距離短縮も30kmで獲得標高890mアメリカ発注目のグラベルイベント「グラインデューロ・ジャパン」 荒天の中264人が斑尾を激走

by 腰山雅大 / Masahiro KOSHIYAMA
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 台風19号の影響で開催が危ぶまれたアメリカ・カリフォルニア発の人気オフロードレース「Grinduro」(グラインデューロ)が10月12日、決行されました。SNSでも話題になった大会は、当日はどんな様子だったのか。雨の中行われた大会の様子を腰山雅大さんのリポートでお送りします。

開催地である長野県は斑尾高原スキー場をスタートする参加者たち Photo: GRINDURO JAPAN

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台風の影響で短縮開催

 長く続いた暑い夏のあと、短くも穏やかな気候が約束された10月の連休初日を迎えた。これまで「グラベル」という遊びのイメージを力強く牽引してきた「グラインデューロ」が日本で初めて開催された。

スタート&ゴールを愉快なマイクパフォーマンスで盛り上げたお二人 Photo: GRINDURO JAPAN

 紫に統一されたカラーコンセプト、過去の様式を大きく超えたバイクの数々、そして参加者たちからの熱賛など、各SNSや現地へ参加したインフルエンサーたちの発信からも既にみなの知るところである。

 事前のプレイベントなど開催日まで順調に事は進んでいたが、参加者の期待を裏切る形で大型の台風が日本列島へ迫ってきた。

 同イベントのみならず、大型フェス、ラグビーW杯などが開催の可否決定を迫られる形となったが、台風の予測経路は「グラインデューロ」の開催地・長野県の斑尾高原を外れ、スケジュールを短縮しての開催がアナウンスされた。

会場付近から望む野尻湖。神秘的な雰囲気を感じる Photo: GRINDURO JAPAN

 天候のゆくえに不安を覚えながらも現地へと到着したが、会場の熱気は前日そして開催日朝イチからとても高く、自然とイベントへと気持ちが吸い込まれていくように感じた。

 屋内展示やフードコートは予定の通りの段取りがされており、イベントを主催するGiro(ジロ)や公式スポンサーであるfabric(ファブリック)、Rapha(ラファ)などのブースが所狭しと並んでいた。

屋内会場は冬季レストランとして営業し、スキー客をもてなしている場所だ Photo: Masahiro Koshiyama
Grinduro特別カラーに塗装が施されたCutthroat。参加者の中から抽選でプレゼントされた Photo: Masahiro Koshiyama

 特に話題を集めたのがイベントホストを務めたSalsa Cycles(サルサ サイクルズ)で、この日全世界同時公開となったグラベル新モデル「Cutthroat」(カットスロート)のフレーム・完成車が複数台展示されていた。中でもGrinduroカラーの紫に彩られたフレームセットは、参加者の中から抽選でプレゼントされた。

前日の夕方は然程天候も荒れず、外でキャンプを楽しむ参加者も見られた Photo: GRINDURO JAPAN

自転車のラリーレース

出発の合図となった法螺貝。この直前、安全祈願も執り行われた Photo: GRINDURO JAPAN

 今回のコースは、斑尾高原スキー場を出発して斑尾山麓を周回する30kmのルートで獲得標高は890m。「グラインデューロ」という名の通り、オフロードをメインとするエンデューロ形式だ。

 自動車のラリーレースのように、SS区間(タイム計測をするセグメント区間)が3つと、それらを繋ぐリエゾン区間に分かれている。スタートに並んだのは当初のエントリー数467人に対して264人。特設スタートゲートをくぐるとレースは賑やかに始まった。

荒天も予想された中だったが、半数以上のエントリー者が実際に出走をした Photo: GRINDURO JAPAN

 序盤はスキー場内の舗装路をジワリと上る。脚に自信のある選手たちはまだSS区間が始まらないこの時点からテンポよくペースを刻んでいった。間も無くして待ちわびていたダブルトラックのグラベルが登場し、本格的なルートの始まりが告げられた。

コースの序盤と終盤は霧がかかり、とても幻想的な雰囲気となっていた Photo: Masahiro Koshiyama

 実を言えば、スタート前からシトシトと振り続ける雨模様だったが、路面への影響は少なく、グラベル区間はしっかりダートの感触を捉えながら進むことができた。深い霧もこの日ばかりはレースを更に幻想的な雰囲気に高めているように思えた。

 グラベル区間で特に印象的だったのが、海外からやってきたジロのサポートライダーやサルササイクルズの開発陣たちの走りだ。彼らが操るグラベルバイクは、タイヤこそ40Cなど太めのものが選択されていたが、前後ともリジッドでマウンテンバイク(MTB)と比べれば華奢と言える。

コース上には複数の神社が点在し、ルートとなった道が古くから存在していたことがうかがえた Photo: GRINDURO JAPAN
中盤までは森を進むダブルトラックだ。雨ではあったが、路面への影響は大きくなかった Photo: GRINDURO JAPAN

 しかし荒れたジープロードもかなりのハイスピードで走り、下りはMTBでセミファットタイヤだった筆者ですら追いつくことが困難な速度域だった。スピードを上げて突っ込んでいるだけではなく、時折牙を剥くギャップや大きな石を抜重でいなしていて、彼らが普段どのような強度やペースで自転車と向き合っているのかが伝わってくる瞬間だった。

グラべルバイクでの参加が目立つ

 さて長めの下りを満喫したあとは、いよいよSS区間へと突入する。1つめは3.4km、獲得標高190mのグラベル区間で、ゼッケンにつけられたタグと測定器によってタイムが測られる仕組みだ。

SS区間1つ目のスタート地点。目立つバナーでテンションも上がるが、なかなかの勾配に苦戦を強いられた Photo: GRINURO JAPAN

 ジワジワと脚を削られる勾配にプラスして、常に丁寧なライン取りを求められるグラベルの上りは、身体と頭が同時に疲労するような感覚を覚えた。

 またこの区間では、MTBと比べて軽い車体重量と細いタイヤ幅のアドバンテージから、グラベルバイクのポテンシャルに軍配が上がった。

 SS区間を終えてすぐの場所には、ドリンクやフードが充実したエイドステーションが待っている。ここは先に述べたリエゾン区間でもあるため、上りで力強い走りをしていた選手や、後から追いついた選手もタイムを気にすることなく交わることができる。選手達はフードを片手に前半の状況を思い思いに語っていた。

長い登りを終えればエイドステーションが待っている、エナジーの補給のみならず情報交換も楽しみのひとつだ Photo: GRINDURO JAPAN
ボランティアスタッフの方とセルフィーをパシャり。楽しい思い出がたくさん増えていく Photo: GRINDURO JAPAN

 そんな中で彼らの自転車に目をやると、全体を通してグラベルバイクでの参加が目立った。ドロップハンドルに太めのタイヤ、制動力やクリアランス確保という意味でもディスクブレーキが標準的と言える。

 シクロクロス車での参加も見受けられたが、前タイヤとダウンチューブが少し広めに取られた(つまりホイールベースが長い)グラベルバイクの方が長い下りでの安定性に長ける。ホイールサイズは700Cがメインだが、650Bと極太タイヤを組み合わせたモンスタートラックのような自転車も目立った。

日本勢海外勢が交わったトップ集団。みなグラベルバイクに700cの太めのタイヤが特徴的だった Photo: GRINDURO JAPAN
Ultratraditionことパトリック。彼はUltraRomanceと共にタイヤブランドを運営している。650bの特徴的なパターンのその名もULTRADYNAMICOだ Photo: Masahiro Koshiyama

 斑尾のグラベルは石が小粒な砂利区間も多かったが、平坦な道はそれほど走行ラインを悩まずに安心して走れた。また各コーナーは車線の端がバンク状に盛り上がり、タイヤを当ててトラクションが掛かったまま走り抜けることができる。そういう意味では、グリップ力の高いMTBでは少し性能を持て余す側面もあって、ここでもグラベルバイクが最良の選択でだったと言える。

グラベルシーンの新たな1ページ

 エイドを後にして下りのグラベルを安全に終えると、舗装路の上りに入る。ここは公道を利用するのだが、おそらく関係者の車両だろうか、こちらを見つけては手を振ってくれる。ラリーのリエゾン区間でも派手なレース車両が公道を走るが、なんとなく自分がラリーに出場する名ドライバーのような気分にさせてもらった。

リエゾン区間でもある舗装路の登りを堪能する参加者たち Photo: GRINDURO JAPAN

 舗装路でそれなりの標高を稼いだころ、スタート地点である斑尾高原へと戻ってきた。このあとはSS2とSS3、つまり「下り基調の楽しいセグメントを残すだけだ」と息巻いていた我々に、知られざる難関が待ち受けていた。

 「DEATH CLIMB!」と書かれた紫の看板を見つけた直後、急激に勾配が上がる。流石は「グラインデューロ」、最後にパンチの効いたセクションを用意しているもんだと喜んで上っていくが、進めど進めど終着点が見当たらない。深い霧もあいまって頂上を確認することができず、徐々に集団はバラけてどんどん足を着いて脱落していった。

 なんとか死に物狂いで頂上まで這い上がったが、距離800mで獲得標高は150m、つまり平均勾配16.8°の坂を一気に漕ぎ上げたことになる。直後のエイドステーションではゾンビのような選手の姿を多く見ることとなった。

 なんとかエイドで息を整えたのち残るSS区間はほぼ下り基調のセグメントとなっている。シングルトラックを走り抜けるSS2は雨でぬかるんでおり、大変滑りやすいトリッキーな区間だったが、これまで走ってきたグラベルと違い、いわゆるMTBで走るようなトラックが採用されていた。

最後のSS区間後半はゲレンデの芝生をクネクネと下るダウンヒルセクションだ Photo: GRINDURO JAPAN

 最後のSS3はその直後に登場するが、このコースキャラクターもまたユニークなもの。前半はカートコースを利用したジムカーナスタイルで、そこから「DEATH CLIMB!」で稼いだ標高をゲレンデのスラロームコースで一気に駆け下りた。

 ゲレンデは芝生でキャンバー角がきついため、ここではハンドル操作のしやすいMTBが一番楽しく走れたのではないかと思う。丘を下り、最後は特設のゴールゲートをくぐり、多くのスタッフや仲間に囲まれてのフィニッシュとなった。

無事にゴールで笑顔が溢れる。最後の参加者まで、みんなスタッフに温かく迎えられた Photo: GRINDURO JAPAN

 直後、雨で泥にまみれた自転車と共に案内されたのがフォトブースだ。「グラインデューロ」の公式ページなどを見ている方にはおそらくお馴染みとなっている参加者の写真はここで撮影されていた。プロのカメラマンが泥と笑顔の表情をカメラに収めていく。間も無くフードコートもオープンとなり、美味しい料理を頬張りながら特設ステージでの生演奏を楽しむこともできた。

Grinduroではお馴染みのフォトブース。参加者全員が記念撮影を行った Photo: Masahiro KOSHIYAMA
お待ちかねのディナーは、スパイシーなお肉料理、鶏・豚・牛のほか、ベジタリアン向けの食事も用意されていた Photo: GRINDURO JAPAN
各クラスの表彰で賑わう会場。写真は女子プロクラスの表彰 Photo: GRINDURO JAPAN

 海外での開催を経て国内にやってきたイベントは、本場のプログラムと比較されるが、全ての行程を自分の目で見て体感し、述べておきたいことは「正にここが本場なんだ」という一言に尽きる。

 多く人が開催を心待ちにしていただけでなく、主催側も日本でのグラベルシーンの新たな1ページが刻まれることを楽しみにしていたはずだ。

 天候に振り回されながらも無事に「グラインデューロ」が開催されたことを心から嬉しく思う。

ボランティアスタッフに感謝

 最後に、現場に雨が降り続く中で選手たちをサポートしてくれた方々に触れておきたい。事前に公式ウェブサイトを覗いた人ならご存知かも知れないが、イベントを一緒に作り上げたボランティアの方々だ。

雨の中、参加者を誘導し続けてくれたボランティアスタッフ。常に笑顔でみなのレースを安全に盛り上げてくださったみなさんに感謝 Photo: Masahiro KOSHIYAMA

 このような場所で書くことではないのかも知れないが、台風の影響で交通機関が麻痺する可能性が高いため、参加したくても止むを得ずキャンセルした参加者・ボランティアの方が多いと耳にした。

 つまり事前に振り分けられていた業務に比べ、ボランティア一人一人の負担も当然大きくなるわけだが、集まった人たちは笑顔を絶やさず、我々参加者を最後までスムーズかつ安全に誘導してくれた。改めてこの場を借りてボランティアの方々に感謝したい。

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