“脚より口が廻るサイクリスト”栗林亮太さんがリポートものぐさでもできる!海外輪行のススメ バックパック1つでロード世界選手権コース実走の旅

by 栗林亮太 / Ryota KURIBAYASHI
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 なかなかハードルが高いと思われている海外輪行旅ですが、コツさえつかめば気軽に楽しめるもの。9月のロードレース世界選手権(イギリス・ヨークシャー)で日本代表・與那嶺恵理選手のサポートにも入った栗林亮太さんが、実際に飛行機と鉄道で輪行した体験からそのコツを分かりやすく解説します。世界選のコースの実走リポートも合わせてご一読ください。

フィニッシュ地点にて。疲労のあまりヘルメットがずれています。Photo: keitsuji

海外輪行は驚くほど簡単

 筆者は普段より“脚より口が廻るサイクリスト”と呼ばれ、自身でもその自覚があります。つまり、自転車に乗るという行為に対しては恐らくこの媒体『Cyclist』を訪れる読者の皆様と比べて、至らぬところも多いのかもしれません。しかし、そんな私が、2018年のオーストリアで行われたロードレース世界選手権に輪行していったことをきっかけに、今年2019年、イギリスはヨークシャーで開催された世界選手権にも、またもや輪行で一週間丸々楽しんで来てしまいました。

 『輪行』という言葉はまだまだハードルが高く、そこに海外という単語までつけば更にそのハードルは高く感じられるかもしれません。しかし、この“脚より口が廻る”ものぐさなサイクリストの私でも、そんな旅を繰り返すことができているということは、海外に自転車を持っていく、ということはそれほど難しいことではないのです。今回はそんな筆者のものぐさな海外輪行旅の紀行文から、その旅の簡単さを感じていただければと思います。

パッカブル/速乾性あること

 画像が筆者の旅道具一式になります。自転車関連のギアは全て輪行袋に入れるため、自転車の有無に関わらず、1週間程度の旅であれば基本はこのバックパック1つで全て事足ります。今回はロンドンでランニングをする予定だったので、ランニング道具が追加されていますが、基本的にはこれ以上荷物が増えることはありません。この中で最も嵩張る荷物は着替えです。基本的に現地で洗濯をする前提で荷物を絞っています。圧縮袋などを活用すれば更に圧縮も可能ですが、膨らませた後のシワを伸ばしたりする作業が面倒なので筆者はこの形に落ち着いています。

バックパックに詰めた中身。右上から薬などを入れたパック、飛行機移動に欠かせないノイズキャンセリングヘッドホン、着替え(Tシャツ、パンツなど各3セット)、ランニング道具、折りたたみ可能なリュック、シャワーキット、電源コード類 Photo: Ryota KURIBAYASHI
コード類、バッテリー系はジップロックにさらに小分けにして保存。空港でチェックされる際可視化されてる方が楽です Photo: Ryota KURIBAYASHI

 圧縮袋を使わない分、もちろん荷物はかさ張ってしまいますが、パッカブル(小さく畳めてコンパクトにしまえる)なもの、速乾性の高い化学繊維を活用しているものを多用することで、荷物の圧縮と、洗濯のストレスを最大限に減らすことを心がけました。目を三角にして荷物を削ることに命を賭ける事も良いのですが、あまりやりすぎると旅先や道中での楽しみすら失われてしまい兼ねません。自分自身がどこまでの不便を許容でき、どこからが嫌なのか、その辺りの選択と集中を繰り返すうちに、筆者はこの形に落ち着きました。ちなみに、画像の左下に見えるのはパッカブルのバックパックです。これは現地でレース観戦、取材などを行う際に非常に活躍しました。

拡張性の高い「OS-500」

 続いて自転車のパッキングです。筆者は日本であれ海外であれ、輪行バッグはオーストリッチの「OS-500」を愛用しています。勿論、ハードケースを使ったガチガチの輪行が可能であればそれに越したことはないと思います。しかしハードケースの輪行袋は価格もそれなりにしますし、なにより移動時のスペースがとても嵩張ります。たしかに破損のリスクは高まりますが、輪行の要所を抑えることでそのリスクも可能な限り削減できます。

マンチェスター駅にてOS-500に包まれた自転車と列車。この地味な階段の乗り降りがなかなか辛い Photo: Ryota KURIBAYASHI

 OS-500はいわゆるソフトカバーに属する形のため、形状の拡張性もある程度高く、筆者は1つの旅行地にとどまる場合、着替えを含めたほとんどの荷物を詰め込みます。ただ、ここで注意が必要なのは、詰め込みすぎて預け荷物の重量上限に抵触しないことです。これは各航空会社によってまちまちかと思いますので、必ずパッキング前に備考を確認することをお勧めいたします。ちなみに今回利用したエティハド航空では、エコノミーの預け荷物の重量上限が23kg(都市、クラスによって変動がありますが、これが最低重量)で、諸々の荷物を詰め込んでも画像の通り14kgと余裕でクリア。帰りにはここにバックパックに入れた着替え、お土産一式を積み込むことになりますが、それでも余裕のある重量です。

パッキング前の自転車。各エンドにはサポート用の金具をつけます。さらに間に自転車用のギアを衝撃吸収材として詰め込んで、破損リスクを最大限に下げました。当然ディレイラーハンガーは外して後ろ三角の内側で保護 Photo: Ryota KURIBAYASHI
自転車とその他用具を詰めた後の重量、上限重量まで 10kgほど余裕があるので、帰りはさらに着替えとお土産をOS-500に詰め込みます Photo: Ryota KURIBAYASHI

 ちなみに、私がこのOS-500の海外輪行で参考にしたのは、サイクルフォトグラファー辻啓氏が行っている手法です。ほぼ彼が行っているやりかたを取り入れました。先人が数々の失敗を繰り返して最適化されたスキルは確実に取り入れるべきだと思います。

ロンドンではRaphaHQに訪問

 さて、イギリスで走ることが決まった際、私はRapha Japanの矢野さんにお願いをし、どうせならヘッドオフィスを見せてくれないか、と無茶なお願いをしてみました。そうしたところ矢野さんは快く引き受けてくださり、ヨークシャーの地を走る前に、ロンドンにあるRaphaのヘッドオフィスにお邪魔してきました。

Raphaヘッドクォーターにて。機密情報てんこ盛りであまり写真を撮影できませんでした Photo: Ryota KURIBAYASHI

 ロンドンの中心部にほど近い場所に位置するヘッドオフィス(ロンドンの店舗とは別の場所にあります)は、都合3フロアに分かれており、スタッフが集うカフェエリア、その奥には全スタッフの自転車を収容可能なサイクルラックがありました。

エントランスフロアの大半を占める社員専用サイクルラック。奥にはシャワー室兼更衣室も Photo: Ryota KURIBAYASHI
イギリスというお国柄なのか、ブロンプトン専用ラックが用意されていました。なかなかの稼働率 Photo: Ryota KURIBAYASHI
社内を案内してくれたRaphaのグローバルPRマネージャーのマーサと、HQのエントランスにて Photo: Ryota KURIBAYASHI

 中にはお国柄か、ブロンプトン専用のラックまで。フロアを上がっていくと、既にかなり先までの商品スケジュール、サンプルが置かれているブースや、過去のアーカイブをコレクションしたブースなど、Rapha好きが見ればおそらく発狂してしまいかねない空間がそこには広がっていました。今回Raphaは、地元イギリスでの世界選開催ということで、会場近辺に2つのポップアップショップをオープンし、イベントを毎日開催。さらには独自のコレクションを発表するなど非常に気合が入っていました。

グリップが非常に高く、進まないヨークシャーの路面

 そんなロンドンでの1日を過ごし、いよいよヨークシャーに移動します。断続的に降る雨やスケジュールの影響で、実際に走ることができたのは1回だけ。その1回のチャンスで、贅沢にも世界選手権を取材中のサイクルフォトグラファー辻啓氏に、周回コースを案内してもらいました。ライドの日も空は明るかったものの、路面は完全なウェット、霧雨が時折舞う典型的なブリティッシュウェザーというものでしたが、周回コースのあるハロゲイトの街の路面は非常にグリップが高く、言い換えれば非常に前に進みづらい重い路面でした。

フィニッシュのストレートにて。重いという言葉がピッタリの路面でした。 Photo by keitsuji

 Zwiftで事前に何度かコースを走ってみましたが、当然印象は異なり、とにかく平坦な部分がない。急激な上りの前は細い橋だったり、道だったり、平坦に見える場所でも微妙に常に上っていたり、逆に下っていたり、という感じでした。下りの勢いを生かして上り返したり、タイトなコーナーの後に急激に上ったりするあたりは、日本に例えると、尾根幹の表と裏がミックスされた様な感じでしょうか。当然のごとく辻氏には見事に殺され、この貴重な1回のみのライドは無事終了いたしましたとさ…。

 ちなみに、コースの実走に関しては開催地の交通ルールや、道路の閉鎖のスケジュールに左右はされてしまいますが、基本的にレースの当日でも、レースが周回コースに差し掛かる直前までは走行が可能です。ただ、あまり昼間になりすぎると車両の通行量も増えるため、交通量の少ない朝早めに走ることがオススメです。ヨーロッパの車はサイクリストに慣れてる分、結構ギリギリを抜いてきたりするので逆に冷や汗をかくこともありますし、それはそれでストレスが溜まりますよね。

 その他、車でこの周回コースに繋がる道などを走ってみたのですが、峠道というわけではないのですが、短い距離ながらも斜度がキツいアップダウンがひたすら続く道が非常に多かったです。峠道というわけではなく、これが向こうで言う所の国道のような場所です。「こんな道を走り続けてたらそりゃ強くなるよな」なんてことを感じました。

時折小雨がチラつく天候には最適なRapha×GORE-TEXのジャケット Photo: keitsuji

 この時、実はRapha Japanからいくつかサンプルをお借りしており、その中にはつい先日情報解禁になったばかりのGORE-TEXジャケットも。ここぞとばかりに着用してみました。気温が想定より少し高めだったため、若干オーバーヒート気味にはなりましたが、時折ちらつく雨をしっかりガードしてくれ、風が冷たく感じる下り坂ではしっかりとその風をガードしてくれました。既存のレインジャケットと、ウィンドジャケットの両方の機能をうまく融合したプロダクトという印象で、使い勝手が良さそうなので、発売された際には購入したいと思わせてくれるものでした。

電車だと少し辛いかも

 その他の日程は基本的に取材活動があったため、ほぼ終日をハロゲイトの周回コース近辺で過ごしました。その時の様子は別記事(マチューが大一番へ「Keep Push!」世界選エリート開催直前のポップアップ)で紹介されているのでぜひご覧ください。帰路は若干趣が変わり、リーズから電車でマンチェスターへ。搬入時、若干のトラブル(係員の英語の訛りが強くで全然聞き取れない)はありましたが、無事成田まで何の破損もなく自転車は届きました。

電車内にて。日本よりは多少通路の余裕があり、荷物置き場も用意されているので自転車を持ち込むことへの抵抗は比較的少ないかも? Photo: Ryota KURIBAYASHI

 行きも帰りも共通して苦労した点は空港から宿泊地、あるいはその最寄駅までの移動でした。電車に自転車を持ち込んだ際の居心地の悪さは万国共通。特に行きは通勤ラッシュと重なって、まさに地獄でした。海外の駅のプラットフォームは日本のように入り口とほぼ平行に位置しているわけではなく、階段のように上り下りする形が主流です。この出し入れ、そして電車内での置き場所については苦労したのは事実です。

 駅にさえ到着してしまえば、海外はUberを含めたタクシーのサービスが充実しているので、ある程度楽にはなりますが、空港から目的地の最寄り駅までの移動については、若干体力勝負になることも覚悟しておかなければいけません。言い換えると、この旅で苦労したポイントと言えばこの一点のみだったように記憶しています。OS-500のようなソフトケースでも苦労したので、ハードケースでの移動についてはこの形は避けたほうが賢明かと思います。

まとめ

 こうやって見ると、ただの1回のためにだいぶ苦労したなぁと思わないかといえば、それは嘘になりますが、それでも自転車を持って行ったのは、実際に自分の脚で走ったコースを、世界レベルの選手が走るとそれだけ凄さを実感しながらレースが見られるという、貴重な経験をすることができます。Stravaの同じセグメントにワールドツアーの選手の記録が並んでいるなんて、なかなかありませんよね。そんなわけで、来年は東京五輪もありますが、年に1回の旅として、スイスで開かれる世界選手権にも、また輪行の予定で今からプランを立て始めております。

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