ツール・ド・おきなわ 男子チャンピオンレース【詳報】東京2020五輪へ本気度示した増田成幸の独走劇 ライバルのマークを振り切っての快勝

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 国内最大級のロードレースイベント「ツール・ド・おきなわ2019」は、UCI(国際自転車競技連合)公認の男子チャンピオンレースを11月10日に実施。シーズン最終盤のタイトルを懸けた争いは、終盤に主役級の選手たちによる勝負へ。レースを決めたのは、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が見せた、残り15kmの上りでの一気のアタック。登坂力と独走力を発揮し、1人でフィニッシュへとやってきた。

男子チャンピオンレース上位3選手。左から2位の内間康平、1位の増田成幸、3位のベンジャミ・プラデス Photo: Syunsuke FUKUMITSU

国内屈指の長丁場210kmに67選手が挑む

 プロライダーからホビーレーサー、さらにはキッズまで参加できる幅広いカテゴライズが魅力のツール・ド・おきなわ。“ホビーレーサーの甲子園”と称されるように、サイクリストの多くがこのレースを目標に定める。

男子チャンピオンレースのスタート地点 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 そのなかでもメインレースに位置付けられる男子チャンピオンレースは、UCIアジアツアー1.2クラスの国際公認レース。特徴は、210kmという日本国内のレースでは屈指の長丁場であること。世界的に見るとシーズンオフのこの時期だが、このレースも例外ではなく百戦錬磨の選手といえど過酷な戦いとなる。

 コースは、名護市を出発したのち、名護湾と東シナ海に面した本部半島を時計回りに進行し海岸線を北上。沖縄半島最北端の国頭村に入ると進路を反時計回りに変え、レース後半は太平洋沿いを南下。沖縄本島北部をおおむね8の字に進むルートは、中盤に2カ所の山岳ポイントが待つほか、残り15kmでやってくる羽地ダムへの長い上りが例年勝負を左右する重要区間となっている。最後は名護市へと戻ってくるが、プロトン内での活発な駆け引きはフィニッシュまで続くのがこのところの慣例となっている。

 このレースへは、国内外の14チームから67選手がスタートラインへ。午前6時45分の号砲とともに、2kmほどのニュートラル区間を経てリアルスタートが切られた。

男子チャンピオンレースのスタート Photo: Syunsuke FUKUMITSU

ファーストアタック決めた逃げが最大14分のリード

 そんなレースは、早い段階で落ち着くこととなる。スタートアタックで飛び出した山本元喜(キナンサイクリングチーム)とラース・クルブ(ドイツ、チーム ザワーランド・NRW)がそのまま先行。メイン集団は2人の動きを完全に容認すると、あっという間のタイムギャップが広がっていく。少し置いて、リック・ファンブレダ(オランダ、WTC de アムステル)が先頭2人を追ってアタック。合計で3人が集団の前を走ることになった。

レース前半を快調に飛ばした山本元喜(右)とラース・クルブ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 明らかにサイクリングペースとなったメイン集団に対し、先頭を走る2選手はペースを維持。33.7km地点に設定された、このレース1つ目のスプリントポイントでは、山本が1位で通過。さらに20kmほど進んだところで、1人追走となっていたファンブレダが山本らに合流。逃げグループが3人となった。

 前を行く3人は、最大で約14分までリードを広げる。この差を機に、メイン集団では宇都宮ブリッツェン、チームUKYO、シマノレーシング、愛三工業レーシングチーム、那須ブラーゼン、チーム ブリヂストンサイクリングがそれぞれアシストを1人ずつ出して、集団のペースメイクを開始。国内UCIコンチネンタルチームが追う意思を示し始めると、わずかながら先頭とのタイム差が縮まり始めた。

しばしサイクリングペースで進んだメイン集団 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 それでも、順調に飛ばす先頭グループ。海沿いの平坦路をこなして、いよいよ連続するアップダウンへと入っていく。まずは1回目の山岳ポイントが置かれる普久川の上り。ここも山本が制して頂上をトップで通過する。その後、12分30秒差でメイン集団がやってきた。

 沖縄半島北端部に入ると、メイン集団がさらにペースアップ。有力チームがアシストを出し合って追う状況は変わらないが、先頭グループとのタイム差は一気に小さくなっていく。やがて2回目の普久川の上りを迎え、山岳ポイントを再び山本が1位通過するが、後続も数分差で続く。150km近く続いた山本らの逃げだったが、レースが東海岸の南下を始める頃には3人の態勢が崩れ、ファンブレダだけが先頭に残る情勢となった。

長い登坂区間でアタック 3度目の優勝も独走で

 この間、メイン集団でもアップダウンで人数が絞り込まれていった。ファンブレダへの追撃態勢が整い、着実に射程圏内に捉える。

山本元喜(左)が2回の山岳ポイントをともに1位通過する Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 レースの流れが一変したのは、残り30km。入部正太朗(シマノレーシング)がメイン集団からアタックすると、山本大喜(キナンサイクリングチーム)、鈴木龍(宇都宮ブリッツェン)が反応。これは決定打とはならなかったが、入部の動きをきっかけにシマノ勢が次々と攻撃。実力者をそろえるブリッツェン勢がチェックに入る構図となる。

 そうした駆け引きから、増田、入部、内間康平(チームUKYO)、柴田雅之(那須ブラーゼン)がメイン集団から抜け出すことに成功。完全に勢いづいた4人の先行によって、戦いの方向性が定まっていくこととなる。

 そして、決定的な瞬間を迎えた。残り15km、幾多の名場面が生まれてきた羽地ダムへの上りで今回も大きな局面がやってきた。上りの入口で増田がアタック。これを読んでいたかのように内間が対応するが、長い上りをグングンと進んでいく増田は後続を寄せ付けない。完全に脱落した入部と柴田に代わって、メイン集団から石橋学(チーム ブリヂストンサイクリング)とベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO)が追走するが、内間への合流は果たすも増田までは届かない。

 独走態勢に入った増田に対し、3人で追う内間ら。最終盤となる名護市の市街地に入ったところで一度は8秒差まで迫ったが、余力を残していた増田がラストスパート。最終の数キロにかけてはライバルを引き離すことに成功、1人で最後の直線へとやってきた。

 フィナーレは見事なウイニングライドとした増田。自身3度目のツール・ド・おきなわ制覇は、過去2回同様に独走でのタイトル獲得となった。

増田成幸3回目のツール・ド・おきなわ優勝の瞬間。最終局面でのラストスパートで後続をさらに引き離してフィニッシュへ Photo: Syunsuke FUKUMITSU

五輪へつながる「チームで勝ち取ったタイトル」

 2回目の優勝だった2016年を彷彿とさせた、羽地の上りでの強力アタック。今大会では、多くのチームや選手が「増田をマーク」と口にするなど、プロトン内での注目度が高まっていたなかで、改めてその強さを証明するものとなった。

表彰式で歓声に応える上位3選手。中央が増田 Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 増田本人も、ライバルたちのマークは「ものすごく感じていた」と苦笑い。そんな状況下での劇的勝利に「チームメートが僕を信頼してくれたおかげ」と何度も繰り返した。堀孝明が集団コントロールに加わり、残り30kmからの他チームの動きは鈴木譲、鈴木龍、小野寺玲がしっかりとチェックに動き、エース増田の消耗を防いだ。レース後半については1つのミスが命取りになると肝に銘じていたといい、「とにかく出し惜しみせず、勝負どころだと感じたら攻撃に出ようと思っていた」と振り返る。

 今シーズンは3月のツール・ド・台湾(UCIアジアツアー2.1)での個人総合8位(アジアンリーダー獲得)に始まり、4月にはアジア最大級のステージレースであるツール・ド・ランカウイ(UCIアジアツアー2.HC)で同5位。5月のツアー・オブ・ジャパン(UCIアジアツアー2.1)では、大会終盤での落車負傷を押して同10位とするなど、コンスタントにUCIポイントを獲得。6月には個人タイムトライアルで全日本のタイトルを獲った。

 シーズンを通してのUCIポイント獲得が光り、東京2020五輪のロードレース代表争いに直結する選考ランキングでもトップを走る。何より、今大会での40点獲得も先々を見通すと重要な得点加算となりそうだ。増田は「もちろん意識しているし、来年の目標として具体化している」という五輪出場だが、一方で「そればかりに固執して走りに影響することだけは避けたい」とも語る。今回は大きな勝利であると同時に「独走態勢に入るまでの約190kmを組み立ててくれた仲間たちに感謝の気持ちでいっぱい。チームで勝ち取ったタイトル」であると強調した。

 なお上位は、地元沖縄でのレースに照準を定めてきた内間が18秒差の2位、チームメートのプラデスが3位と続いた。また、長距離逃げで魅せた山本が今大会の山岳賞となった。

逃げで魅せた山本元喜は山岳賞を獲得 Photo: Syunsuke FUKUMITSU
アンダー23賞は7位入賞の當原隼人が獲得した Photo: Syunsuke FUKUMITSU

ツール・ド・おきなわ 男子チャンピオンレース(210km)結果
1 増田成幸(宇都宮ブリッツェン) 3時間36分31秒
2 内間康平(チームUKYO) +18秒
3 ベンジャミ・プラデス(スペイン、チームUKYO) +19秒
4 石橋学(チーム ブリヂストンサイクリング) +20秒
5 ジェイソン・クリスティ(ニュージーランド、愛三工業レーシングチーム) +49秒
6 岡本隼(愛三工業レーシングチーム) +54秒
7 當原隼人(沖縄選抜)
8 フェン・チュンカイ(台湾、チャイニーズタイペイナショナルチーム)
9 畑中勇介(チームUKYO)
10 横山航太(シマノレーシング)

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