台風の影響で繰り上げ開催東京五輪・BMXテストイベント、日本勢は決勝進出ならず 女子オーストラリア代表の日系・榊原爽が優勝

by 織田達 / Satoshi ODA
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 2020年に開催される東京オリンピックのテストイベントとなる「READY STEADY TOKYO -自転車競技(BMXレーシング)」が10月11日、東京都江東区の有明アーバンスポーツパーク内に造成されたBMXトラックで行われた。女子のレースではオーストラリア代表で日英ハーフの榊原爽(サヤ・サカキバラ)が優勝した。日本勢は男子が長迫吉拓、女子は畠山紗英のともに準決勝進出が最高だった。

レインボーブリッジを背景にジャンプする日本の畠山紗英 Photo: Satoshi ODA

“新規格”で作られたコース

 今回のテストイベントは当初12日に予選、13日に準々決勝から決勝レースまでが行われる予定だったが、過去最大級とも言われる台風19号の影響を懸念して、開催予定を早めて1日で予選から決勝レースまでを行うこととなった。

有明テニスの森でゆりかもめを降りると目の前にBMXトラックが現れる Photo: Satoshi ODA

 新橋駅〜豊洲駅間を結ぶ「新交通ゆりかもめ」の有明テニスの森駅のホームに立つと突如として現れるこのBMXトラック、有明アーバンスポーツパーク自体まだ工事中で観客席もなく、また同じ会場で行われるBMXパークやスケートボードの会場も工事の真最中だった。この新しいBMXトラックは明らかにワールドカップや世界選手権で使用される、いわゆるスーパークロスのスタイルではなく、UCIが新たに提唱する“ジェンダーイコール”を形にした形状のセクションとなった。

時折激しく降る雨によってできた水溜まりをスポンジで除去するボランティアスタッフ Photo: Satoshi ODA

 全長約460m、バームと呼ばれるアスファルトコーティングされたターンは3つ。第3ストレートのみ男子用と女子用で2レーンに分かれており、北京、ロンドン、リオと過去3度のオリンピックで使われていた、スタート直後の巨大なキャニオンジャンプや、男子限定のバーム越えジャンプなどといった派手さはなく、コース自体は8mスタートヒル以外はトラディショナル。スーパークロスのレースをイメージしていたせいかフラットな印象を受けた。その影響か、もしくはオフシーズンを目前にして無理をする時期ではないと判断したのか、レースでは全ヒートを通してクラッシュは僅かだった。

高層マンションを背景に8mの高さから下り降りると一気にトップスピードになる Photo: Satoshi ODA

 参加人数は男子40人、女子32人、男女ともに2019年世界チャンピオンの他UCIのトップランカー、女子ではロンドン、リオと2大会連続ゴールドメダリストのマリアナ・パフォン(コロンビア)、ロンドンでシルバーメダル獲得のサラ・ウォーカー(ニュージーランド)らが参加した。

 レースフォーマットは各組に分かれ予選を2ヒート走り、上位24人が準々決勝に進出。予選結果によって振り分けられた組でそれぞれ準々決勝では3ヒート走り、準決勝1ヒート、決勝と進む。なおオリンピック本場は準決勝も3ヒート走り決勝進出を争うことになる。

激しく降る雨の中予選2本目にトライする山口大地(ゼッケン99番) Photo: Satoshi ODA

日本の男女エースが準決勝進出も敗退

 日本からは男子が⻑迫吉拓(岡⼭)、中井⾶⾺(新潟、⽇本体育⼤学)、吉村樹希敢(大阪、GanTrigger)、山口大地(新潟、早稲田大学)のエリート4人、女子が畠⼭紗英(神奈川、⽇本体育⼤学)、丹野夏波(神奈川、早稲⽥⼤学)のエリート3人と、早川優⾐(岡⼭、興譲⾼等学校)、籔⽥寿⾐(⼤阪、⼤阪偕星学園⾼等学校)、酒井亜樹(大阪、岸和田市立産業高等学校)のジュニア3人が参加した。

日本チャンピオンとして臨んだ中井飛馬 Photo: Satoshi ODA
女子日本チャンピオンの丹野夏波は少し調子が悪そうに見えた Photo: Satoshi ODA
女子ジュニアでは籔田寿衣も予選を突破 Photo: Satoshi ODA
国内ジュニアチャンピオンの酒井亜樹は予選を突破 Photo: Satoshi ODA

 そのうち男子では山口、女子では丹野が予選通過ならず、準々決勝を勝ち抜いて準決勝に進出したのは長迫、畠山の男女1人ずつだった。

吉村樹希敢も準々決勝は突破できなかった Photo: Satoshi ODA
予選で敗退した早川優衣 Photo: Satoshi ODA

 男子準決勝2組目に出走した長迫は、「コースのデザインが、得意とするイン側に一気に切り込むターンで前に並ぶか抜くかしても、直線が長く、結局はアウト側のレコードラインをスピード乗せて走った方が有利だった」と語るように、ワールドカップで何度も窮地を脱するために使う、もはや必殺ターンに近い“切り込むターン”を使っても、第1ストレートの遅れをわずかに挽回した程度となり、6位でフィニッシュで準決勝敗退となった。

準決勝で独特のターンでイン側に切り込む長迫吉拓。このターンで何度も窮地を脱してきたが、このコースには不向きのようだ Photo: Satoshi ODA

 女子準決勝2組目には畠山が出走。コーチとお互いで確認し合い1番ゲートを選択。スタートのタイミングは申し分なかったが、それ以上にいいスタートを決めたのが、畠山の隣の2番ゲートを選択したロシアのナタリア・アフレモワ。しかしそのアフレモワは2つ目のジャンプの着地で転倒してしまい、畠山も進路を失い転倒してしまった。ワールドカップ後半に立て続けに決勝まで進出し自身も「前日までの練習で調子の良さを実感していた」と語っているだけに、残念な準決勝敗退となった。

 準決勝ではゴールドメダリストのマリアナ・パフォン(コロンビア)、今シーズンワールドカップ10戦中6勝し、“常勝”のイメージが強いローラ・スマルダース(オランダ)も敗退した。また男子では2019年世界チャンピオンのトワン・ファン・ヘント(オランダ)も敗退している。

常勝選手が敗れる波乱に

 決勝に進んだ主なメンバーは、男子はUCI1位、世界選手権2位、ワールドカップ10戦中6勝して女子のスマルダース同様に“常勝”のイメージが強いニック・キンマン(オランダ)。世界選手権6位のアンソニー・ディーン(オーストラリア)、世界選手権7位のレナウド・ブラン(スイス)、UCIランキング11位のロメイン・マヒュー(フランス)他4人。

 女子はUCI2位、世界チャンピオンであり、リオでシルバー獲得のアリス・ウルビー(アメリカ)、UCI3位、世界選手権6位、アメリカチャンピオンのフェリシア・スタンシル(アメリカ)、オーストラリアチャンピオンで国内でもTV出演しBMX関係者以外にも人気もある榊原爽(サヤ・サカキバラ)、UCIジュニアランキング1位のゾエ・クラエッセン(スイス)他4人。

男子決勝。ニック・キンマン(オランダ)の追撃をかわしてゼッケン100番のロメイン・マヒュー(フランス)が優勝 Photo: Satoshi ODA
男子ポディウム。左より2位のニック・キンマン(オランダ)、優勝のロメイン・マヒュー(フランス)、3位のディビッド・グラフ(スイス) Photo: Satoshi ODA

 男子決勝。スタートでキンマンとマヒューの2人が好スタートを切り飛び出る形となった。第1バーム後マヒューがバイク1台分リード。キンマンも追いすがるが、わずかに差を詰めただけで、マヒューが先頭でフィニッシュ。2位にキンマン、3位にはグラフが入った。マヒューは2018年フランス選手権での勝利以来のUCIレースの勝利となった。

女子決勝。トップを行く世界チャンピオンのアリス・ウルビー(アメリカ)を追うゼッケン7番の榊原爽(オーストラリア) Photo: Satoshi ODA

 女子決勝。好スタートで飛び出したのはウルビー、それにベセニー・シュリーバー(イギリス)、フェリシア・スタンシル(アメリカ)、ローラの妹であるメレル・スマルダース(オランダ)。榊原は若干遅れるも第1バーム〜第2ストレートで3番手に上がると少しずつ差がつまり、フィニッシュ前のストレートのさばき方が決定的となり、フィニッシュ直前にウルビーを交わして優勝した。その差0.036秒。差し切った相手こそ違うが昨シーズンワールドカップで初優勝した瞬間を再現したようなフィニッシュだった。

世界王者アリス・ウルビー(アメリカ)の背後に迫る榊原爽(オーストラリア)。アルカンシエルジャージはすでに射程圏内だ。 Photo: Satoshi ODA
女子ポディウム。 左より2位のアリス・ウルビー(アメリカ)、優勝の榊原爽(オーストラリア)、3位のフェリシア・スタンシル(アメリカ) Photo: Satoshi ODA

女子で優勝した榊原爽のコメント

女子クラスを制しインタビューに日本語で答える榊原爽(オーストラリア) Photo: Kenta SAWANO

 スタートは後ろに下がってしまったが、悔しくて後に、前に行けたのが良かったです。

 母親の生まれた国にいれてすごく感謝しているし、このオリンピックのコースで乗れたことも良かったし、すごくうれしいです。このコースは長くてとても難しかった。雨も降ったり風も吹いているし、日程が早まり準決勝以降はインターバルも短く、すごく疲れました。ワールドカップだと35秒くらいでレースが終わりますが、このコースは50秒くらいかかるので、それもあって脚がヤバいことになっています(笑)。

 難しいコースでなぜ勝てたかは、今考えてもわからないですけれど、ただ一番速い1周をすることが大事で、それができたということだと思います。来年のオリンピックも楽しみだし、コースが難しいと分かって、自分の中で練習しなきゃいけないところがはっきりして良かった。残り9カ月、そこを練習して戻ってきて、ゴールドメダルを目指して頑張りたいです。

惜しくも準決勝敗退となった長迫吉拓のコメント

ローラーでダウンしながら質問に答えてくれた長迫吉拓 Photo: Satoshi ODA

 今までに無いくらい長いコースで自分自身も苦戦したんですけど、周りも苦戦しているのを見てチャンスだなと思いました。ワールドカップでも調子が少し安定してきて、その雰囲気も今回感じていたんですけど、準決勝という高いレベルでの安定が必要なので、もう少ししたら勝負ができるかなと感じています。コース中のセクションが簡単で(みんなが同じことができるので)余計難しく感じました。ストレートのペダルの漕げる距離に対してジャンプ長さや飛び出しの角度がキツかったり、小さかったりして難しかったです。安全を考えたコースだと思いますが、ボクとしてはもう少しテクニカルでパワーだけじゃないようなところも欲しかったです。

不運な終わり方で準決勝敗退した畠山紗英のコメント

「調子が良かっただけに転倒が悔しい」とインタビューに答える畠山紗英 Photo: Satoshi ODA

 ワールドカップの最後の4戦から一昨日、昨日までの練習からずっと調子が良く乗れているのが自分でもわかっていました。レースが楽しみだったのですが、あのような終わり方ですごく悔しいです。コースについては国内にスーパークロスができるコースがなかったので嬉しいし、いろんな外国の選手が日本で走っているのが不思議というか嬉しいです。走る前は難しそうなコースと思いましたが、実際に走ってみるとそんなに難しくなく、結構自分の好きなコースでした。久しぶりに出場した日本でのレースは安心して走れました(2017年の全日本選手権以来の国内でのレース)。本番のオリンピックの時はどのくらいの観客が入るのかわかりませんが、盛り上がると思うので、楽しみにしています。ワールドカップでは決勝に残れるようになってきたので、次はポディウムに乗れるように頑張ります。

日本代表チームの三瓶将廣監督

Q: 今日の日本チームのレースを振り返って
A: 男女ともに大きな改善が必要な場面もありましたが、リザルトとしては男女3名ずつ(女子は2名がジュニア)がトップ24名のオリンピックフォーマットに勝ち上がり、長迫、畠山がワールドカップに続き継続的な準決勝進出できたことは良かったです。またオリンピックコースにも対応でき、順位を狙って勝負をできたことは、テストイベント過去大会から比べても大きなステップアップでありポジティブに捉えています。

Q: トラディショナルなフラットなコースの印象
A: これまでとは違い、セクションのこなし方にレパートリーが増えたため、よりスキル面での引き出しの多さと、判断力が重要になるとか考えています。また距離も長く、さらに高低差がないフラットな設計のため、最後までレース展開が読めないコースという印象です。より総合力が問われる設計だと感じました。

Q: コースは今後練習可能?
A: 台風の影響にもよるが、週明け月曜火曜が練習日となり、それ以降は大会直前のオフィシャルプラクティスまでクローズとなります。

来日選手は大阪国際にも出場

 今回来日した何人かの外国の選手は10月20日に、大阪府堺市にある大泉緑地BMXコースで行われる「大阪国際BMXレース(UCI-C1)」に参戦またはゲストとして来場する予定。テストイベントを走った日本代表チームの選手も、それぞれの所属チームのジャージに着替えて戦うことになる。

 なおMTB-XCO同様、今回のオリンピック用コースの使用は本番まで許可されていないとのこと。今回のレースで多くの課題を抽出できたことであろうし、今後その課題クリアにどう取り組むのか、一人のBMXレースファンとして注目していきたい。

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