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ロードバイク 2020モデルのトレンド<3>エアロ化が進むオールラウンドモデルからフレーム形状が似るワケを探る<後編>

by 安井行生 / Yukio YASUI
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 コンピューターで解析を行うには、「人間が考えてカタチを作る」というプロセスが不可欠なのだから、最新の万能モデルがどれも似てきたのは開発に解析ソフトが入ったことが直接的な原因ではなく、完成度の高い既存モデルの影響を受けているからではないか、というのが前回までの内容(というか考察)でした。でもそれなら、解析ソフトは関係なく、いつの時代もロードバイクは似てくるはずですよね。今回も、オールラウンドモデルが似てきた理由その2として前回挙げた「開発に“計算”が入ってきたから」が本当なのかを考えます。

エアロロードの元祖となるサーベロの「ソロイスト」。10年以上たった今、様々なロードバイクのフレームにエアロダイナミクスが取り入れられるようになった Photo : Yuzuru SUNADA

某オートバイ開発者の言葉から答えを見つける

 「解析ソフトを使って何かの判断をするとき、一種類だけじゃなくて何十種類ものパターンのモデルを試したりするからね。何十種類も試して、その中で一番優れているものを選んでいくと、どのメーカーも『ソフト上で結果がいい方向』に収斂していくことは十分考えられる」とは、某オートバイメーカーで開発やってる知り合い。最近の万能ロード事情について聞いてみたら、こんな答えが返ってきました。

 「結局、解析ソフトを使うと、解析の条件に対して効率的な形になっていくもの。どのメーカーも同じような条件で解析してたら、みんな同じような形になるはず。その条件が正しいかどうかは別にしてね」

 なるほど。これを聞くと、解析ソフトが「似てきたこと」に影響していそうです。万能ロードと同じく、どれも似たようなカタチになっているエアロロードについても同様のことが言えるようです。

 「空力に関しても、開発プロセスの中にCFDが入るとどうしても似てきちゃう。『空力的に優れたカタチ』に収斂していくから。でもそれは自転車ならではだと思うけどね。オートバイはカウルの面積が大きいから、見た目が商品力を左右する。だからデザイナーがカタチをいじりたがる。その『性能と見た目のバランス』をどうとるのかが難しいんだけど、自転車はフレームがむき出しだから、オートバイみたいに『見た目重視』か『性能重視』かで分かれるよりも、『性能』に寄って、カタチが近くなりやすいんだと思う」

 経験やセンスがモノを言っていた昔とは違って、解析法の進化によって、今は自転車が工学的な正解に近づいていると言えます。ある条件下において工学的正解は一つしかない(ペダリングフィールや乗り味の良し悪しは工学ではありません)。だから「フレームむき出し、外形=応力担体」の自転車はどれも似てきてしまう。だからどのメーカーも万能ロードとしては①と②と③という答えに帰結する。

オールラウンドモデルが似てきたと思われる3つのポイント(本連載第2回より)

① 空力性能を重視し、各チューブをカムテール形状にしていること
② ①と同様の理由によって、ケーブル類をできるだけハンドルやチューブに内蔵していること
③ シートステーとシートチューブの交点を下げ、リア三角をコンパクトにしていること

 えー、理由その2の説明にかなりの文字数を費やしてしまいましたが、要するに「万能ロードがどれも似てきたのは、解析ソフトを使っているから」は大筋で正解だと言えそうです。

2021モデル以降のロードバイクに起こりうること

 この「コンピュータでガンガン解析してどんどん工学的正解に近づけていく」という方向性はもう変わらないでしょうし、主要メーカーが①②③全てを満たしたモデルを出し始めたことで、小規模メーカーもこの流れに追従することになるでしょう。今よりもっと「似たものばっかり」になるかもしれない。

キャノンデールのCAAD13 DISCも3つの条件を満たすという点でわかりやすい Photo: Shusaku MATSUO

 でも、この状況を「どれも一緒でつまらない」と考えるか、「間違いないものが増えた」と考えるのかは、あなた次第です。バイクの良し悪しなんて乗り手の好みや目的によって決まるものですが、あくまで全般論として話をすると、性能を考えれば最新の万能モデルっていいことずくめなんです。

 空力性能は高いし、快適だし、よく進むし、ハズレは少なくなってるし、機械として欠点が非常に少ない。「コレ一台あればなんでもできる」というモノに仕上がっています。これぞ文字通りの万能モデル。何台も所有できる人は別にして、「一台でなんでもしたい人」には最適でしょう。2020モデルを眺めていて、僕が本当に言いたいことはこれなんです。

個性派バイクの登場も

 でも個人的には、この「画一化」の流れの反動も起きると思ってます。個性を声高に主張するモデルがきっと出てくる。没個性の時代の次は個性の時代です。

 例えばスタイリングにプライオリティを置いたバイク。かつてのルック・675や795はそうでしたし、現行モデルで言えばドグマF12もスタイリング先行バイクでしょう。超個性的なあのシルエットを見ればそれは明らかだし、本人たちもそれは認めてる。

ピナレロのドグマF12 DISK Photo: Shusaku MATSUO

 見た目を重視した結果、走りが犠牲になっていれば笑い飛ばしてやるところですが、675や795は驚くほどよく走るし、F12も素晴らしい性能のようです(筆者は未試乗)。さすがだと思います。スタイリングの個性と性能の両立。そういうことができるからこそ、ピナレロはロード界きっての“ブランド”たりえているんだと思いますね。

 見た目ではなく、走りが個性的なモデルも出てくるはずです。

 先ほど現在のオールラウンドモデルについて「欠点が非常に少ない」と書きましたが、それは全項目80点を目指したもの。レーダーチャートで全方位をカバーしようとした結果であり、決して全項目100点ではありません(そんなバイクは実現不可能です)。

 そういう「あらゆることをそれなりに上手くこなす優等生君」ではなく、一点突破型の個性的なディスクロードが出てくる。

 だから今後は、オールラウンドロード、エアロロード、エンデュランスロード、グラベルロードに続く第5のカテゴリー、「アルティメイトロード」なんてものが出現し、<登坂性能100点・その他全て赤点>みたいなキレた走りで好事家に熱狂的な支持を得る、なんてことも考えられますね。

 いつもダラダラと長くなってしまってすいません。次回はエンデュランスロードとロードバイクの快適性について書いてみたいと思います。

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