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福光俊介の「週刊サイクルワールド」<311>2019年のUCIワールドツアー閉幕 プリモシュ・ログリッチェが世界ランク1位に輝く

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 ジャパンカップ サイクルロードレースの興奮がいまだ冷めやらぬ日本のロードレース界。一方、海外に目を向けてみると最高峰リーグであるUCIワールドツアーがこのほど閉幕。1月のツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)に始まり、10月22日が最終ステージだったグリー・ツアー・オブ・グワンシー(中国)まで、長きシーズンだった。最終戦のグワンシー終了後には、UCIのアワードイベント「UCIサイクリングガラ」が開催され、今年の世界ランキング1位に輝いたプリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)らが表彰された。そこで今回は、ログリッチェらタイトルホルダーの活躍を振り返り、その強さを再確認する。

2019年シーズンの世界ランキング1位に輝いたプリモシュ・ログリッチェ =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第18ステージ、2019年9月12日 Photo: Yuzuru SUNADA

新ランキングのトップはログリッチェ ステージレースで圧倒的強さ

 近年はUCIワールドツアー最終戦の終了に合わせて行われてきたUCIサイクリングガラ。今年もこれまで通り、グリー・ツアー・オブ・グワンシーの閉幕後に表彰式が実施され、表彰対象の選手やレース関係者などが招待された。

 サイクルロードレースにおけるランキング制度が今年から新しくなり、最高の栄誉として「ワールドランキング」が導入された。これは、UCIワールドツアーから同2クラス、さらには世界選手権・大陸選手権・国内選手権を含む、世界各地さまざまなレースで獲得したポイント合算によって決まるもの。昨年までの「UCIワールドツアーランキング」は撤廃され、このワールドランキングが最上位バリューに。この新制度では、UCIワールドチームに所属する選手が下部クラスにあたるHCクラス、1クラスに出場し獲得したポイントも有効とされる。それでも実情としては、上位ランカーたちがどれだけ高い格式を誇るレースで活躍したかの指標となっており、UCIのねらいもその点にあるといえる。

10月12日に行われたイル・ロンバルディアを走るプリモシュ・ログリッチェ。ステージレースをメインに、シーズン終盤はワンデーレースでも上位争いを展開した Photo: Yuzuru SUNADA

 そんな中、今年のUCIワールドランキングの個人1位に確定したのが、ログリッチェ。2位のジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)に対して、約1100点の大差をつけて年間トップの座を射止めた。

 ログリッチェのスタンスは、総合力で勝負するステージレースをメインとしたプログラム編成。もちろんそれは今年も同様で、3月上旬のUAEツアーでシーズンインを果たすと、以降は破竹の勢いで次々とタイトルを獲得。ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャと、2つのグランツールを含む、出場した5つのステージレースのうち、4つで個人総合優勝。特に頂点に立ったブエルタでは1354点と荒稼ぎ。シーズン終盤にはワンデーレースにも参戦し、その多くで上位進出。最後までしっかりと実力を出し切って、シーズンを終えた印象だ。

 10月29日に30歳を迎えるログリッチェだが、選手としてのキャリアは8年ほどとあり、“消耗”していないあたりでまだまだ力を伸ばしてきても不思議ではない。3週間トータルで争うグランツールに限らず、安定感のある登坂と絶対的強さを持つタイムトライアルを武器に、1週間のステージレースでも確実に上位戦線をにぎわせる。前述したように、ワンデーレースでも力のあるところを示しており、活躍の場はまだまだ広がっていくことだろう。

シーズン中の活躍度がそのまま反映される結果に

 2位には、「2019年の顔」でもあったアラフィリップが続いた。こちらも1月のシーズンインから飛ばしていったが、3月のストラーデ・ビアンケ、ミラノ~サンレモ、そして4月にはフレーシュ・ワロンヌと、ビッグレースを次々と制したことでポイント量産態勢に入った。

ビッグレースでの活躍が光ったジュリアン・アラフィリップはランキング2位 =ミラノ〜サンレモ2019、2019年3月23日 Photo: Yuzuru SUNADA

 そして今シーズンのハイライトともいえる、ツール・ド・フランスでの快進撃。計14日間マイヨジョーヌを着続け、この大会だけで1143.12点を獲得。これは、ツール個人総合優勝で得られるポイントが1000点であることを考えると、最終的に個人総合5位だった彼が毎ステージいかにハイクオリティな戦いぶりを見せていたかがうかがえるものといえるだろう。シーズン終盤は得点を伸ばせず、最終的にログリッチェに引き離されたものの、本来はグランツールレーサーではないことを思えば殊勲の結果だ。

アルデンヌクラシックで快走を連発したヤコブ・フルサングが世界ランキング3位に =リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2019、2019年4月28日 Photo: BELGA / SUNADA

 3位には、これまた目立った活躍の多かったヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム)が食い込んだ。チームの好調さを体現するかのごとく、シーズン前半の快走が光った。なかでも、アムステル・ゴールド・レース、フレーシュ・ワロンヌ、そしてリエージュ~バストーニュ~リエージュにおいて、3位・2位・1位とアルデンヌクラシックでの強さは圧巻。最大目標であったツールこそ落車を繰り返し、途中で大会を去ったが、シーズン後半も立て直して上位進出を続けたあたり、34歳にしてキャリアハイの成果だったと見ることができる。

ツール・ド・フランスを制したエガン・ベルナルも4位と上位ランク入り =2019年7月28日 Photo: Yuzuru SUNADA

 今年のグランツールを制した選手に目を向けると、ツール覇者のエガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス)は、アラフィリップやフルサングと僅差の4位と、順当な結果。一方ジロを制したリチャル・カラパス(エクアドル、モビスター チーム)は24位と、観る者に与えたインパクトに対して得点を伸ばせなかった。要因としては、ジロ以外のビッグレースで目立った結果を残せなかったあたりが挙げられそうだ。

UCIワールドツアー最終戦、グリー・ツアー・オブ・グワンシー第3ステージで勝利したパスカル・アッカーマン(右端)。シーズン通しての活躍で世界ランク8位に =2019年10月19日 Photo: Aaron LEE / SUNADA

 また、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チーム エミレーツ)、パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)、エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)、ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が7位から10位を占めたあたりも、シーズンを通して活躍を続けたスプリンターとして評価されるところ。猛攻の末にアムステル・ゴールド・レースを制したマチュー・ファンデルプール(オランダ、コレンドン・サーカス)も、シクロクロスとマウンテンバイクとの並行ながら、11位と健闘している。

 各選手の獲得ポイントの合算によって順位が決まるチーム部門は、グリー・ツアー・オブ・グワンシーで2勝を加算し、シーズン68勝を挙げたドゥクーニンク・クイックステップが1位。アッカーマンやサガン、エマヌエル・ブッフマン(ドイツ)らの活躍があったボーラ・ハンスグローエが427.3点差で2位に続いたほか、ログリッチェやステフェン・クライスヴァイク(オランダ)らがチームを牽引したユンボ・ヴィスマが3位となった。以下、15位までをUCIワールドチームが占めたが、16位に同プロコンチネンタルチームのトタル・ディレクトエネルジーが、17位にワンティ・グループゴベールが入るなど、下部チームの健闘も見られている。

2019年 UCIワールドランキング

●個人トップ10
1 プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) 4705.3pts
2 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 3595pts
3 ヤコブ・フルサング(デンマーク、アスタナ プロチーム) 3472.5pts
4 エガン・ベルナル(コロンビア、チーム イネオス) 3346.8pts
5 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム) 3297pts
6 グレッグ・ファンアーフェルマート(ベルギー、CCCチーム) 2947.3pts
7 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、UAE・チーム エミレーツ) 2484.5pts
8 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 2479pts
9 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 2342.1pts
10 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) 2232pts

●チーム
1 ドゥクーニンク・クイックステップ 14713.2pts
2 ボーラ・ハンスグローエ 14295.9pts
3 ユンボ・ヴィスマ 13059.7pts
4 UAE・チーム エミレーツ 11685.4pts
5 アスタナ プロチーム 11510.5pts
6 チーム イネオス 10971.7pts
7 モビスター チーム 10416pts
8 ミッチェルトン・スコット 9132.6pts
9 ロット・スーダル 8265pts
10 EFエデュケーションファースト 8210.9pts
11 トレック・セガフレード 7995pts
12 グルパマ・エフデジ 7385pts
13 アージェードゥーゼール ラモンディアール 6719pts
14 バーレーン・メリダ 6253.8pts
15 チーム サンウェブ 5630.5pts
16 トタル・ディレクトエネルジー 5043pts
17 ワンティ・グループゴベール 4989pts
18 CCCチーム 4891.7pts
19 コレンドン・サーカス 4888.6pts
20 イスラエルサイクリングアカデミー 4690pts
21 コフィディス ソリュシオンクレディ 4634pts
22 ディメンションデータ 4314.1pts
23 カチューシャ・アルペシン 3726pts

今週の爆走ライダー−ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、カチューシャ・アルペシン)

「爆走ライダー」とは…

1週間のレースの中から、印象的な走りを見せた選手を「爆走ライダー」として大々的に紹介! 優勝した選手以外にも、アシスト や逃げなどでインパクトを残した選手を積極的に選んでいきたい。

 いまの体制でのチーム運営が終了し、現UCIプロコンチネンタルチームのイスラエルサイクリングアカデミーに引き継がれることになったカチューシャ・アルペシン。体制変化にともない、チームとの契約を残していた選手たちの動向が不安視されることとなっているが、このほど25歳のポルトガル人、ルーベン・ゲレイロはEFエデュケーションファーストに来季加入が決まった。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第15ステージで優勝争いを繰り広げたルーベン・ゲレイロ(右)。自らの価値の高さを示す激走だった =2019年9月8日 Photo: Yuzuru SUNADA

 上りを中心に、オールラウンドに力を発揮できる彼の走りは、EFエデュケーションファーストのチームマネージャー、ジョナサン・ヴォーターズ氏にして高い評価に値するものだという。シーズン序盤にめっぽう強く、ここ2年は緒戦のツアー・ダウンアンダーで連続総合トップ10入り。今年は初のグランツールとなったブエルタ・ア・エスパーニャでも個人総合17位と、一定の成果を残した。

 だから、来年のチームが決まっていなかった彼に、ヴォーターズ氏は相応の条件提示をしたつもりだった。しかし本人の返答は「No」。もっと高く評価されるべき、というのがゲレイロの主張だった。それがブエルタ第14ステージ当日。その強い思いを体現するかのごとく、続くステージでは2位フィニッシュ。これにはヴォーターズ氏もすぐに提示を一気に上げたのだとか。

 自らをプレゼンする能力の高さと、有言実行のスタイル。新たな環境では、チームが重視するレースの1つであるツアー・オブ・カリフォルニアでの上位進出と、ツール・ド・フランスデビューを目指すことになる見通しだ。

 アメリカ籍のチームに長く所属していたこともあり、英語も得意。強い意志とポジティブさで、新たな仲間ともすぐに打ち解けられることだろう。

2020年はEFエデュケーションファースト入りするルーベン・ゲレイロ。英語が得意とあって、アメリカ籍のチーム加入にやる気をみなぎらせている =ブエルタ・ア・エスパーニャ2019第11ステージ、2019年9月4日 Photo: Yuzuru SUNADA
福光俊介福光俊介(ふくみつ・しゅんすけ)

サイクルジャーナリスト。自転車ロードレース界の“トップスター”を追い続けて十数年、今ではロード、トラック、シクロクロス、MTBをすべてチェックするレースマニアに。現在は国内外のレース取材、データ分析を行う。UCIコンチネンタルチーム「キナンサイクリングチーム」ではメディアオフィサーとして、チーム広報やメディア対応のコントロールなどを担当する。ウェブサイト「The Syunsuke FUKUMITSU

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