HELLO, サイクリングチーム!“スズカ”を目標に自転車を「おもしろおかしく」楽しむ 堀場製作所自転車倶楽部

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 京都市に本社を置く「堀場製作所」は、環境分野を得意とする分析・計測機器の大手メーカーだ。工場の煙突や自動車から出るガス、河川の水質状況など、「目に見えないものを計測するツール」を扱う企業として、今や日本になくてはならない存在である。そんな堀場の社員として、「おもしろおかしく」という一風変わった社是を記したチームウェアを身にまとい、京都の街をさっそうと駆け抜けるのが、2008年に創設された「堀場製作所自転車倶楽部」のメンバーたちだ。 (文・写真 岡田由佳子)

毎年スズカエンデューロでは参加メンバー全員で記念撮影する。幟には社是の「おもしろおかしく」の文字(堀場製作所自転車倶楽部提供)毎年スズカエンデューロでは参加メンバー全員で記念撮影する。幟には社是の「おもしろおかしく」の文字(堀場製作所自転車倶楽部提供)

“スズカ”をきっかけに結成

この日取材で集まっていただいた自転車部のメンバーこの日取材で集まっていただいた自転車部のメンバー

 「正直、自転車乗りのベテラン社員は、会社に創部を申請すること自体に抵抗があった、部活動にすることは想定外でした」と振り返るのは、初代部長の細川浩司さん(57)。「自転車部がある会社なんて身近に聞いた事がなかった。個性が強い自転車乗りをまとめて、会社のクラブ活動として成立するかどうかにも不安もあった。そんなとき、新入社員と意気投合したことがきっかけで、トントン拍子で自転車倶楽部が誕生したんです」

 細川さんは2006年夏に出場した「シマノ鈴鹿ロードレース」の会場内で偶然、同じ会社のベテランサイクリストと遭遇した。それぞれ別のサイクルショップのチームに所属していたが、「今度、会社のみんなで走ろう!」と約束。同年秋の“スズカ耐久4時間”に出場することになった。この時、メンバーがみんな同じ会社だった事から、会社名を冠につけた「堀場製作所チーム」で出場した。

初代部長の細川浩司さん(57)初代部長の細川浩司さん

 07年、08年も耐久レースに堀場製作所チームで参加。メンバーは年々増えていった。

 個人的な集まりから「部活動」への転機は、下野友也さん(27)ら3人の08年新入社員が、自転車乗りメンバーの部署に各々配属された時だ。ロードレースや自転車が話題になり、自転車部創設の話が持ち上がったのだ。

 この頃、堀場製作所には、囲碁、野球、サッカー、など、26もの部活動が存在した。新しい部を創設するには50人以上の賛同者が必要になる。ただ、08年の新入社員が多かったこともあって、すぐに100人ほどの賛同が集まった。部として認定されるのは自然な流れだったという。

安全確保が第一優先

 「おもしろおかしく」という社是には、人生の一番よい時期を過ごす「会社での日常」を積極的でエキサイティングなものにしてほしいという、前向きな願いが込められている。自転車部での活動も、やることはきちんとやるけれど、とにかく「おもしろおかしく」が基本だ。

琵琶湖一周のトレーニング。チーム走行では安全を第一に優先している(堀場製作所自転車倶楽部提供)琵琶湖一周のトレーニング。チーム走行では安全を第一に優先している(堀場製作所自転車倶楽部提供)

 その一方で、部活動として正式にスタートし、チームでの練習を始めると、メンバーの中で走り方に対する考えが異なることがわかってきた。そこで練習方法や安全対策をしっかり話し合って、「堀場製作所自転車倶楽部練習会規定」を設けた。内容は簡単なものだが、重要なポイントは押さえられている。

 例えば、「トンネルでの走行は集団で行うこと。コースリーダーは集団がバラけた場合に備えて、トンネル手前で一旦集合するよう指示すること。全員ヘルメット後部に反射板を取り付けること。全員分をクラブ費で用意する」などがある。どこで誰がどう動いて、誰がお金を出すのか、決めておかないと後にトラブルになりそうなことを規定に盛り込んでいるのだ。

 何か事故があった時では遅い。「避けられる危険は避ける」。これが、クラブとして第一にこだわっていることだ。

 そのため新人部員には、徹底して安全走行と手信号を教育する。また、会社で各部活動に支給される補助金も、スポーツ保険や反射板の購入費に優先して充てている。

 部の規定や部費の使い方などを初期の段階で定めたのは、「おもしろおかしく」のベースにある、堀場らしいスマートさかもしれない。

琵琶湖でのトレーニング写真(堀場製作所自転車倶楽部提供)琵琶湖でのトレーニング写真(堀場製作所自転車倶楽部提供)
練習後によく行くパン屋さんで(堀場製作所自転車倶楽部提供)練習後によく行くパン屋さんで(堀場製作所自転車倶楽部提供)

企業としての社会的責任

 そしてもう一つ、部内ではなく外部に向けて大切にしていることは、部活動としての社会貢献と、広報としての役割だ。

 細川さんは「私自身は長年、営業職なので、会社の利益の一部をいただいて自転車部の活動をするなら、社名を背負う役割としてそれなりに貢献したい。社会貢献や会社のPRなどは、義務であり責任でもある」と受け止めている。また、「サイクルスポーツはそれがしやすい環境が整っています」と指摘する。

 チームウェアの色には、水と空気を扱う堀場のイメージカラーのブルーを採用した。会社の社是である「おもしろおかしく」を背中に大きく入れ、脇には「堀場製作所自転車倶楽部」の文字。練習でもレースでも、一目で堀場製作所の自転車部だとわかる。

写真を趣味とする初代部長の細川さんが撮影した活動風景(堀場製作所自転車倶楽部提供)写真を趣味とする初代部長の細川さんが撮影した活動風景(堀場製作所自転車倶楽部提供)

 社名を背負う部活動では、たとえ練習時であっても、安全管理や礼儀正しさなどについて世間から厳しい視線が注がれる。その一方で、地域貢献のイベントや自転車レースへの参加は会社のPRになっている。創部後、メンバーは地元・京都のサイクリングイベント「京都美山サイクルグリーンツアー」や、向日町競輪場(京都府向日市)で行われる自転車教室などに積極的に参加してきた。

 2011年には、会社の株主総会で配布されるCSR報告書「ガイアレポート」内で、自転車部の地域貢献活動が紹介された。また、社内報「JOY&FUN」では頻繁に自転車部の活動が掲載され、職場でも大きな存在感を示せるようになった。

シマノスズカロードレース、チームトライアル部門に出場(堀場製作所自転車倶楽部提供)シマノスズカロードレース、チームトライアル部門に出場(堀場製作所自転車倶楽部提供)
京都府南丹市にある日吉ダムでチームタイムトライアルの練習前(堀場製作所自転車倶楽部提供)京都府南丹市にある日吉ダムでチームタイムトライアルの練習前(堀場製作所自転車倶楽部提供)

耐久レースでチーム走行の楽しさを知ってほしい

現部長の入江和大さん(26)現部長の入江和大さん

 2013年で創部5年目を迎え、部活動としてのベースが整い、発展的な時期に突入した。1月から2代目部長に就任した入江和大さん(26)。創部初期から所属し、今では社内への影響力も大きくなってきた実感がある。

 「女子社員は社内報で自転車倶楽部の活動が紹介されたときに、そこに掲載されるグルメリポート的な部分をけっこう楽しみにしているんです。今後は女子部員も増やして、ちょっとした出会いの場になればいいと思う。でも、やっぱり大きな目標は、鈴鹿の8時間耐久レースでの上位入賞です。普段は車しか走っていないところを、仲間と共に自転車で走るのはチーム戦の魅力。その楽しさを知ってほしい」

 女子部員である森かれんさん(23)。堀場製作所に内定が決まり、クロスバイクを乗ってみたところ思いのほか楽しくて、乗り始めて間もない時期に京都から滋賀県の琵琶湖を一周、全長約200kmを走って帰ってきたという武勇伝の持ち主だ。

唯一の女子部員である森かれんさん(23)唯一の女子部員である森かれんさん

 速さの理由は吹奏楽部だったということもあるかもしれない。欧州のプロチームで活躍する佐野淳哉選手や、某女子ロードレーサーも吹奏楽部出身。意外に吹奏楽とサイクルスポーツは身体的に共通点があるのかも? そんな森さんは初めての“スズカ”に思いをはせる。

 「堀場はとても女性が働きやすい会社で、男女平等の意識が高いです。だからといって、練習や合宿で女の子扱いされないわけじゃないです。肉体的な違いもありますから、結構至れりつくせりで自分が恐縮してしまうくらい。今年は初めて鈴鹿の8時間耐久レースに出場するので、今から楽しみです」

 この日、休憩所「オアシス」で弾んだ会話のテーマは、もちろん「鈴鹿の8時間耐久レースについて」。いかにエキサイティングなレースにするか、真剣に、そして“おもしろおかしい”雰囲気で盛り上がっていた。

堀場製作所 ホームページ

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