title banner

ロードバイク 2020モデルのトレンド<2>エアロ化が進むオールラウンドモデルからフレーム形状が似るワケを探る<前編>

by 安井行生 / Yukio YASUI
  • 一覧
写真はジャイアントのエアロロード「PROPEL ADVANCED SL 0 DISC」。ディスクロード同様にエアロロードでもビッグメーカーが有利な弱肉強食の時代を迎えそう Photo: Kenta SAWANO

 ヴェンジ、マドン、システムシックス、S5など、ぶっ飛び系エアロロードは2019シーズンで出揃った感があり、エアロロードカテゴリーは2020モデルではやや落ち着いた印象です。ジャイアント(プロペル)、スコット(フォイル)、ビアンキ(オルトレ)、BMC(タイムマシーン)、タイム(サイロン)あたりがどう動くかが今後の焦点になります。

 詳しくは後述しますが、オールラウンドロードの空力性能が上がってきたことを考えると、中途半端なエアロロードではもはや誰も満足してくれなくなり、メンテナンス性やポジションの自由度などを考慮しつつ、TTバイクも真っ青な空力を実現しなければならなくなっています。

 でも、そんな「ハンパないエアロロード」を作るには、資金と(設備を含めた)技術と優秀な人員が必要です。だからディスクロード同様、エアロロードでもビッグメーカー有利になり、弱肉強食の時代を迎えるでしょう。

どれも似てきたオールラウンドモデル

 では本題のオールラウンドモデルを見てみましょう。第1回で「オールラウンドモデルまでディスク化が波及した」と書きましたが、もうディスクブレーキは当たり前。リムブレーキと併売するモデルはあれど、リムブレーキ版のみというニューモデルはほぼありません。

 さて、このカテゴリーについては、「どれも似てきた」という声を多く耳にします。確かに、ここ数年内にデビューした万能モデルは「同じ人が設計してんの?」と言いたくなるくらいどれもよく似ています。シルエットクイズにしたら当てる自信は全くありません。

 似ているとされるポイントは以下の3点。

①空力性能を重視し、各チューブをカムテール形状にしていること

 これに呼応して、フレームの軽量化のプライオリティはやや下がっているように思われます。

キャノンデールの2020モデル「SUPERSIX EVO HI-MOD DISC」 Photo: Shusaku MATSUO
各チューブにカムテール形状を導入している Photo: Shusaku MATSUO

② ①と同様の理由によって、ケーブル類をできるだけハンドルやチューブに内蔵していること

 中にはエアロロードではないのにハンドルにケーブルをフル内蔵しているモデルもあります。

②の代表例となるIZALCO MAX DISC 9.9(2019モデル) Photo: Masahiro OSAWA
IZALCO MAX DISC 9.9のケーブルは内装式に Photo: Masahiro OSAWA

③シートステーとシートチューブの交点を下げ、リア三角をコンパクトにしていること

リア三角がコンパクトに Photo: Shusaku MATSUO

 こうすることでシートチューブが弓なりに変形しやすくなり、快適性の向上が見込めます。これには前面投影面積がわずかに減り(本当にごくわずかですが)、シートステー起因の乱流が少なくなり、空力性能が向上するというメリットもあるでしょう。タイヤクリアランスを広げ太いタイヤを飲み込む設定も共通しています。シートクランプをチューブ内部に内蔵するモデルも多くなりました。

 最近の万能ロードの多くが①と②と③を同時に取り入れています。ディスクでカムテールでケーブル内装でリア三角がコンパクトで太いタイヤを履く。これが最新万能モデルの典型です。するとどうしても似てしまいます。しかしそれについて自転車ライターが「どれも似てきましたぁ」なんて言ってちゃ小学生の感想文と言われてもしょうがないので、「なぜ似てきたのか」についてちょっとした考察をしてみましょう。

オールラウンドモデルに伝播したエアロ化の流れ

フレームにあたる空気をソフトウェアで解析する様子。FELT本社にて Photo: Shusaku MATSUO

 理由その1は、エアロ化の波が万能モデルにも伝染したから。

 数年前、エアロロードの一大ブームが巻き起こったことで、各社はそれまで感覚で判断していた(もしくは無視していた)空力性能を、CFDや風洞実験を使って数値的に解析するようになりました。それら知見の蓄積によって、「自転車の速度域でもフレームのエアロ化って効くんじゃん」ということが分かってきた。その結果、各メーカーの設計思想が「快適性を上げるより、軽くするより硬くするより、少しでも空力を向上させたほうが速いバイクになる」というものになった(あくまでシミュレーション上では、ですが)。

 だから万能モデルまでもがカムテール形状を使い、ハンドルまで翼断面にし、ケーブル類をフル内蔵するようになったのだと思います。もちろん、「エアロにしないと売れない」というビジネス上・マーケティング上の理由もあるとは思いますが。

計算が入るとどれも似てくる

 理由その2は、開発に“計算”が入ってきたから。

 開発でFEMやCFDなどの解析ソフトを使い始めたからどれも似てくるんだ、という人がいますね。確かに計算でフレームを作るとどれも似てくるような気がします。でも本当にそうなのでしょうか。ちょっと考えてみたいと思います。

 もし、同じコンセプトを基に、別々のメーカーが全く同じ解析ソフトと全く同じ風洞実験施設を使ってロードフレームを開発したら、全く同じフレームが出来上がるでしょうか。そうとは言えません。

 なぜなら、CFDもFEMも風洞実験も、「人間が考えたカタチがいいかどうかを検証するためのもの」だからです。「壊れるか壊れないか」「剛性が高いか低いか」「空気抵抗が大きいか小さいか」は、最初にカタチが存在しないと検証も実験もできない。ソフトと風洞実験施設が形を作るわけじゃありません。エンジニアが理論と経験とセンスとひらめきをもとに、カタチを「考えて作る」んです。そのカタチ(や素材や積層など)の良し悪しを、ソフトに判断させているだけ。

 BMCのACEテクノロジーなどはソフト主導の設計であり、コンピュータ支援設計の支配力がかなり強いようですが、それでも人間の「こういうカタチにしたい」という想い・情緒は完全に排除できないでしょう。

 “考えて作る”とき、評判のいい(多くの場合は他社の)先例を参考にするのは当然です。自転車業界に限らず、それが商売ってもんです。そうしないと食っていけない。先例ゼロの状態から「いいモノを作り出せる」のは本当の天才だけですから。そんな人は一握りしかいません。1回で終わらせるつもりでしたが長くなってしまったので、この話は次回に続きます。

この記事のコメント

利用規約順守の上ご投稿ください。

関連記事

この記事のタグ

ロードバイク 2020モデルのトレンド

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

e-BIKE最新特集

スペシャル

自転車協会バナー

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載