感動を作り出す5人の社員五輪出場へ突き進むチームブリヂストンサイクリングを支える社員たちの熱い思い

by 大澤昌弘 / Masahiro OSAWA
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 10月17日から韓国の鎮川郡で開催される「アジア選手権トラック2020」。開催を目前に控えた10月10日、ブリヂストンサイクル社内では大会に出場するチームブリヂストンサイクリング所属選手を激励するための壮行会が行われていた。アジア選手権トラック2020は東京五輪のトラック競技の出場枠を左右する重要な大会だ。チームのエース、窪木一茂は社員を前にアジア選手権トラック2020での「金メダル獲得」に向けた誓いを立てたが、気持ちを高ぶらせたのはチームばかりではない。東京五輪に向けて、チームを支援する社員にとっても感慨深いものになったはずだ。本稿はそんなチームを支援する人たちの話である。

左からブランド推進部市場開発課の信賀信孝さん、設計開発部の長谷川彰洋さん、上尾製造課の山岡京史さん、生産管理課の山中桂太さん、ブランド推進部市場開発課の飯島誠さん Photo: Masahiro OSAWA

ブリヂストンの機材でなければ日本記録は出なかった

 10月10日、ブリヂストンサイクルのオフィスビルに「チームブリヂストンサイクリング」の所属選手が集まった。窪木一茂、橋本英也、近谷涼、今村駿介、沢田桂太郎の5人だ。彼らはトラック競技での五輪出場を目指す選手たち。9月に行われた全日本自転車競技選手権大会では、日本記録を樹立。4km個人パシュート(窪木)、4kmチームパシュート(窪木、橋本、近谷、今村)で日本新記録を生み出し、勢いに乗っている。

新機材の実力の高さを認めるチームブリヂストンサイクリング所属選手。左から沢田桂太郎、今村駿介、近谷涼、橋本英也、窪木一茂 Photo: Masahiro OSAWA

 その勢いを生み出したのが、ブリヂストンサイクルが開発し、全日本でも使われた新機材だ。新機材について窪木は壮行会で何度も触れた。「自転車に力が加わってからの持続時間が長く、他のフレームにはない推進力がある」「ブリヂストンが開発した機材でなければ、記録更新はできなかったと思う」(窪木)。

壮行会はブリヂストンの各拠点に中継された Photo: Masahiro OSAWA

 さらに窪木は「みなさんのおかげで競技が続けられていることを改めて感じました。応援が力になると感じています。アジア選手権はプレッシャーがかかりますが、僕らが目指すオリンピックでのメダル獲得のほうがはるかに重圧になると思いますので、今大会ではプレッシャーをかけてほしいです。最高の機材とともにアジア選手権の優勝を目指します」と意気込みを語った。

ブリヂストン社員からの寄せ書きを前に、アジア選手権での金メダル獲得を誓う窪木一茂 Photo: Masahiro OSAWA

機材に関わる人たち

設計開発部の長谷川彰洋さん Photo: Masahiro OSAWA

 五輪出場に向けて突き進むチームブリヂストンサイクリングだが、その気持ちはチームを支援する社員も同じだ。ブリヂストンサイクルは日本自転車競技連盟(JCF)と協力体制を構築し、チームブリヂストンサイクリング所属選手のみならず、トラックレースの日本代表に機材を提供することになっており、フレーム設計から塗装に至るまで多くの社員がかかわっている。

 新機材のフレーム設計を担当する設計開発部所属の長谷川彰洋さんは、部署11人でトラックバイクの開発に2017年から関わり、窪木らが絶賛するバイクを作り上げ、4kmパシュートで日本新記録を生み出す最強のバイクを作るに至った。最強のバイクを速く走らせるためには、ポジションの最適化も必要になる。フレームとポジション作りを仕上げるまでに繰り返し改善を図ってきた日々がある。

 設計開発部のなかで空力を担当する長谷川さんは、何度も選手宿舎のある三島、ベロドロームのある伊豆に赴き、選手一人ひとりの意見を取り入れ、ハンドル形状、幅の見直しなどを進めて最速で走るためのポジションの最適化も図ったという。

生産管理課の山中桂太さん Photo: Masahiro OSAWA

 長谷川さんは「アジア選手権では結果を出してもらわないと困ります」と言うが、その言葉は、五輪に向けて取り組んできた時間の長さを感じさせるものだ。選手と信頼関係を築き、試行錯誤を経て、これからの挑戦がある。そしてその挑戦に対して、自信がなければここまでは言えないだろう。

 機材の塗装を担当する上尾製造課の山岡京史さん、生産管理課の山中桂太さんも特別な思いを持つ。塗装は成果や記録とは直結しないように思えるが、彼らの意識はまったく違っていた。

 山中さんは「重量がどこまで影響するかわからないですが、塗料の選び方や塗装次第で車体重量が10-20gは変わってしまう。車体全体からすればわずかですが、100分の1秒刻みで選手は戦っています。少しでもタイムを縮めることに貢献したい」と話す。塗れば塗るほど重くなってしまうのが塗料。美観を損ねずに速さにも貢献する。そのバランスのとり方と塗装の完成度の高さの追求の難しさを語ってくれた。

上尾製造課の山岡京史さん Photo: Masahiro OSAWA

 山岡さんも「塗装は化粧と同じです。パッと見で機材の印象を大きく変えてしまいます。塗装工程はほぼ手作業ですが、普通の人が気づかないような細かなところまでしっかりと塗料が入るように気を配りながら塗装をしています」と話す。塗装前の入念な下処理を行い、塗装工程でのムラや漏れがないように、塗装の完成度を突き詰めていくと、作業には終わりがないのだという。

 最大の成果を出そうと、限界を突き詰めていくのはまさに選手と同じ。二人とも、塗装はメディアに出るもの、選手の目に触れるものであり「少しでも綺麗なものに仕上げたい」と話す。メディアを通じて伝わる機材の印象を大きく変えるのが塗装だ。機材に命を吹き込み、選手に輝きを与えたいという思いがこもっている。

五輪のレガシーを自転車競技開催地に

 五輪開催に向けて、日々奮闘する社員はほかにもいる。ブランド推進部市場開発課の信賀信孝さんと飯島誠さんだ。彼らは静岡県を中心に「自転車競技への関心を高め、次世代への自転車競技の普及につなげる」という壮大なテーマに取り組んでいる。

ブランド推進部市場開発課の信賀信孝さん(左)と飯島誠さん Photo: Masahiro OSAWA

 そのための取組みとして信賀さんは「自転車競技の楽しさをを知ってほしいですね。地元がオリンピックのコースに選ばれるのは、これから先はないこと。ロードレースの応援は一瞬です。それを一瞬の出来事にせず、一生の感動や思い出にしてもらいたいと思っています。そのための準備をみなさんと一緒にやっているんです」と話す。

壮行会では社員を前に東京五輪の自転車競技について説明した飯島さん。自身も自転車トラック競技の選手としてシドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場した経験を持つ Photo: Masahiro OSAWA

 具体的には、自転車競技の魅力や応援方法など、まずは知識として「伝える」ことに取り組んできた。かつて自身も選手として3度のオリンピックに出場した飯島さんがスピーカー役となり、学校や商業施設などで、これまで子どもから年配まで延べ5500人を相手に自転車の魅力を伝えてきた。信賀さんは「飯島は相手に合わせて届きやすい言葉にするべく、入念に準備をしているんですよ。イベント前には人を呼び止めて何度もチェックしている姿もみかけます。一度たりとも同じプレゼン資料はないんです」と明かし、その横で照れくさそうにする飯島さんが印象的だった。

 飯島さんも「どうすれば自転車競技の楽しさを伝えられるのか。会社のなかでは自分にしかできないことだと思うので、ものすごいやりがいがありますね」と述べつつ、自転車文化の創出に向けては「五輪後のことはすでに始めていないと遅いですよね。次のステップに向けて取り組んでいるところ。五輪開催日までが勝負だと思っています」と引き締める。

テストイベントでは「kinomap」を活用した乗車体験を実施 Photo: Masahiro OSAWA

 五輪開催が近づいた今、活動のフェーズは「伝える」から「体験する」という要素を取り入れつつある。知るだけではなく、応援するだけではなく、自転車そのものを楽しんでもらうためだ。7月に行われたテストイベントでは、バーチャルサイクリングアプリ「Kinomap」を活用したを体験ブースを設置。大勢の人に体験してもらった。翌日には、五輪男子ロードレースのコースを使ったライドイベントの開催にも関わった。

 今後もこの「体験」を増やし、静岡県内での自転車文化の創出を図る。そのための道筋はすでに描いており、これから徐々に明らかになっていくが、そこにはチームブリヂストンサイクリングもかかわっていく。チームブリヂストンサイクリングが輝けば輝くほどに、多くの人が魅力的に感じられるものとなっていくだろう。そうしたシナリオを描く信賀さん、飯島さんもまた、チームに特別な思いを抱いている社員なのである。

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