名GMに『Cyclist』が単独インタビュージョナサン・ヴォーターズが語った、プロロード選手がグラベルレースやMTBレースに出る理由とは?

by あきさねゆう / Yuu AKISANE
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 EFエデュケーションファーストのゼネラルマネジャーを務めるジョナサン・ヴォーターズ(アメリカ)が、ジャパンカップサイクルロードレースに出場したチームに帯同し、初来日を果たした。昨シーズンの年間6勝から、今シーズンは年間17勝を躍進を遂げたチームは、ジャパンカップではマイケル・ウッズ(カナダ)が2位となっていた。今回、『Cyclist』はヴォーターズGMに単独インタビューを行い、今シーズンの振り返り、そしてEFエデュケーションファースト独自の活動について語ってもらった。

『Cyclist』のインタビューに応じたEFエデュケーションファーストのジョナサン・ヴォーターズGM Photo: Yuu AKISANE

成功したシーズンを送り、日本食に舌鼓

――日本に来るのは初めてですか?

ヴォーターズ:そう、初めてだね。(日本の印象は)すごくご飯が美味しい。日本食は大好きだよ。こっち来てから、5キロくらいは太ったかな(笑)。

 てんぷら、寿司、豆腐、そば、うどん、なんでも全部美味しかった! なかでも、大トロが凄く美味しかったね。

――昨年の3倍の勝利数をあげた2019年は、どんなシーズンでしたか?

ヴォーターズ:多くのレースで勝つことができたので、とても成功したシーズンになったよ。ただ、シーズンの最初は良くないクラッシュ(※1)があって、けっこうキツかった。

※1:3月に行われたパリ〜ニースでは、エースのリゴベルト・ウラン(コロンビア)が落車して、鎖骨を骨折してしまった。

勝利の瞬間、ヴォーターズGMはSNSで声にならない声をあげるほど喜んだ、アルベルト・ベッティオールによるロンド・ファン・フラーンデレン優勝 Photo: Yuzuru SUNADA

 そのなかで、ロンド・ファン・フラーンデレンでアルベルト・ベッティオール(イタリア)が勝利したことが、とても嬉しかったね! EFエデュケーションファーストは、大きなレースで勝つことを重要視していたので、勝てて良かった。

――ジャパンカップの印象はどうでしたか?

ヴォーターズ:ジャパンカップは、観客が熱狂的ですごく良かった。コースも1990年の世界選手権のコースに基づいて作られていて、上りも下りもあって、自然も美しい素晴らしいコースだと思う。

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The old scout trooper bike racing fan.

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――レース前に選手たちにはどんなことを声かけたのですか?

ヴォーターズ:特にマイク(マイケル・ウッズ)には「これは勝つことを学ぶ良い機会だ」と言った。どういうことかというと、マイクはいつもトップ10には入るけど、2位・3位・4位とかが多く、大きなレースでは勝ったことがない(※2)。なので、彼には勝利することに集中しようと話した。

ジャパンカップ2位となったマイケル・ウッズ Photo: Yuzuru SUNADA

※2:ウッズは通算4勝。ブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝、ミラノ〜トリノなど決して小さくない勝利の経験はあるものの、2018年リエージュ~バストーニュ~リエージュ2位、2018年ロード世界選手権3位、2019年イル・ロンバルディア5位などいわゆるビッグレースでの惜しいリザルトが続いている。

――昨年に比べてタイムトライアルが速くなった印象ですが、何を変えたのでしょうか?

ヴォーターズ:ちょっとしたことの積み重ねの成果かな。ラファのスキンスーツはエアロダイナミクスが良くて、去年より少し速くなったし、タイヤも少し速くなった。風洞実験も去年より多くやっているので、フォーム改善にも役立っている。これらはEFが安定した経済的なサポートをしてくれることが大きいよ。

自転車の楽しさをロードレース以外でも伝えたい

 EFエデュケーションファーストは今季「Explore the world」(世界を冒険する)というキャンペーンを開始。これまで以上に世界各地で行われているレースに参戦した。特に一般市民でも参加可能な、アメリカ・カンザス州で開催された200マイル(320km)を走破するグラベルロードレースである「ダーティ・カンザ」、イギリス全土を横断し1960kmを走破する「GBDURO」、アメリカ・コロラド州の高地で100マイル(160km)走破するマウンテンバイクレースの「レッドヴィル・トレイル100・MTB」、イギリス・ヨークシャーの代表的な3つの峠を越える「スリーピークス・シクロクロス」など、ロードレース以外の自転車レースに力を入れていた。

――「Explore the world」の活動を振り返って、どうでしたか?

ヴォーターズ:このキャンペーンの良いところは、全員が参加できること。ツール・ド・フランスはプロのなかでも限られた人しか出場できないが、アイアンマンレースなどは参加しようと思えば誰でも参加できるレースだ。そういったレースに私たちの選手を出場させた。

 我々のようなプロサイクリストと一緒にレースを走ることで、レクリエーションとしてサイクリングを楽しむ人にとっては、プロフェッショナルなサイクリングを体験できるようになる。これらの点を重視して活動していた。

――アレックス・ハウズ(アメリカ)、ラクラン・モートン(オーストラリア)、テイラー・フィニー(アメリカ)が、これらロードレース以外のレースに参加していました。ハウズはアメリカ王者となり、モートンはツアー・オブ・ユタでステージ優勝を飾りました。「Explore the world」の活動が、チーム強化に繋がっているのでしょうか?

ヴォーターズ:強化が目的ではなかった。ラクランの場合を考えると、ツアー・オブ・ユタの前にイギリスの全土を回るサイクリング、マウンテンバイク、グラベルロードを全部やるというのは初めてのこと。そんな選手は他にいないだろう。だから、とても良い経験になったとは思っているよ。

ロードレース以外の自転車レースでも活躍するラクラン・モートン Photo: Yuzuru SUNADA
USチャンピオンジャージを着て走るアレックス・ハウズ Photo: Yuzuru SUNADA

――ハウズ、モートン、フィニーの3人がロードレース以外のレースに挑戦していましたが、なぜこの3人なのでしょうか?

ヴォーターズ:この3人は自転車への情熱をすごく持っていたからだ。全員が全員、グラベルレースやマウンテンバイクに興味があるわけじゃないからね。ちなみに来年はマグナス・コルト(デンマーク)が加入する。彼はグラベルロードに凄く興味があると言っていたので、出てもらいたいと思っている。

――来年はどんな活動にしていくのですか?

ヴォーターズ:毎年変えていかないといけないと思っている。いろんなレースに出たいね。例えばブータンのレースも見ているし、南アフリカのレースにも興味がある。今年とコンセプトは同じで、場所はいろいろなところにトライしていきたい。

語学企業がスポンサーだからこそのサポート

――選手への言語の学習サポートはどんなことをされているのですか?

ヴォーターズ:「イングリッシュライブ」というEFのオンライン学習を中心に行っている。なぜかというと、選手たちはいろんなところに住んでいるので、一カ所にまとまってやるのは難しいから。

GMの仕事は、チームを強くすることだけでなく、選手のキャリアサポートまで多岐にわたる Photo: Yuu AKISANE

 あと、チームの拠点はスペインにあるので、多くの選手がスペイン語を勉強している。それはオンライン学習ではなく、バルセロナにあるEFの学校に通っているよ。

――引退後の選手のキャリアサポートは、具体的にどんなことをしていますか?

ヴォーターズ:いろいろなアイデアがある。例えば、昨年引退したブレンダン・キャンティ(オーストラリア)は、会計の勉強をして、いまはEFバルセロナ校の経理部で働いている。引退する選手の希望に沿って、EF内のネットワークでもいいし、EFの外でも構わないが、教育の機会を設けるなどしてサポートしている。教育のひとつとして、(EFが所有するMBAが取得可能な)ビジネススクールに通うための奨学金を出すことも、アイデアの一つとしてある。

昨シーズン、26歳の若さで引退したブレンダン・キャンティはセカンドキャリアを歩み始めている Photo: Yuzuru SUNADA

――今年引退したマッティ・ブレシェル(デンマーク)にはどんなサポートをしていますか?

ヴォーターズ:彼はスポーツディレクター(監督)になる道を選んだ。そこで、ブエルタ・ア・エスパーニャにはスポーツディレクター見習いとしてチームに帯同させた。監督の立場になるとどんなことを見て、どんなことを学ぶ必要があるのか体験したんだ。

――先日のジャパンカップがラストレースとなったフィニーにはどんなサポートをする予定ですか?

ヴォーターズ:わからないね(笑)。彼の夢であるアーティストの活動の全貌がまだ見えないからね。

――何かチームEFとフィニーのコラボレーションを期待したいです

ヴォーターズ:そういうときも来るかもしれないね。彼のアートワークを、チームEFや他のスポンサーと絡めて、何か作品をつくる機会があるかもしれないが、今のところ予定はないかな。

GM自らの目で、獲得選手を視察

――新しい選手を獲得するにあたって重要視していることはなんですか?

ヴォーターズ:まず最初に、その選手の能力を見る。セルジオ・イギータ(コロンビア)に関しては、自然に備わっている(ヒルクライムの)能力に魅せられて、それを伸ばしていくことに注力した。

 そして、パーソナリティもとても重要だ。EFが持っている普段はハッピーで、ちょっと変わったこともあるかもしれない、そういったスタイルを受け入れられる性質・性格であるかどうかが大事だ。特にファンに対して、自転車の楽しさや喜びを伝えられる情熱を持っている人かどうかを一番重要視している。

 ドゥクーニンク・クイックステップのように(クラシックやスプリントで勝利を積み重ねるといった)一つの方向に向かった補強とは違うかもね。

必要とあらば南米まで飛んで選手発掘を行うジョナサン・ヴォーターズGM Photo: Yuu AKISANE

――そういった能力やパーソナリティは、どうやって調べるのですか?

ヴォーターズ:私が実際に直接見て確認している。イギータに関しては、コロンビアまで出向いて、小さなレースをチェックしたんだ。

 来年加わるルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)は、ブエルタ・ア・エスパーニャでとても良い結果を残していたので、リクルートした。あと一歩のところでステージ優勝は逃したけど、彼のポテンシャルに注目している。

 大きなレースでチェックすることもあるけれど、最近は小さなレースで、まだ名前の知られていない若い選手を見に行くことに時間を費やしている。

――来シーズンは新たにポルトガル、ノルウェー、スイス、ドイツの選手が加入しますが、多国籍化を狙った補強なのでしょうか?

ヴォーターズ:狙っているわけではなかった。好きになった選手をリクルートしていたら、そうなってしまった。

 ルーベンはスペインで良い結果を残したので、リクルートした。ジョナス・ルーシュ(ドイツ)はベイビー・ヘント〜ウェヴェルヘムで勝利したことが印象的だった。ステファン・ビジガー(スイス)は世界選手権で2位になって、来年はオリンピックのトラック競技でもメダルを狙えると思っている。

今年のブエルタ・ア・エスパーニャ第18ステージで勝利したセルジオ・イギータはヴォーターズGMのお気に入り Photo: Yuzuru SUNADA

――チームの2020年シーズンの目標は何でしょうか?

ヴォーターズ:モニュメントにはもちろん勝ちたいね。ただ、そういった目標を決める前に、まず選手がどうなるのか、どんな風に伸びていくのかをまず見たいんだ。ツール・ド・フランスの目標を決めるのは、その後の話。来年の6月に同じ質問をしてくれたら、ツールの目標を教えるよ!

――モニュメントとグランツール、どちらが重要な目標となりますか?

ヴォーターズ:マーケティングと宣伝の観点から考えると、ツール・ド・フランスはもちろん重要となる。でも、本当の情熱的な自転車ファンからすると、モニュメントの方がロマンティック! 自転車競技という点から考えると、本当はモニュメントに焦点をあてたいんだけどね。

――来シーズンの注目選手は誰でしょうか?

ヴォーターズ:やはりイギータだね。他にはダニエル・マルティネス(コロンビア)、マグナス・コルト(デンマーク)、ニールソン・ポーレス(アメリカ)にも期待している。

 セップ・ファンマルク(ベルギー)は今年ワールドツアーのブルターニュクラシック・ウエストフランスを勝ったけど、もっと勝てる選手だと思っている。あとは、もちろんマイケル・ウッズも注目だね!

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