレーニング中に落車し、腕と脚の骨折など重傷を負った影響が大きく、また36歳という高齢も相まって先行きがわからない。ケニッグも長引く膝の怪我の影響でここ2シーズンはまともに走れておらず、来季も選手を続けるかどうか不明な状況だ。

現役通算勝利数の上位選手が移籍

 通算20勝以上あげている選手の移籍は、次のとおりだ。

通算勝利数現役上位選手とその移籍先

156勝、アンドレ・グライペル(ドイツ):アルケア・サムシック→イスラエルサイクリングアカデミー
146勝、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス):ディメンションデータ→バーレーン・メリダ
78勝、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア):ドゥクーニンク・クイックステップ→コフィディス ソルシオンクレディ
77勝、フィリップ・ジルベール(ベルギー):ドゥクーニンク・クイックステップ→ロット・スーダル
65勝、ナセル・ブアニ(フランス):コフィディス ソルシオンクレディ→アルケア・サムシック
47勝、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ):トレック・セガフレード→ロット・スーダル
25勝、マッテオ・トレンティン(イタリア):ミッチェルトン・スコット→CCCチーム
20勝、ダニエル・マーティン(アイルランド):UAE・チームエミレーツ→イスラエルサイクリングアカデミー

 65勝のブアニが通算勝利数の現役10位となる選手であるため、現役1位のグライペルを含め、上位10人中5人が移籍することとなった。ヴィヴィアーニ、デゲンコルプ、トレンティンは共に30歳、ブアニは29歳と選手として一番脂の乗ったタイミングでの移籍となる。

チームとの契約を破棄し、ワールドチーム復帰を果たしたアンドレ・グライペル。写真は2019年ボルタ・ア・カタルーニャにて Photo : Yuzuru SUNADA
今季未勝利に終わったマーク・カヴェンディッシュは新天地で再起をかける。写真は2019年UAEツアーにて Photo : Yuzuru SUNADA

 ちなみに、通算46勝のサーシャ・モードロ(イタリア、EFエデュケーションファースト)、42勝のサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)、28勝のローハン・デニス(オーストラリア、バーレーン・メリダ)、26勝のダリル・インピー(南アフリカ、ミッチェルトン・スコット)らも来季の契約が未定のままだ。ただし、モードロはコレンドン・サーカスへ、ベネットはドゥクーニンク・クイックステップへの移籍が濃厚といわれている。

2019年は体調不良に苦しみ、本来のパフォーマンスを出せなかったサーシャ・モードロ Photo : Yuzuru SUNADA
ツール第9ステージで勝利したダリル・インピーだが、まだ移籍先が決まらず Photo : Yuzuru SUNADA

 デニスは2020年まで有効だったバーレーン・メリダとの契約を破棄し、2018年まで使用していたBMCのバイクに乗って世界選手権の個人タイムトライアルを連覇したのだが、現在BMCを使用するNTTプロサイクリング(現・ディメンションデータ)は来季所属選手が確定したことを発表し、空きが無い状況。チーム イネオス、モビスター チーム、CCCチームがコンタクトを取っているとの噂があるが、どこもBMCを使用していないチームだ。いずれにせよ現時点では所属先未定のままであり、最大の目標である東京オリンピックまで無所属で活動する可能性もあるだろう。

35歳以上の大ベテランの多くが引退

 現時点で今シーズン限りでの引退を表明した選手は24人に上る。2017年は22人、2018年は24人であり、まだ契約未定の選手が多く残っていることを考えると、今季引退する選手は例年よりやや多いといえそうだ。

2019年に引退した主な選手

マシュー・ヘイマン(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット)※2019年1月に引退
マルセル・キッテル(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)※2019年5月に休養、その後引退
マヌエーレ・モーリ(イタリア、UAE・チームエミレーツ)
ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、モビスター チーム)
スティーブ・カミングス(イギリス、ディメンションデータ)
テイラー・フィニー(アメリカ、EFエデュケーションファースト)
マッティ・ブレシェル(デンマーク、EFエデュケーションファースト)
マルケル・イリサール(スペイン、トレック・セガフレード)

 また、2019年1月1日時点で35歳以上だった選手は41人いたが、このうち15人が引退を決めている。2018年は41人中10人だったので、大ベテランと呼ばれる選手の多くが引退し、全体的に大きく世代交代が進んでいるといえる。

2016年ツール・ド・フランス第7ステージで逃げ切り勝利を飾ったスティーブ・カミングス Photo: Yuzuru SUNADA
2017年ツール・ド・フランス第2ステージで山岳賞ジャージを獲得したテイラー・フィニー Photo: Yuzuru SUNADA

 35歳以上のベテランで来季契約が無い選手は、前述したポッツォヴィーヴォと、38歳のベルンハルト・アイゼル(オーストリア、ディメンションデータ)だ。アイゼルはカヴェンディッシュ、マーク・レンショー(オーストラリア、ディメンションデータ)と共に勝利を量産してきたのだが、カヴェンディッシュの移籍先であるバーレーン・メリダは来季所属選手が確定、レンショーは今季限りで引退。アイゼルはプロ20年目のシーズンとなる2020年も現役続行することに意欲を燃やしており、3人はそれぞれ別の道を歩むこととなりそうだ。

ワールドチームの残り席数はわずか

 来季のワールドチームの1チームあたりの最低人数は27人と決められている。まだ来季の所属選手が27人に達していないチームは次のとおりだ。

ワールドチーム残り席数

ドゥクーニンク・クイックステップ:1
イスラエルサイクリングアカデミー:5
モビスター チーム:4
チーム イネオス:2
合計:12

 一方で、今季ワールドチームに所属した選手で、来季の契約がない選手は36人だ。ここまで名前を出していない契約未定選手のなかで、有力な選手としては、パリ〜ルーベ2位など北のクラシックで活躍したニルス・ポリッツ(ドイツ、カチューシャ・アルペシン)、ジロ区間通算3勝のエンリーコ・バッタリン(イタリア、カチューシャ・アルペシン)、グランツール出場8回のピーター・ステティナ(アメリカ、トレック・セガフレード)らがいる。

北のクラシックで躍進したニルス・ポリッツ。写真は2019年ドワルス・ドール・フラーンデレンにて Photo : Yuzuru SUNADA
クライマーとしてグランツールに多数参戦したピーター・ステティナ。写真は2017年ツアー・ダウンアンダーにて Photo: Yuzuru SUNADA

 ポリッツは25歳と若く、伸びしろもたっぷりな選手なのでワールドチームとの契約を結ぶだろうが、所属チームが吸収合併された影響で去就がなかなか決まらない状況だ。ステティナはあえて契約を更新せず、本格的にグラベルレーサーに転向する。今季も200マイル(約320km)のグラベルレースを10時間7分54秒で完走して2位とすでに好成績を残している。

 ワールドチームの残り席数がわずかとなったなか、契約のない今季ワールドチームに所属した選手を獲得するのか、もしくはチーム イネオスが11月20日にカルロス・ロドリゲス(スペイン)という18歳の若手有望株の獲得を発表したように、ワールドチーム外の選手を獲得するのか、まだまだ移籍市場の動向に注目していきたい。

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