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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<312>ジロ・デ・イタリア2020全貌が明らかに ハンガリー開幕、大物の出場明言も

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 シーズン3つあるグランツールの1つ「ジロ・デ・イタリア」2020年大会のコースプレゼンテーションが、現地時間10月24日にイタリア・ミラノで開催された。ジロは103回目にして初めて東欧へと渡る。ハンガリーの首都・ブダペストで開幕し、序盤のうちにイタリアへ戻ると、シチリア島を経て半島を北上する。来る大会へ向けて、あの大物がついにジロ参戦を自ら明言。話題が豊富となること間違いなしの「イタリア3週間の旅」を確認していこう。

10月24日に行われたジロ・デ・イタリア2020コースプレゼンテーション。ペテル・サガン(左)、リチャル・カラパス(右)が出席した Photo: LaPresse/Claudio Furlan

マリアローザの行方はイタリアアルプス決戦で決まる?

 2020年大会のコースプレゼンテーションは、例年通りミラノのRAI(イタリア放送協会)ホールを会場に行われた。大会関係者のほか、2019年大会の覇者であるリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム)、さらにはペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も出席。華やかなムードの中で進行した。

ジロ・デ・イタリア2020ルートマップ ©︎RCS

 そんな中で発表された3週間のルートは、海外のサイクルメディアを中心に先行報道にあった通り、ハンガリーの首都・ブダペストで5月9日(土)で開幕する。昨年のイスラエル以来、通算14回目の海外開幕となるが、東欧での全体スタートは初めてのこと。まずは8.6kmの個人タイムトライアル。ドナウ川沿いを走って、旧市街に入っての最後の1.5kmが平均勾配4%の上り。このコースを走り切った末に、大会最初のマリアローザ(総合リーダージャージ)着用者が決まる。

 大会初日も含めて、ハンガリーでは3日間過ごす。第2、第3ステージはいずれも平坦基調で、スプリンターが主役となりそうだ。

 2020年大会において、1つのポイントになりそうなのが、第3ステージ終了後の動きだ。UCI(国際自転車競技連合)の規則により、グランツール期間中の休息日が合計2日と定められていることから、これまでに設けられてきたような「移動日」がなくなる。つまりは、第3ステージを終えるとすぐに本来の舞台であるイタリアへと急がねばならないのだ。それも、目的地はシチリア島。翌日には、第4ステージが待ち受ける。

 シチリア島といえば、ジロではおなじみのエトナ火山の上り。今回は第5ステージに登場する。山の北側に位置するリングアグロッサからの登坂は史上初。登坂距離18.2km、平均勾配6.8%で、フィニッシュ前約1kmで最大勾配11%のポイントを通過する。

 第7ステージ以降は、イタリア半島を北上していく。この日はフィニッシュ前約10kmで頂上に達するヴァルコ・ディ・モンテスクーロの上りがレースを動かすことになる。平坦基調の第8ステージ、中級山岳にカテゴライズされる第9ステージを走ると、1回目の休息日を迎える。

ジロ・デ・イタリア2020第5ステージ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2020第7ステージ ©︎RCS

 大会2週目は、まず中級山岳の第10ステージ、平坦の第11ステージとこなしていく。終始アップダウンが連続する第12ステージ、一見平坦基調に見えるが終盤2つの上りがクセのある第13ステージも緊張感の高いレースが展開されそう。

 中盤戦のヤマ場となるのが、ブドウ畑を縫って走る第14ステージ。今大会2つ目の個人タイムトライアルステージで、33.7kmという距離もさることながら、アップダウンがあることでいかにリズムよく走るかが重要になる。特に、スタートして6kmで上りが始まるムロ・ディ・カデル・ポッジョは平均勾配12.7%。最大19%にも達するといわれ、ここで力を使いすぎてしまうと、その先が思いやられることになる。

 第15ステージは、イタリア空軍の曲技飛行隊「フレッチェ・トリコローリ」が拠点とするリボルト空軍基地をスタート。3つのハードの上りをクリアしたのち、最後にやってくるのはピアンカヴァッロ(登坂距離14.5km、平均勾配7.8%)。頂上にフィニッシュが設けられ、前日の個人タイムトライアルと合わせて、この段階でマリアローザ争いの形勢が見えてくるはず。ここを走り切ると、2回目の休息日となる。

ジロ・デ・イタリア2020第14ステージ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2020第15ステージ ©︎RCS

 第3週はレース距離200km超えのステージが連続する。スロベニアとの国境地帯をめぐる第16ステージを経て、翌日の第17ステージからイタリアアルプスへと進んでいく。標高1500m前後の山々を3つ越えたのち、スキーリゾートとしても知られるマドンナ・ディ・カンピリオ(登坂距離12.5km、平均勾配5.7%)の頂上へ。このステージだけで、獲得標高5000m超。ここで上位戦線から脱落すると、マリアローザの夢は一気に潰えることになる。

 第18ステージもスタートから上りが始まる。半ばを過ぎて、標高2758mのパッソ・デッロ・ステルヴィオ(登坂距離24.7km、平均勾配7.5%)の登坂が待つ。この頂上に大会最高標高地点を意味する「チーマコッピ」が設けられる。ステルヴィオから一度下って、ラーギ・ディ・カンカノ(登坂距離8.7km、平均勾配6.8%)へと上るとフィニッシュだ。

ジロ・デ・イタリア2020第17ステージ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2020第18ステージ ©︎RCS
ジロ・デ・イタリア2020第20ステージ ©︎RCS

 第19ステージは、この大会では最長の251km。同時に、3週間では最後の平坦ステージとなる。続く第20ステージが、山岳での最終決戦だ。スタート後、じわじわと上っていき、標高2744mのコッレ・デッラニェッロの頂上を越えると、いったんフランスへ入国。ツール・ド・フランスでおなじみのイゾアール峠を越え、さらにモンジェネヴルもクリア。イタリアへと戻ると、最後の上りは登坂距離11.4km、平均勾配5.9%のセストリエーレ。マリアローザをかけた争いは、この上りを終えるまでもつれているのか、大勢が決しているのか、はたして。

 3週間の締めくくりは、ミラノ・ドゥオーモ広場に到達する16.5kmの個人タイムトライアル。前日までのタイム差がついていればマリアローザのウイニングライドとなるが、これまでに幾度となく最終日の個人TTで劇的な幕切れが起こっている。この日を迎える時点で僅差で、なおかつTTに強い選手が上位戦線に生き残っているようだと、マリアローザの行方はより混沌となる。

 コース発表時点での総走行距離は3579.8km。平坦ステージは6、個人タイムトライアル3ステージ分の総距離は58.8kmとなっている。

ジロ・デ・イタリア2020(星の数は主催者発表の難易度)

5月9日 第1ステージ ブダペスト~ブダペスト 8.6km個人タイムトライアル ★★
5月10日 第2ステージ ブダペスト~ジェール 195km ★
5月11日 第3ステージ セーケシュフェヘールバール~ナジカニジャ 204km ★
5月12日 第4ステージ モンレアーレ~アグリジェント 136km ★★
5月13日 第5ステージ エンナ~エトナ(ピアーノプロヴェンツアーナ) 150km ★★★★
5月14日 第6ステージ カターニア~ヴィッラフランカティッレーナ 138km ★★
5月15日 第7ステージ ミレート~カミリアテッロシラノ 223km ★★★
5月16日 第8ステージ カストリヴィッラリ~ブリンディジ 216km ★
5月17日 第9ステージ ジョヴィナッツォ~ヴィエステ 198km ★★★
5月18日 休息日①
5月19日 第10ステージ サンサルヴォ~トルトレートリード 212km ★★★
5月20日 第11ステージ ポルトセンテルピディオ~リミニ 181km ★★
5月21日 第12ステージ チェゼナティコ~チェゼナティコ 205km ★★★★
5月22日 第13ステージ セルヴィア~モンセリーチェ 190km ★★
5月23日 第14ステージ コネリアーノ~ヴァルドッビアーデネ 33.7km個人タイムトライアル ★★★★
5月24日 第15ステージ バーゼアエレアリヴォルト~ピアンカヴァッロ 183km ★★★★
5月25日 休息日②
5月26日 第16ステージ ウーディネ~サンダニエーレ・デル・フリウリ 228km ★★★★
5月27日 第17ステージ バッサノデルグラッパ~マドンナ・ディ・カンピリオ 202km ★★★★★
5月28日 第18ステージ ピンツォーロ~ラーギ・ディ・カンカノ 209km ★★★★★
5月29日 第19ステージ モルベーニョ~アスティ 251km ★
5月30日 第20ステージ アルバ~セストリエーレ 200km ★★★★★
5月31日 第21ステージ チェルヌスコ・スル・ナヴィリオ~ミラノ 16.5km個人タイムトライアル ★★

サガンがジロ2020出場を正式表明

 コースの発表を受けて、有力選手・チームの動きがこれから注目されるところ。そうした中で、先陣を切って立ち上がったのが、プレゼンテーションにも臨んだサガンだった。

ジロ2020出場を表明したペテル・サガン(中央)。右は2019年大会覇者のリチャル・カラパス Photo: LaPresse/Marco Alpozzi

 ビッグトピックとしてサガンは、「2020年のジロに出場する」と会場で公言。ここ数年はツールに向けた調整の一環として、ジロと同時期開催のツアー・オブ・カリフォルニアに出場していたが、少なくとも来年はアメリカへは行かずにイタリアで5月を過ごすことになる。

 サガンはジロ参戦にあたり、「イタリアは自分の心の中で特別な場所。マウンテンバイクのジュニア世界選手権を2008年に制したのがこの国で、プロとしてのキャリアを始めた(リクイガス)国でもある」と語る。さらに、「プロキャリア10年間で、イタリアで開催された数々の権威あるレースを走ってきたが、常に何か足りないと感じていた。それはジロ・デ・イタリアのことだった」と続けた。

 イタリア、そしてジロへの思いは止まらない。「世界で最も美しく、チャレンジングなレースであるコルサローザ出場を夢見ていないライダーなど1人もいないと思う。もちろん私も同様で、来年5月9日にスタートラインに就くことができると思うとうれしくてたまらない」とも。自国スロバキアに近い、ハンガリーでの開幕もモチベーションであるとした。

イタリア・ミラノで開かれたジロ・デ・イタリア2020のコースプレゼンテーション Photo: LaPresse/Marco Alpozzi

 この発表に合わせて、チームも代表のラルフ・デンク氏によるリリースとして、サガンが来シーズンはジロとツール、2つのグランツールを走ることを明らかにした。まずはジロでポイント賞「マリアチクラミーノ」争いに加わり、その後はツールを見据えていくとしている。デンク氏はフランスのファンに向けて、「心配しないでほしい。ペテルは7月にツールに出場する」と念を押す。

 短期間でのグランツール2連戦をこなすことになるが、ツール後に行われる東京五輪のロードレースはサガンにとって「目標にするにはコース難易度が高すぎる」とし、ジロとツールに集中する構えであることを明言している。

ジロ2019覇者のリチャル・カラパス。マリアローザの防衛は移籍先のチーム イネオスとの話し合い次第となる Photo: LaPresse/Claudio Furlan

 一方、今年の王者であるカラパスは「タイトルを守りたい」と述べつつ、移籍加入が決まっているチーム イネオスとの話し合い次第であるとも。大会関係者から参戦を望まれているエガン・ベルナル(コロンビア)、ゲラント・トーマス(イギリス)らとの棲み分けが決まったところで、マリアローザ防衛を目指すかがはっきりすることに。早ければ、11月中にもグランツールの方向性が定まる見込みだとしている。

今週の爆走ライダー−イェンス・デブシェール(ベルギー、カチューシャ・アルペシン)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 現体制でのチーム運営は今年で最後となるカチューシャ・アルペシン。イスラエルサイクリングアカデミーに引き継がれ、来季のUCIワールドチームとしての活動継続も決まったが、一部主力選手たちはレースに集中するべく新たな環境への移籍を決断している。

カチューシャ・アルペシンで1年走り、来季はヴィタルコンセプトB&Bホテルスへ移籍するイェンス・デブシェール Photo: Yuzuru SUNADA

 スピードマンのイェンス・デブシェールもその1人。現チームで走った今シーズンは、エーススプリンターを前方へ導くリードアウト役をまっとうしたが、その仕事を続けられるチームを探し続けていた。このほどヴィタルコンセプト・B&Bホテルス(2020年シーズンのチーム名はB&Bホテルス・ヴィタルコンセプト)へ移ることが決定。同チームの顔でもあるブライアン・コカール(フランス)の勝利量産に向けたキーマンとなる。

 3年前には伝統のクラシックであるドワーズ・ドール・フラーンデレンを制するなど、石畳系レースのスペシャリストとして鳴らしてきた。いまも得意分野での勝利を目指して走り続けているが、それと同じくらいにリードアウトマンとしての誇りに満ちる。2年前まで所属したロット・スーダル時代のチームメート、クリス・ボックマンスとヨナス・ファンヘネヒテン(ともにベルギー)との再会も決まり、「彼らと組んで、トップスプリンターであるブライアン(コカール)を勝たせたいと思う」と目標設定もはっきりした。

 これまで所属してきたトップチームとは異なり、次のチームはカテゴリーこそ下がるが、それは問題ではない。最も重視したのはコカールとの関係だった。前述したドワーズ・ドール・フラーンデレンを勝利した前日には、自国・ブリュッセル空港でテロが発生。レースを前に心を痛めていた彼に「今日はベルギー人ライダーが勝つべきだ」と声をかけたのがコカールだったのだという。それ以来付き合いは続き、「一度も勝つことはできなかったけど、素晴らしい関係は築けたんだ」と言葉に力を込める。

 友情を大切にする心優しき30歳は、リードアウトマンとしての働きとともに、もう少し自らの勝利にもどん欲になるつもりだ。石畳系クラシックの中でも、ベルギー人ライダーが特に重視するツール・デ・フランドルは「さすがに厳しい」と言うが、「ヘント~ウェヴェルヘムはまだチャンスがあると思う。私にとっては世界選手権のようなもの」してタイトルを目指す。自己最高成績は2015年と2018年の5位。トップシーン屈指のスプリンターズクラシックで勝つために、持ち味のスピードとこれまでの経験をすべて注ぎ込む心積もりだ。

ヘント〜ウェヴェルヘムを走るイェンス・デブシェール。過去に5位が2回。優勝を夢見ている =2019年3月31日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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