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幕張クロスで2度目シクロクロス全日本TT元王者・西薗良太さんの「シクロクロス」挑戦 ビギナーやロードレースに役立つノウハウとは

by 澤野健太 / Kenta SAWANO
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 2019年のシクロクロスシーズンが開幕しました。2018~19シーズンに全くレースに出場しなかったCyclist編集長の澤野はモチベーションアップのために、今年度の実質的な開幕戦となった幕張クロスを視察。2017年の全日本個人タイムトライアル(TT)ロードレース選手権男子エリートで2連覇し、現在は大学院に通いながら人気ポッドキャスト「Side By Side Radio」を主宰する西薗良太さんが11月3日の幕張クロスの最下位カテゴリー「C4」に参戦するとのことで、ロードバイク乗りやビギナーの参考になるシクロクロスのススメを聞いてみました。

幕張クロスでシケインを「東大ステップ」でクリアする西薗さん Photo: Kenta SAWANO

なぜ復帰したのか?

 2回のプロ選手生活を終え、現在大学院生の西薗さんがなぜシクロクロスのレースに出ようと思ったのか。その問いについて「現在学業が忙しいのですが、(一番下の)C4ならレースの時間は30分くらいなので挑戦しやすいと思いました。これから自転車レースを始める方にもおススメです」と答えてくれた。

レース前、Side by Side Radioの相方・高田さん(左)と作戦を練る西薗さん Photo: Kenta SAWANO
2017年の引退以来、初のシクロクロスで召集される西薗さん Photo: Kenta SAWANO

 実は西薗さんにとってシクロクロス挑戦は2度目。2013年に一度プロ引退後、2014年の野辺山シクロクロスにホビーレーサーとして挑戦し、上から2番目のカテゴリー「C2」から出場。「舗装路でのスタートダッシュでごぼう抜きしました」とロードレース選手としての実力を発揮し、いきなりの表彰台で翌日はC1に昇格していた。その後はプロに復帰し、一度もシクロクロスに出ることはなく、今回一番下のC4からの挑戦となった。

ゼッケン30番の西薗さんに気づく選手は最初は少なかった Photo: Kenta SAWANO
MCアケさんに紹介された西薗さんは手を振って歓声に応える Photo: Kenta SAWANO

試走時は下りに「ビビリ薗」

 当日のC4Aクラスには44人が出走しゼッケンは30番。2017年の引退以来、初のシクロクロスとなった西薗さんは、プロコンチネンタルチーム「チャンピオンシステムプロサイクリングチーム」時代のチームジャージに身を包んで登場。招集会場で色白の西薗さんに気付く人は関係者以外ほとんどいなかったが、同じくC4に出場した弱虫ペダル作者の渡辺航先生に続きMCアケさんから選手紹介でマイクを向けられる。はじめて気づき、ざわつく周りの選手たち。さらにはYoutuberのけんたさんも参戦し、朝イチのC4レースながら、バーリトゥード的な様相を呈していた。西薗さんは「みなさんシクロクロスを一緒に楽しみましょう」とマイクで声をかけた。周囲も和む中、観客もまだ少ない午前8時半に、スタートの笛が鳴った。

スタート後、20番手くらいで最初のコーナーに突入する西薗さん Photo: Kenta SAWANO

 スタートダッシュは20位前後で安全に最初のコーナーに突入。1周目のシケイン(障害)を華麗な“東大ステップ”で越えると、軽快な走りで最初のキャンバーへ。試走では「これを下るんですか」と下りに躊躇し、ポッドキャストを共同運営する高田さんからは“ビビり薗”と揶揄されていたが、レースになると全く別人に。C1で活躍するのyopiさんこと鈴木禄徳さん(PAXPROJECT)の指導を受けたこともあり、1周目の上りこそ足をついたものの、以降の最初の上りはすべて足をつかず上り切った。

1周目のテーブルトップでは足を着きながら上り切る Photo: Kenta SAWANO

 上りと下りが連続する序盤の「テーブルトップ」を無難にこなし、芝生のスラローム区間に突入する西薗さん。編集・澤野が「西薗さん14番手です!」と順位を告げると「しゃすっ!」と落ち着いた声で返事が返ってきた。虎視眈々と前の走者をロックオンする視線は、現役時代の西薗さんに戻っている気がした。「マージンを稼ぐのは舗装路と芝生ゾーン」とレース前に語った通り、2周目の中盤の芝生ゾーンで前走者をごぼう抜きにし10番手くらいまで順位を上げた。

1周目の「忍者返し」の下りで弱ペダ作者の渡辺先生をロックオン Photo: Kenta SAWANO
1周目の「忍者返し」2個目の上りでは渡辺先生を必死に追ってプッシュ Photo: Kenta SAWANO

弱ペダ・渡辺先生とのバトル

 コース中盤、土の急斜面を2回連続でアップダウンする、通称「忍者返し」では、前を行く弱虫ペダル作者の渡辺航先生をロックオン。必死にアップダウンで距離を狭め、続く下りの急斜面セクションで追い抜いた。そこから順調に順位を上げ、2周目中盤の芝生ゾーンで一気にトップに躍り出る。岡尚志選手(TTR)とペースを合わせ、3周目に入った。

2周目のスラロームゾーンでトップ選手を追う西薗さん Photo: Kenta SAWANO
2周目以降は乗車したまま上りをクリアしていった西薗さん Photo: Kenta SAWANO

 3周目になると走りはアグレッシブになり、最初の上りセクションも乗車したままクリア。コース中盤の舗装路で西薗さんは再びアタックをかけトップを奪取。2位選手を30mほど突き放し、再び「忍者返し」へ。1個目のキャンバーを上り切ろうとしていたが、そこで土に足を滑らせ、踏み外す。何度か立て直そうとしていた西薗さんに追走選手が一気に追いつく。1つのミスが命取りになるシクロクロスの恐ろしさを目の当たりにした。2人で抜きつ抜かれるのデッドヒートが展開された。

トップに立っていた2周目の忍者返しで足を滑らせる(右) Photo: Kenta SAWANO
2位の選手に一気に差を縮められた西薗さん(右) Photo: Kenta SAWANO

幸せな結末

最終周の4周目に入り、最速のスピードでコーナーを抜ける西薗さんだったが。。 Photo: Kenta SAWANO

 そこからは意外な結末が待っていた。再び2人の先頭集団が協調してスタート・フィニッシュラインを通過。最終周の4周目で一気に西薗さんが先頭に立とうとロードレースばりの鋭いコーナリングで第1コーナーを全速力で駆け抜ける。ところがしばらくしてMCアケさんのアナウンスが「西薗選手が1位か2位か~?」と順位を確定しようとするアナウンスが流れた。激しくバトル中の先頭集団だったが、実はレースは終了していたのだった。

C4Aで2位となり表彰台でビールを乾杯する西薗さん(左) Photo: Kenta SAWANO

 計測はされていなかったが、おそらく最速ラップで幻の4周目を走った西薗さんは結局2位。「残り1周だと思い、2人で流していたら、実はそこがゴールだったんですね」と苦笑いしながらも、復帰レースを楽しんだ様子。「表彰台という今シーズンの目標を達成することができました。学業も家庭も忙しいですが、出られるときには出て楽しみたいですね」とビールかけも満喫し、平和な秋の休日を満喫した。

 西薗さんが幕張クロスについて相方の高田さんと収録した人気PODCAST「SIDE BY SIDE RADIO」は絶賛公開中だ。

◇         ◇

 久々のレースを楽しんだ西薗さんに、これからシクロクロスを始めるサイクリストや、ロードレースに生きるスキルについて教えてもらった。

西薗さんが話す「シクロクロスここが楽しい」

① ちょっとした練習でタイムが短縮できる
② ロードレースに出る人には位置取りの勉強ができる
③ スキルを磨いてからロードレースに出たら楽しい
④ 実走でしか得られない安全に走るコツが分かる

――シクロクロスの楽しさはどこでしょうか?

シクロクロスの朝は早い。朝8時、シクロクロスの師匠・yopiさん(左)と試走する西薗さん Photo: Kenta SAWANO

西薗さん:やはり、次々に出てくるセクションを越えるのは、ロードレースにはない楽しさですね。また、ちょっとした練習を続けることでタイムが短縮できることも魅力です。Yopiさんに聞くと、公園などでコーンなどをおいて8の字で走るなどの練習もあるので、やってみたいと思います。忙しい中でも、そういうところを少しずつ詰めていくのがシクロクロスの楽しさであり、魅力です。

――どのあたりで西薗さんはタイムを短縮できそうですか?

西薗さん:コーナリングがまだまだ改善の余地があります。アップダウンのアプローチももっとうまくなれそうです。

――久しぶりに走ってロードレースと違うところは感じましたか?

西薗さん:自分のペダリングには左右差があるのですが、オフロードだと強くそれを感じました。スラローム区間で、右には普通に曲がれるのですが、左に曲がるのが難しかったです。

――ロードレースに出ている方に生きるのはどういうところでしょうか?

西薗さん:位置取りの勉強になると思います。C4だと個人の戦いですが、C1、C2レベルになると、パック(集団)でギリギリの位置取りをすることになります。これはロードレースに置き換えると、ヨーロッパのレースでないと、なかなか体験することはできません。

――最後に「Cyclist」読者でシクロクロスを始めてみようと考えている方にアドバイスをお願いします。

表彰後に勝利のビールを飲む西薗さん。シクロクロスならではの光景だ Photo: Kenta SAWANO 

西薗さん:シクロクロスは低価格のアルミのバイクでも楽しめますし、スキルを磨けば、自分より“足がある”選手を抜けるようになれます。まだ自転車のレースに出たことがない方は、シクロクロスでスキルを磨いてからロードレースに出るという流れも良いのではないでしょうか。その方が後々楽しめると思いますよ。これからの季節、室内でZwiftも良いですが、Zwiftだけではつかない技術がつきます。実走でないと安全に走るスキルは身に付きませんから、是非シクロクロスを始めてみてはいかがでしょうか。レース後のビールもおいしいですよ。

今回はPAXPROJECTのカンチブレーキモデルを借りて出場した西薗さん。実力やスキルがあれば、ディスクブレーキでなくても問題ない Photo: Kenta SAWANO 

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