旅サイクリスト昼間岳の地球走行録<41>「ウレタン」か「空気」か キャンプツーリングの相棒・スリーピングマットのベストチョイス
連日タフな走行をする旅サイクリストにとって、翌日に疲れを残さないというのは非常に重要なポイントとなる。走行前後のストレッチや食事ももちろん重要だが、何より一番大切なのは睡眠だと思う。野宿の時は、極力陽があるうちにテントを設営してご飯作り、食べ終わるくらいに暗くなるくらいのタイムスケジュールで走っていた。目立って見つかることを避けるため、ライトの使用は最小限にしてさっさと寝てしまうのが一番だった。そのため冬は午後7時頃に寝ることも珍しくなく、いかに快適に眠れるかはとても重要だった。
冬は小物で夏はテントで温度調整
快適な睡眠環境を作るためには、まず温度の管理だ。寒い冬は「ナルゲン」のプラスチック製ボトルにお湯を入れて湯たんぽを作り、厚着して寝袋に入る。それでも寒ければ、現地でさらに防寒対策をすればいいだけだ。むしろ問題は夏だ。多くの国は乾燥しているので日本のようなジメジメとした不快な暑さではないが、テントの入口とベンチレーションだけでは、とてもじゃないけど眠れないほどの室温になってしまう。
そこで、僕がとった対策は、普通のテントの他に全体がメッシュになっているテントを持ち運ぶことだった。僕は「アライテント」の「エアライズ2」と「DXフライシート」を使っていたが、このテントのフレームを使って全体がメッシュになっている、いわゆるメッシュテントの「カヤライズ」(※)を使うことができた。

テント内に空気がこもらないのと四方から風が抜けるので、快適に寝ることができる。もちろん雨や夜露はそのまま侵入してくるが、夏なのであまり気にしないでも大丈夫だった。このテントは暑い時期が終わったら日本に送り返し、夏が来たら再び現地に送ってもらっていた。
そしてスリーピングマット。サイクリストの中でもウレタンマットを使うかエアマットを選ぶかで二分される。これは使用状況や好みにもよるとは思う。最近のウレタンマットは断熱とクッション性に優れたタイプもあるが、快適性を上げると、どうしてもマットの厚みが増してかさ張るのが難点だった。ただエアマットと違い、穴が空いて使えなくなることが無いので、岩場や草地などの地面にそのまま使えるし、設営も楽なので休憩時にも使えるというメリットがある。
エアマットを選ぶ理由
ただ僕は断然エアマット派だった。体の負担を分散してれるのでコンクリートなどの上に敷いても体は痛くならないし、地面からの暑さや寒さを遮ってくれる。海外の野宿はコンクリートなど上にテントを張る機会も多く、地面からの寒さは底冷えに繋がる。
エアマットというと耐久性が心配されるが、僕が「サーマレスト」社のエアマットを6年間の旅で買い換えたのは、たったの一度きりだった。ひとつ目は約2年半の使用で内部が剥離し、餅のように膨らんでしまい、使用不能になって買い換えることになったが、2つ目は現在でも快適に使えている。
大半が野宿の過酷な旅でこれほど使えるのは、他にないと思う。現に出発当時は他メーカーのエアマットを持って行ったが、数カ月であっさり穴が空き、使えなくなってしまった。ちなみに剥離の原因は熱によるものらしいので、鍋や湯たんぽなどはエアマットの上に置かないなど注意する必要がある。

エアマットの良い所は穴が空かない限り、ほぼ性能が落ちないことだ。そもそも僕らのように一年の大半がテント生活の様な暮らしでは、使用頻度が極端に高い。毎日過酷な場所で使っていても常に快眠をサポートしてくれるというのは非常に有難い。
ただ海外には「まきびし」のようなトゲ科の植物や、なぜか研ぎ澄まされたような石も多いので、テントを張る前や張った後のマットを広げる前はトゲが無いかの確認は重点的に行う必要があった。

小学生の時に自転車で旅する青年を見て、自転車で世界一周するという夢を抱いた。大学時代は国内外を旅し、卒業後は自転車店に勤務。2009年に念願だった自転車世界一周へ出発した。5年8カ月をかけてたくさんの出会いや感動、経験を自転車に載せながら、世界60カ国を走破。2015年4月に帰国した。『Cyclist』ではこれまでに「旅サイクリスト昼間岳の地球写真館」を連載。ブログ「Take it easy!!」