title banner

連載第15回(全21回)ロードレース小説「アウター×トップ」 第15話「試走」

  • 一覧

 残暑厳しい中、京助たちは公園を後にする。少し走ると山の入り口が見えてきた。交通量はほとんどなく、周囲に民家もないため、聞こえてくるのは蝉の声だけだ。今は悠宇、京助、有季、南、そして瞬一の順に隊列を組んでいるが、彼だけが少し遅れている。

「あの相模って人さ、どうしてアタシたちを目の敵にするんだろうね」

 有季が京助から見て4時方向について口を開き、京助はさらっと応えた。

「それは、その…俺たちが、カップルに、見えるからだろう」

「え、まさかその程度で?」

 女っ気のない男のひがみ根性は京助にはよく分かる。だからそれ以上、突っ込まれたくなくて、ケイデンスを上げて有季から距離をとった。

「なんだよ急に」

 有季は少し怒ったように京助についてきた。山に入ると、道の左側が斜面、右側が谷になっている。右にはガードレールが設置されていた。京助が振り返ると瞬一は遅れ始めていたが、くらいついている。

「アタシ、先に行くね」

 有季が京助の横に並んだ。

「来週クリテなのにいいのか?」

「この先、面白そうだしね。見逃せないよ」

 まだ本気のヒルクライムには遠いが、女子の有季が男子についていくには無理がある。今の内に先行して、後半の京助と瞬一の動きを見物しようというのだ。

「そうか」

 京助の返事と同時に有季はダンシングを始めて、みるみる内に小さくなり、コーナーの向こうに消えた。

 5%ほどの上りが始まるが、京助は登坂を楽に感じている自分に気がついた。ローラー台のトレーニングが効いているのだろう。夏場を乗り越えて、このレースをターゲットにするには、ちょうどいいトレーニングだったのかもしれない。スプリントについても、必要な上半身の筋肉は衰えても、9月に入ってバイトを再開してからは元に戻りつつある。鍛錬を課せば、その分、自分の力を実感できるようになるのが、ロードレースの良いところだ。

 8%、9%と勾配が増していくが、呼吸は安定し、深く吐くこともできている。丹田を意識すると、体幹がを安定する。京助は新たに取り付けた、ドロップハンドル用のミラーの中に、瞬一の姿を見つけた。レースでは禁止されているが、使ってみると便利なアイテムだ。瞬一がついてきているのであれば、自分も頑張らねばならない。

「悠宇。ちょっと先に行くわ」

「頼もしいじゃないか」

 悠宇は感嘆し、サムアップした。しばらくしてミラーの中の瞬一が徐々に大きくなり、ミラーの視界に入らなくなった。来たぞ、と言わんばかりのドヤ顔で瞬一は京助に並んだ。

 京助は重心を前に移動してペダル荷重を増やしたが、俊一を引き離すには足りない。サドルから腰を上げてダンシングを開始してようやく瞬一を突き放す。瞬一はアタックに反応し、京助をダンシングで追うが、引き離される。どうやら彼はヒルクライム対策を怠っているらしい。タイムトライアルでは早かったし、スプリント系が強い乗り手かもしれない。

 滑り止めがついたコンクリート舗装の地獄坂が目前に現れる。京助は重心を意識しながらダンシングを続ける。20%ほどもあるきつい勾配だと、前輪が浮かないように重心コントロールをしなければならない。ここで京助は、初めてスタンディング練習が役立っているのが分かった。以前よりもずっとバイクのバランスに敏感になっている。有季の指導の賜物だ。ただ、心臓と肺はもう休ませてくれと悲鳴を上げている。実際のレースではもっと上手くやらないとならない。

「落ち着いて、深く呼吸をして、きちんと前後バランスをとるんだ」

 南が後ろから声を掛けてきて、京助は少し気持ちを落ち着かせた。

「相模は無理するな。神谷くんと橋沢くんはそのまま行くぞ」

 涼しい顔をして南が先に出た。南はサドルに腰を下ろし、リズミカルなダンシングで、まるで壁のような激坂を上っていく。南に元気な姿を見せられて、どれだけこの人は凄いんだと、京助は半ば呆れた。

 彼が元プロの、しかもトップレーサーだったことはもう京助も知っている。病気でリタイアを余儀なくされたことと、そして自分が感動した5年前のレースでもでトップ集団を走っていたことを知り、心を震わせた。あれから脇目も振らずロードバイクに乗り、ここまで来た。そうしたらいつの間にか、あの時、熱い気持ちをくれたプロレーサーと一緒に走っていた。諦めさえしなければ、前を向いてさえいれば、この先、プロのステージまで行ける気がする。

 頂上に至り、ミラーではなく、右の脇の下から後方を確認したが、瞬一の姿はまだ見えない。南は瞬一を待つのか、頂上で脚をついたが、京助は先に下り始める。その先の7連コーナーに入り、京助はスピードを落とした。

 有季の姿はまだ見えない。有季は元MTBレーサーである父親の血が濃いようで、やたらダウンヒルが得意で、男子に引けを取らないくらいだ。あれだけ先行していれば、まだ京助が追い付く道理がない。

 それにしても、集団の中と違い、一人で走っているとどの程度で下ればいいのか判断がつかない。地下水が滲みだして路面にコケが生えた箇所に来ると、京助はタイヤのグリップを確認しながら慎重に下る。その時、坂の上からホイールのラチェット音が聞こえて来て、ロードバイクが猛烈な勢いで下ってくるのが分かった。

 ついてこい。

 南がそうジェスチャーして、京助をパスしていった。次のコーナーに差し掛かり、南は少し腰を浮かせつつ、上体は垂直を維持。ブレーキングのタイミングは教科書通り。バイクをカーブの内側に傾けて、加重はカーブ外側の脚に。上半身はやや後ろに。そしてコーナーを脱出するとペダルを水平にしてバランスをとり、路面の凹凸に備える。先ほど京助が考えていた理想のラインよりもずっと繊細なラインを描いてタイヤが転がっていく。

(本当に凄い!)

 京助は必死で彼のバイクについていくしかない。頭をフル回転させて、最適な重心位置と加重を考えなければ、南のようには身体を動かせない。遠くに視線を置くことも忘れてはならないポイントだ。

 悠宇も有季と同じくダウンヒルもかなりのものだが、彼の場合はセンスと動体視力に負うところが大きい。南の方が論理的に走っており、勉強になる。しかも南の後についていくと、コケにタイヤをとられることもなかった。こういうトラップは、勢いと正しい加重で回避できるものだと改めて思った。

 コーナーが終わって緩いカーブを描く区間に至ると、速度が乗る。ちらりとサイクルコンピュータを見ると、時速70キロを超えていた。ツールでは100キロで下るというから、アマチュアの速度域だが、京助は下りでこれほどの速度を出したことがなかった。

(失敗したな)

 風圧が頬を叩き、バラバラと何かが風を切る破裂音がした。ヘルメットの顎紐の余った部分が風で暴れているのだ。今までこんな速度を出したことがなかったから、今まで気づかなかった。

 その上、コーナーに入る時に路肩のラインを超えると、普通の速度ではあり得ないほどの振動がハンドルバーから伝わってきて、京助は恐怖を覚える。フロント周りの剛性が低いわけではない。今、タイヤがどんな凹凸を拾っているのか分かるし、バイクは京助の操作を受け入れてきちんと反応してくれている。単に下りの経験値が低いのだ。

 前をいく南のバイクは、安定したコーナーリングを繰り返し、京助を引き離した。再びラチェット音が近づいてきて、今度はハンドルミラーに瞬一の姿が映った。

「どけぇえ!」

 瞬一が凄まじい速度で京助を抜き去っていったが、次のコーナーをクリアできるとは思えない無謀なライン取りだった。

「おりゃああ!」

 瞬一はビンディングを外してガードレールを蹴り、無事コーナーを曲がって、京助の視界から消えていった。

「そんなバカな!」

 一つ間違わなくても、普通なら大クラッシュだ。彼のバランス感覚と度胸は図抜けている。京助は瞬一を追って下り始め、下り最後のコーナーで捉えた。南も一緒だ。瞬一もこの先が上りだと分かっているだけあって、必死で回している。

(だけど坂で脚を使ってるんだろ。分かってるよ)

 京助は次の2km弱の上り区間で瞬一をパスしようとするが、今度は彼が必死で食らいついてきた。南は傍観して下がっていった。

「ふざけんな」

 本気で振り切るべく京助はダンシングを始め、瞬一も追随する。京助は少しずつリードを獲得するが、ハンドルミラーの視界からはダンシングを続ける彼の姿がなかなか外れない。彼がこれまでどんなトレーニングを積んできたのか、どんな思いでレースに挑んでいるのか、京助は興味を覚える。だが、それを知らなくて分かることがある。それは彼が自分と同類の人種だということだ。ロードバイクを愛し、何かを賭けているということだ。

「だけど勝つのは俺だ」

 口の中だけでそう言葉にすると、身体の芯が熱くなるのが分かった。有名どころのショップチームは、目に見える壁としてあっても掴み所はなかったし、その個々人に乗り越えなければと思う“何か”はなかった。

 恐らく悠宇はその“何か”を持っていた。しかし彼は京助が初めて交流を持ったロード乗りだったし、その上すんなりと自分の生活の一部になってしまい、その“何か”には気づかなかった。しかし今ならばそれが分かる。京助の中に、瞬一には決して負けられないという強い気持ちが湧きだしてきた。

(面白い)

 京助は身体の芯の熱さが、全身に広がっていくのを感じた。山を上りきったところで有季の姿が見えた。京助が有季を後ろにつける。先行したとはいえ、ここまでのアドバンテージを稼ぐのはなかなかできないことだ。パワーが足りなくて上りで男子選手に敵わなくても、下りは空間把握能力やバランス感覚でカバーできる。下り基調だったからこそここまでこれほど先行できたのだろう。上りで消耗しているだろうが、後ろまで来てくれれば、有季を休ませられる。また休ませている間は、前にいる京助も若干整流効果を得られ、ほんの少しだが、楽になる。

 ほんの少し平坦な箇所が現れた。すぐに下りになり、ほどなく彼が並んでくるだろうと思われた。ミラーに瞬一の姿が映り、京助はパスさせ、彼の後ろについて走り始める。路面の悪いところを回避しながら、ベストのラインを探るが、彼の後ろについていると余裕を持ってそれを見ることができた。

(センスいいじゃないか)

 勾配が小さくなり、緩いコーナーが連続する区間に突入すると、瞬一も京助も脚を回し始める。

「脚溜まった!」

 有季が京助に向かって叫び、ゴール1.2km手前で有季と先頭交代を始める。有季が先頭を引く時間は短いが、それでも京助が回復する時間は稼げる。瞬一との距離が徐々に縮まり、京助は彼の真後ろにつけた。ゴール前で差しきられないためには、この辺りでアドバンテージが欲しかったが、京助はまだアタックの場所に迷っていた。

 瞬一は京助が後ろについたのを嫌がり、車体を左右に振り始める。しかし京助は前には出ないで後ろにつく。苦しさが増したのか、瞬一が刹那の間、脚を止めたその時、ミラーの中の有季がアイコンタクトした。最後のコーナーを回って直線に出たところだ。

 道路には、正面、後ろ共に自動車の影も形もない。有季は変速なしで、いきなり全力でクランク回し始め、京助と瞬一の前に出た。変速しなかったのは後ろにアタックを気づかれないためだ。有季がここで瞬一を撒くつもりだと分かり、京助は彼女の後に車間数センチでついていく。

 瞬一は、アタックにワンテンポ遅れたが、全力で脚を回し始める。けがをしてから今まで、京助がため込み、培ってきた力を確かめる時が来た。3秒ほどで有季は力を使い果たし、京助は彼女と交代。さらに瞬一を突き放した。ラスト700メートルで有季は離脱がしたが、京助はアドバンテージを稼いでいる。2人掛かりで瞬一がついていける道理がないのだ。

 京助が一番で公園前の道路標識の下をくぐり、瞬一が1車身差でゴールした。心肺が暴れ、脚が悲鳴を上げていたが、久しぶりにロードバイクで走る京助にとってはその苦しみにすら、快感を覚えた。しばらくの間、脚を回して身体を落ち着かせていると、悠宇と南が到着し、最後にゆっくりと有季がゴールインした。瞬一は悔しそうな顔して京助と有季に目を向けた。

「あーすっとした!」

 有季は汗まみれの顔で瞬一にそう言い放ち、マンガのように舌を出した。

「それで大方どうなったか分かった」

 悠宇は妹に話しかけた。

「だけど来週に影響するだろ、それじゃ」

「今日の方が重要!」

 有季は小さな胸を張った。

「橋沢! まさか今日、オレに勝ったとか思ってるんじゃないだろうな!」

「実際勝った」

 京助はホッピングをして勝ち誇って見せた。疲れていてもビンディングでペダルに脚が固定されていると、ホッピングはしやすい。

「女に助けて貰って勝ち誇るとはいい身分だな。それにオレは来週のレースで上位を狙ってるんだよ、本気じゃねえ! クリテで勝負だ!」

「俺はクリテリウムが苦手だ。お前の土俵で戦う気はない」

「じゃあもう1回ここでやるか? サシで」

「それはダメだ」

 南が瞬一を止めた。「3人とももう力を使ってしまっただろう。来週に影響するのは困る。各自、この後、リカバリーしておけよ」

 京助は南に目を向けた後、瞬一の表情を窺うと、彼は不満そうに目を背けた後、再び脚を回し始めていた。彼にとって南の言うことは絶対なのだろう。京助も乳酸を抜き、タンパク質とアミノ酸を補給した。たった14kmのコースを1度走っただけでも、戦闘速度で走ればハードな負荷となる。

 ロードバイクを車内に撤収し、ワンボックスカーに乗車した状態で、もう1度コースを下見する。車から見るとバイクに乗っている時には分からないものが見えてくる。少なくとも勾配に関してはよく分かった。20%の勾配は車に乗った状態では本当に壁にも思える。車のシートに押しつけられるように感じるほどだ。これを人力で上るのだからと京助は我ながら呆れた。

 帰りは内房に出て、有名なラーメン屋へ行った。チャーシューに刻みタマネギ。起源は漁港の賄い料理だったらしいが、食べ応えがあった。

「たまにはご当地グルメも良いでしょう?」

 車を出した雄一郎が、南に言った。子どもらと同年代の京助や瞬一と比べればずっと歳が近いこともあって、雄一郎は南を話し相手にしていた。二人はプロの世界の話をよくしており、共通の知人もいるようだった。京助はいち早く食べ終えて、氷水を飲みながら瞬一に目を向けた。

「面白かった。速いな、相模は」

「はあ? お前が勝ったのに何を言ってるんだ」

 麺をすすりながら瞬一が面を上げた。

「レースの外でも、仲間内で競うのは、それはそれで面白い」

「京助とはよくスプリント勝負してたよね」

 悠宇が応えた。

「自転車乗りなんて負けず嫌いでちょうど良いと思うし、ね」

 京助はまた瞬一を見た。彼は言葉に詰まった後、少し赤くなり、ぼそっと言った。

「テメエには負けねえ」

 有季が笑いを押し殺したが、ついに堪えきれず、声を上げた。

「そういうのツンデレっていうんだよね? よく知らないけど」

 そのタイミングで京助は有季のチャーシューを1枚奪い取り、口に入れる。

「あー! 大切にとって置いたのに!」

「残したのかと思った」

「後でグーで殴る」

 有季は涙を浮かべ、悠宇は笑い、瞬一はケッと吐き捨て、またラーメンと向き合った。雄一郎と南は子どもたちの様子を見て、困ったように肩をすくめた。

「ケンカもコミュニケーションの内で必要だとは思うが、笑顔だけは忘れるなよ。苦しい時にこそ、爽やかな笑顔だ。特にレースではな」

 南は笑顔で京助たちに言った。京助はその笑顔を思い出し、応えた。

「それは激坂の時にやったスマイルですね」

 南は真顔に戻り、頷いた。

「そうだ。実は俺も結構、辛かった。自分が苦しい時は、相手も苦しいものだ。だけど、その相手が笑顔だったら?」

 悠宇は南の顔を見て、思い至ったように応えた。

「――心理戦ですね」

「競っている相手が疲れているかどうかはきちんと把握するだろう? 敵もそうだ。敵に自分の状態を探られないために必要なのは、演技力だ。疲れていなければ、疲れているフリが有効だし、逆に疲れていたり、どこか痛めていたら、絶対に隠し通す。時代がどんなに変わっても、これはレースにおける真理だと思う」

「ボベやイノーも書いてますね」

 ボベとイノーは有名な自転車チャンピオンで、著書を残している。古典だが、京助もそれを読んでいた。

「でも、実際にはやってないだろう。いや、神崎くんは修善寺でやっていたな」

 京助と有季は頷いた。

「苦しい時も笑顔でいるんだ。まずはそれだけでいい。それと下り方を橋沢くんに見て貰ったが、どうだった?」

「本に書いてある通りでした。お手本、イメージ通りという感じで」

「そうだ。しかしあれは普段の俺の下りじゃない。あれをイメージして、自分自身の下りを組み立てて欲しくて、見て貰った。基本を分かった上で自分なりの下りを組み立てられれば、もっと早くなれる。だがな、相模、お前はダメだ。またガードレール蹴って強引に曲がったろ。絶対クラッシュするって」

「くっ…」

 瞬一はラーメンの丼に顔をつけんばかりに俯いた。

「帰りの車で説教だ。君たちは絶対に真似しちゃダメだぞ」

 瞬一は観念したように南の方を見て半べそをかき、一同は笑った。

 翌週のクリテリウムレースの開催地は、京助たちに交通の便が良い成田だった。しかし楽にアクセスできる地の利を活かせず、京助たちは参戦ポイントを稼いだだけで終わった。京助と瞬一は先週の試走が招いた疲労が明らかに響いており、2人が協力することもなかった。比較的短い距離を周回するクリテリウムレースでも戦術が重要なのは言うまでもないが、今回は戦術以前の問題だった。しかし南は怒ることなく、笑顔で2人に言った。

「面白かっただろう? 来月のレースも楽しもう」

 笑顔ということは逆に怒っているのだろう、と京助は判断した。来月のレースは本命の南房総ロードレースだ。この調子でロードでも戦えるのかと、クリテリウムで入賞し、表彰台に上っている選手たちを見て、京助は悩む。一方、有季は相変わらず好調で、3位入賞を果たして雑誌の取材を受けていた。良い成績を残し、スタイルも顔もいい有季は絶好の取材対象だろう。

「来月辺り、載っちゃうかな」

 帰りの車の中で有季はニコニコしていたが、京助は浮かない顔のままだった。

「あれ…喜んでくれないの?」

「雑誌に載って有名になると、マークがきつくなるぞ」

 京助が応えると有季は笑顔で小さくガッツポーズをとった。

「大丈夫。それはそれで頑張れるから」

「可愛く撮って貰えてると良いな」

 京助は、彼女の笑顔で少し気が楽になった。

「元が可愛いですから」

「母さんに感謝だな」

 運転席の雄一郎が、バックミラーの中で笑っていた。有季は別のステージに上がりつつある。悠宇もE1昇格を決めた。自分にはまだいいところが1つもない。本当に南房総のレースで昇格を決められるのか、京助のこれまでの努力が試されようとしていた。

《つづく》

※本作品は株式会社KADOKAWA刊・メディアワークス文庫「アウター×トップ」を改稿したものです。
※この物語はフィクションであり、実在の人物や団体、地域などとは関係ありません

監修:岡 泰誠(日本スポーツ協会公認自転車競技コーチ)コスモス パフォーマンス コンサルティング

この記事のタグ

ロードレース小説「アウター×トップ」 神野淳一

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

サイクリストTV

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載