ツール・ド・おきなわ市民210km【詳報】「五分五分だった」先頭3人のスプリント勝負を制した高岡亮寛

by 石川海璃 / Kairi ISHIKAWA
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 毎年強豪ホビーライダーたちが集結するツール・ド・おきなわ市民210km。ゴール前3人のスプリント勝負を制したのは高岡亮寛(Roppongi Express)だった。昨年は落車に巻き込まれるアクシデントに見舞われ大きく順位を落としたが、今年は「得意ではない」というスプリント勝負で、市民210km通算6度目の優勝を飾った。上位3選手のコメントを挟みつつ、レースの模様を振り返る。

市民レース210km表彰式。左から2位の松木健治(VC福岡)、優勝した高岡亮寛(Roppongi Express)、3位の井上亮(Magellan Systems Japan) Photo: Kairi ISHIKAWA

市民レーサーの甲子園

 UCI(国際自転車競技連合)アジアツアークラス1.2の「男子チャンピオンレース」と同様のコースを走る「市民レース210km」。一般公道を封鎖して行われるラインレースでは国内最長クラスの210kmの距離を誇る。その長い距離に加え、幾度となくアップダウンが待ち受けるレースは、一般サイクリストたちの心を惹き付け、いつしか“市民レーサーの甲子園”と呼ばれるようになった。

スタート/ゴールラインに並ぶ市民210kmの参加者 Photo: Kairi ISHIKAWA

 今年で31回目を迎える大会、市民210kmには313人がエントリー。早朝にも関わらず多くのレース参加者がスタート会場の21世紀の森公園周辺に集結した。スタート/ゴールライン先頭には、昨年このカテゴリーで優勝した紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)をはじめとするシード選手が並び、レースの号砲を待っていた。

 レースがスタートすると、早くも9人ほどの逃げ集団が形成される。元プロ選手の徳田鍛造(鹿児島FunRide)や阿曽圭佑(あそクリニック)ら、有力選手が9人が固める。先頭が国道58号の海岸線を北上し、約72km地点から始まる県道2号(通称与那安田横断道路)に突入するまで、メイン集団と最大8分差まで開いた。

最大8分までタイムギャップを稼いだ9人の逃げ集団。写真は約70km地点の与那付近 Photo: Kairi ISHIKAWA
有力選手が多く残ったメイン集団。昨年1位の紺野元汰(SBC Vertex Racing Team)もこの集団内で後半の動きに備えていた Photo: Kairi ISHIKAWA

 メイン集団に残った他の有力勢は、集団前方で一定の速度を保ちながらローテーションを回し、後半の動きに備えた。動きがあったのは昨年と同じくスタートから約98kmの奥の上りだ。

 メイン集団は井上亮(Magellan Systems Japan)や小畑郁(なるしまフレンドレーシングチーム)らの細かいアタックによりペースアップ。辺戸岬から南下し、与那方面に向かう海岸沿いを快調に進み、ハイペースで2度目の普久川ダムの上りに突入した。

逃げ集団崩壊後も先頭で走り続けた阿曽圭佑(写真左、あそクリニック)と元山高嶺(シマノドリンキング) Photo: Kairi ISHIKAWA
与那林道2回目でペースを上げるメイン集団 Photo: Kairi ISHIKAWA

 井上が「例年よりも速い印象」というくらいの速度で進んだ集団は、未だ逃げ続けていた阿曽と元山高嶺(シマノドリンキング)をキャッチ。レースは振りだしに戻るとともに、有力選手同士の攻防が本格化した。先頭では高岡を中心に更なるペースアップが図られ、みるみる内に人数を減らしていった。その動きに耐えられたのは有力候補が軒並み揃った15人ほどだ。

 ハイペースではあるものの、鋭いアタックが乱立するような「凄く激しい動きはなかった」と高岡が言うように、例年勝負どころの一つとして名前が挙げられる「学校坂」でも特筆すべき動きはなく、最後の補給ポイントである慶佐次まで10人以上の集団で駒を進めた。

3人のゴール勝負へ

 慶佐次を越えると10人以上いた集団が一人、また一人と脱落。レース序盤のペースアップと起伏に富むコースレイアウトが、有力候補の脚を削り、番越トンネルを出るまでに集団は5人まで絞られた。

高岡亮寛のアタックについてこれたのは松木健治と井上亮だけだった ©ツール・ド・おきなわ実行委員会

 そこから右折して羽地ダムの上りに突入すると、高岡がきつい区間でアタック。「どんどん人を減らすレース展開で、2~3人まで減ればいいなと思っていたが予想通りの展開になった」という松木の言葉通り、ついていけたのは松木本人と井上の2人のみ。この時、残ったメンバーを見て「絶対ゴールスプリントだと思いました」という高岡はその後、先頭交代のローテーションをするものの、ゴール勝負に向けて力を抑えていたという。

 一方の井上は、「スプリントが苦手なので、どこかで抜け出そうと思っていましたが、有銘付近でコースアウトした際、集団復帰に脚を使ったのが響き、余力がなかった」と話す。また、「一か八かスプリントで3人の勝負を楽しみたい」気持ちもあってゴール勝負を選択したという。

 3人はその後、残りの距離を減らし、残り1km手前からスプリントのため牽制モードに。互いが互いの状況を探る中、井上を先頭に高岡、松木で残り500mへ。250mを切ろうかというタイミングで高岡がスプリントを開始。松木が即座に反応して競り合うも高岡に軍配が上がり、昨年大会の雪辱を果たした。井上は両者から約2秒遅れで3位という結果になった。

松木健治(VC福岡)と高岡亮寛(Roppongi Express)のゴール争い。競り合ったが高岡が勝ちきった Photo: Kairi ISHIKAWA

 冷静にライバルたちの力を分析して「井上君はスプリントの初速は遅いけど、脚がある。松木さんはやりあえば五分五分で、絶対勝てると言えないけど、絶対敵わないとも思わない」と話す高岡。前日のトークイベントではここ10年で1番いい仕上がりだと明かしたが、謙虚な姿勢でこう続ける。「毎回おきなわの210kmはきついし、余裕もない。そして勝てるとも思ってない。ただ今回は結果が付いてきたので、(ここ10年で1番いい仕上がりだと)自分が感じていたのは間違っていなかった」。

 昨年の上位3人ががらりと変わった2019年のツール・ド・おきなわ市民210km。長くテクニカルなコースで行われるロードレースは様々なドラマを生み出す。毎年変化に富んだできごとが起こるからこそ、210kmのレースが“市民レーサーの甲子園”として人気を博し、毎年参加する選手たちがいるのだろう。市民レーサーたちの熱く白熱した戦いは、また来年の11月にやってくる。

ツール・ド・おきなわ2019 市民レース210km結果
1 高岡亮寛(Roppongi Express) 5時間19分32秒
2 松木健治(VC福岡) 5時間19分32秒
3 井上亮(Magellan Systems Japan) 5時間19分34秒
4 持留叶汰郎(thcrew) 5時間19分51秒
5 森本誠(GOKISO) 5時間19分51秒
6 中村俊介(SEKIYA) 5時間22分26秒

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