「ツール・ド・ニッポン」の新イベント日本最高難度の「富士山ヒルクライム」初開催 全長27.1km、標高差1653m、平均勾配6.8%に挑戦

by 石川海璃 / Kairi ISHIKAWA
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 距離・平均勾配・獲得標高が国内トップレベルのヒルクライムレース「富士山ヒルクライム」が10月20日(日)に初開催された。2つのコースで最高峰へ至るヒルクライムを楽しめるイベントに972人が参加。Cyclist編集部も富士宮口五合目まで駆け上がる27.1kmのコースに出走。初のヒルクラムレースに挑んだ石川海璃のリポートでお届けします。

10月20日に初開催された「富士山ヒルクライム」 Photo: Kairi ISHIKAWA

自治体、地元企業協力のもと実現

 「富士山ヒルクライム」はルーツ・スポーツ・ジャパンが主催するイベント。大会の舞台となる静岡県御殿場市が共催し、サイクルツーリズムで同県の振興をはかるスルガ銀行特別協力のもとで実現した。全国各地の魅力を感じながら自転車イベントを楽しむシリーズ「ツール・ド・ニッポン」に組み込まれている。

朝早くから多くのサイクリストが集まった Photo: Kairi ISHIKAWA

 初開催となる今年は、国立中央青少年交流の家前の計測区間から水ヶ塚公園までのショートコース(距離12.km/標高差742m/平均勾配6.7%)と、富士宮口5合目までの通常コース(距離27km/標高差1653m/平均勾配6.8%)が用意された。一般的なヒルクライムイベントは走行距離10〜15kmほどだが、「富士山ヒルクライム」は通常コースで27.1km。パレード区間を含めると33kmにも及ぶ。参加者は最速タイムを狙う人もいれば、完走を目指してのんびり走る人まで、イベントに臨む姿勢は様々だ。

下山用の荷物を袋に詰める参加者。標高差があるため、下山用の防寒着は必須だ Photo: Kairi ISHIKAWA
ゲストライダーの篠さん。「青空が少し見えてきたので晴れるかも知れませんね」とコメントした Photo: Kairi ISHIKAWA

 イベント当日の10月20日、早朝から多くの参加者がメイン会場となる富士樹空の森に集結。晴れていれば富士山が一望できる場所も、この日は時折小雨がちらつく空模様。富士山を見ることができなかったが、参加者たちは、机が並ぶ準備スペースでウェアにゼッケンを取り付けたり、計測タグを取り付けたりして、各々がレースに向けて準備。コースについて意見交換していた。

田代さんから攻略法伝授

「残り4kmがかなりきついです」コメントする田代恭崇さん。この後スターターを務めた Photo: Kairi ISHIKAWA

 ライダーズミーティングでは、ゲストライダーで元アテネ五輪自転車ロードレース代表の田代恭崇さんが走行時の注意点を説明。「完走や好タイムを出す攻略法の1つとして、最初の4kmでいかに体力を温存するかが好タイムのカギになります」とアドバイス。田代さんのスタートの合図で6.1kmのパレード走行へ繰り出した。

 計測が始まる国立中央青少年自然の家までは市街地を走る。ところどころにアップダウンがあってウォーミングアップにはちょうどいい。滝ケ原駐屯地前の交差点を過ぎると交通規制区間の富士山スカイラインに入る。参加者は縦と横に列をなして計測区間に突入し、そのままペースアップ。それぞれの戦いが始まった。

コースマップ

●富士山ヒルクライム 通常コース

●富士山ヒルクライム ショートコース

交通規制区間に入り、縦横に広がって走る参加者 Photo: Kairi ISHIKAWA

 計測開始からかなりの勾配があったため、すぐさま『マイペースモード』に切り替えてヒルクライムに備えた。そんな筆者をよそに、後続のヒルクライマー集団は快調にペースを刻む。思わずついていきそうになるが、「このペースに合わせたら速攻で脚が終わる」と考え直し、黙々とペダルを漕ぐ一人旅へ。

 直線の長い区間を終えると草木が生い茂るエリアに突入。道路の脇には台風19号の影響だろうか、ところどころに落ち葉が積もっている。濡れた路面に傾斜のきつさもあり、タイヤに接触するとツルツル滑るので注意しながら進んだ。

まっすぐと続く道を走る参加者 Photo: Kairi ISHIKAWA
給水ポイントでは紙コップを持ったスタッフが水を手渡していた Photo: Kairi ISHIKAWA

 コースを走っていると、一定間隔ごとにゴールまでの距離が記されたコーンが置かれている。普通なら「ゴールまで残り18kmだ!」と前向きに思うかもしれないが、筆者の心の中は「あと18kmも険しい上りが続くのか…」。ヒルクライマーではない自分にとっては、なかなかポジティブになれなかった。

残りの距離を示すコーン。まだまだ先は長い Photo: Kairi ISHIKAWA
ショートコースは水ケ塚公園がフィニッシュ地点。通常コースはまだまだ走る Photo: Kairi ISHIKAWA

 太郎坊洞門のトンネルをくぐると平坦基調の道が続く。トラック競技で培った走力を発揮してガンガン飛ばそうかと思ったが、省エネモードで体力温存を選択。なにせ残りの距離が10km以上も残っているからだ。対照的にタイムを少しでも伸ばしたいヒルクライマーたちは、スピードを出して勢いよく駆け抜けていった。

 トンネルから約4.5kmほど走るとショートコースのフィニッシュ地点、水ケ塚公園が見えてくる。交通規制されているにもかかわらず、沿道には応援に駆けつけた人の姿もあった。ショートコースのゴールに後ろ髪を引かれながら、五合目までの道のりを急いだ。

高鉢ゲートまで3kmレスト期間

 水ケ塚公園から高鉢ゲート(旧料金所)までの約3kmは、下りや傾斜の緩い坂が続くこのコース唯一のレスト区間。タイムを追い求めないので、ここでも存分に体力温存した。

高鉢ゲートからまた傾斜がきつくなる Photo: Kairi ISHIKAWA

 そして高鉢ゲートをくぐれば、約12kmで五合目にたどり着く。途中の幾重に曲がりくねったつづら折りの坂には、現在位置の標高や残り距離が記された看板が現れる。「ゴールまでやっと近づいてきた!」と、現実的に完走が見えてきた。

 「このまま早くゴールしよう」そう思った矢先にアクシデントが発生。足に力が入らないのだ。「しまった」と思った時にはすでにハンガーノック状態に陥っていた。「距離が短いから補給食なしでも大丈夫だろう」とたかをくくっていたのが後半になって仇となった。

レースの後半になると足をつる参加者がかなりの数いた Photo: Kairi ISHIKAWA
最後給水ポイントでは、多く参加者が紙コップ受け取っていた Photo: Kairi ISHIKAWA

 一休みしてハンガーノックから復活し、撮影をしていると雲の切れ目から富士山周辺の風景が見えた。また晴れている時に見てみたいと感じるくらいの美しさだった。再びペダルを漕ぎだすと、早く上り終えた参加者が続々と下山してくる。すれ違う度に聞こえてくる「頑張れ~!」の声が、踏む力のない足に再び活力を与えてくれた。

早く上り終えた参加者とすれ違う。時折下る参加者から「がんばれー」といった声援が聞こえた Photo: Kairi ISHIKAWA
残り約500mの景色。晴れていれば絶景が広がっている Photo: Kairi ISHIKAWA

 ゴール目前の1kmあたりになると視界はホワイトアウト寸前。もはや気力のみでペダルを漕ぎ、どうにかフィニッシュラインを通過した。筆者は取材のため計測タグをつけていなかったのでゴールタイムは分からないが、27.1kmのヒルクライムを完走した達成感は格別だった。

続々と参加者がゴールする Photo: Kairi ISHIKAWA

辛いのは皆同じ

 ゴールすると、フィニッシュライン近くに設けられたピットエリアに腰を下ろして休憩を取った。周りを見渡すと、同じように体力を使い果たしたサイクリストが大勢いて、大の字で寝ころんでいる人の姿もあった。

ゴール脇に設けられたピットエリア。参加者はバイク置いて休憩していた Photo: Kairi ISHIKAWA

 神奈川県から参加した替地晧平さんは、今年からヒルクライムレースに挑戦。スポーツエントリーのサイトに表示されているヒルクライムイベントに手当たり次第に応募したそうだ。「申し込んだレースの中でも一番距離が長いので、完走できるか不安でした。最初と最後の5kmがとてもきつかったです」と答えてくれた。

五合目の看板と共に記念撮影する替地晧平さん Photo: Kairi ISHIKAWA
五合目ではおしるこが振舞われた Photo: Kairi ISHIKAWA
地元静岡の自転車ショップ「α WORKS」の皆さん。仲良くおしるこを飲んでいた Photo: Kairi ISHIKAWA

 ただ不思議なのは、走っている最中はあれだけ「辛い、リタイアしたい」と感じていたのに、ゴール後は達成感で満たされ、また挑戦したいと思えたことだ。これがヒルクライムの魅力なのだろうか。

地元チームのサポートも

 レース自体はゴールして終わりだが、大会の魅力はそれ以外にも沢山あった。メイン会場に戻ると沢山の参加者が残っていて、ゴール後のご褒美として振舞われていたご当地グルメ『みくりやそば』を食べたり、表彰状の引換をしていた。ちなみに今大会の最速タイムは池田隆人さん(TEAM ZWC)の1時間16分34秒760だ。

総合タイムで1位の池田隆人さん(写真左)。表彰式では賞状や記念品が贈られた Photo: ROOTS SPORTS JAPAN
ゴール後のメイン会場で振舞われたみくりやそば Photo: Kairi ISHIKAWA

 この大会では通常コースの完走タイムに応じて、カラーメダルが用意される。また、オリジナルのサイクルジャージもタイムで異なるデザインを採用するなど、非常にユニーク。お目当てのメダルを獲得するために参加したサイクリストもいるほどだった。

完走タイムに応じて5つのカラーが用意された。金は1時間25分、銀は1時間40分、銅は1時間55分、水色は2時間20分。緑は完走者に与えられる Photo: Kairi ISHIKAWA
ジャージはセットインスリーブ(左)とラグランスリーブの2種類用意。タイムに応じてジャージの一部デザインが異なる仕様だ 画像提供:ルーツ・スポーツ・ジャパン
久保田匠さん(写真左)と桑山悠一さん。目標だったブルーのメダルを手に入れた Photo: Kairi ISHIKAWA

 久保田匠さんと桑山悠一さんもそのサイクリストの1人。完走タイムに応じてもらえるメダルが欲しくてエントリー。久保田さんは「ペース配分の調整が上手くいって無事に目標だったメダルを取れて良かった」とブルーのメダルを笑顔で見せてくれた。桑山さんは「途中で脚がつってしまったのですが、友人(久保田さん)がゴール前で応援してくれたのが励みになりました」と感謝した。

 また参加者の中には、開催地・御殿場市を拠点に活動するチームの姿もあった。「AutoBahn Gotemba」(アウトバーン 御殿場)は同市在住の芹澤唯臣さんを中心に2016年に結成。お揃いで着用するジャージは、御殿場市の市章や名産品のわさびをデザインした地元愛溢れるチームだ。今回はサポートライダーとして5人のメンバーが参加し、高速グループで走行管理を担ったという。

「AutoBahn Gotemba」の皆さん。20代メンバーが中心のフレッシュなチームだ Photo: Kairi ISHIKAWA

 普段は実業団レースに出場している日暮将和さんは「自分たちの力試しも兼ねてサポートライダーとして参加しました。とてもきついコースで目標としていたタイムに届きませんでしたが、意外に上れるんだと分かりました」と手ごたえを感じていた。

 ルーツ・スポーツ・ジャパンでは、「たのしいがゴール」をキーワードに様々なイベントを実施している。今回の「富士山ヒルクライム」以外にも、指定されたスポットを制限時間内に多く回るゲーム感覚のイベントや、周回数を競うエンデューロなどを全国各地で展開。様々な形で自転車の楽しみ方を提案している。レース以外のイベントにもぜひ、足を伸ばしてみてはいかがだろうか。

(提供:ルーツ・スポーツ・ジャパン)

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